『ラプラス事変』から1年…。
人智を超えた力を示したことで封印されたユニコーンガンダム。
平穏を取り戻したかに見えた地球圏は、消息不明となっていたユニコーンガンダム3号機「フェネクス」の出現により、再び争いの兆しを見せ始めます。
宇宙世紀作品27年ぶりの劇場版『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』を紹介します。
CONTENTS
映画『機動戦士ガンダムNT』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
古沢俊一
【キャスト】
夏木淳弥、村中知、松浦愛弓、梅原裕一郎、中井和哉、藤田歩
【作品概要】
『機動戦士ガンダムUC episode7「虹の彼方に」』から1年後の物語を、『Gのレコンギスタ』など知られる古沢俊一が演出を務め、脚本を『UC』から引き続き福井晴敏が担当。
試験中に暴走、消息不明となったユニコーンガンダム3号機『フェネクス』をめぐり地球圏に再び訪れた争乱を描きます。
前作『機動戦士ガンダムUC episode7「虹の彼方に」』のあらすじ
UC.(宇宙世紀)0096。
コロニー、インダストリアル7に暮らす少年バナージは、謎の少女オードリーを助けたことにより、連邦政府を転覆させる秘密が隠されているとされる『ラプラスの箱』を巡る陰謀に巻き込まれます。
その中で『箱』のありかを示す鍵、ユニコーンガンダムの乗り手に選ばれ、地球連邦軍と『袖付き』と呼ばれるネオ・ジオン残党軍の戦いに身を投じていきます。
戦争の残酷さを知ると共に、宇宙、地球のあらゆる場で、連邦軍、袖付きの様々な人の想いに触れたバナージは、人の可能性を信じるようになります。
やがて辿り着いた『箱』ありかであり、始まりの地インダストリアル7。
バナージの前に袖付きの首魁フロンタルが立ちはだかります。
フロンタルは『箱』を用い、連邦政府の失墜を目論んでおり、すべての人のために箱をより良く使おうとするバナージと対決します。
フロンタルを退けたバナージですが、長年『箱』の恩恵を受けたことが公になることを恐れたマーサは、連邦軍に圧力をかけ、大型レーザー兵器を使用し、『箱』もろともバナージらを一掃しようとします。
そのことを察知したバナージは、人の精神を増幅させる金属サイコフレームが全身に組み込まれたユニコーンガンダムが発した感応波でレーザー攻撃を防ぎます。
この事件は後に『ラプラス事変』と呼ばれ、事件後にユニコーンガンダムは人智の及ばない産物とされ、解体、封印されます。
映画『機動戦士ガンダムNT』あらすじとネタバレ
『機動戦士ガンダムNT』冒頭23分
UC.0097。ラプラス事変の重要参考人マーサは、MS(モビルスーツ)に警護され護送されていました。
そこに別の所属不明のMSが襲撃、マーサの身柄の奪います。
襲撃の首謀者はミシェル・ルオ、地球連邦政府に多大な影響を持つ企業「ルオ商会」の創始者の娘でした。
目的は試験中に暴走し、消息を絶ったユニコーンガンダム3号機『フェネクス』の行方であり、そのことをマーサに問いただそうとしていました。
ミシェルの作戦に参加したパイロットのヨナは、コクピットの中で複雑な思いでミシェルを見ていました。
数週間後のサイド4宙域では、地球連邦軍の艦艇ダマスカスがフェネクスと接触、MS部隊が追います。
苦戦するMS部隊の隊長イアゴに、緊急の通信が入ります。
増援の到着と共に急な作戦変更を伝えられ、戸惑うイアゴの脇をすり抜けるように現れたのは、ナラティブガンダムに搭乗したヨナでした。
ヨナはフェネクスを捕えることに成功しますが、フェネクスは逃げようとします。
追いついたイアゴたちが加勢に乗り出しますが、ヨナはかつて共に過ごした少女リタの声を聞き、自ら逃がしてしまいます。
ダマスカスに帰還したイアゴたち、上官からナラティブガンダム及びそのパイロットのヨナがルオ商会から派遣されたことを聞かされます。
作戦に随行していたミシェルは、帰還したヨナになぜフェネクスを逃がしたか問います。
逃げられたと嘘をつくヨナにミシェルは、リタは既に死んでいると諭します。
かつて、ヨナ、ミシェル、リタはコロニー落下を予知し、『奇跡の子供達』と呼ばれていました。
その後、3人はニュータイプ研究所と呼ばれる施設で育てられます。
そこではニュータイプとしての素質を見込まれる少年、少女をモルモットのように実験体にして研究していました。
ミシェルはニュータイプを養子に迎えようとするルオ商会の創始者に、養女として迎えられます。
ミシェルはいずれ時が来ればヨナ、リタを研究所から助け出すつもりでいましたが、研究所は閉鎖、二人の消息は分からなくなりました。
二人の消息が分かったときには、リタはフェネクスのテストパイロットに採用。
暴走事故の後は消息を絶っており、ヨナは研究所閉鎖後、過去を偽り連邦軍に仕官をしていました。
ヨナとミシェルの間にはわだかまりが残したままでした。
ネオジオン軍残党「袖付き」を束ねるミネバは、ジオン共和国外務大臣モナハンが共和国軍を操りフェネクスを奪取しようとしている事を知ります。
