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【ネタバレ】ハイキュー映画:ゴミ捨て場の決戦|あらすじ感想と結末評価レビュー。2部・VS小さな巨人を前に描く烏野対音駒の《“もう一回”ができない試合》の行方

  • Writer :
  • 秋國まゆ

大人気アニメ『ハイキュー!!』の劇場版2部作・第1部!

大ヒットアニメ『ハイキュー!!』の第1~3期の監督を務めた満沖勧が脚本・監督を務めた、2024年製作のアニメ映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』。

強豪ひしめく春の高校バレー宮城県予選、春高初戦・2回戦と勝ち上がってきた烏野高校。次の対戦相手は、因縁のライバル校・音駒高校。

幾度となく練習試合を重ねても、公式の舞台での対決は一度もなかった両校の戦い。「ゴミ捨て場の決戦」がついに、約束の地で始まります

原作漫画でも屈指の人気エピソードを描く『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の作品情報


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

【公開】
2024年(日本映画)

【原作】
古舘春一

【脚本・監督】
満沖勧

【キャスト】
村瀬歩、石川界人、日野聡、入野自由、林勇、細谷佳正、岡本信彦、内山昂輝、斉藤壮馬、増田俊樹、名塚佳織、諸星すみれ、神谷浩史、江川央生、梶裕貴、中村悠一、立花慎之介、石井マーク、横田成吾、星野貴紀、澤田龍一、池田恭祐、渡辺拓海、中博史、福田信昭、山本兼平

【作品概要】
原作は、バレーボールに懸ける高校生たちの熱い青春ドラマを描いたスポーツ漫画の金字塔、古舘春一の漫画『ハイキュー!!』。

本作は、2014年から2020年12月まで放送されたテレビアニメ『ハイキュー!!』の続編となる、劇場版2部作の第1部。原作の中で最も人気のあるストーリーの一つである烏野高校vs音駒高校、通称「ゴミ捨て場の決戦」の初の公式戦対決を描いた作品です。

テレビアニメ『ハイキュー!!』の第1~3期の監督を務めた満沖勧が脚本・監督を担当。村瀬歩や石川界人らシリーズのレギュラーキャスト陣が熱演します。

映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』のあらすじとネタバレ


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

東京で開催された全日本バレーボール高等学校選手権大会(通称春高)、3日目。

男子3回戦・第1試合の対戦は、宮城代表の烏野高校と、東京代表の音駒高校。通称「ゴミ捨て場の決戦」が、約束の地でいよいよ始まります。

烏野と音駒の因縁は数十年前、当時中学生だった音駒バレー部・猫又育史監督と、同じく中学生だった烏野バレー部前監督・烏養一繋が出会ったことから始まりました。

違う中学だった2人は練習試合、地区予選と戦うたびに切磋琢磨していました。猫又の転校によって交流は途絶えかけたものの、高校生になった2人は全国大会で烏野高校と音駒高校として戦い、その縁を再びつなぎました。

大人になった2人はそれぞれの母校でコーチになり、頻繁に練習試合で交流していましたが、公式戦で戦うことは一度もありませんでした。そして2人とも引退し、両校の交流はこのまま途絶えていくかと思えました。

しかし、烏野バレー部顧問・武田一鉄が部員たちのためにと、一繋の孫・繋心をコーチに誘い、猫又に練習試合を申し込んだことで再び縁が復活。数十年を経て実現したこの試合は、猫又を含め多くの者が待ち望んでいたものでした。

昨日、優勝候補・稲荷崎高校を破った烏野。スターティングメンバーは、1番キャプテン・烏野の支柱ウイングスパイカーの3年・澤村大地、3番ウイングスパイカーにして烏野の主砲の3年・東峰旭、5番・今大会急成長の裏エースでありウイングスパイカーの2年・田中龍之介。

なおウイングスパイカー(WS)とは、左右両サイドからスパイクで攻撃するだけでなく、サーブレシーブなど守備でも貢献する、オールラウンドのプレーが求められるポジションです。

9番・注目度急上昇のセッター1年・影山飛雄、10番・164.2㎝と大会最少のミドルブロッカー1年・日向翔陽、11番・190.1㎝とチーム最長身のミドルブロッカー1年・月島蛍。

セッター(S)はスパイカーが打ちやすいボールをセットする役割をもつ司令塔。ミドルブロッカー(MB)は、相手からのスパイクに対して手をかざして壁となりブロックする守備の要です。

そして4番・守護神にしてムードメーカー、リベロ(L:後衛でレシーブのみを行う守備に特化したポジション)の2年・西谷夕です。

対する音駒のスターティングメンバーは、1番・キャプテンでオールラウンダーなMBの3年・黒尾鉄朗、2番・攻守に安定した実力、常に冷静なWSの3年・海信行。4番・2年生エースのWS、山本猛虎。5番Sの2年・弧爪研磨。

6番・変幻自在なコース打ちに注目、2年生WSの福永招平。11番・その体躯とセンスで音駒の主力となりつつあるMBの1年・灰羽リエーフ、3番・守りの音駒のエース、Lの3年・夜久衛輔です。

第1セット、先制点をあげたのは烏野。長いラリーの中、誰よりも早くサイドに走り出しジャンプした日向と、影山の目が合います。

それを目の当たりにした研磨は刹那、7月に行った連日の練習合宿の終盤、日向と練習試合のように「もう一回」ができない試合をやろうと約束したことを思い出します。

直後、影山から放たれた素早いトスが向かうのは、振り下ろす直前の日向の手の前。日向は寸分違わずドンピシャで来たトスを打ちます。研磨はそれに反応してレシーブするも、正面で捉えきれなかったボールは腕を弾いてコート外へ飛んでいきました。

しかし、次に点を取ったのは音駒。烏野と同様、最後に練習試合をした時から進化を遂げた音駒の、黒尾・海・福永・山本が同時に攻撃に参加するシンクロ攻撃が炸裂。海がスパイクを放つも、研磨がトスすると同時に動き出した月島が東峰とブロックに跳び、バチンと手に当てます。

日向がカバーに入り、今度は烏野のシンクロ攻撃。しかも攻撃に参加するのは、影山以外の全員です。この5枚攻撃(シンクロ攻撃オール)に即座に反応した黒尾に、澤村が放ったスパイクがブロックされてしまいました。

こうして互いに一歩も譲らず点を取り合い、音駒8点、烏野10点。烏野には月島と共に、12番・MBである1年・山口忠がピンチサーバーに入ります。

ピンチサーバーは点を稼ぐことも目的として投入されることが多い。その貴重な一打を打つプレッシャーを乗り越えてきた山口は、幼馴染の月島の信頼に応えるように必殺技である、無回転で軌道が読みにくいジャンプフローターサーブを打って得点をあげます。

しかし、山口の2本目のジャンプフローターサーブは海に拾われてしまいました。対して今度は月島が、試合中に煽ってきた黒尾のアドバイスに従って手を前にして壁を作り、福永のスパイクを完璧にブロックしました。

黒尾は月島に、最近のバレーはどうかと尋ねます。「…おかげさまで…ごく、たまに面白いです」と素直な笑みを浮かべて答えました。

山口と交代した日向はさらりと彼を褒めつつ、彼の悔しさを自分のことのように悩み、やる気に満ち溢れながらコートに入っていきます。

音駒16点、烏野17点。山本のジャンプサーブを田中が何とかレシーブするも、ボールはネット際へ。寸でのところで影山が片腕で何とかトスして、日向がスパイクを打ちます。

しかし夜久に拾われ、ネットの上にやって来たボールに向かって東峰と海がジャンプ。東峰が力で勝ち、ボールを音駒コートに落として再び2点差に。ミスをして反省する田中に対し、影山は頼もしすぎる言葉をさらりと言いました。

