第1弾となる劇場版「フリクリ オルタナ」は、9月7日(金)公開中、そして第2弾の劇場版「フリクリ プログレ」は、9月28日(金)公開!
普通な日常を過ごしているヘッドフォンをつけた少女ヒドミ。彼女がある車に轢かれた夜のこと、クラスメイトの少年井出の額から、突如として巨大ロボットが出現した事実を聞かされます。
さらにハル子から分裂したラハル&ジンユのガチンコ勝負がはじまったことから、それまで平凡だったヒドミの日常は終わりを告げる!
劇場版「フリクリ プログレ」の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【総監督】
本広克行
【監督】
荒井和人、海谷敏久、小川優樹、井端義秀、末澤慧、博史池畠
【キャスト】
林原めぐみ、沢城みゆき、水瀬いのり、福山潤、村中知、中澤まさとも、黒沢ともよ、井上喜久子、大倉孝二、菅生隆之、浦山迅、鈴木れい子
【作品概要】
2000〜01年にかけて全6巻がリリースされたOVA「フリクリ」の続編となる劇場版アニメの第1弾「フリクリ オルタナ」に続く第2弾。
オリジナル版の監督を務めた鶴巻和哉はスーパーバイザー、貞本義行がキャラクター原案を担当。『PSYCHO-PASS サイコパス』で知られる本広克行が総監督を務め、演出は6人のクリエイターによって構成。
ハル子から分裂したラハル役を林原めぐみ、ジンユ役を沢城みゆき、ヒドミ役に水瀬いのりが務めます。
劇場版「フリクリ プログレ」のあらすじ
ありとあらゆる命題に明確な答えを用意せず、生理的欲動の充足のみをシコシコ満喫し、その日暮らすような説得力ゼロの中学生男子たち。
その中心にいたのはオチャラけているが根は真面目な井出交で、どこかしら人には言えない秘密を抱えていました。
井出交には2人の友人がいて、そのひとりはユニセックスな奇抜なファッションした森吾郎。
もうひとりは南米系のハーフで奥手なマルコ野方でした。彼ら3人は異性に興味を持ちたわいも無いお喋りを続けていました。
一方で同じくクラスメイトの少女・雲雀弄ヒドミは無口で無愛想な性格で、ヘッドフォンをつけることで周囲を遮断するかのような日常を過ごしていました。
ヒドミは学校のみならず、喫茶店を営む母親のヒナエともまったく会話しない少女でした。
それでも母親ヒナエの営む喫茶店をヒドミが手伝いをすると、無口なツンデレな彼女目当てで集まるオジサンたちで、お店は賑わいを見せていました。
ある日、母親のヒナエと一緒に喫茶店の前にいたヒドミは、ジュリア・ジンユが運転するサンダーバードのオープンカーに轢かれてしまいます。
ジンユは母親ヒナエに「残念ながら命に別条はない」と告げるとそのまま去って行き、ヒドミは目を回し気を失ったものの確かに命への問題はありませんでした。
その夜、自宅の部屋で休んでいたヒドミを襲う謎の巨大ロボットが出現。
何が何だか分からないヒドミであったが、その攻撃をかわしつつ逃げ出すと、クラスメイトの井出交がヒドミの手を取り一緒に追っ手のロボットから逃走。
その謎のロボットは井出の額から出てきたものだという事実を知ります。
その後、ベスパに乗ったハル子から分裂した1人でフラタニティ宇宙捜査官のハルハ・ラハルと、彼女に敵意を見せるサンダーバードのオープンカーに乗った、もう1人のハル子から分裂したジュリア・ジンユが対面することになります。
この出会いをきっかけに戦いを交わされるなか、少女ヒドミにとって“特別なことなんてない日常”に終わりを告げられ…。
しかも、それはオオズの街を巻き込む大事件へと広がりを見せますが…。
劇場版「フリクリ プログレ」の感想と評価
劇場版「フリクリ プログレ」は、コミカルさを見せるストーリーに、シュールなデザイン性や展開の読めない演出方法で、日本のみならず、海外のアニメファンからも支持された全6巻のOVA「フリクリ」の続編。
2018年9月7日(金)に劇場公開された第1弾「フリクリ オルタナ」に続く、第2弾が劇場版「フリクリ プログレ」(9月28日(金)公開で3週間限定)です。
「プログレ」では、ハルハラ・ハル子から分裂した、ハルハ・ラルハとジュリア・ジンユというアナーキーな存在が対比的に登場することでストーリー展開の幅を見せるのが大きな特徴。
この2人は彼(アトムクス)という存在を得る目的や考え方がまったく異なり、それぞれの存在を消し去ろうとエレキを振りかざしながら戦いを挑みます。
