息子を殺された怒りオヤジが、雪原を血で染める!
『シンドラーのリスト』(1993)でアカデミー賞にノミネートされ、ほかに「96時間」シリーズ(2009~2015)、『ラン・オールナイト』(2015)などの代表作を持つリーアム・ニーソン。
彼が主演する2019年6月7日公開の『スノー・ロワイヤル』では、雪原地帯を舞台としたクライムアクションが展開されます。
ここでは、本作の解説及び、リーアム・ニーソンと“雪原”をめぐる、ちょっとした因果関係をひも解きます。
CONTENTS
映画『スノー・ロワイヤル』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Cold Pursuit
【監督】
ハンス・ペテル・モランド
【キャスト】
リーアム・ニーソン、トム・ベイトマン、ローラ・ダーン、トム・ジャクソン、エミー・ロッサム、ウィリアム・フォーサイス、ラウル・トゥルヒーヨ、マイケル・リチャードソン
【作品概要】
日本ではDVDスルーだったノルウェーのクライムアクション映画『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(2014)を、監督を務めたハンス・ペテル・モランドがハリウッド資本でセルフリメイク。
アメリカ・コロラド州のスキーリゾート地を舞台に、息子を殺された除雪作業員による、怒りの復讐劇が繰り広げられます。
主人公の除雪作業員ネルズを演じるのは、「96時間」シリーズのリーアム・ニーソン。
その他、ネルズの妻グレース役にローラ・ダーン、麻薬王バイキング役にトム・ベイトマン、キンバリー警官役にエミー・ロッサムがキャスティング。
また、ネルズの息子カイル役を、リーアムの実子マイケル・リチャードソンが演じます。
映画『スノー・ロワイヤル』のあらすじ
コロラド州のスキーリゾートの町キーホーで除雪作業員をしているネルズ・コックスマンは、長年の勤務態度を称えられ、模範市民賞を受賞します。
ところが間もなくして、空港作業員をしていた一人息子のカイルが、麻薬の過剰摂取による死体で発見されることに。
「息子が麻薬などやるはずがない」と信じるネルズは、カイルが航空便を利用した麻薬密輸の手違いによって殺されたと知り、復讐を決意。
手始めにカイル殺害の実行犯を力任せで絞殺したのち、次々と関連人物を亡き者としていきます。
一方、表向きは地元の有志として知られ、裏では麻薬密売を行っている通称“バイキング”ことトレヴァーは、手下が立て続けに行方不明となっていることに苛立ちを隠せません。
ついには、長らく因縁のあったネイティブ・アメリカンの麻薬組織の仕業と勘違いし、組織のボス・ホワイトブルの息子を拉致し、殺してしまうのでした。
ネルズ、バイキング、ホワイルブルらによって、雪原に包まれた静かな田舎町は、次第に鮮血に染まっていくこととなります…。
リーアム・ニーソンのプロフィール
1952年に北アイルランドで生まれたリーアム・ニーソンは、アマチュアボクサーを経て演劇界に入り、サム・ライミ監督の『ダークマン』(1991)で映画初主演を果たします。
続けて、スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』(1993)でオスカー・シンドラーを演じてアカデミー主演男優賞にノミネートされ、一躍脚光を浴びます。
その後も『レ・ミゼラブル』(1998)、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)など、ジャンルを問わずに活躍してきた彼がさらに注目を集めたのが、アクション映画『96時間』(2008)への主演でした。
この映画の大ヒットにより、本格アクションスターとしても認知されるようになります。
雪原で突如見舞われた不幸
そんなリーアムは、『ネル』(1994)で共演した女優のナターシャ・リチャードソンと結婚して2人の子宝に恵まれるなど、おしどり夫婦として知られていました。
ところが2009年3月、カナダ・モントリオールで家族でスキーを楽しんでいたナターシャが、誤って転倒し意識不明となり、病院に搬送されるも、そのまま帰らぬ人となったのです。
愛妻を失ったリーアムは、報道カメラの前では努めて平静を保っていたものの、実際の落ち込みようはひどく、この年は目立った映画の出演がありませんでした。
参考映像:ナターシャ・リチャードソンの訃報を伝えるニュース
リーアムを語る上で外せないサバイバル映画『THE GREY 凍える太陽』
仕事復帰したリーアムは、翌2010年から12年の間になんと10本もの長編映画に出演。
悲しみを払しょくするかのようなそのワーカホリックぶりが、かえって心配されたりもしました。
その中でも特筆すべき主演作が、『THE GREY 凍える太陽』(2012)です。
石油掘削現場で働く作業員と、彼らを狼から守るスナイパーを乗せた飛行機が、零下20度のアラスカの雪原荒野に墜落。
生き残った男たちは、厳寒と飢餓、そして襲いかかる狼の群れから決死のサバイバルを強いられます。
この作品でリーアムが演じるスナイパーは、妻を亡くして生きる気力をなくし、自殺願望を抱えているという設定だったため、図らずも実際の彼が重なることに。
内容的にもかなりダウナーなため、万人におススメとは言えませんが、雪原で実の妻を亡くしたリーアムが、雪原で生に執着する男を演じるという意味を鑑みると、外せない一本です。
参考映像:『THE GREY 凍える太陽』予告
サスペンスなのに笑いを誘う不条理ストーリー『スノー・ロワイヤル』
そして、リーアムが妻ナターシャを亡くして10年目の2019年に公開される、『スノー・ロワイヤル』。
本作は、ノルウェー映画『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』のハリウッドリメイクとなり、オリジナル版はバイオレンスとブラックユーモアがブレンドしたあらすじが、好事家たちの間で話題となりました。
実は『スノー・ロワイヤル』の話の流れや結末自体は、オリジナル版とほぼ変わりません。
ただし、オリジナル版の特徴でもあったブラックユーモアが、リメイク版ではちょい増しとなっているのがポイント。
リーアム扮する主人公ネルズが、息子カイルを殺された復讐をしていきますが、その姿は同じく雪原が舞台の『THE GREY 凍える太陽』とは打って変わり、シリアスながらも実に滑稽。
カイルを演じるのが、リーアムの実の長男マイケル・リチャードソンというのも、彼の演技テンションを高めている気がします。
ほかに、健康オタクな麻薬王に、屁理屈をこねるその息子、事件発生を大喜びする女性警官といったクセのある登場人物の存在も、「この映画タダモノではない」と思わずにはいられません。
まとめ
「96時間」シリーズに代表されるように、2010年代に入ってからはクライムアクション映画への主演が目立つ感のあるリーアム・ニーソン。
ですが、一口にアクション映画と言っても、『フライト・ゲーム』(2014)、『ラン・オールナイト』、『誘拐の掟』(2015)など、内面に闇やトラウマを抱える男が主人公の作品を選んでいる傾向があります。
そして、本作『スノー・ロワイヤル』も単なるアクション映画ではありません。
脚本を読んだ出演キャスト陣の大半が、「笑っていいのか悪いのか戸惑った」と語ったように、同じくリーアムも、次々と繰り広げられる不条理展開に惹きつけられたのは言うまでもないでしょう。
一部報道では、『スノー・ロワイヤル』がリーアム最後のアクション映画になるのでは、とも伝えられています。
真偽の程は別にしても、リーアムのフィルモグラフィの中でも意欲作として、チェックしておきたい一作です。
雪原クライムアクション『スノー・ロワイヤル』は、2019年6月7日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー!