4K3Dハイフレームレートの最新技術によって撮影されたウィル・スミスvsウィル・スミスを描く
アン・リー監督の『ジェミニマン』は、2019年10月25日全国公開!
2005年公開の『ブロークバック・マウンテン』や、2012年公開の『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で、2度のオスカー監督賞を受賞した名匠アン・リー監督。
常に新しい技術で時代を先駆する映画を作るアン監督が、最新の技術を駆使して撮影した作品『ジェミニマン』。
今注目すべき、SFアクション映画『ジェミニマン』の見どころをたっぷりと紹介いたします。
映画『ジェミニマン』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Gemini Man
【監督】
アン・リー
【キャスト】
ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クライヴ・オーウェン、ベネディクト・ウォン、ダグラス・ホッジ、ラルフ・ブラウン、リンダ・エモンド、イリア・ヴォロックほか
【作品概要】
名匠アン・リーが監督が演出を担当。また、脚本は『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)のデヴィッド・ベニオフ、『キャプテン・フィリップス』(2013)のビリー・レイ、『シャザム!』(2019)のダーレン・レムケが努めます。
撮影監督は『コラテラル』(2004)のディオン・ビーブ、編集はアン・リーと長年タッグを組んでいるティム・スクワイアズ。音楽は『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)のローン・バルフェ。
何よりも、ウィル・スミスがウィル・スミスと闘うことで話題となる作品です。
映画『ジェミニマン』のあらすじとネタバレ
ヘンリー・ブローガン(ウィル・スミス)は政府に従事する凄腕の殺し屋。テロリストであるヴァレリー・ドルモフ暗殺のミッションのため狙撃地点で待機していました。
ヘンリーが狙撃をしようとした瞬間、標的の前に少女が見えたことから狙撃のタイミングを変えます。
数秒後に少女は立ち去り、列車がトンネルに入る手前で引き金を引き、標的の首に着弾させます。
その後、あと数センチずれていたら少女を殺していたことで以前のような自信がなくなったこと、また、国家の脅威排除のためと言えども人を殺すことに以前から疑問を抱えていたことからヘンリーは引退を決意します。
引退を伝えるため、上司のデル・パターソン(ラルフ・ブラウン)と旧友で今はレンタルボートの経営をしているジャック・ウィリス(ダグラス・ホッジ)に会います。
船舶暮らしをしているジャックの元へ向かうため、レンタルボート店で働いている海洋生物学の大学院生ダニー・ザカウスキー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)にボートの鍵を借ります。
久々に旧友あったヘンリーは、ジャックからヘンリーが暗殺したヴァレリーはテロリストではなく分子生物学の科学者であったこと、与えられた資料は改竄されていたこと、そしてブダペストにいるユーリという情報屋と会うことを伝えられます。
ジャックの元からボート小屋へ帰る途中、発信器がボートに仕込まれていたことに気づきます。
ボート小屋へ帰った後、ダニーを尋問します。尋問の末、ダニーはDIAの手の者で、引退後のヘンリーを調査していました。
その時、ヘンリーとジャックの会話を聞いていたDIAのジャネット・ラシター(リンダ・エモンド)と秘密組織GEMINIのクレイ・ヴァリス(クライヴ・オーウェン)はユーリ(イリア・ヴォロック)と会うことで”GEMINI計画”について知られることを懸念してヘンリーとヘンリーに関わる者に暗殺部隊を送り込みます。
その夜、ジャックとヘンリーの相方だったマリーノは殺されてしまいます。異変に気付いたヘンリーは暗殺部隊を倒し、ダニーの元へ向かいます。
そして、ダニーと共に追手をかわし、ボートで逃亡。そこで思案に暮れていると、ヘンリーの旧友で凄腕パイロットのバロン(ベネディクト・ウォン)が迎えにきます。
ひとまず、コロンビアのバロンの自宅で身を隠しますが、そこにも追手がやってきます。ヘンリーはバロンとダニーを逃すため、囮として追手と戦います。
ヘンリーは追手と戦闘を繰り広げているうちに、その追手があまりにも自分に似ていることに気づきます。
そして市街戦、バイクでのカーチェイスを繰り広げ、警察に身柄を確保されます。
ダニーのおかげで解放されたヘンリーはブダペストに向かいユーリと会うことを決めます。
ブダペストでダニーはヘンリーの血液と追手が落とした帽子についている髪の毛をDNA鑑定にかけると、全く同一のDNAであり、追手はヘンリーのクローンであることがわかります。
そしてヘンリーはユーリと会い秘密組織GEMINIと”GEMINI計画”について聞きます。”GEMINI計画”とは1996年に世界初のクローン羊ドリーの誕生と共に秘密裏で行われていたクローン人間の製作計画でした。