もちろん、ハル子の分裂とだけあって、インパクトが強い魅力的なキャラクターとして描かれおり、2000年のOVA「フリクリ」ファンを満足させてくれるはずです。
今回は劇場版の第2弾「フリクリ プログレ」と第1弾「フリクリ オルタナ」をより、内容を楽しんでもらうため、「プログレ」のヒドミと「オルタナ」の河本カナの違いについて少し解説をしていきましょう。
「オルタナ」と「プログレ」に登場する少女の違い
「フリクリ オルタナ」は、オルタナティヴ(Alternative)の略称で、「もうひとつの選択、代わりとなる、異質な、型にはまらない」という意味があり、17歳の高校生の少女である河本カナが主人公でした。
いつもと変わらない日常を望む河本カナ、通称カナブン。彼女の日常は非日常である奇怪なロボットたち侵略者と、煙を吐きながら動き出した“謎の巨大なアイロン”によって、著しいまでに“少女の青春そのもの”が侵略されてしまいます。
カナブンとペッツ、ヒジリー、モッさんの女の子同士の友情や、その関係性で揺れるささいな心境が、「もうひとつの選択、代わりとなる、異質な、型にはまらない」というキーワードによって、作品の深いテーマを浮き彫りにするものでした。
一方で本作品劇場版「フリクリ プログレ」は、プログレッシブ(Progressive)の略称で「進歩的、進行形の、進行性の、漸進的な、累進的な、連続的な」などを意味しています。
また、主人公は「オルタナ」の河本カナの設定よりもさらに若い中学生の少女・雲雀弄ヒドミ。
キャラクターの性格は、河本カナと同じように“思春期特有の内向性”を持ったヒドミですが、まったく異なる人物像でした。
ヒドミには女友だちという者は登場しません。それだけでなく河本カナのような幸せな家庭環境も存在しません。
そのような思春期の中学生のヒドミは、ゆえにヘッドフォンを装着し周囲を遮断しています。もちろん、そこには多くの理由を含んでいます。
また河本カナは女友だちを大切にしていますが、明らかにヒドミは異性に対しての関心や興味が色濃く描かれています。
ヒドミは父親へのファザー・コンプレックスのような執着があり、その面影を投射する相手が学校ではオチャラけている姿しか見せない井出交の存在です。
貧しさゆえに学校の授業も二の次で過酷な肉体労働で働く彼の様子を見たヒドミの場面などで描かれています。
そのほかにもチャンプおじさんのアイパッチや、アイコの父親マスラオもヒドミの父親像のメタファーと言えるかもしれません。
思春期のヒドミが動物的な肉体や本能を見せる男の子(異性)に対して、自分の肉体をロボットに変形させてまで愛を貫こうとするとき、男女の隔たりは肉という身体性をコミカルに軽く超えていきます。
井出やヒドミが肉でなくマシン(機械)になった様子は、ある種の“神聖なものになっていく”描かれ方であり、思春期という心身のバランスが異常に湧き上がるな不安定さを見事に映像化しています。
第1弾の「オルタナ」も弾けた内容ですが、“もうひとつの選択”を選んでおり、第2弾の「プログレ」は若さがみなぎり、より進歩主義的で理想的なものへと変革していこうという少女ヒドミの作品テーマが描かれています。
また「オルタナ」の方が分かりやすく、「プログレ」の方が分かりにくい描写も見られ、どちらが好みかは評価を分けるところですが、そこにある不安定要素にみなぎる中学生の女子ヒドミの“生物的な生命力の強さ”はとても感じられる作品です。
まとめ
劇場版「フリクリ プログレ」の演出は、荒井和人・海谷敏久・小川優樹・井端義秀・末澤慧・博史池畠たち6名のクリエイターが集結して監督パートを務めています。
また、劇場版「フリクリ プログレ」では、何とハル子が2人に分裂し、うちの1人であるハルハ・ラハルを林原めぐみが演じ、もう1人のジンユを沢城みゆきが務め、互いのキャラクターにもさらなる深みを見せてくれます。
特にラハルは中学生の少女ヒドミや少年井出の担任教師という役割で登場しています。
思春期のヒドミが貫き通す心身ともの進歩的な変革の様子は、大人のラハルの心境の中にも自由自在に目的を求め、常に変化し続ける思春期の乙女心を見い出すことでしょう。
狂信的なフリクリ愛を持つファンのために作られた劇場版「フリクリ プログレ」。ダイナミックかつソリッドでポップなストーリー展開で、再び世界中のフリクリファン驚愕させてくれますよ!
劇場版の第2弾となる「フリクリ プログレ」は、9月28日(金)より公開!お見逃しなく!!