「ネット際じゃなくても、アタックライン近辺に上げてもらえれば十分です」

体はライト方向へ流れていたのに、レフトドンピシャでトスをあげた影山もさることながら、彼がどこでもトスを上げてくれると信じている烏野の攻撃陣。

そんな彼らに対し、畏怖より興味と尊敬、好敵手と戦えることへの高揚と尊重が浮かんでいる黒尾たちの顔。ただただ、猫の本能からか烏の羽をもいでみたくてしかたがない研磨を除いて。

音駒17点、烏野20点。ネット上空に落ちてくるボールをめがけてジャンプした影山とリエーフ。一瞬押し合うも、影山が上手くいなして音駒コートへ。それを山本が拾い、研磨につなげます。

研磨はネット前から素早く動き、リエーフにトスを上げて得点をあげさせました。ふだん動かない時は、徹底して動かない研磨。ゆえに彼のこの行動は、両チームともに驚きました。

まだ第1セット目だというのに、5セット戦っているかのような激しい点取り合戦が繰り広げられ、音駒25点、烏野25点の同点。

研磨はボールに手が触れる直前で、ツーアタックで押し込むと見せかけて、ブロックに入った東峰と月島の反則を狙って得点をあげました。

ツーアタックとは、Sがトスをあげると見せかけて相手コートにスパイクで返す攻撃。東峰たちがしたのはオーバーネットという、相手コート内にあるボールに触れる反則です。

音駒26点、烏野25点。さらに研磨は、山本・黒尾が繋いだボールをポーンと山なりのトスで烏野コートへ。

影山がトスを上げようとネット際に走る道であり、スパイクの態勢に入ろうとした月島・田中・澤村・東峰が交錯する道でもあり、Lの西谷の逆を突いた彼の返球に誰も動けませんでした。

以下、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』ネタバレ・結末の記載がございます。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

第2セット目、先制点をあげたのは烏野。音駒は日向を前に出してトスをさせることで、影山・日向による速攻を封じようとするも、日向はブロードで1点決めたのです。

ブロードとは、アタッカーが片足で踏み切ってジャンプしながら、体をネットに平行に流してスライドしながら打つ移動攻撃。

今、あえて日向を攻撃に使う必要性はなかった。それなのに影山が日向にトスをあげたのは、これくらいで速攻を封じたことにはならないという、研磨に対する挑発でした。

「面白いままでいてね」とどこか不気味な笑顔で言った研磨。日向は本能的に警戒しました。まるで天敵に狙われた野生動物のように。音駒6点、烏野7点。守備で粘る音駒に対し、攻撃で粘る烏野。

「跳ぶ」という一番きつい動作を繰り返す、空中が縄張りである烏野の方がしんどいだろうと音駒は分かっていて、烏を地面に引きずりおろす機会を伺います。

まずは、徹底的な日向潰し。日向が前衛レフト側の、西谷が後衛ライト側のローテーションの時、音駒は西谷の前にボールを出すことで、日向の素早い速攻を封じたのです。

それを主導した研磨は、味方さえ怖いと恐れることを言いました。「跳ぶのが大好きな翔陽が跳べないことにより、苛立ちや焦りが募る」

「烏野の、いつもならきっと決めていた攻撃を数本削れればいい。その小さなストレスの積み重ねが一本のミスにつながるかもしれない」「点だけじゃなく線、翔陽の動線を断つ」

研磨は烏野の「最強の囮」である日向の攻略のため、彼から自由に空を跳べる助走という翼を奪い、完全に鉄の籠に閉じ込めました。

音駒21点、烏野21点。レシーブもスパイクを打つための助走の確保も全部頑張ろうとするあまり、日向は100%で跳ぶことができません。

そんな日向に影山は興味なんかなくなる、と推測していた研磨。


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

ですが、日向は「ボールが落ちたらバレーは始まらない。点を取るのに近道なんてない」と迷いを断ち切り、影山はそんな彼(スパイカー)の道を切り開くため、コートの左右の端から高く山なりにあげるトス「センターオープン」を選択。

