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『アナザー・プレイス』あらすじ感想と評価考察。ドキュメンタリーは“難民になりたい者はいない”という不可欠な想像力を訴える|いま届けたい難民映画祭2025vol.3

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第3回

難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。

今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。

2025年11月6日(木)〜12月7日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。

今回紹介するのは、イラン・イラク戦争により祖国から米国に移住したJhizet Panosian監督が、戦争や迫害を逃れてヨーロッパにたどり着いた3人の難民の姿を追ったドキュメンタリー『アナザー・プレイス』(2024)です。

コンゴ、シリア、アフガニスタン……様々な理由で故郷を逃れた3人は「新たな土地」に辿り着いても、孤独や精神的苦痛、人種差別に直面します。葛藤しながらも自らの「居場所」を追い求める3人の姿と共に、監督自身の記憶も紡がれていきます。

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら

映画『アナザー・プレイス』の作品情報


(C)Courtesy of Del Playa Films

【日本上映】
2025年(アメリカ映画)

【原題】
Another Place

【監督】
Jhizet Panosian

【作品概要】
イラン・イラク戦争で祖国を逃れ米国に移住したという経験を持つ、自らもかつては難民であったJhizet Panosian監督が、ヨーロッパに逃れた3人の若者を追ったドキュメンタリー。

コンゴから逃れたルイナス、アフガニスタンから逃れたザハラ、そしてシリアから逃れたハメド。「新たな土地」で孤独や精神的不安、人種差別に直面しながらも、3人は自分の「居場所」を問い続けます。

映画『アナザー・プレイス』のあらすじ


(C)Courtesy of Del Playa Films

戦争や迫害を逃れてヨーロッパにたどり着いた3人の難民、ルイナス、ザハラ、ハメド。

コンゴ、シリア、アフガニスタン……それぞれの国から逃れてきた3人は、新しい国で孤独や精神的苦痛、人種差別に直面します。

それでも「新たな土地」で自分の「居場所」を追い求め、力強く生きている3人の姿に、自らもかつて難民であった監督自身の記憶が紡がれていきます。

Jhizet Panosian監督は、自身も子供の頃にイラン・イラク戦争で祖国を逃れ、米国に渡りました。全員で逃れることはできず、父と兄は遅れて国を逃れました。

家族が再び共に暮らすまで不安な日々を過ごしたことや、新たな地で苦労したこと、監督自身の体験と3人の物語が重なり、自分自身のアイデンティティを保ちながらも新たな地で生きていく姿を映し出します。

映画『アナザー・プレイス』の感想と評価


(C)Courtesy of Del Playa Films

ヨーロッパに流れ、難民となった3人の若者を追うドキュメンタリー『アナザー・プレイス』。

誰しもが好きで故郷を逃れて、難民になることを選ぶでしょうか。

コンゴから逃れたルイナス、アフガニスタンから逃れたザハラ、そしてシリアから逃れたハメド……それぞれ複雑な思いを抱え、危険な旅を乗り越えてヨーロッパに辿り着いています。

そんな彼らが直面するのは、故郷に残した家族への思い、異なる文化圏で生活をするということ、いつになったら安住の地を見つけられるのか……。

ハメドはシリア人のアイデンティティを捨て、第三国の国民になることを求められるのに、戸惑いや怒りを抱いています。ルイナスは故郷に残した家族と連絡が取れず、赤十字に登録し行方を探しています。ザハラは引越しを繰り返し、仕事や学校にも行けない不安定な生活に不安を感じています。

孤独や不安から精神的に不安定になる人も。そんな彼らを支える人がいる一方で、支援が行き届いていない現状も映し出されていきます。

彼らの力になりたいと、Jhizet Panosian監督は難民キャンプで支援活動をするとともにキャンプで出会った3人の人生をカメラで追い続けました。

そんな監督の行動の背景には、自身もかつては難民であったという経験がありました。

イランで生まれたJhizet Panosian監督はアルメニア人で、イスラム教徒ではない少数派です。イラン・イラク戦争で、イスラム教徒だけでなく、全女性にヒジャーブをつけることを強要されるようになり、危険を感じた両親はまず母親と娘2人をイランから逃れさせました。

監督自身は幼く、故郷を離れることの意味を当時はわかっていなかったと言います。それでも英語ができない中、娘を守ろうと必死になっていた母の姿や慣れない土地での経験など、監督自身の物語が3人の難民の姿が重なっていきます。

助けを求めて祖国を逃れてきた人々は、新たな地に辿り着いたら終わりではないのです。その後も支援を必要としていること、複雑なアイデンティティの間で揺れ続けていることを改めて感じさせられます。

まとめ


(C)Courtesy of Del Playa Films

自身もイラン・イラク戦争で祖国を逃れた経験を持つJhizet Panosian監督が、祖国を逃れヨーロッパに渡った3人の難民の若者を映し出したドキュメンタリー『アナザー・プレイス』。

残念なことに、やってきた国に適応すべきだという風潮が強くなってきています。

そんな今だからこそ、「好きで命懸けで故郷を逃れ、難民となる人はいない」と想像力を働かせてみるべきなのではないでしょうか。

第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。

難民映画祭詳細はHPにて

【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら



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