ヒマラヤ救助隊が、世界を揺るがす陰謀を阻止するアクション映画
ユー・フェイが脚本・監督を務めた初の映画監督作品であり、2019年製作の日本・中国合作のスペクタクル・エンターテインメント・アクション映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』。
エベレスト南部に墜落した飛行機には、ヒマラヤ地区の平和的局面を脅かす可能性がある機密文書が積まれていたため、それを取り戻すべく派遣された特別捜査官を自称する2人の男の勇姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
氷点下50度の雪山の頂・デスゾーンに挑むミッションの背後で、世界規模の陰謀が動き始めていく、日本・中国合作のスペクタクル・エンターテインメント・アクション映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』の作品情報
【公開】
2019年(日本・中国合作映画)
【脚本・監督】
ユー・フェイ
【キャスト】
役所広司、チャン・チンチュー、リン・ボーホン、ビクター・ウェブスター、ノア・ダンビー、グラハム・シールズ、ババック・ハーキー、プブツニン
【作品概要】
「M:I-2」「レッドクリフ」シリーズで知られるプロデューサー、テレンス・チャンが製作指揮を執り、 ユー・フェイが脚本・監督を務める日中合作のスペクタクル・エンターテインメント・アクション作品です。
『ローレライ』(2005)や『最後の忠臣蔵』(2010)、『十三人の刺客』(2010)、『清須会議』(2013)、『日本のいちばん長い日』(2015)など、数々の話題作に出演している日本を代表する名優の役所広司が主演を務めています。
映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』のあらすじとネタバレ
標高8848mもある世界最高峰の山、エベレストに登る登山客を救助するため、ヒマラヤ救助隊『チーム・ウィングス』は、日々危険なミッションに臨んでいました。
『チーム・ウィングス』を率いる隊長は、かつて“ヒマラヤの鬼”と呼ばれた一流クライマーのジアン・ユエシュンです。
ジアンの優秀な愛弟子シャオタイズ、若く情熱を持つパイロットのハン・ミンシャン、ジェームスにスヤ、タシが主要メンバーでした。
エベレストの山頂付近で突如起きた雪崩事故から3日後、『ウィングス・バー』にハンたちといたジアンは、スヤからシャオタイズをチームに戻してほしいとお願いされます。
ジアンは3日前の雪崩事故で、無茶な行動に出て危うく死にかけたシャオタイズを厳しく叱り、チームのワッペンを取り上げ、チームメンバーから外していたのです。
その話を煙に巻いたジアンは、ハンたちと一緒に記念写真を取り、バーで開いた宴を楽しみました。
ジアンはハンたちと一緒に、財政難に陥り、このままではチームが解散する危機に直面したチームの今後を話し合います。
そこへスヤは、新たなクライアントと称して、インドの特別捜査官を自称するヴィクター・ホークと、その弟マーカス・ホークを皆に紹介しました。
ヴィクターは早速、ジアンたちに3日前に起きた雪崩事故の原因を話します。
政治状況が不安定のなか、ヒマラヤ周辺国家はヒマラヤ地域の平和のため、長年いがみ合ってきた関係を改善するべく、カトマンズで『ヒマラヤ公約』を締結するサミットを開催しようとしていました。
サミットが開催される3日前、インド軍の機密文書を積んだ飛行機が、ネパール側に位置するエベレスト南部、通称『デスゾーン(120名の登山客の遺体が残された、エベレスト山頂付近のこと)』に墜落しました。
その機密文書には、国際関係を揺るがす恐れがある、極めて重要なものが含まれていたのです。
ここまで話したヴィクターは、ジアンたちに、サミットが開催されるまでの65時間以内に、標高およそ8,700m地点のデスゾーンに墜落した飛行機から、機密文書を取り戻してほしいと依頼します。
どんなに気象が良くても、ヘリは標高6,000mまでしか上がれず、3日間もデスゾーンに居れば生存も危ういと、ハンとタシは訴えました。
しかもエベレストの山頂は気象が不安定で、時に風速52m、気温-83度になる事もある危険な山であり、今まで285名の登山客が命を落としています。
政治が絡んだ任務なんて断ると言うジアンに、ヴィクターは「現場に案内するだけで、50万ドルの報酬を支払う」と言い、スヤも滅多にない大仕事だぞと説得しました。
ジアンは悩んだ末、チームの今後の活動の為に、この仕事を引き受けることを決めます。
ヴィクターはマーカスを連れてその場を立ち去ろうとしましたが、マーカスは何故か自分の名にすぐに反応せず、ハンに促されてやっと動き出しました。
その事を怪しく思うジアンは、ハンたちと別れた後、亡き娘より早く作った大きな折り鶴を作った女性、シャオタイズをトリブバン空港まで迎えに行きます。
シャオタイズは、エベレストで遭難した恋人を探すため、チームを外れろと言われても、単身でエベレストに登ろうとしていたのです。
そんなシャオタイズに、ジアンは亡き娘の面影を重ねて見ており、危険な場所へ行って欲しくないと思い、彼女をチームに戻すことを渋っていました。
距離を取って街中を歩く2人、シャオタイズはジアンに、「お金はいらないからチームに戻してほしい」と懇願します。
5年前の2014年5月18日、デスゾーンで遭難した恋人を探し出したいシャオタイズは、これがどんなに無謀なことだと言われようと、諦めたくなかったのです。
シャオタイズの覚悟を聞いたジアンは、夜空に光る白鳥座を指さし「北の空に昇る白鳥座は諦めが悪いという」と話しました。
ジアンはシャオタイズに、ひよこのシールを追加したチームのワッペンを返し、遠回しにチームへの復帰を認めます。
その翌朝6時30分、サミット開催まで残り55時間を切った頃、ジアン、ハン、ジェームス、シャオタイズたち「チーム・ウィングス」とホーク兄弟は、ヘリに乗って墜落した飛行機の捜索を行いました。
エベレスト山頂部の様子を監視する管制室に残ったスヤとタシは、ジアンたちに逐一エベレスト山頂部の様子を報告します。
雪崩事故のせいでルートがなくなったため、歩きながらルート工作しなくてはなりません。
ジアンたちはべースキャンプの上方、標高5,700m地点に降り立ち、標高4,930m地点のロブチェで待機するハンと別れます。
GPS端末機を腕につけたジアンたちは、吹雪く雪山をお互いに助け合いながら登っていき、日暮れまでに標高7,158m地点にあるキャンプ3へ無事到着しました。
黄色いテントに入ったジアンは、密かに無線機を使ってタシと連絡を取ります。ジアンは実は、タシにヴィクターたちの調査をするよう命じていたのです。
タシはドイツ軍の友人から聞き出した結果、ヴィクターたちの派遣は事実なことを確認しました。
しかしタシは、マーカスが吸っていた葉巻は「トリニタッド」という高級な葉巻のため、普通の公務員ではないと話します。
ジアンはタシに引き続きヴィクターたちのことを調べるよう命じました。
その頃シャオタイズは、夜空に浮かぶ星が結集して鳥の形をしたものが、自分に寄り添うように飛んでいるのを見て、恋人の姿を重ねて涙を流していました。
そんなシャオタイズに、ジェームスとルート工作に行こうとしていたジアンが声を掛けます。シャオタイズはジアンに、恋人が遭難した時のことを話しました。
シャオタイズとその恋人シャーベットは、1つの魂を2つに分けた半身のように大事に想い合う恋人であり、最高のクライミングパートナーでした。
標高8,000m級の14山のうち、13山も一緒に登ってきたシャオタイズたちは、いよいよ最後の山、エベレストに登ります。
しかしデスゾーンに差し掛かった時、突如天候が悪化して猛吹雪となったため、シャオタイズたちは遭難してしまいました。
その後駆けつけた救助隊員が救助したのは、シャオタイズだけでした。
救助隊員に助からないと判断され、デスゾーンに置き去りにされたシャーベットは、最後にずっとシャオタイズと繋いでいた手で、「2030」とモールス信号を送ります。
シャオダイスはその後、「2030」の意味を探るべく、各地を飛び回りましたが、結局その答えを見つけることは出来ませんでした。
そう話すシャオダイスに、ジアンは「彼がお前に伝えたかったのは、それだけじゃないと思う。秘密ってのはな、最後の最後に明かされるものだ」と伝えます。