そのことを知ったヘンリーは、再びブダペストで襲撃があると考え、自分のクローンであるジュニアとコンタクトを取ります。
ジュニアと殴り合いの末、ヘンリーは「お前は俺であり、ジュニアのことは自分が一番知っている、人を殺すことに疑問を持っているんだろ?」と、説得を試みます。
ジュニアは自分の存在の意義、なぜ普通と違うのか、など様々なことに疑問を抱いていました。
そして、育ての親であるクレイに自分がクローンであり、今まで道具として利用していたことを問い、組織から離反します。
そのあとすぐ、ジュニアはヘンリーたちとコンタクトを取り、自身がハチアレルギーを持っているジュニアは、ヘンリーが本当に自分のオリジナルであることを確認するためハチの毒をヘンリーに打ち確認します。
自分がヘンリーのクローンであり、クレイが真の敵であることを知ったジュニアは、ヘンリーたちと共闘することを決意します。
ヘンリーとジュニアたちが車で移動中、GEMINIとクレイの襲撃を受けます。その際、バロンは逃げ遅れ殺されてしまいます。
そしてダニーとヘンリーは互いをカバーしながらGEMINIの掃討を、ジュニアはクレイを倒すため別れます。
ジュニアは育ての親のクレイを撃つことを躊躇し、計画を止めるよう頼みますが、クレイは「お前が俺のクローンだったらよかった」と言い離します。
非情になれないジュニアはクレイを殴り、気絶させますが…。
映画『ジェミニマン』の感想
本作『ジェミニマン』はアン・リー監督が今まで培ってきた経験が盛り込まれつつも、さらに新しい技術を使用したSFアクション作品となっています。
『グリーン・デスティニー』(2000)でアクションの新しい形をみせ、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』でとてもリアルなCGを使用し、『ビリー・リンの永遠の一日』(2016)で速いフレームの効果を見せた、そんな様々な要素が盛り込まれた作品が『ジェミニマン』です。
物語の内容は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『シックス・デイ』(2000)のように昔見たことのあるクローンものSF映画ですが、この映画の撮影には素晴らしい技術と製作陣のアイデアと努力が伺えます。
この作品の見どころは「4K3Dハイフレームレートの撮影」と「派手なアクション」と言い切って良いでしょう。
最新のテクノロジーによる映画撮影
本作は4K3Dという高画質高性能のカメラを使っただけでなく、通常のフィルム撮影では、毎秒24フレームで撮影されるのに対して、『ジェミニマン』は毎秒120フレームというフレームレートで撮影されています。
このことにより画質はより滑らかで、日常で認知している視覚情報と同じような体験を観客に与えます。
つまり、『ジェミニマン』はアン・リー監督の試験的作品であり、新たな挑戦だとも言えます。
4K3Dハイフレームレートは、確かに革新的で視覚的リアリズムを生むには素晴らしい撮影方法。しかし4K3Dというカメラはより近く感じるだけでなく、役者の毛穴が映るほどの高画質。
それは通常のメイクだと観客にメイクであることを見破られてしまう。そのため、本作のメイクは今までのメイク技術とは画した全く新しいメイク技術を使用しています。
そのためヘンリーが負った傷は、観客に痛さを感じさせるとてもリアルな出来栄え。また、ハイフレームレートは通常のフレームレートと違い、より多くのフレームで構成されているため、映像に誤魔化しが効かないのですが、アン・リー監督は巧みにCGと撮影技法を用いることで綺麗にまとめており、演出がより明確です、
バイクとカンフーの融合「バイフー」
さらに、最新テクノロジーで撮影されたアクションは、何と言っても大きな見どころの一つです。
アン・リー監督はワイヤーアクションの先駆けとなる『グリーン・デスティニー』で素晴らしいアクションを見せ、観客を驚かせてくれました。
彼が手掛けた本作のアクションは、バイク×カンフーを組み合わせたバイフーというアクションを新たに生み出しました。
最近のアクション映画、『ジョン・ウィック パラベラム』(2019)や「ミッション:イン・ポッシブル」シリーズでバイクでのカーチェイスシーンはありますが、バイクそのものを武器として使ったバイフーは、これまでにはない、全く新しいものでしょう。
その手に汗握るアクションがより滑らかな撮影によって行われるのですから、アクション好きは興奮間違い無いでしょう。
まとめ
アン・リー監督の常に新しいことを取り入れるクリエィティブな精神には驚かされます。
『ジェミニマン』はアクション映画を好きなファン、また、ウィル・スミスのファンは歓喜する作品になっています。それを可能にしたのが、最新技術によって撮られた圧巻の映像なのです。しかし、この120FPSという映像技術を体験できるのは、現在日本では、MOVIXさいたま、梅田ブルク7、T・ジョイ博多の3館のみ。
もし、鑑賞できる環境が近くにあるのならば、この『ジェミニマン』の映像だけは一見の価値ある作品だと言っても過言ではないでしょう。