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映画『影に抱かれて眠れ』感想と評価レビュー。原作小説「抱影」と“Vシネマの伝統”を和泉聖治が描く

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  • 20231113

『影に抱かれて眠れ』は2019年9月6日(金)より、丸の内TOEI2ほか全国順次公開!

北方謙三原作の小説「抱影」を、テレビドラマ「相棒」シリーズのメイン監督・和泉聖治が映画化した作品、『影に抱かれて眠れ』

主人公を演じるのは加藤雅也。それぞれの分野で、ハードボイルドな世界を極めた3人が、横浜の街を舞台に映画史に残る「男」の物語を描きます。

酒を愛し、女たちに愛される主人公が日常を過ごすのは、昭和の香りが色濃く残る街。しかし彼を慕う男が闇の世界と関わったがために、彼の平穏な日常は崩れ、街を支配する悪との対決を余儀なくされます。

時代を越えて見る者を魅了する、美学を貫いた男の生き様を描いた正統派ノワール映画に、新旧入り混じる豪華俳優陣が集結したエンターテインメント作品。

映画『影に抱かれて眠れ』


(C)BUGSY

【公開】
2019年9月6日(金)(日本映画)

【監督】
和泉聖治

【出演】
加藤雅也、中村ゆり、松本利夫、カトウシンスケ、若旦那、熊切あさ美、山口粧太、中山こころ、余貴美子、火野正平、AK-69

【作品概要】

横浜の街で酒場を経営する画家、硲(はざま)冬樹。周囲の人々に慕われていた彼が、思わぬ形で街を支配する巨悪と対決する姿を描く、“任侠映画”の流れをくむ本格的ハードボイルド映画。

監督は和泉聖治。映画監督・プロデューサーにして俳優であった父・木俣堯喬の下で、70年代にピンク映画を数多く手がけ、80年代に一般映画デビュー後は、映画・テレビ・Vシネマの世界で幅広く活躍しています。

その後TVドラマ「相棒」シリーズのメイン監督を務め、その映画化作品も演出し、大ヒットを記録させた和泉聖治。映画製作の場から育ち、常に映像作品制作現場の第一線で活躍し、実績を積み重ねてた日本映画界の第一人者です。

その彼がかつて映画界を席巻した“任侠映画”の世界を、令和に移り変わった世で、新たな「男」の物語として映像化する。

映画『影に抱かれて眠れ』のあらすじ


(C)BUGSY

街を自転車で巡り、酒場をハシゴしてしたたかに飲む男、硲冬樹(加藤雅也)。彼は才能を内外に知られた画家だが、今は絵筆を握ることを休み、いくつかの酒場を経営し自適な生活を送っていた。

横浜の街、野毛に根をおろして暮らしている冬樹は、彼を兄貴分と慕うバーテンダーの辻村(松本利夫)や岩井(カトウシンスケ)、そして夜の街に生きる女たちに慕われる存在であった。

ある日、冬樹の元に傷を負った岩井が転がり込んで来る。岩井はNPOの慈善団体に入り、横浜の街に飲み込まれ、繁華街で過酷な環境で働く女の子たちを救う活動をしていた。

1人の未成年の女の子を救うために力を尽くし、夜の街を仕切る組織に目を付けられ、窮地に追い込まれた岩井。彼と女の子を救うために、危険をかえりみず手を差し伸べる冬樹。

こうして冬樹は横浜の夜の街を仕切る、危険な男たちと否応なく関わりを持ってしまう。闇の世界を知る辻村は、冬樹と岩井の身を守ろうと動く。

一方冬樹は、彼に純愛を貫く人妻・響子(中村ゆり)と特別な関係を持っていた。その響子から余命僅かを告げられた冬樹。彼の胸の内に、響子への愛を特別な形で描きたいとの思いが沸き起こる。

仲間を守ろうと動いた結果、危険な男たちの抗争に巻き込まれてしまう冬樹。同時に彼は響子への愛を貫くために、ある決断を下す。

周囲を取り巻く人々の、様々な思いと策謀が交差する中、自分の信念と愛を貫こうとする冬樹。果たして彼の運命は、どのような結末を迎えるのか…。

映画『影に抱かれて眠れ』の感想と評価


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令和の世に描かれた“任侠映画”

夜の街を支配するヤクザ組織。彼らが仕切る世界に囚われた人を救おうと動く主人公。その行動が、対立する組織の抗争を引き起こす。

まさに昭和の世に一世を風靡した、“任侠(ヤクザ)映画”の世界。その世界を新たに映画化して描いた『影に抱かれて眠れ』は、間違いなくその流れをくむものです。

この映画を1970年代から映画業界で活躍している、和泉聖治が監督したのは将に必然の結果。映画の舞台は昭和の香りが残る街並も持つ、横浜の野毛。ここを舞台に平成最後の年に撮影され、令和の世に公開されるハードボイルドな香りが漂う作品です。