ジアンはシャオタイズに、アストロラーベ(天体観測用の機器)を渡し、呼びに来たジェームスと一緒にルート工作しに行きました。
シャオタイズはテントに戻ると、ジアンのテントから着信音が聞こえ、彼の代わりに着信に出ます。
電波が悪く、途切れ途切れにしか音は聞こえませんでしたが、タシはシャオタイズに、ヴィクターたちの正体と本当の目的を伝えました。
本物のホーク兄弟は、2日前にカトマンズで遺体で発見されており、ジアンたちの所にいるのは、彼らに成りすました人物でした。(以下、偽ヴィクターと偽マーカスと表記します)
偽ヴィクターたちの正体は、ヒマラヤ地域で手広くやっている武器商人の一味であり、戦争を起こさせるために機密文書を取り戻したかったのです。
そう伝えるタシは、背後から迫る男に殴殺されてしまいます。その通信後、シャオタイズがいるテントに怪しい影が映り、彼女も身の危険を感じてテントを飛び出して逃げました。
崖まで追い詰められたシャオタイズは、偽ヴィクターに突き飛ばされ、崖から転落してしまいます。
偽ヴィクターは突き飛ばした際、シャオタイズのダウンからチームワッペンを奪い取りました。
偽ヴィクターは、スヤに連絡を取ります。裏で子供の臓器を平気で売っていたスヤは、実は偽ヴィクターたちとグルだったのです。
スヤは、家族同然の仲間を殺すなんて聞いていないと抗議します。これに対し偽ヴィクターは、報酬を倍額にするから、このまま協力しろと脅しました。
ルート工作から戻ったジアンたちは、いなくなったシャオタイズを探します。
その声で意識を取り戻したシャオタイズは、か細い声でここにいると言いますが、ジアンたちには届きませんでした。
ジアンたちは偽ヴィクターたちに、シャオタイズの姿を見ていないか尋ねます。
偽ヴィクターたちは見ていないと言い、「それよりも時間がない。先を急ごう」と急かしました。ジェームスは怒って、偽ヴィクターたちと言い争います。
これを宥めたジアンは、連絡が取れない場合は下山して捜索すると言い、偽ヴィクターと一緒に墜落した飛行機へ向かうことにしました。
ジェームスと偽マーカスは、赤と黄色のテントに分かれて、キャンプ3で待機します。
映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』の感想と評価
ジアンたちに依頼してきた人物が、まさか戦争を起こそうと企む武器商人の一味だったとは驚きです。
それをタシから偶然聞いたシャオタイズが、偽ヴィクターたちに何度も殺されかける場面は、ドキドキハラハラするばかりです。
偽ヴィクターたちによって、次々と殺されていく「チーム・ウィングス」のメンバーたち。その姿を見て最後のハンのように、号泣すること間違いなしでしょう。
エベレストがどんなに過酷な山であるかが、シャオタイズたちの姿を通じて、痛いほど伝わってきました。
しかも遭難した登山客が、氷に埋まった状態で見つかるなんて知った時は、言葉を失います。
シャオタイズとシャーベットの悲しき再会の場面と、唯一生き残ったハンが、ジアンたちのことを思い出して涙を流すところは、本当に涙が止まらなくなるほど悲しいです。
そして、偽ヴィクターたちとジアンたちが雪山の中で繰り広げる死闘は、どれも地上での戦闘とはまた一味違う、スリルに満ちたアクションばかりで興奮します。
まとめ
ヒマラヤ救助隊の「チーム・ウィングス」が、世界を揺るがす陰謀に巻き込まれていく、スペクタクルエンターテインメント・アクション作品でした。
役所広司演じる“ヒマラヤの鬼”ことジアンは、不器用ながら仲間を想う良きリーダーです。
そんなジアンになりきって演じられたのは、役所広司だからこそであり、役所広司にしか演じられないハマリ役でした。
ジアンが愛弟子を助けるために、偽ヴィクターを道連れに自ら死を選ぶ場面は、シャオタイズとの強い師弟愛に感動する最高の見どころです。
しかも雪の中で繰り広げるアクションは今まであったものの、エベレストという世界最高峰の氷山でやったことがないため、とても新鮮でスリルと迫力を体感できます。
世界最高峰のエベレストで繰り広げる、瞬き厳禁のアクション場面と、世界を揺るがす陰謀を阻止しようとする救助隊の姿が観たい人には、オススメなスペクタクルエンターテインメント・アクションです。