連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第218回
実話を基にした、嘘のような“偽の殺し屋”のクライム・コメディ『ヒットマン』。
殺人の依頼人を逮捕するために、警察に協力するおとり捜査で、偽の殺し屋を演じる男ゲイリー・ジョンソン。そんな彼が夫の殺人を依頼した人妻と恋に落ちてしまい……。
映画『ヒットマン』は、2024年9月13日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
実話に惹かれたグレン・パウエルが主演を務めるほか、監督のリチャード・リンクレイターとともに脚本も手掛けています。
セクシーでスリリング、そしてちょっぴり笑える物語が展開する『ヒットマン』。映画公開に先駆けて映画『ヒットマン』をご紹介します。
映画『ヒットマン』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Hit Man
【監督】
リチャード・リンクレイター
【脚本】
リチャード・リンクレイター、グレン・パウエル
【原案】
「テキサス・マンスリー」誌 スキップ・ホランズワースの記事に基づく
【キャスト】
グレン・パウエル、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ、レタ、サンジャイ・ラオ
【作品概要】
『ヒットマン』は、90年代のアメリカで偽の殺し屋として警察のおとり捜査に協力し、70件以上を逮捕に導いた人物の実話を基にしたクライム・コメディ。
監督は、『スラッカー』(2017)や『30年後の同窓会』(2018)のリチャード・リンクレイターです。
主役を務めるのは、『トップガン マーヴェリック』(2022)のハングマン役や2024年の『ツイスターズ』への出演などで注目されている俳優グレン・パウエル。
原案となる実話に惹かれた彼は、主演のほか、リンクレイター監督と共に脚本を務めています。
映画『ヒットマン』のあらすじ
2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソンは、大学で心理学と哲学を教える傍ら、偽の殺し屋に扮し地元警察のおとり捜査に協力しています。
殺しの依頼人の好みに合わせたプロの殺し屋になりきり、次々と依頼人たちを逮捕へ導いていくゲイリー。変装も偽りの人格も次第に上達し、変幻自在の変装術にも磨きがかかります。
ある日彼のもとへ、マディソンという女性が夫の殺害を依頼してきました。ゲイリーはセクシーな殺し屋ロンに扮して彼女の事情を聞くうちに、彼女に魅かれていきます。
そして、逮捕するはずの相手に対し「この金で家を出て新しい人生を手に入れろ」と見逃してしまいます。
恋に落ちてしまったゲイリーとマディソンは、やがてリスクの連鎖を引き起こしていくことに――。
映画『ヒットマン』の感想と評価
『ヒットマン』の主人公、ゲイリー・ジョンソンは実在する人物で、警察のおとり捜査官でもあります。
本作の面白みは、「殺し屋」を雇って殺人を依頼したはずが、実は事件を捜査する捜査官だったというところでしょう。
相手がおとり捜査官だということを知らずに、その殺し屋に殺人を依頼する人々が後を絶たないのにも驚かされます。
本作に登場する殺し屋のそれぞれのキャラクターには、特徴、話し方、趣味や嗜好まで詳細な外見が準備されました。
偽の殺し屋たちには仮の世を忍ぶ職業が用意され、ゲイリー・ジョンソンは見事な変装術で、それぞれの依頼にあった殺し屋になりきります。
ゲイリー・ジョンソンを演じるグレン・パウエルは、殺し屋たちの眉毛や歯並び、瞼、髪型などを細かく変化させて顔の印象を変えていきました。その作業をパウエルが心から楽しんでいるようです。
変装名人に騙された依頼人たちの真実を知った時の驚き様に、ついクスリと笑ってしまいます。
一方では、「偽の殺し屋」の嘘偽りばかりの行動に、何が真実で誰のどんな言葉を信じればいいのかと、疑心暗鬼に陥ります。
どのように人を信じればよいのかということは、依頼人のマディソンに心奪われるゲイリー・ジョンソンの思い悩む様子に答えのヒントがあるようです。
まとめ
実話を基に描かれたおとり捜査官の物語『ヒットマン』。本作のモデルとなった潜入捜査官のゲイリー・ジョンソンは、地方検事局で働きながら講師として地元のコミュニティカレッジで心理学などを教えていた人物です。
1990年頃から「偽の殺し屋」として警察に協力する活動をはじめ、70人以上を逮捕に導いたと言われています。
おとり捜査官でプロの殺し屋を演じる主人公ですが、次第に別の人物になれることが面白くなり、変装や癖、服装センスなどまでも全くの別人になりきる手段もプロ級になっていきました。
主役を演じるグレン・パウエルの七変化が観る者を楽しませてくれます。
映画『ヒットマン』は、2024年9月13日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。