映画『あの夏のルカ』は2021年6月18日よりディズニー+で配信。
『リメンバー・ミー』や『ソウルフルワールド』のディズニー&ピクサーによる長編アニメーション『あの夏のルカ』が2021年6月18日より、ディズニー+で配信開始されました。
イタリアの港町ポルトロッソを舞台に、シーモンスターの少年ルカが人間界でひと夏をすごす、ファンタジーアドベンチャーです。
ルカの声は『ワンダー 君は太陽』(2018)、『グッド・ボーイズ』(2020)などのジェイコブ・トレンブレイが、日本語吹き替え版ではミュージカルの舞台でも活躍中の阿部カノンが演じています。
映画『あの夏のルカ』のあらすじの紹介や、作品の考察をしていきます。
CONTENTS
映画『あの夏のルカ』の作品情報
【配信】
2021年(アメリカ映画)
【監督】
エンリコ・カサローザ
【キャスト】
ジェイコブ・トレンブレイ、ジャック・ディラン・グレイザー、エマ・バーマン、サベリオ・ライモンド、マーヤ・ルドルフ、マルコ・バリチェリ、ジム・ガフィガン、ピーター・ソーン、マリナ・マッシローニ、サンディ・マーティン、ジャコモ・ジャンニオッティ、サシャ・バロン・コーエン、エンリコ・カサローザ、ジム・ピリ
【日本語吹き替え版声優キャスト】
阿部カノン、池田優斗、福島香々、高乃麗、乃村健次、磯部勉、浪川大輔、落合福嗣
【作品概要】
監督のエンリコ・カサローザは、ピクサーの短編『月と少年』を手掛けていて今回が初の長編映画となっています。
主人公ルカの声を務めたのは、『ルーム』(2016)や『ワンダー 君は太陽』(2018)、『グッド・ボーイズ』(2020)など出演作が絶えないジェイコブ・トレンブレイ。
親友のアルベルトの声を務めたのは『IT/それが見えたら、終わり。』(2017)、『シャザム!』(2019)などに出演しているジャック・ディラン・クレイザーです。
ルカの母親ダニエラにマーヤ・ルドルフ、ウーゴおじさん役にサシャ・バロン・コーエンなど豪華俳優陣が声優を務めています。
映画『あの夏のルカ』のあらすじとネタバレ
海の中で暮らすシーモンスターのルカは魚の番をして暮らしています。人間はシーモンスターを恐れ、シーモンスターは人間たちを恐れながら、それぞれ生活していました。
ルカは人間の世界の落とし物を見つけて、陸上に興味を持ち始めていましたが、母親から陸に上がることは危険だと強く止められていたのでした。
海中で人間たちの物を集めて、陸の隠れ家で暮らしていたシーモンスターのアルベルトに出会います。2人はベスパ(バイク)のポスターを見てからすっかり夢中になります。
いつか人間の世界でベスパに乗りたいと、集めてきたガラクタを作って毎日崖を下って遊ぶ彼ら。
ある日、陸に上がっていたことがルカの両親にバレてしまいました。心配のあまり、両親は夏の間ルカを深海で暮らすウーゴ叔父さんの家に預けることに決めます。
しかし、不気味なウーゴ叔父さんの家に行きたくないルカは、家を飛び出してアルベルトのところへと向かいました。
ふたりで人間の街に行って、ベスパを手に入れれば世界中どこにでも行けると意気込んだ彼らは、海を泳いで人間の街に向かったのでした。
街に着くと、憧れのベスパに乗った意地悪な男エルコレに出会います。子分や街の人たちに横柄な態度の嫌味な男です。
ルカは偶然エルコレのベスパにボールを当ててしまい、目をつけられてしまいました。いびられているところに魚売りの少女ジュリアが現れます。
ジュリアは、毎年行われるポルトルッソカップでエルコレに負けて悔しい思いをしていました。エルコレは年齢制限をオーバーしているのに子分たちを利用しながら5年連続で勝ち続けているのでした。
大会の懸賞金でベスパを買えると知ったルカとアルベルトは歓喜します。
ルカとアルベルトはジュリアと組んで、大会に出ることにします。大会出場費用を工面するために、ジュリアはルカとアルベルトを自分の家に連れて行きます。
ジュリアの父親は漁師でシーモンスターをいつか捉えると息まいている屈強な男性でした。行くあての無いルカとアルベルトは、ジュリアの家に泊めてもらうことになります。
翌日は、漁の手伝いをして魚の習性を知っているアルベルトの助言のおかげで大量に魚が獲れました。大会の費用を手に入れたジュリアは、ルカとアルベルトを連れて意気揚々と申込に向かいます。
ポルトルッソカップはトライアスロン形式で、水泳の後パスタ食べ競争、そして自転車で崖を登って降りて来るコースです。
自転車はルカが、水泳はジュリア、パスタ食べ競争をアルベルトが担当することになり、猛特訓の日々がはじまりました。嫌味なエルコレに負けないためにも3人は必死に練習に励みます。
ある夜、アルベルトが漁の手伝いに行っている間に、ルカはジュリアから学校で学んでいる天文学の話を聞きます。街の外にも広い世界が広がっていて、宇宙が存在する。そして太陽系や銀河系、が存在しているという話に大興奮なルカ。
もっと知りたがるルカに、ジュリアは天文学の本をプレゼントしたのでした。
漁から帰ってきたアルベルトはルカを夜の街に連れ出します。ベスパを眺めてふたりで街を出る話に心を躍らせるふたり。ルカはジュリアが通っている学校に行こうと提案しますが、アルベルトは乗り気ではありませんでした。