ミネバは部下のジンネマンを呼び事態の対処に当たらせます。
一方、共和国軍の大尉、ゾルタンはフェネクス奪取の準備を進めていました。
共和国軍はフェネクスの居場所を掴み、行動を開始します。
その頃、ダマスカスもフェネクスの位置を探知、反応があったサイド6に向かいます。
サイド6に到着したダマスカスは、フェネクスの反応がコロニーの中から発せられていることに気がつきます。
出撃したヨナとイアゴ達は、フェネクスの反応を追い、コロニー内に侵入します。そこで遭遇したのは、同様にフェネクスを追っていたゾルタンら共和国軍でした。
両軍は交戦状態になりますが、コロニーに被害を出さないため火器の使用を禁じますが、ただ一人ゾルタンは発砲します。
コロニーへの被害を気にしないゾルタンに驚くヨナは、必死にゾルダンを止めようとします。
その時、ナラティブガンダムとゾルダンの駆るシナンジュ・スタインに組み込まれたサイコフレームが反応、共鳴を始めます。
ゾルダンに隙を突かれ窮地に陥るヨナを助けたのは、サイコフレームの共鳴に反応し、現れたフェネクスでした。
フェネクスに圧倒されるゾルタンは母艦に「Ⅱ(セカンド)ネオ・ジオング」の派遣を要請しますが、コロニーへ多大な被害を出すとされ派遣を却下されます。
ヨナはサイコフレームが共鳴する中、リタの声を聞き、精神が通じ合いますが突如遮られます。
遮ったのはナラティブガンダムでした。
ヨナの意思に反してフェネクスを攻撃するナラティブガンダムは、強力な感応波に反応して自動で敵を排除するニュータイプ・デストロイヤーというシステムが組み込まれていました。
フェネクスが倒れる中、Ⅱネオ・ジオングがコロニーの壁を破り戦場に現れます。
Ⅱネオ・ジオングが自らの感応波に呼応したと喜ぶゾルダンですが、反応していたのはナラティブガンダムでした。
ヨナは無断でNT-Dを搭載したミシェルへの怒り、リタを前に何も出来ない自分への怒りで負の感情に満たされていました。
サイコフレームが負の感情を増幅、Ⅱネオ・ジオングを呼び寄せていたのです。
Ⅱネオ・ジオングと合体しようとするナラティブガンダムですが、フェネクスが放った感応波によりヨナは正気を取り戻します。
フェネクスは役目を終えたかのように立ち去ります。
ヨナはⅡネオ・ジオングは、いずれ破壊しなければならずそのときには力を貸してほしいと言うリタの声を聞きます。
撤退するフェネクスに目的を失った両軍も撤退を始めます。
ダマスカスのクルー達は何が起こっていたのか、真実を知るであろうミシェルを問い詰めます。
ミシェルはフェネクスを確保しサイコフレームに隠された可能性の一つ、魂の保存を研究、解明を目論んでいることを明かします。
絶句するクルーたちに魂が保存できれば、人類は死を克服できると説きますが、イアゴはそのために何人殺すのか問うのでした。
ミシェルはフェネクス確保を断念、撤収する準備を始めます。
一方、ゾルタンの副官、エリクは秘密裏にモナハンと通信を行っていました。
フェネクス確保失敗を伝えるエリクにモナハンは、証拠隠滅を図るため連邦軍がゾルタンの部隊を排除することを告げます。
映画『機動戦士ガンダムUC』感想と評価
『機動戦士ガンダムUC』から続くストーリーとして制作された本作。
“ガンダム”の新たな時代を切り開く一作になったといっても過言ではありません。
作品冒頭の“コロニー落し”と呼ばれるスペースコロニーが地球に落下するシーンは、これまでのシリーズで何度も描かれていますが、VFXを駆使し、臨場感のある映像に仕上がっており、街があっという間に破壊されていく光景に恐怖を覚えるほどでした。
また、ガンダムの醍醐味であるMS同士の戦闘シーンは、多彩な爆発の種類や金属が溶ける演出、火花や火の粉といった細かいところまでこだわって作りこまれています。
観客にリアルな戦場を見せつける表現となっていました。
“ニュータイプ神話の行き着く先―”と銘打たれた本作は、偶像としてのニュータイプに翻弄された人々の葛藤と想いが濃く描かれています。
特にニュータイプの能力面しか興味を示さない人々に、人生を狂わされ続け世界に失意しか持たなくなったヨナが、最後に世界を救うことを選択する姿は胸を打たれました。
人がしがらみを越え、新たな世界を真のニュータイプの可能性を信じることが出来たからです。
そんな姿はこれまで『ガンダム』に導かれた少年たちと同じように、ヨナもまた、“人類を革新に導くニュータイプである”と共感させてくれたからに他なりません。
まとめ
『機動戦士ガンダム』から続く宇宙世紀を描く劇場作品としては27年ぶりとして公開した本作は『UC NexT 0100』といわれるプロジェクトの第1弾となっています。
これは今まで描かれてこなかった次の100年の物語を紡いでいく壮大なプロジェクト。
早くも2019年冬には、第2弾『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開が予定されています。
また、ハリウッドで実写化が決定し制作も順次進んでいるようです。
2019年に誕生40周年を迎える『機動戦士ガンダム』はまだまだ広がっていきます。