Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

新作映画ニュース

映画『ぼくのこわれないコンパス』作品紹介。児童養護施設のドキュメンタリーがクラウドファンディング開始!

  • Writer :
  • 石井夏子

児童養護施設の子ども達が直面している問題とは。

現在日本では、生みの親と暮らせない、児童養護施設に暮らす2歳から18歳の子どもたちが約25,000人いるといわれています。

里親家庭や乳児院などのその他の社会的養護下に置かれている子どもたちを含めると、約45,000人に上ります。(厚生労働省統計より)

約6割は虐待を経験し、この子どもたちには、カウンセリングなど、十分なメンタルヘルスのサポートがありません。

さらに、原則18歳の高校卒業と同時に施設を退所することが定められており、まだ経済力がない中、衣食住すべての自立が求められます。

ドキュメンタリー映画『ぼくのこわれないコンパス』は、児童養護施設で育った父親のルーツを辿るため来日したアメリカ人の監督マット・ミラーが、児童養護施設の子ども達が直面している問題を扱い、声なき声に焦点を当てていきます。

この記事では本作の紹介と、完成に向けたクラウドファンディングのご案内をして参ります。

映画『ぼくのこわれないコンパス』について

映画『ぼくのこわれないコンパス』

第二次世界大戦後、孤児として日本の児童養護施設で育った父親。彼のルーツを辿りたいと、2006年に来日したアメリカ人の映像作家マット・ミラー

マット監督は、児童養護施設で暮らす子どもたちがアウトドア体験を通して自分の道を自分の力で切り拓ける「生きる力」を育むことを目的とする認定特定非営利活動法人『みらいの森』で映像を撮るようになりました。

現在、日本の児童養護施設に入所している子どもたちの内、約6割は虐待を経験していますが、この子どもたちには、カウンセリングなど、十分なメンタルヘルスのサポートが無いんです。

さらに、原則18歳の高校卒業と同時に施設を退所することが定められており、まだ経済力がない中、衣食住すべての自立が求められるという現実を知り、ショックを受けたマット監督は、社会への発信が必要だという思いに至ります。

映画『ぼくのこわれないコンパス』

その『みらいの森』の参加者の一人・トモヤ(現在20歳)は、マットとの出会いと交流をキッカケに「自分と同じような境遇にある子どもたちの、声なき声の代弁者になりたい」と決意。

18歳以下の児童養護施設の子ども達は、引き離されている親の同意書が必要になってくるため、ドキュメンタリーに顔や声を出すことは難しいんです。

親の同意なく出演できる年齢となったトモヤは、児童養護施設の子ども達を代表し、本ドキュメンタリーの被写体となることに同意しました。

認定特定非営利活動法人『みらいの森』とは?

映画『ぼくのこわれないコンパス』

認定特定非営利活動法人『みらいの森』は、児童養護施設で暮らしている子どもたちが、自分の将来の道を自分の力で切り拓くためのスキルや考え方を、体験を通して学べるプログラムを企画・運営しているNPOです。

長期宿泊型のサマー・ウィンターキャンプや日帰りプログラムなど、年間を通して継続的に行われる活動は、子どもたちが退所後にスムーズに自立し、社会で幸せに暮らしていくために必要な「生きる力」を、体験を通して身に着けるようにデザインされています。

「アウトドア」「多文化・多様性」「ロールモデル」を基軸として構成される非日常的な環境で、子どもたちは新しい経験を通し、幅広い学びの場で新しい自分と可能性を発見することができる場所です。

主人公:トモヤのプロフィール

映画『ぼくのこわれないコンパス』

本作の主人公であるトモヤは、2歳の頃から漁師の祖父母と3人で暮らしていました。

2011年3月11日、当時11歳のトモヤは、東日本大震災の津波で、祖父母と住んでいた家を失ってしまいます。

祖父母が見つからないまま3週間が過ぎた頃、それまで数える程しか会ったことがなかった母親が迎えに来て、東京で母親と母親の新しい家族と一緒に住むことになります。

2012年6月に母親によるネグレクト、9月に虐待が発覚。東京の児童養護施設に保護され、居場所を見つけました。

2014年夏より、児童養護施設で暮らす子どもたちのためのサマーキャンプ『みらいの森』に参加

トモヤのコメント

「私にとって、児童養護施設は我が家でした。心から安心して日々を送れることが私の人生を好転させてくれました。多くの子ども達が同じ気持ちだと思います。一方で、児童養護施設に暮らす子どもたちの多くが心の傷を負っていますが、それに対する心のケアが足りていないことは大きな社会的問題だと感じています。この映画を通して、一人でも多くの人に、カウンセラーらによるケアを必要としている大勢の子ども達がいる事実を知っていただきたいのです。当時、私自身も心のケアを必要としていました。あの時、みらいの森のプログラムに出会い、前向きな気持になれた事は幸運な事だったと心から思います。いつか、私も子ども達を支えるケアワーカーの一人になれたらと考えています」

