Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/10/12
Update

映画『ザ・ヴィジル 夜伽』あらすじと感想考察。オカルト最新作は正統派ホラーであってもシッチェス2020セレクションだけあって古さはない!|SF恐怖映画という名の観覧車124

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile124

呪いによって怪異が発生し、お祓いによって怪異から救われる。

かつてより「ホラー」と言うジャンルと「宗教」は密接なものにありました。

それゆえに宗教の知識はホラー映画を鑑賞する上でこの上ないスパイスであり、歴史の勉強にも繋がることになります。

今回は「シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2020開催記念特集」第3弾として歴史的事実とホラーを組み合わせた異色の映画『ザ・ヴィジル 夜伽』(2020)の魅力をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『ザ・ヴィジル 夜伽』の作品情報


(C)2019 The Vigil Movie, LLC. All RIGHTS RESERVED.

【原題】
The Vigil

【公開】
2020年(アメリカ映画)

【監督】
キース・トーマス

【キャスト】
デイブ・デイビス、メナッシュ・ラスティグ、マルキー・ゴールドマン、フレッド・メラメッド、リン・コーエン

『ザ・ヴィジル 夜伽』のあらすじ

かつては熱心な宗教家だったものの、ニューヨークの暮らしに馴染み宗教観を失った青年ヤコブ(デイブ・デイビス)。

ある日、就労しておらず家賃の支払いにすら困窮するヤコブはユダヤ教の「超正統派」に所属するレブ(メナッシュ・ラスティグ)から、死者の傍らで夜間を過ごす「夜伽」の付添人になって欲しいと依頼されます。

レブから高額な報酬を提示されたヤコブはお金目的でその依頼を引き受けますが、やがて「夜伽」の最中に様々な異変が起き始め…。

スポンサーリンク

ユダヤ教とユダヤ人の歴史


(C)2019 The Vigil Movie, LLC. All RIGHTS RESERVED.

キース・トーマス監督による長編映画初監督作品である本作『ザ・ヴィジル 夜伽』は、「ユダヤ教」の知識が重要となるオカルトホラーの要素が強い作品です。

もちろん本作は宗教や歴史の知識がなくとも問題なく楽しめる作品であり、作品内でも特に重要になる言葉にはしっかりと説明がありますが、中には詳しくは説明されない要素も存在します。

「ユダヤ教」とユダヤ教を信仰する家族の元に生まれた「ユダヤ人」が恐れるものや、ユダヤ人がユダヤ人と言うだけで受けることになってしまったあまりにも厳しい仕打ち。

次項では、映画内に本作を鑑賞する上で最低限頭に入れて起きたい2つの事柄を説明させていただきます。

「ホロコースト」

第2次世界大戦下、ナチス党が率いたナチス・ドイツは反ユダヤ主義が国策となり「ヨーロッパにおけるユダヤ人問題の最終的解決」と称したユダヤ人の虐殺が始まります。

収容所における過剰労働による過労死やガスや人体実験での直接的な殺害など国家を挙げての殺戮が繰り返され、ナチス・ドイツが崩壊しユダヤ人が解放されるまでのおよそ10年間で推定600万人以上が殺害されることとなります。

この惨劇は「ホロコースト」と呼ばれ、人類の業として避けて通ることの出来ない歴史知識であり、映画を多く鑑賞する人は間違いなく知っているはずです。

「ホロコースト」では想像を絶する残虐な殺戮が起き、中にはユダヤ人にユダヤ人を殺害させると言う非人道的な殺害方法も存在しました。

ユダヤ教において「悪霊」とされる存在「マジキム」。

映画『ザ・ヴィジル 夜伽』には悪霊「マジキム」に憑りつかれた人間が登場します。

彼はなぜ「マジキム」に憑りつかれてしまったのか、そこには「ホロコースト」の存在が関わり、ユダヤ人の中では終わることのない悪夢であることを痛感させられます。

悪夢と現実が入り乱れる正統派ホラー


(C)2019 The Vigil Movie, LLC. All RIGHTS RESERVED.

