Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』あらすじ感想と評価解説。ワンピースと眼鏡でキュートに生きる作家のドキュメンタリー|映画という星空を知るひとよ187

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第187回

映画『魔女の宅急便』の作者で知られる児童文学作家角野栄子。「想像力こそ、人間が持つ一番の魔法」と語る彼女はいったいどういう人物なのでしょう? 

その作家生活を追ったドキュメンタリー映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』は2024月1月26日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

鎌倉の「いちご色」に囲まれた自宅で執筆生活を営む角野栄子。トレードマークのカラフルな眼鏡とワンピース姿で、「自分にとって気持ちがいいもの」をモットーに、遊ぶように暮らし、遊ぶように書き、毎日を心地よく暮らしています。

88歳のキュートな“魔女”が、老いや衰えさえも逆手にとって今もなお、夢いっぱいな物語を生み出すことのできる秘訣とは? 映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』の作品情報


(C)KADOKAWA

【日本公開】
2024年(日本映画)

【語り】
宮﨑あおい

【監督】
宮川麻里奈

【音楽】
藤倉大

【プロデューサー】
山田駿平 

【宣伝プロデューサー】
大﨑かれん 

【編集部協力】
岡山智子
 
【撮影】
髙野大樹 

【編集】
荊尾明子 

【キャスト】
角野栄子

【作品概要】
映画『魔女の宅急便』の作者として知られ、88歳になった今でも現役の児童文学作家として精力的に執筆に励む角野栄子。

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』は、2020年から2022年にかけてNHK Eテレにて全10回にわたり放送された『カラフルな魔女〜角野栄子の物語が生まれる暮らし』をもとに、新たに撮影し、再編集した作品です。

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』のあらすじ


(C)KADOKAWA

角野さんは、1935年に東京・深川で生まれ、5歳で母を亡くし戦争を経験します。

新婚の夫とともにブラジルに渡ったのは24歳のとき。まだ日本人が自由に海外に行けない時代に広い世界を見てみたいと個人移民の道を選びますが、着いた当初は現地での暮らしになじめず、来たことを後悔した日もあったと言います。

そんなとき角野さんにポルトガル語を教えてくれたのが近所に住むルイジンニョ少年でした。

このブラジル時代の恩人との交流を綴った『ルイジンニョ少年:ブラジルをたずねて』で作家デビューを果たします。娘のリオさんの育児に追われていた35歳のときのことでした。

作家デビューから53年。角野さんは「誰よりも自分が楽しむこと」をモットーに、鎌倉のいちご色の一軒家でコツコツと大好きな執筆を続けてきました。

そして、奇跡のような出来事が重なり、ついに62年ぶりにルイジンニョと再会することになります。角野さんは今回、ルイジンニョさんにどうしても見せたいものがありました……。

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』の感想と評価


(C)KADOKAWA

角野栄子という名を知らなくても、『魔女の宅急便』の作者と言えば、すぐにわかるのではないでしょうか。

映画『魔女の宅急便』では、魔法使いの少女キキが飼い猫の黒猫ジジと人間界で暮らしながら、一人前の魔女になる修行をする日々が描かれています。

キキが得意な魔法は、空を飛ぶことでした。キキは自分の得意な魔法を使って人々の役に立とうとし、空飛ぶ宅急便屋をすることにします。そして、キキのお届け屋さんの大奮闘が始まります。

角野栄子はこの『魔女の宅急便』で、野間児童文芸賞、小学館文学賞等受賞。作品は、映画や舞台化もされ、世界的ロングセラーとなりました。

その後、2000年には紫綬褒章、2014年に旭日小綬章、2023年に紫式部文学賞も受章。2018 年に児童文学の「小さなノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞・作家賞を日本人3人目として受賞します。

こうして、世界的な児童文学作家となった角野栄子ですが、夢のある物語を生み出す彼女がどんな生活を送っているのか、とても気になるところです。

本作は、そんな疑問を解くべく、4年間かけて彼女に密着して撮影した作品です。

歩く姿も生き生きとし、トレードマークはカラフルな眼鏡にワンピースの角野栄子。米寿を迎えた女性とは思えないほど、溌剌とした作家生活を送られていました。

不老不死のような元気な姿をみせる角野栄子が、本物の魔女に見えてきます。彼女を‟カラフルな魔女”にしているモノとは何なのでしょう

ポジティブに生きる秘訣を惜しげもなく本作で語る角野栄子の言葉から、夢のある生き方が見えてきます。

まとめ


(C)KADOKAWA

88歳になっても精力的に執筆活動を続ける児童文学作家・角野栄子。映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』では、そのカラフルな魔女ぶりが映し出されています。

一方、本作の語りを担当するのは宮﨑あおいです。彼女も「角野栄子さんの楽しい視点にいつも幸せな気持ちになっていました。角野さんの観ている世界をぜひ劇場で覗いてみてください。今まで見ていた景色がちょっと違って見えるかも♪」と感想を述べていました。

角野栄子が教えてくれる、誰もが使える“人生を変える魔法”とは何でしょう。

ぜひ劇場で覗いてみてください。

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』は2024月1月26日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

関連記事

連載コラム

【ネタバレ】シン仮面ライダー|第0号/蝶オーグ元ネタは?イチローがハビタット世界×漫画“真の安らぎはこの世になく”の果てに夢見た“安息の地”|仮面の男の名はシン5

連載コラム『仮面の男の名はシン』第5回 『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『シン・ウルトラマン』に続く新たな“シン”映画『シン・仮面ライダー』。 原作・石ノ森章太郎の特撮テレビドラマ『仮 …

連載コラム

香港映画『G殺』あらすじと感想レビュー。リー・チョクバン監督の語り口の旨さに酔いしれる|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録2

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第2回 毎年3月恒例の大阪アジアン映画祭が今年もスタートしました。 今年は第14回目となり、2019年3月08日(金)から3月17日(日)までの10日間に …

連載コラム

『嘘はフィクサーのはじまり』あらすじと感想レビュー。ユダヤ社会の欲望と友情の物語|銀幕の月光遊戯2

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第2回 こんにちは、西川ちょりです。 これから封切られる新作映画をいち早く取り上げ、皆様の「観るべきリスト」に加えていただくことを目指す本連載も今回で2回目。 今回取り上げ …

連載コラム

未体験映画『バースト・マシンガール』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。美女が改造されて殺人アリーナでデスマッチ!|未体験ゾーンの映画たち2021見破録5

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第5回 世界の隠れた名作から珍作・怪作まで、埋もれかけた映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第5回で紹介するのは、これぞ未体験映画 …

連載コラム

映画『2067』ネタバレ感想解説と結末考察のあらすじ。おすすめSFアドベンチャーは妻を救うために未来へ旅する男を描く|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー40

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第40回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学