連載コラム『海外ドラマ絞りたて』第8回
人気ドラマ『THIS IS US』のシーズン4は北米で9月24日から放送が開始!
本コラムではシーズン3のエピソードを3話ずつネタバレで掲載し、見所や撮影秘話も含めてご紹介します。
『THIS IS US』は、クリエイターのダン・フォーゲルマン率いる10人の脚本家が紡ぐヒューマンドラマ。
様々なバックグランド・文化と多様性溢れる30代の作家を中心に、忌憚のない意見が交わされ、個々のプライベートなエピソードを共有しながら各話を構成しているとフォーゲルマンは舞台裏を明かしています。
CONTENTS
ドラマ『THIS IS US』シーズン3の第7話あらすじとネタバレ
過去。ジャックとレベッカは、ピッツバーグを出発しロサンゼルスへ向かいます。友人のコネでレコード会社に自分の歌を録音したデモテープを聞いてもらい、メジャーデビューする夢を持つレベッカ。
長いロードトリップの道中、距離が一気に縮まる2人ですが、夜半に悪夢でうなされるジャックは、ベトナムの辛い記憶についてレベッカに話そうとはしません。
現在。ケヴィンはゾーイと一緒にベトナムを訪問。地元の人が集う市場へやって来たケヴィンは、父親のネックレスが大量に土産物屋で売られている品だと知ります。
そして、複雑な家族環境で育ったゾーイは家族のことについて一切話したがらず、ケヴィンは次第にフラストレーションを感じます。
過去。ジャックは、問題を抱えた弟・ケヴィンを心配し駐屯地を訪ねます。何とか自分の小隊へ移動させようと、ジャックは上官に直談判しますが、兄弟を一緒の部隊へ所属させない政府の方針で止む無く却下。
帰りは徒歩で戻るよう命じられたジャックは、途中現地の男性に頼んで小型バイクで送ってもらうことに。
しかし、男性かある家に寄り道をし、ジャックが覗くと、上部の空いた空き缶を大量に運び込んでいました。ジャングルで目にした手製の地雷に使われていた空き缶だとジャックは気が付きます。
ドラマ『THIS IS US』シーズン3の第8話あらすじとネタバレ
現在。感謝祭。デジャは実母から感謝祭を祝うテキストメッセージを受け取りますが、返信せずにスマホを閉じます。
ランダルは地元の住民と交流を図るため、ベスと子供を連れて感謝祭の料理をホームレスの人々が集うシェルターで配ることに。
しかし、ジェウォンは、ランダルの知名度を上げるべく選挙戦の戦術を練り、マスコミが集まりやすい場所へ顔を出すよう忠告。
ベスは、地域の人と交流を密にすべきという意見。ベスとジェウォンが口論になりますが、ランダルはベスの意見を尊重する断固たる姿勢を取ります。支持率を伸ばそうと考えるジェウォンは当惑を隠せません。
過去。ベトナムで従軍中、感謝祭に政府からターキーやビールが供給されます。ふて腐れるニックは孤立し、ジャックにさえ八つ当たり。料理を食べることも無く1人煙草を吸っているだけでした。
ジャックの率いる小隊は、女性、子供、高齢者しか残っていない村に駐屯。重そうに水の入ったバケツを運ぶ若い村の女性を手伝おうとしたジャックに、その女性の父親が警戒感を露わにします。
ベトナム兵の侵入を防ぐ有刺鉄線で足に怪我をした少年を見掛けるジャック。余ったターキーをその少年が住む家へ持参したジャックは、少年の足が感染症を起こし高熱を出していることを知ります。
衛生兵であるニックを呼び出し、少年の怪我を治療するよう言いますが、ニックは頑なに拒否。ジャックは声を荒げ、上官として命じます。しかし、ニックは、いつか仕返しするベトナム人を助けたくないと最後まで拒みます。
ジャックは、消毒薬を傷に掛け、抗生物質を少年に飲ませます。その光景を傍らで見ていた若い村の女性はホッとして涙を流し、警戒して怒声を浴びせていた父親も黙って見守ります。
ジャックは、ニックに、弱い女性と子供だとニックを諭します。しかし、ニックは、ボーンズというあだ名の部隊長について話し始めます。
新米兵だったニックは、所属部隊でいじめに遭い、ボーンズが他の兵隊を戒めた経緯がありました。ボーンズは、駐屯する村でも好かれ、歯の欠けた村の女性がボーンズの頭の毛を切ってあげるほど。
しかし、ある日ベトナム兵がボーンズだけを標的に襲撃。ボーンズは命を落とします。いつも笑顔を絶やさなかった歯の無い村女性がボーンズの寝所を密告していたのでした。
ニックは、「女も子供も弱くなんかない」とジャックに言い放ちます。幼い息子を助けてくれたお礼に、村の女性はいつも身に着けていたネックレスをジャックにプレゼントします。
ドラマ『THIS IS US』シーズン3の第9話あらすじとネタバレ
過去。戦地に耐えられず麻薬に手を出したニックを自分の配下に置いたジャックは、弟との疎通に相変わらず手を焼いていましたが、2週間の期限は間近に迫っています。
しかし、体内から麻薬が切れて苛立つニックは、ジャックを殴ってしまいます。ジャックはそれでも堪え、自分達の任務は帰国し家に戻ることだとニックに言い聞かせます。
現在。ケヴィンは、ホテルの従業員にジャックが駐屯していた場所へ連れて行ってもらうことになります。