日向は研磨・リエーフ・山本のブロック3枚を越えるほど高く跳び、鋭くて速いスパイクを決めます。日向は自力で鉄の籠から脱出したのです。

音駒23点、烏野23点。ここで音駒は、ブロックを強固にするために7番・すばしっこくて185.3㎝と身長も高いウイングスパイカーの1年・犬岡走を投入。

一度目はリエーフ・犬岡のブロックに阻まれるも、それをなんとか繋いでセンターにあげた田中のトスを、日向はあえてリエーフの指先にボールをあてて、山本・リエーフ・犬岡のブロックを回避しました。

音駒24点、烏野25点。両チームともシンクロ攻撃を仕掛けた結果、山本の強烈なスパイクを日向が完璧にレシーブして、第2セットを勝ち取りました。この試合は3セットマッチであり、次の第3セット目が最後となります。

初対面では一触即発だった田中と山本は、練習試合を経て今はすっかり心の友。出会った時は音駒のエースを自称していたが、今では本当にエースとして頭角を現しているリエーフ。

そんな彼に、いつの日か「俺は誰よりも先にてっぺんに跳ぶ」と言った日向は、影山のセンターオープンに応じてブロックを越えるジャンプをしてスパイクを打ちます。

しかし音駒の対応は早く、夜久に完璧にレシーブされてしまいました。同じLとして悔しくも憧れる夜久の実力に、西谷はシビれました。

夜久もまた、元から相当レベルの高いLなのに慢心することを知らず、初めて練習試合であった時から変わらず高みを目指している西谷を見て「あれからずっとお前は怖えな、夕」と思いました。

西谷がつなげたボールをスパイクした東峰と、交代してコートに入ってきたのは月島。ネット越しに向かい合った黒尾には、長期合宿でみっちりとブロックのテクニックを教わりました。

音駒6点、烏野6点。2人のネット際で競い合うブロック合戦も相まって、第3セット目も怒涛のラリーが続いていきます。

月島と同じく、黒尾にブロックのテクニックを叩き込まれたリエーフのブロックを避け、東峰はスパイクを打つも、彼の後ろにいた黒尾に綺麗に返されてしまいました。

そんな黒尾の姿に、ああクソ、勝てないと悔しみながらも笑みを浮かべる月島。阿吽の呼吸のようにネット前に走り、トスの構えに入る影山と一緒にジャンプ。

思考の猶予を与えない最短で、真ん中、高さ勝負を制したのは月島でした。満面の笑みを浮かべてバレーを楽しんでいる彼の姿に、黒尾は悔しそうにしながらもニヤリと笑いました。

音駒15点、烏野17点。西谷・影山とつないだボールをスパイクした日向。初めて練習試合をした後の日向との会話を思い出していた研磨は、顔面に迫ってくるボールを咄嗟に両手で防ぎました。

福永は弾かれたボールをカバーし、研磨に繋げる。研磨はそのボールを拾う前にちらりとネット前に来た日向たち烏野攻撃陣を見て、彼らの裏をかいた緩いボールで返します。それを日向が必死にレシーブするも、ジャンプした研磨がその前方にボールを落として得点をあげました。

悔しそうに研磨を睨む日向、そんな彼をドヤ顔で見下ろす研磨。そんな研磨の様子を見て、山本は一度、タイプの違う2人が仲良くやっているのが不思議に思って聞いてみたことを思い出します。

音駒17点、烏野18点。9番・Sの1年・手白球彦がピンチサーバーに入り、高く高くサーブをあげる「天井サーブ」で、澤村のレシーブをずらします。

それをカバーした影山のトスを、東峰がスパイクを打つ。黒尾・犬岡がブロックに入るもコート外にボールが弾かれ、それを福永が研磨に必死につなげます。

対抗策を考えながらジャンプした研磨。同じくジャンプした黒尾と目が合いました。


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

その瞬間、子供の頃ふたりでさんざん練習した攻撃だとお互いに察知し、研磨が短く上げたトスを、黒尾が素早くスパイクを打ち込みました。しかし、それを西谷にレシーブされてしまいます。

