『 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 – 』が2019年9月6日に公開されました。
テレビシリーズなのに作画が素晴らしすぎる、と評判になった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。2020年に公開予定の劇場版よりひと足先に制作されたのが、この「外伝」です。
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映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 – 』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本映画)
【監督】
藤田春香
【キャスト】
石川由依、寿美菜子、悠木碧、内山昂輝、子安武人、遠藤綾、戸松遥、茅原実里
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の世界をおさらい
圧倒的な作画力で知られるアニメ制作会社、京都アニメーション。その京アニが2009年から実施している「京都アニメーション大賞」は、小説・マンガ・シナリオの3部門の作品を募集しています。
過去開催された10回のうち、該当作品なしの年もあり、実は大賞を受賞したのはこの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』1作のみ、という厳しさなのです。
第5回の大賞作品となったこの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、暁佳奈原作のライトノベル。
主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンの職業は自動手記人形です。その仕事は手紙の代筆ですが、彼女の前職は兵士でした。
その出自は謎ですが、とにかく戦闘能力が高く、上官であるギルベルト・ブーゲンビリア陸軍少佐と組んで大戦に参加していました。
戦争で両腕を失ったため義手を装着し、現在はギルベルトの親友クラウディア・ホッジンズの営むC.H郵便社で働いています。
自動手記人形(ドール)といっても彼女は生身の人間ですが、幼い頃から感情が乏しく、他人の気持ちを汲み取って手紙をつくる仕事には向いていないと思われました。
でも、さまざまな人と出会い、それぞれの思いを知っていくうちに、人間の感情を理解し、寄り添えるドールになっていったのです。
そして、戦場でギルベルトから言われた「愛してる」の意味を今も探し続けています。
映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 – 』のあらすじとネタバレ
ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、特別な依頼により良家の子女が通う女学校へやってきました。ヨーク家の娘イザベラの家庭教師をするためです。
自分のことを「ぼく」と呼ぶイザベラは、髪はボサボサ、マナーも知らない、学校では浮いた存在でした。3ヵ月後に行われるデビュタントの舞踏会までに、ヴァイオレットはあらゆることを教えなければなりません。
容姿端麗で騎士のような所作のヴァイオレットは「騎士姫様」と呼ばれ、注目の的。自分がみじめに感じる、とイザベラはヴァイオレットを拒絶します。
しかし体の弱いイザベラは、夜通し看病してくれたヴァイオレットの献身に感謝し、いつしか心を開き始めていました。いっしょにお風呂に入ったり、同じベッドで眠るようになったふたり。
楽しい時間は過ぎ、デビュタントの日。美しい白いドレスに身を包んだイザベラをエスコートするのは、男装のヴァイオレット。ふたりは踊り、イザベラは感謝の気持ちを伝えます。
そして、最後に手紙を書いてほしいと頼むのでした。
イザベラはかつての名をエイミーと言い、貧しいひとり暮らしをしていました。ある日、捨て子の女の子テイラーを連れ帰り、姉妹として暮らし始めます。
お互いを思い合いながら、貧しい生活に不安を感じるエイミー。すると突然名門ヨーク家の使いが現われ、エイミーを跡取りにするため連れて行くというのです。実はエイミーの母は正妻ではなかったものの、彼女にはヨーク家の血が流れていたのでした。
テイラーには会えなくなるが、きちんと面倒をみると言われ、断腸の思いでエイミーはその申し出を受け入れました。すべてはテイラーのために。
ヴァイオレットは手紙を預かり、また会えるか心配するイザベラにこう言って去っていきます。
「“エイミー”様、私は自動手記人形です。どこにでもかけつけます」
ひとりになったイザベラに話しかけてきたのは、いつも取巻きに囲まれているミス・ランカスターでした。彼女は、イザベラとずっと友だちになりたいと思っていたと言います。
ヴァイオレットのおかげでイザベラは変わり、新たな友だちができたのです。
映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 – 』の感想と評価
期待を超えてくる作画・動画の素晴らしさ
京都アニメーションは「水」の描き方が美しいと定評があります。この作品ではそんなにたくさんの水のシーンはありませんが、冒頭の船の舳先から分かれる水を見て、一瞬たりとも手を抜かないその完璧な仕事ぶりに思わずうなりそうになりました。
後半の山あいの湖のシーンも、木々が映り込んだその湖面は神秘的な美しさをたたえていました。さすが「水」の京アニ。
もちろんそれ以外でも、イザベラたちが通う女学校の建物外観や内装など、細かいディテールまで緻密に描き込まれていますし、舞踏会が行われる広間のシャンデリアなども圧巻の美しさです。
そしてその舞踏会のシーン。ふたりで踊るその動きは非常になめらかで、映画のパンフレットにもそのシーンは見開きで紹介されています。
絵画のような美しさと映画的な構図
今回、監督をつとめたのは藤田春香。単独で監督をするのはこれが初めてですが、それを感じさせない大胆でこなれた演出が印象的でした。
まず、もともとはOVA2本という企画だったという本作。進めていくうちに、イザベラとテイラーというサブ主人公が途中で入れ替わる1本の映画とするようになったそうです。
そして、こだわったのは画面サイズ。劇場のスクリーンに合わせたという2.31:1というサイズのおかげで、大人数の舞踏会のシーンや、バイクで走る夕暮れの風景などが横幅いっぱいに広がり、通常よりも開放感がありました。
また、キャラクターの感情が昂ぶってくる後半に使われる顔のアップや、空をバックにした下からあおるような構図は非常に映画的で、観る者の感情にまで訴えかけるような演出です。
もちろんそれは、美しく描かれた背景あってこそ。朝露に濡れた花、昼間の木漏れ日、夜のモノトーンの海…。絵画のように美しい風景にはため息がでるばかりです。
待ちわびたファンの思い
公開初日、朝一番の回の上映前。ある劇場ではすでに売店に行列ができていました。
上映後、再び売店には『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のグッズを手にした多くの人が並んでいました。設定資料集は売り切れてしまい、グッズとパンフを買い求める人の姿も。
この映画の公開を楽しみにしつつ静かに待っていたファンの人たちの、作品や京アニに対する思いがあふれたような光景でした。
まとめ
本編鑑賞中はストーリーに引き込まれてしまい、エイミーの手紙のシーンではいつの間にか涙ぐんでいました。
そしてエンドクレジットになった瞬間、感情が体の中から突き上がるかのように嗚咽がこみ上げてきました。
通常、京都アニメーションの作品では、エンドロールに名前を載せるのは1年以上の経験者だけだということですが、この作品では監督たっての希望で、制作に参加したすべてのスタッフの名前をクレジットすることにしたそうです。
この作品とともに、すべてのスタッフの生きた証がここにあります。
映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 – 』は2019年9月6日より3週間限定上映です。