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映画『ベイウォーク』あらすじ感想と評価解説。“なれのはて”続編的ドキュメンタリーでフィリピンを生きる“二人の老日本人”を描く|映画という星空を知るひとよ130

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第130回

第3回東京ドキュメンタリー映画祭でグランプリ&観客賞を受賞し、2021年12月に公開された『なれのはて』の続編的作品と言えるドキュメンタリー『ベイウォーク』

のべ7年の歳月をかけてフィリピンで困窮邦人を追ってカメラを回し続けた粂田剛監督が、『なれのはて』に収録できなった人物たちにフォーカスを当て再構成した作品です。

マニラの中心街、数100メートルしか離れていない場所で、対照的な暮らしをしている二人の日本人に密着した結末とは?

フィリピンでホームレスとなって生活する日本人に追従する映画『ベイウォーク』は、2022年12月24日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開

映画公開に先駆けて、『ベイウォーク』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ベイウォーク』の作品情報


(C)Uzo Muzo Production

【日本公開】
2022年(日本映画)

【監督・撮影・編集】
粂田剛

【音楽】
高岡大祐

【出演】
赤塚崇、関谷正美

【概要】
『ベイウォーク』は、粂田剛監督が、2021年12月に公開された『なれのはて』で収録できなかった日本人たちを新たに主人公にして、作りあげた作品です。

マニラ市民の憩いの場である、海沿いに整備された遊歩道・ベイウォークで路上生活をする赤塚さんと、マニラでセカンドライフを送ろうと移住してきた関谷さん。対照的な生き方をしている二人に密着して、その生き方を追従するドキュメンタリー。

映画『ベイウォーク』のあらすじ


(C)Uzo Muzo Production

「世界三大夕日の名所」の一つと言われるマニラの市民の憩いの場が、海沿いに整備された遊歩道・ベイウォーク。夕方までは、家族連れやカップルたちで賑わいますが、夜になると、どこからかホームレスたちが集まり、彼らの「ねぐら」となります。

その中に、58歳の赤塚崇さんがいました。彼は裏稼業で幅を利かせた生活をしていたものの、フィリピンで騙されて一文無しになりました。

現在、日中は露店のタバコ売りを手伝い、夜はベイウォークで路上生活な赤塚さん。愛嬌のあるその人柄が幸いしてか、フィリピン人に助けられてばかりの毎日を送っています。

一方、ベイウォークにほど近い高層アパートメントに入居している、62歳の関谷正美さん。日本で年金生活を送っていた関谷さんですが、楽しい老後を夢見てフィリピンに移住を決めました。

関谷さんは、ベランダから海を臨む見晴らしと、自分好みにリフォームした部屋で、第二の人生をスタートさせました。

けれども、フィリピン人をなかなか信用できない関谷さんは、何をやってもうまくいきません。そのうちに、関谷さんは部屋に閉じこもってしまうようになります。

50歳を過ぎて日本を飛び出し、フィリピンでの生活に夢をみた二人。果たして彼らを待ち受けるものとは……。

映画『ベイウォーク』の感想と評価


(C)Uzo Muzo Production

『なれのはて』で映し切れなかった人々のために

「日本から海外に飛び出した人たちの“その後”に興味があった」という粂田剛監督。

彼らがそこでどんな暮らしをしているのだろうという思いから、フィリピンで辛抱強く撮影を続け、継続的に撮影させてくれた7人の中の4人を主人公に、『なれのはて』というドキュメンタリー映画を作りました。

『なれのはて』はその後、第3回東京ドキュメンタリー映画祭でグランプリ&観客賞を受賞。2021年に劇場公開を迎えましたが、粂田剛監督は、映画で映し切れなかった人々のことが気になりました。

そして、長年にわたって撮影させてくれた彼らのために、もう1本映画を作るべきだという思いから完成したのが本作『ベイウォーク』です。

再起をかける一文無しのホームレスと、セカンドライフを楽しむべき移住を決意した男

正反対の暮らしをする二人の日本人の共通点は、「50代を過ぎて知人のいない海外で、たった一人で再起をかけて生きている」というものでした。

しかし、その本心はどうなのでしょう。彼らはカメラを前に切実に自分の状況を訴え、切ない胸の内を語り始めます。

前作『なれのはて』の続編とも言えるその内容は、日本を飛び出て実際に海外で暮らす人が幸せかそうではないか、鋭く問いかけてきます。

映画『なれのはて』とは?

参考映像:映画『なれのはて』(2021)予告編

粂田剛監督が7年もの撮影期間を経て完成させた映画『なれのはて』。第3回東京ドキュメンタリー映画祭でグランプリ&観客賞を受賞し、2021年には劇場公開もされました。

マニラの貧困地区にひっそりと住む「困窮邦人」と呼ばれる高齢の日本人男性たちの現実を、境遇の異なる4人の姿を通じて迫ったドキュメンタリー作品です。

映画『なれのはて』のあらすじ


(C)有象無象プロダクション

かつては警察官、暴力団員、証券会社員、トラック運転手など、日本で職に就き、家族もいながら、何らかの理由で帰国しないまま、マニラの地で日々を送る年老いた日本人男性たち。

半身が不自由になり、近隣の人々の助けを借りてリハビリする男。連れ添った現地妻とささやかながら仲睦まじい生活を送る男。便所掃除をして軒下に居候している男。ジープの呼び込みで得たわずかな金でフィリピンの家族を支える男……。

カメラは4人の老人男性の日常、そしてそのまわりのスラムの人々の姿を淡々と捉えていきます。

まとめ


(C)Uzo Muzo Production

日本を飛び出し、海外で暮らす人々を追ってその暮らしぶりを撮影した『ベイウォーク』。粂田剛監督は、前作『なれのはて』の続編的作品として、さらに追い続けた二人の日本人を描いています。

彼らはどうして日本を飛び出すことになり、なぜフィリピンで生きているのでしょう。監督ならずとも、興味深くご覧いただけることは間違いありません。

映画『ベイウォーク』は、2022年12月24日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開

なお、新宿K’s cinemaでは『ベイウォーク』公開の期間中の日曜日・水曜日における前作『なれのはて』の上映も決定しました。

前作を見逃した方、『ベイウォーク』とあわせてご覧になりたい方は、是非お見逃しなく。

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


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