影山のトスに跳んだ日向は、ちゃんと山本・黒尾・犬岡のブロックの空いた空間を見て、ボールに触れる直前で力を抜く「フェイント」をしました。それに反応した研磨は必死に手を伸ばすも、ボールを捉えることはできず、そのまま後ろに飛んで落ちてしまいました。

その直後、研磨は力が入らないかのようにバタッと床に倒れ込みました。その時、初めて練習試合をした後の日向との会話を思い出します。当時、特別バレーが好きじゃない、練習試合に勝てても別に…と思っていた自分に、日向がこう宣言したことを。

「次は…絶対必死にさせて…“悔しかった”とか“楽しかった”とか、“べつに”以外のことを言わせるからな!?」

研磨はそのままの姿勢で荒い息を繰り返しながら、「たーのしー」と薄く笑って言いました。それを聞いて、目を見開く黒尾たちと影山。日向は、喜びのあまりガッツポーズをしました。

音駒17点、烏野20点。研磨は、日向が今思っていることが分かった気がしました。

(ゲームで)敵を倒すべく死にかけの自分を操りながら、いつも矛盾したことを考えている。まだ、死なないでよと。

音駒21点、烏野23点。息も絶え絶えに、山本・リエーフと一緒にブロックに飛んだ研磨でしたが、それよりもさらに高く跳んだ日向のスパイクを防ぐことができませんでした。

音駒21点、烏野24点。田中のスパイクを防ぐため、リエーフと研磨は左右からブロックに跳ぶも、空中で激しくぶつかって対格差から研磨が床に落ちてしまいました。

自分を心配するリエーフに、研磨はがばっと上半身を起こして腹の底から声をあげます。「バカ!!ボールまだ落ちてない!!」

西谷・影山・東峰がつないだボールはネットに触れ、音駒コートに。それをなんとか夜久・福永が繋いで烏野コートに返します。

ラリーが続く中、合同練習の体育館で今と同じように烏野と試合をしている風景を思い出した研磨は、その時と同じようにトスをしようとボールを待ち構えます。しかしボールに触れた指が汗で滑ってしまい、福永・海のカバーも間に合わず、無情にもコートに落ちてしまいました。

第3セット目、音駒21点、烏野25点。2セットを取った烏野の勝利です。

研磨は床に寝転がりながら、烏野との試合を面白かったと笑顔で言います。そして、そばにきた黒尾にこう言いました。

「クロ、俺にバレーを教えてくれてありがとう」

思いもよらない研磨の言葉に一瞬固まる黒尾たちでしたが、その顔はすぐに笑顔に変わりました。

試合が終わり、ネット越しに握手を交わす烏野と音駒。観客席にいる両校の応援団も、彼らに敗れた他校の人たちも、彼らに拍手を送りました。

そしてこの試合を仙台の病室から観戦していた一繋は、テレビで孫と握手した猫又と握手をするようにスッと手を差し出しました。2人ともにこやかな笑みを浮かべていました。

自分の前に集まった黒尾たちに向かって、猫又はにこやかな笑顔で「ナイスゲーム。ありがとう」と言いました。

子供の頃、バレーボールをさらに大好きにさせてくれた恩師から褒められて固まる黒尾。深々と頭を下げ感謝を伝える彼に続いて、研磨たちも猫又に頭を下げて感謝を伝えました。

コートを去る時、苦楽を共にした仲間である海から「この3年間が黒尾と夜久と一緒でよかった」とストレートな感謝を伝えられた黒尾と夜久は目が潤みます。そして堪えきれず泣き出した夜久を、黒尾と海がその背に手を回して一緒に歩きました。

