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『西湖畔(せいこはん)に生きる』あらすじ感想と評価解説。グー・シャオガン最新作で描く‟⽬連救⺟”の物語|映画という星空を知るひとよ220

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第220回

デビュー作『春江⽔暖〜しゅんこうすいだん』で世界から注⽬されたグー・シャオガン監督の2作目は、“⼭の視点で⾒つめる天上と地獄” を描いた『西湖畔(せいこはん)に生きる』です。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』は、2024年9月27日(金)より新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!

この作品はグー・シャオガン監督が、仏教故事「⽬連救⺟」からヒントを得たもので、西湖のほとりで茶摘みをして地道に働く母タイホアが堕ちた違法ビジネスの地獄と、母を救おうとする息子ムーリエンの物語です。

「⼈の世の悪さえ包み込み ⼭はそびえ⽔は流れる」というコピーが伝える世界観を、⼭⽔画のような映像美と壮大なスケールの音楽で魅せています。

映画公開に先駆けて、『西湖畔(せいこはん)に生きる』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』の作品情報


(C)Hangzhou Enlightenment Films

【日本公開】
2024年(中国映画)

【原題】
草木人間

【英題】
Dwelling by the West Lake

【監督】
グー・シャオガン

【脚本】
グオ・シュアン、グー・シャオガン

【音楽】
梅林茂

【キャスト】
ウー・レイ、ジアン・チンチン、チェン・ジエンビン、ワン・ジアジア

【作品概要】
『西湖畔(せいこはん)に生きる』は、2023年・第36回東京国際映画祭コンペティション部門出品。

カンヌ国際映画祭批評家週間クロージングを飾ったデビュー作『春江⽔暖〜しゅんこうすいだん』(2021)で、中国映画新時代の旗⼿となったグー・シャオガン監督の待望の第2作品です。

主演を務めるのは、⼈気中国俳優のウー・レイ。映画独特の世界観を『花様年華』(2000)『陰陽師』(2001)の梅林茂がスケール⼤きな⾳楽で魅せています。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』のあらすじ


(C)Hangzhou Enlightenment Films

中国杭州市。最⾼峰の中国茶・⿓井茶の⽣産地としても有名な⻄湖(せいこ)のほとりに、⺟・タイホア(ジアン・チンチン)と息⼦・ムーリエン(ウー・レイ)が暮らしていました。

⽗は家を出て消息不明となって10年になります。タイホアは⼭の斜⾯にある美しい茶畑で、茶摘みの仕事をして、ひとり息⼦のムーリエンを育て上げました。

ムーリエンはもう⼤学卒業の年ですが、仕事がなかなか⾒つかりません。早く稼いで、苦労してきた⺟を安⼼させ、⾏⽅のわからぬ⽗親を探し出して、もう⼀度、家族揃って暮らしたいと思っていました。

そんな頃、タイホアは茶畑の主⼈チェンと懇意になったことで、その⺟親の逆鱗に触れ、茶畑を追い出されます。友人のジンランはタイホアを⾃分の弟が⼤儲けしているというバタフライ社のビジネスに誘います。

息⼦を⽴派に育てるためにお⾦が欲しいタイホアには、⾦を稼いで⾃分をバカにした⼈を⾒返したいと思いもありました。

バタフライ社のビジネスは胡散臭いものでしたが、タイホアは見事に洗脳され、違法ビジネスの世界にどっぷりとつかってしまいます。

一方やっと就職したムーリエンですが、それも詐欺曲がりの仕事だったため、すぐに仕事を辞めました。ムーリエンが母・タイホアの元に帰ってみれば、母は洗脳され派手なメイクに衣装と、まるで別人のようになっていました。

それは違法ビジネスだと、ムーリエンは母に忠告しますが、タイホアは聞こうとしません。ついに母を違法ビジネスの地獄から救おうと、ムーリエンは一線を越える決断をします。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』の感想と評価


(C)Hangzhou Enlightenment Films

『西湖畔(せいこはん)に生きる』は、違法ビジネスに堕ちた母と、そんな母を救おうとする息子の物語です。

母が違法ビジネスに手を染めたのは、息子を立派に育てるため。そして自分を馬鹿にした人々を見返すためでした。息子はそんな母を我が身を投げうってビジネスの洗脳から救おうとします。

違法ビジネスに身を堕とす母からは‟悪に魅入る弱さ”を見出し、母を助けようとする息子に‟人間の道徳”を感じる作品です。

鑑賞後は、人はどう生きるのが幸せかと問われる気になるでしょう。それもそのはずで、本作は、釈迦の⼗⼤弟⼦のひとりである⽬連が地獄に堕ちた⺟親を救う仏教故事「⽬連救⺟」をヒントにしたオリジナル・ストーリーでした。

親子の愛情とともに、現代社会にはびこる詐欺や違法ビジネスといった社会問題を取り込み、それに対処すべき人としての生き方を真正面から問いかけています。

その一方、本作で特にグー・シャオガン監督がこだわった“⼭の視点で⾒つめる天上と地獄”の様相を、親孝行な息子役の⼈気男優ウー・レイと、苦悩する母を演じる実⼒派⼥優ジアン・チンチンが見事に表現しています。

また、2人の熱演とともに映し出される西湖畔の大自然の美しさも見どころの一つです。

それから』(1985)『陰陽師』(2001)などの⽇本映画で、数々の素晴らしい楽曲を提供してきた⽇本の巨匠・梅林茂が⼿がける音楽が、作品に華を添えています。

まとめ


(C)Hangzhou Enlightenment Films

グー・シャオガン監督の“⼭の視点で⾒つめる天上と地獄” を描いた作品『西湖畔(せいこはん)に生きる』をご紹介しました。

本作は、釈迦の⼗⼤弟⼦のひとりである⽬連が地獄に堕ちた⺟親を救う仏教故事「⽬連救⺟」をヒントに、グー・シャオガン監督と共同脚本のグオ・シュアンが現代の物語として書き上げたものです。

違法ビジネスの地獄に堕ちた母の発する‟狂気”と、愛する母を地獄から救い出そうとする息子の一途な‟純粋さ”が、本作の重厚なテーマをさらに深く掘り下げ、人間の幸せとは何だろうと考えさせられます。

映画『西湖畔(せいこはん)に生きる』は、2024年9月27日(金)より新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


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