翌朝まで遺体の近くで添い遂げる「夜伽」を最中に、ヤコブの周りで不自然なことが多く発生していきます。

それらの怪異は現実と大きく乖離しており、ヤコブ自身それが現実ではないと確信していきます。

どこまでが現実に起こっていることで、どこからがヤコブの見ている悪夢なのか。

驚かされる演出とじわじわと恐怖が蝕む感覚の両方を楽しむことが出来ます。

古臭さを感じさせない工夫

「呪い」によって主人公の周囲で怪異が発生すると言う「オカルトホラー」の歴史は長く、時に古臭さを感じてしまうこともあります。

本作は今や利用していない人はいないほどの世界普及率を誇る「スマートフォン」を巧みに作品に取り入れることで、古臭さを感じない恐怖を生み出しています。

声のみの繋がりを容易に作り出すことの出来る「電話」が進化し、今では映像での通話が一般的になっています。

現代的な「スマートフォン」と「宗教ホラー」、一見噛み合わせの悪い2つの要素が見事にマッチしている恐怖シーンは必見です。

複雑に絡み合う過去の罪と待ち受ける罰

金銭目的で夜伽の依頼を引き受けることとなったヤコブは、夜の間故人を見守らなければいけない夜伽の最中に居眠りや知人とメッセージでやり取りをするなど真面目に取り組もうとしません。

しかし、怪異に襲われ神経をすり減らすうちに故人の過去だけでなく、自分自身が過去に犯した「罪」にも向き合っていくことになります。

消せない過去の記憶と待ち受ける罰、全てを受け入れたときヤコブの心はどう変わっていくのか。

「オカルトホラー」と言うジャンルであり、決して忘れることの出来ない「ホロコースト」を題材にしながらも、夜が明けたときの爽やかさを感じることの出来る鑑賞後感がオススメの作品です。

スポンサーリンク

まとめ

ヤコブにとって人生感の変わる一夜の物語を描いたオカルトホラー映画『ザ・ヴィジル 夜伽』。

本作は「シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2020」において劇場で公開予定。

「シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2020」はヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、シネマスコーレ(名古屋)の3劇場で開催予定。

日程をご確認の上、ぜひ会場に足を運んでみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile125では、引き続き「シッチェス映画祭 ファンタスティック・セレクション2020開催記念特集」として、夫婦が殺人鬼や狂犬に襲われ殺されるタイムリープに巻き込まれてしまう様子を描いたSFホラー映画『ココディ・ココダ』(2020)をご紹介させていただきます。

10月21日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

ヘルレイザー|ネタバレ結末感想とあらすじの考察解説。ラストでピンヘッドら魔導士が“与えるもの”とは|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー50

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第50回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

映画『夜明け前のうた』感想評価と内容解説。“私宅監置”で消された沖縄の障害者の“実態と理由”を追うドキュメンタリー|映画という星空を知るひとよ57

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第57回 映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』は、かつて日本に存在した精神障害者を隔離する制度「私宅監置」の実態に迫ったドキュメンタリーです。 「私宅監 …

連載コラム

映画『日日是好日』感想と評価レビュー。茶道を通した心の成長と日本の四季|映画と美流百科15

連載コラム「映画と美流百科」第15回 こんにちは、篠原です。 今回は和の文化に目を向け、茶道の世界を描いた『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』を取り上げます。 エッセイスト森下典子が、24年に渡って …

連載コラム

『仮面ライダーW』感想と考察。登場人物や設定で石ノ森章太郎と東映作品へのリスペクト満載|邦画特撮大全62

連載コラム「邦画特撮大全」第62章 先日放送から10周年をむかえた『仮面ライダーW』(2009~2010)。仮面ライダーシリーズの中でもいまだに高い人気を誇る作品で、現在は続編である漫画『風都探偵』が …

連載コラム

映画『ラストサンライズ』ネタバレあらすじと感想。ディザスターパニックを中国SFチームがリアルに科学考証|未体験ゾーンの映画たち2020見破録43

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第43回 「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第43回で紹介するのは、中国発の本格的SF映画『ラスト・サンライズ』。 日本でも話題の、リュウ・ギ …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学