昔父親が歩いた大地を踏み、面影を探すケヴィン。
地元の歴史に詳しい人を訪ねたケヴィンは、昼食を振舞われ温かいもてなしを受けます。彼の父親は元ベトナム兵だと聞かされたケヴィンは、お互いの父親が闘った相手だったことを知ります。
しかし、彼は、自分の父親が戦時中も子供達には大丈夫だと振舞っていた思い出を明かし、ジャックが戦争を子供達に隠した様に、2人は人間として同じだったはずだと語ります。
父親が敵同士であっても、こうしてお互い健康で食事を分け合えるのは、ケヴィンが探していた答えではなくても、より大切な何かかもしれないと彼は述べます。
『THIS IS US』シーズン3第7話から9話の見どころ
ソール・サバイバー・ポリシー
1955年から1975年と20年続いたベトナム戦争は、アメリカが唯一敗戦した戦争である為、今でも国内では繊細なトピックです。
そんな中、ジャックの視点でベトナム戦争を自ら顧みるように取り上げた『THIS IS US』は視聴率の高さから考えれば、勇気があると言えます。
劇中、ジャックがニックを自分の駐屯地へ連れて行きたいと上申した際、兄妹一緒に同じ隊へ所属させることは規定違反だと却下される場面があります。
これは、ソール・サバイバー・ポリシー(Sole Survivor Policy)というアメリカ軍に実在するルール。
第二次世界大戦中に5人兄妹が乗った戦艦が沈没し全員戦士した後に、米軍が導入した方針です。
現在は、平時と有事では異なるものの、兄弟を一緒に同じ隊へ配置しないというのが軍全体で共通する不文律。映画『プライベート・ライアン』(1998)でもソール・サバイバー・ポリシーが物語の骨格になっています。
感謝祭
6つの感謝祭と題された第8話。北米では、七面鳥を焼いて感謝祭をお祝いします。
日本ではお正月に親戚が集まり新年の挨拶をするように、北米では感謝祭に家族が集う行事。劇中で、完璧主義者のランダルはクランベリーソースを一から作るレシピを残しています。
それに対し、トビーは「缶詰じゃないの!?」とあるように、多くの家庭では時短の缶詰を利用。何と言っても七面鳥を焼くだけではなく、詰め物やデザートのパイやケーキも準備するのが慣例なので、料理する人にとっては大変な1日です。
家族や親戚で分け合う感謝祭の料理とその時間は特別で、おせちの入った重箱を皆で取り分けて食べるのと同じです。
ミゲルがピアソン家へ、そしてウィリアムがジェシーを感謝祭のホームパーティへ招待する場面が第8話で描かれています。
その2つの感謝祭、デジャと母親のテキストメッセージでお祝いする感謝祭、ミゲルの家族とレベッカが過ごす感謝祭、そして最後現在のピアソン家がランダルの家で祝う感謝祭、計6つの祝日を、時空を超えてオムニバス形式で温かく描かれています。
「レベッカは俺の妻だ。敬意を示せ!」ビシッと決めたミゲル!男気が光るエピソードでした。
『THIS IS US』の登場人物と視聴者の身近な距離感
誰もが誰かの息子・娘であり、夫・妻、もしくは父親・母親と複数の役割を担っている人も居ます。それぞれが別の性質を持ちますが、世代を超えて経験することはそれ程違いが無く共感できるものです。
クリエイターのダン・フォーゲルマンは、人の人生は映画のようだと表現し、両親の馴れ初めやそこへ至る迄の出来事へ繋がる鍵となった瞬間に壮観さがあると語ります。
そして、本作のキャストは、様々な年齢層の人から自分の身に起きたストーリーだとアプローチがあったことをインタビューで話しています。
ランダル・ピアソンを演じエミー賞主演男優賞とゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞したスターリング・K・ブラウンは、空港で一般女性から話し掛けられたエピソードをインタビューで明かしています。
第9話でランダルの長女・テスが男の子ではなく女の子が好きだと告白する場面。
ランダルとベスの対応には人として品があったとその一般女性は言い、自分の娘がカミングアウトした時に同じような対応ができなかったが、今後自分もそう変わるつもりだと話したそうです。
ブラウンは、より良い人間であろうと視聴者が努力したいと思って貰えるドラマなら、それ以上のものは存在しないと感無量の表情を見せます。
観る人それぞれの立場で自らを投影できる『THIS IS US』の登場人物たちは、皆普通の人達であることが本作を視聴率ナンバーワンのドラマにしている理由の1つかもしれません。
まとめ
少し落ち着きを見せたトビーに安堵する間も無く、ジャックが生前家族に死んだと話していた弟・ニック生存の可能性を示唆する展開。おしどり夫婦のランダルとベスの未来も何やら不透明な雰囲気です。
シーズン3も中盤になり急展開を見せる『THIS IS US』。ケヴィンとゾーイは今後も上手くやっていくのか?
ランダルは選挙戦続行?ケイティに無事出産して欲しい!
次回のコラム『海外ドラマ絞りたて』第9回は、第10話から12話までをご紹介します。