連載コラム「最強アメコミ番付評」第34回戦
こんにちは、野洲川亮です。
今回は全世界で特大ヒットを記録し、世界累計興行収入歴代1位の『アバター』超え間近に迫った『アベンジャーズ/エンドゲーム』、日本での上映は6月27日で終了となる本作をシリーズ過去3作から考察していきます。
『アベンジャーズ』(2012)、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)と続いてきた、スーパヒーロー大集結シリーズそれぞれの“アッセンブル”シーンから、『アベンジャーズ/エンドゲーム』へと受け継がれていくMCUの歴史を辿っていきます。
CONTENTS
成し遂げた初のヒーロー大集結『アベンジャーズ』(2012)
シリーズ第1作、MCU全体としては6作目となる『アベンジャーズ』では、アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)、ハルク(マーク・ラファロ)、ソー(クリス・ヘムズワース)、キャプテン・アメリカ(クリス・エバンス)ら、単独主演作が公開されていたキャラクターに加えて、それらのシリーズに顔を出していたホークアイ(ジェレミー・レナー)、ブラックウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)も登場します。
ただし、ハルクだけは『インクレディブル・ハルク』(2008)で同役を演じたエドワード・ノートンが製作のトラブルを理由に降板、マーク・ラファロにキャストが変更となりました。
MCUの企画発表当初は「アメコミのスーパーヒーローが集結する映画?」と、同シリーズは映画業界、映画ファンから懐疑的な見方をされていました。
しかし、『アイアンマン』(2008)を始め、シリーズ作品がヒット、評価されていく過程で、懐疑的な視線は徐々に期待の眼差しへと変化していきます。
そして満を持して公開された『アベンジャーズ』では、上記6人のスーパーヒーローたちが反目し合いながらも、ソーの弟ロキ(トム・ヒドルストン)が率いるエイリアンたちを相手にする中で、少しずつ仲間としての絆を作りあげ、最終的にNYでの決戦でシリーズ史上初の“アッセンブル”をすることとなります。
アベンジャーズ6人の周りをカメラがグルッと回っていくこのシーンは、シリーズの象徴と言っても差し支えないもので、『エンドゲーム』劇中でもNYへのタイムスリップで、同じシーンが使われています。
『エンドゲーム』では、このNY決戦の裏側で過去の自分たちを時に自虐的に垣間見ながら、インフィニティストーンを集めていく「タイム泥棒作戦」が展開されていきました。
当時とのビジュアルやキャラクターの違いは歴然としたものがありますが、中でもクローズアップされていたハルクの内面の変化は、キャストの変更という苦難も含めて、“MCUの歴史の深さ”を物語るものだと言えるでしょう。
日本よ、これが映画だ。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)
公開前から作品の出来、不出来ではなく、鮮烈、かつ挑発的とも受け取れるようなキャッチコピー「日本よ、これが映画だ。」が大きな話題と論争を呼び起こしたシリーズ第2作(MCUシリーズ第11作)。
敵となるウルトロンは、トニー・スタークことアイアンマンが平和維持のために自ら作りだした人工知能でした。
アイアンマンがウルトロンを作ったのは、『アベンジャーズ』でのエイリアンとの戦闘での恐怖が起因であり、ウルトロンを生みだした失敗が後に『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)での、ヒーローたちの内紛へと繋がっていくなど、シリーズものらしい前後の繋がりがふんだんに盛り込まれた作品でした。
また、宇宙からの侵略者の脅威を語るアイアンマンが「endgame」という言葉を使っていることからも、“アイアンマンが抱いたトラウマ”を軸に、製作陣がその後のシリーズの展開を明確にイメージしていたことが伝わり、『エンドゲーム』のラストが必然的なものであったとも感じさせます。
この作品での“アッセンブル”シーンは細かく分ければ3回あり、オープニングでヒドラの秘密基地へ攻撃を仕掛けるアベンジャーズたち、クライマックスでヴィジョン(ポール・ベタニー)、スカーレットウィッチ(エリザベス・オルセン)、クイックシルバー(アーロン・テイラー=ジョンソン)を加えウルトロン軍団を迎え撃つシーン、そしてラストで新たなメンバーを迎えたアベンジャーズにキャプテン・アメリカが呼びかけるシーンです。
特にラストでは、「Avengers assemble!」と言いかけたキャプテン・アメリカの台詞が途中で切られてエンドロールにいくという編集があり、「assemble!」というセリフをシリーズの最後の最後までとっておこうという思いが伝わりました。
ちなみにこの作品では、キャプテン・アメリカがソーのハンマーを微かに動かすという、『エンドゲーム』クライマックスでキャプテン・アメリカがハンマーを手にして戦う展開への伏線も描かれていて、この点からも最終章へ向けた準備がこの時点で綿密に仕掛けられていたことが分かります。
したいのに出来ないアッセンブル『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)
『エンドゲーム』の直接の前編にあたる『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、シリーズ第3作にしてMCUシリーズ第19作、そして『ブラックパンサー』(2018)と共に10周年を飾る作品となりました。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』での内紛により、分裂状態にあったアベンジャーズの前に最強のサノスが現れ、無限の力を秘める6つのインフィニティストーンを巡る争いが宇宙各地で展開されます。
それまでのシリーズでは、他のアベンジャーズたちと接触の無かったガーディアンズ・オブ・ギャラクシーも加わり、本編のほとんどがバトルシーンで構成される、シリーズでも屈指のハイテンションな作品に仕上がっています。
『アベンジャーズ』で6人だったヒーローたちは、この作品時点では数十人を超えており、それまで以上に各ヒーローの見せ場を作れるのか?という疑念が高まる中で、ルッソ兄弟監督は宇宙各地で小規模な戦闘を連続して見せつつ、クライマックスではヒーローたちを2か所に結集させるという手法で、各ヒーローの見せ場を確保しながら、バトル尽くしの作品を飽きさせずに見せることに成功しました。
前述した通り、アイアンマンとキャプテンアメリカの不和により、この作品では全ヒーローの“アッセンブル”シーンは見られませんでした。
そして、その団結の無さがそのままサノスに負ける理由に直結しているという、作劇上の必然が巧みに織り込まれているのも見事で、ここで抱いたモヤモヤとした感情があればこそ、『エンドゲーム』での“アッセンブル”がより強烈に心に響くものとなっているのです。
とは言っても、地球ワカンダでのキャプテンアメリカやブラックパンサーらを主としたバトル、そして宇宙タイタン星でのアイアンマン、スパイダーマンらのバトルそれぞれは、“半アッセンブル”だとしても、増加してきたヒーローたちの共演にはやはり心躍るものがあり、異例のエンディングも含めて『エンドゲーム』の予習ということを抜きにしても、必見の作品であるのです。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
さて、今回で最強アメコミ番付評の連載はしばらくお休みとさせて頂きます。
また、皆様とお会いできる日まで、、、お楽しみに!