連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第212回
『モガディシュ 脱出までの14日間』(2022)のリュ・スンワン監督が手がけた『密輸 1970』。この作品は、衝撃の実話から着想を得て作り上げた予測不能な海洋クライム・アクションです。
映画『密輸 1970』は2024年7月12日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー!!
生活苦に追われる海女たちが海底に沈む密輸品を引き上げる仕事をしています。そこへ、密輸の莫大な金を狙う密輸王と愚連隊、特権をいかして甘い汁を吸おうとする税関上司が、海女たちと騙し合いのバトル勃発。
W主演のキム・ヘスとヨム・ジョンアも奮闘。海中でのバトルシーンは、美しい海中の様子も頻繁に映し出されて魅了します。
韓国発海洋クライム・アクション『密輸 1970』をご紹介します。
映画『密輸 1970』の作品情報
【日本公開】
2024年(韓国映画)
【原題】
『밀수』
【脚本】
リュ・スンワン、キム・ジョンヨン、チェ・チャウォン
【監督】
リュ・スンワン
【キャスト】
キム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソン、パク・ジョンミン 、キム・ジョンス、コ・ミンシ
【作品概要】
『密輸 1970』は、『モガディシュ 脱出までの14日間』(2022)『ベテラン』(2015)のリュ・スンワン監督が、1970年代の韓国の沖合で密輸犯罪が盛んに行われていたという史実に基づいて手がけた海洋クライム・アクション。
2023年の「第44回青龍映画賞」で最優秀作品賞を含む4冠に輝き、同年サマーシーズンの韓国で500万人以上を動員し、年間興収ランキング3位の大ヒットを記録しました。
ダブル主演を務めるのは、『国家が破産する日』(2018)のキム・ヘスと『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』(2018)のヨム・ジョンア。
密輸王クォン役のチョ・インソン、チンピラのドリ役パク・ジョンミン、税関のジャンチュン役キム・ジョンス、そして注目の若手コ・ミンシと、新旧の実力派俳優が勢揃いしています。
映画『密輸 1970』のあらすじ
1970年代半ば、韓国の漁村クンチョンでは、海が化学工場の廃棄物で汚され、地元の海女さんチームが失職の危機に直面していました。
リーダーのジンスクは仲間の生活を守るため、海底から密輸品を引き上げる仕事を請け負うことにします。
ところが作業中に税関の摘発に遭いました。現行犯で捕まったジンスクをはじめ関わった海女さんチームのメンバーは刑務所送りとなり、彼女の親友チュンジャだけが現場から逃亡しました。
その2年後、ソウルからクンチョンに舞い戻ってきたチュンジャは、出所したジンスクに新たな密輸のもうけ話を持ちかけます。
ですが、ジンスクは税関へ密告したのはチュンジャだと思い、彼女への不信感を拭えません。
密輸王クォン、チンピラのドリ、税関のジャンチュンの思惑が絡むなか、苦境に陥った海女さんチームは、人生の再起を懸けた大勝負に身を投じていきます……。
映画『密輸 1970』の感想と評価
映画『密輸 1970』は、1970年代に起った韓国沖合での密輸犯罪の実話を基に、稀代のヒットメーカー、リュ・スンワン監督が作り上げた予測不能な海洋クライム・アクションです。
密輸品の引き揚げ作業をしていた海女たちと密輸を取り締まる税関、そして密輸品で一儲けを企むチンピラ、密輸品を手に入れようとする密輸王が海を舞台に行う四つ巴の争い。
海女の逮捕劇から始まり、作業の密告者探しが密輸品引揚げ仕事にも影響し、海底に静かに眠る密輸品の奪い合いは、次第にエスカレートしていきます。
本当の敵は、密輸王か税関か? それともサメか!?と、次から次へとおこる迫力満点のバトルシーンに目が離せないでしょう。
本作には、ム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソンらをはじめ豪華俳優陣が集結し、『モガディシュ 脱出までの14日間』(2020)でエリート外交官を演じたチョ・インソンが、静かな狂気をまとうカリスマ的な密輸王クォンを演じています。
予測不能な物語の展開とともに、エリート外交官とは異なるチョ・インソンの魅力も炸裂。
静かな海中での壮絶なバトルの勝者は誰か。推測をしながら、美しい海の風景も楽しめます。
まとめ
リュ・スンワン監督が、手がけた海洋クライム・アクション『密輸 1970』。
バトルを繰り返すのは、海女と密輸王と税関、そしてチンピラです。密告、裏切り、騙し合いと、誰が味方で誰が敵かわからない状況の中、‟海女の意地とプライド”を持った主人公の海女たちは、女性同士の連帯感を強めていきます。
巨額の金塊をめぐり、クセモノ揃いのキャラクターが織りなす、騙し騙されの駆け引きから目が離せない本作。命懸けの大乱戦をサバイブし、最後に笑うのは誰でしょう。ぜひ、劇場でご覧ください。
映画『密輸 1970』は2024年7月12日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー!!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。