同時に従来のヤクザ映画を、現代の世に合うようにカスタマイズした作品でもあります。主人公は画家。ヤクザや刑事・探偵といった、直接裏社会に関わりを持つ人物ではありません。

しかし弟分である仲間や、夜の街に囚われた女を救うために、自分の身に及ぶ利害や危険を顧みず動く主人公。その姿は闇の世界を仕切る男からも、一目を置かれる存在になります。

本来“任侠”とは仁義を重んじ、困っている人を見ると放置せず、彼らを助けるために体を張る、自己犠牲を厭わぬ心を指す言葉。主人公の行動は、まさに“任侠道”の信念に従ったものです。

なお、任侠映画といえば「刺青」。今や映画の悪役のアイテムとしても、“タトゥー”の方が幅広く活躍する時代ですが、本作では刺青が意外な形で、映画の重要な要素として登場します。

令和の世に相応しい形で現れた、本格的“任侠映画”を是非ご覧下さい。

北方謙三の原作「抱影」


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本作のプロデューサーを務めたのは中野英雄。哀川翔に勧誘され“一世風靡セピア”の母体である、“劇男(げきだん)一世風靡”に勧誘されて以来、長きに渡り映画・テレビ・Vシネマの世界、そしてバラエティー番組でも活躍している人気俳優です。

その彼が今回プロデューサーに専念して、作り上げた映画が『影に抱かれて眠れ』。なぜ彼はこの映画を製作したのでしょうか。

俳優として作品に関わる際、演じる事に全てをかけているので、映画が作られる過程を知っている様で知らなかった。今回プロデューサーになったのは、映画がどの様に作られていくのかを、細部まで明確に知りたかったから。中野英雄はこの様に語っています。

同時に北方謙三作品の大ファンである、と彼は告白しています。しかし役者として北方謙三原作作品に出演する機会に恵まれず、その悔しさをバネに、北方謙三作品を1本映画化したい、という希望を持ち続けていました。

今回北方謙三の小説、「抱影」を映画化する機会に恵まれた中野英雄。その作品に、彼は若い頃に作品を見た、そして北方謙三と同年代の監督である、和泉聖治を起用しました。

『影に抱かれて眠れ』には、かつて自身が見た和泉聖治作品のテイストを盛り込んで頂けたと、満足と感謝の言葉を述べている中野英雄。作品に漂う昭和感、“任侠映画”感は、狙って描かれたものです。

この映画に漂う雰囲気は、Vシネマや“任侠映画”の世界を知る者には、堪らない満足感を与えます

新たな才能の起用への拘り


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中野英雄と和泉聖治は、古き良き昭和の“任侠映画”の世界を映像化しただけではありません

主演の加藤雅也、そして彼に関わる重要な役に火野正平と、実績あるベテラン俳優を配しながら、主人公に関わるヤクザ組織の重要な人物に異色の人物を起用しています。

その1人がヒップホップ界で活躍しているアーティスト、AK-69。様々なパフォーマンス活動をしている彼ですが、本作が俳優としての本格的デビュー作であり、初映画出演作です。

そしてもう1人が若旦那。レゲエグループ・湘南乃風のメンバーであるミュージシャンで、2017年に俳優として本格的デビュー。彼にとってもこの作品が、本格的なスクリーンデビュー作となります。

この2人が主人公に対するヤクザを演じますが、その役柄は見事なまでに対称的。共にクセがあり強烈な印象を残す人物を演じており、今後の活躍が期待されます。

まとめ


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硬派な男の映画『影に抱かれて眠れ』の脚本を手掛けたのは、監督としても活躍している俳優・小沢和義。彼も実兄・小沢仁志と共に、Vシネマやインディーズ映画で実績を積み重ねた人物です。

和泉聖治監督はこの映画を、脚本の小沢和義と何回も推敲して作り上げたと語り、フィルムノワールの雰囲気のある、ハードボイルド映画が完成したと紹介しています。

主演の加藤雅也は、ハードボイルドを日本で映画化するのは難しくなったと語った後、その中で本作が完成出来たのは、非常にうれしいと感想を述べています。

かって一世を風靡したVシネマに関わった人々が集まり、新たに劇団EXILE 松組の松本利夫、ミュージシャンのAK-69、若旦那を加え、Vシネマお得意の“任侠映画”の世界を、新たな時代に映画として完成させました。

かつてVシネマ業界を支えた人脈が、現在も幅広く活躍しているように、『影に抱かれて眠れ』に登場した人々も、後のエンターテインメント業界で大きく活躍するでしょう。

そういった面からも、大いに注目すべき映画です。

映画『影に抱かれて眠れ』は2019年9月6日(金)より、丸の内TOEI2ほか全国順次公開!

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