その後ろを歩いていた研磨に、日向と影山が同時に声をかけます。影山に言いたかったことを先に言われてしまった日向でしたが、研磨に一歩近づいて言いました。

「研磨、来年もやろうな!」

その言葉に、研磨はわずかに笑みを浮かべて「うん、やろう」と返しました。そして自分を呼ぶ黒尾のもとへ、軽い足取りでコートを立ち去っていきます。

映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の感想と評価


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

『ハイキュー!!』の原作・アニメファン待望の烏野vs音駒の「ゴミ捨て場の決戦」。物語の序盤から、決まったと思ったらまだ続いていたという怒涛のラリーが繰り広げられ、ワクワクドキドキさせられます。

そして物語の合間に描かれる、春高までの烏野と音駒の交流。

幼馴染の黒尾に誘われたからバレーをやっているだけで特別好きでもなかった研磨と、テレビ中継で見た「小さな巨人」に憧れて始めたバレーが大好きで仕方ない日向という対照的な2人の親睦、そして試合中に好敵手として戦いあう姿。

初対面では一触即発だった田中と山本が、この試合後には熱くかたい握手を交わすほどの心の友に。バレーの練習に消極的だった月島を何度もブロック練習に誘い、ブロックのテクニックを教えた黒尾など。

互いに練習試合を重ねて切磋琢磨し、対戦するこの日までに強豪校との戦いで成長を遂げてきた烏野と音駒。この試合中にもそれぞれが相手が出してきた策や攻撃に即座に対応していき、まだまだ成長を見せていくところもまた胸アツです。

さらに試合中には日向・研磨・黒尾のそれぞれの目線で描かれているところが、よりリアルに彼らの心情を体感できて面白い。まるで自分が彼らになったような気分にさせてくれます。

また、研磨・黒尾の幼馴染コンビの子供時代のエピソードも作中には描かれており、原作を知らない人でも楽しめるようになっていて彼らの熱き青春の虜に。

原作・アニメファンは、好きでアニメ映像で観たかった両校の試合を観れて感無量。バレーがやりたくなる、好きなことをやっている時って苦しくてしんどい時もあるけれど、それ以上に楽しくて面白いものなのだと思わせてくれる作品でした。

まとめ


(C)2024「ハイキュー!!」製作委員会(C)古舘春一/集英社

約束の地で、公式戦という「もう一回」がない試合を繰り広げる烏野高校と音駒高校の因縁の対決、「ゴミ捨て場の決戦」を描いた胸アツなスポーツアニメ作品でした。

エンドロール後。ジャージに着替えた黒尾・海・夜久は試合会場の案内図の前で、彼女と一緒に観戦に来ていた、春高の東京都代表決定戦で戦った戸美学園3年・WSの大将優と会いました。

大将は「敗者側(こっちがわ)へようこそ」と黒尾たちを煽ったかと思えば、真面目な顔で「まさか本気で優勝できるなんて思ってなかっただろ?」と聞いたり、悔しさを思い出して急にブチキレたり……。

そんな彼にイラついたり、黒尾が真面目に考えて彼の質問に答えたり、急にキレ出した彼に笑ったりする3人。

一方影山・烏野の1年マネージャーの谷地仁花と一緒に、烏野の次の対戦相手である長野代表・鴎台高校の試合を観ていた日向は、今の世代の「小さな巨人」と呼ばれている鴎台の5番・2年WSの星海光来の姿を目に焼きつけます。

「小さな巨人」とは、かつて背番号10番を背負い烏野を全国に導いた、170㎝程度の小さな身長でありながら驚異的な瞬発力と脚力を持つ選手。日向がバレーボールを始めるきっかけとなった存在です。

試合を終えた星海は、日向にこう言いました。

「2回戦と3回戦を見た。見事だった」「どっちが現在の“小さな巨人”か、決めようぜ」

烏野高校vs鷗台高校を描いた映画『劇場版ハイキュー!! VS小さな巨人』制作決定!公開日が待ち遠しいです。



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