そんなの時、エルコレと子分たちに遭遇します。エルコレに殴られるアルベルトを助けるためにルカは銛で脅します。どうにか逃げ出した2人でした。
一方、ルカの両親もルカを探しに街にやってきていましたが、人間の姿をしたルカを見つけられずに悪戦苦闘。
ルカとアルベルト、ジュリアの3人は自転車の練習中、学校の話をするルカとジュリアにヤキモチを焼いたアルベルトは腹を立ててしまいます。口論の末、ムキになったアルベルトはルカと自転車に2人で乗り、崖を急降下してしまいます。
勢いで海に飛びこんだふたり。学校に行きたいルカと、ルカとふたりで遠くに行きたいアルベルトは言い争いになります。
追いついたジュリアに、アルベルトはシーモンスターの姿を見せます。怖がるジュリアを見て、シーモンスターは学校にはいけない。とルカを説得しようとしますが、アルベルトの姿を見たエルコレたちが銛を投げて捕まえようとやってきてしまいます。
とっさに、「シーモンスターだ!」とアルベルトを指さしたルカ。アルベルトはショックを受けて海に帰っていったのでした。
ジュリアはルカの正体にも気付き、この街はシーモンスターには危険すぎるから出て行ったほうがいいと伝えます。しかし、ルカは諦めきれませんでした。その夜、アルベルトの家に向かいます。
アルベルトの家の壁には数を刻んだしるしが無数にありました。アルベルトの父親は、実は出て行ってしまい彼は長い間ひとりで生活をしていたのです。それを聞いて、ルカはさらに大会に出る気持ちを強くしました。
映画『あの夏のルカ』の感想と評価
本作は、少年ルカがひと夏で夢と勇気を知る青春物語です。
幻想的で美しい海中の様子と、ルカが成長していく姿から清々しさを感じる爽やかな作品となっています。
勇気と夢に溢れた爽やかな青春物語
海の中の世界しか知らなかったルカはアルベルトと出会い、陸の世界を知ることになります。
人の姿になり、歩き方など人間界のルールを学ぶ彼の姿からは、新しい世界に飛び込む怖さや新鮮さを感じることができます。
ルカは、アルベルトと出会うことで新しい世界に飛び込む勇気を得て、人間のジュリアと出会うことで、自分の夢やアイデンティティに気付くことができました。
今居る世界に留まっていれば平和でいられますが、思い切って新しい世界に飛び込むことで未知の喜びや可能性を発見するのです。
これは、子どもだけでなく大人にも同じことが言えます。新しいことに挑戦することの素晴らしさをルカを通して感じることができる作品だといえるでしょう。
子どもはもちろんのこと、子ども時代を経験した大人の胸を打つ作品となっています。
ファンタジーの中に込められた異種共生のメッセージ
海の中の幻想的な映像は繊細で、想像力を掻き立てます。そして、陸に上がると実写とアニメーションを絶妙に融合させたリアリティのある映像がキャラクターたちや街を、生き生きと描いています。
やはり、『リメンバー・ミー』や『ソウルフルワールド』と同様、映像美は絶品なので、スクリーンで観られなかったことが残念でなりません。
また、ルカやその家族、深海魚のウーゴおじさんなど、キャラクターデザインの魅力は目を惹きます。
人間のキャラクターである、ジュリアやライバルのエルコレの生き生きとした姿もストーリーに彩りを添えているに違いありません。
そして、本作は一見ファンタジー作品ですが、「異種共生」がひとつのテーマとなっています。
ルカとアルベルトが街の人々の前でエルコレに責め立てられるシーンで、その問題に言及しています。
ルカとアルベルトを捕らえるべきだ、とまくしたてるエルコレに「君なんかこわくない。」とルカは言います。対してエルコレは「自分たちはみんなおまえが怖い。」と言うのです。
しかし、ジュリアの父親が「ふたりはルカとアルベルトだ」と説明して街の人々を説得します。
人間たちはシーモンスターの生態を知らなかったから恐れていたのです。知らないもの=怖い、怖いから排除しなければいけないという理論を振りかざすのは残念ながら自然な流れです。
そして、そのことが招く差別や迫害は現実の世界で数多く起きています。
少しでも多くの人が知らないものや人に対して知ろうとする努力をすることで、世界が平和で新たな絆に溢れたものになるのではないでしょうか。
作中では、あまりにもすんなりシーモンスターのふたりが街の人々に受け入れられるため、少し現実味がありませんでしたが、それこそ目指すべき理想像だといえるでしょう。
ファンタジーのときめきに溢れながら、現実社会の問題に言及する見ごたえのある作品となっています。
まとめ
広い空やそよぐ風、太陽の眩しさを初めて知るルカの視点は、人間の暮らしを新鮮な視点で描いています。普段見ている世界を改めてかけがえないものだと感じることができるのではないでしょうか。
水面や波のきらめきや緑の瑞々しい美しさは見事なので、海に出かけたくなるはずです。
日本版のエンドロールでは、suisのヨルシカのカバーによる井上陽水の名曲「少年時代」が収録されてます。
ノスタルジックな夏の雰囲気に最後まで浸ることができるので、ぜひ最後まで観てみてください。
ディズニー&ピクサーによる長編アニメーション『あの夏のルカ』は2021年6月18日より、ディズニー+で配信開始。