監督:マット・ミラーのプロフィール

映画『ぼくのこわれないコンパス』

本作の監督マット・ミラー(Matt Miller)はアメリカ生まれ

彼の父親はアメリカ人の父と日本人の母の間に日本で生まれ、第二次世界大戦の混乱の中、孤児として日本の児童養護施設で育ち、10歳の時に養子として渡米。

児童養護施設で育った父親のルーツを辿りたいと2006年に来日したマットは、日本では現在も沢山の子どもたちが児童養護施設で暮らしている現実を知ることになりました。

子どもの権利を守るために、映画制作を通してより多くの人々の意識や行動に変化を促すことを目的に活動してます。

マット・ミラー監督のコメント

「私は法律を作ることはできませんが、映像作家である私は“意識を変えるきっかけ”を創造することができます。社会から取り残された声なき子どもたちの声を社会と共有するために、映画というプラットフォームを通して積極的な役割を果たせるはずです。この映画に心動かされない人はいない、と確信しています」

映画『ぼくのこわれないコンパス』のクラウドファンディング

本ドキュメンタリー映画の完成に向け、到達しない場合は1円も受け取ることができない「All or Nothing方式」を採用した500万円を目標とするクラウドファンディングで寄付を募っています。

クラウドファンディング概要

【目標金額】
500万円
※500万円を集めることを目標とし、到達しない場合は1円も受け取ることができない「All or Nothing方式」を採用。

【期間】
2019年7月21日(日)正午開始・9月22日(日) 正午終了

【特典】
エンドロールクレジットに名前がクレジットされる権利、本作をダウンロードする権利、 KEENのシューズ、ヘリコプター周遊にご招待、スカイダイビングにご招待など、寄付金額によって8つのコースが用意されています

※詳細・寄付につきましては映画『ぼくのこわれないコンパス』クラウドファンディングサイトをご覧ください。

映画『ぼくのこわれないコンパス』の作品情報

映画『ぼくのこわれないコンパス』

【完成予定】
2019年

【監督】
マット・ミラー

【キャスト】
トモヤ

映画『ぼくのこわれないコンパス』のあらすじ

映画『ぼくのこわれないコンパス』

トモヤが12歳だった2012年6月、実の母親とその夫がメモと1000円だけを残して数日外泊していることを学校の先生が知り、母親の帰宅まで児童相談所に保護されます。

3歳になった9月には学校の健康診断で背中に痣が見つかり、児童相談所で数日、一時保護所で2ヶ月過ごした後、児童養護施設に入所。

そこで見つけた安心できる生活と、『みらいの森』との出会いなど10代の自分に起こった出来事を、トモヤ本人が自分の言葉で告白。

マット監督のカメラは、トモヤや他の子どもたちの“目”となり、様々な背景を持った彼らの心や、施設での毎日の暮らし、そして大自然の中で「生きる力」を取り戻していく道筋を、 詩的に映し出していきます。

まとめ

映画『ぼくのこわれないコンパス』

本作は、これまで直接聞く機会がほとんどなかった子どもたちの心に光を当て、児童虐待や、ネグレクト、そして子ども達のメンタルケアの欠如などの社会問題に正面から向き合い、社会に発信することで、関心をもってもらうことを目指しているとのこと。

1年半強で撮り貯めた映像のみで編集して関係者に見せたところ、確かな手応えを得たといいます。

8月現在、撮影シーンの追加、その編集などに必要な予算のために、クラウドファンディングで500万円の資金を募っています。

映画は80%まで完成しており、2019年9月末までに追加の撮影を終わらせた後、編集作業にとりかかり、2019年12月末までに本編を完成させる予定の映画『ぼくのこわれないコンパス』

ぜひ応援してください。

関連記事

新作映画ニュース

映画『河童の女』あらすじ/キャスト/公開日。笑える感動作を51歳の新人監督辻野正樹が生み出す!

「カメ止め」現象を巻き起こしたENBUゼミナール CINEMA PROJECT最新作。 今や恋愛映画の旗手と呼ばれる今泉力哉監督の『退屈な日々にさようならを』(第6弾)や、上映館数350館・動員224 …

新作映画ニュース

映画『サッドヒルを掘り返せ』あらすじとメインビジュアル解禁。名作西部劇のロケ地の現状は?

マカロニ・ウエスタンの名作『続・夕陽のガンマン』(日本劇場公開時の題名は『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』)の伝説的ラストシーンの舞台となったロケ地「サッドヒル」。 『続・夕陽のガンマン』のファンたち …

新作映画ニュース

【ショートフィルムフェスティバル】開催日時と上映作品。アジア最大級の国際短編映画祭が山口県初上映!

アジア最大級の国際短編映画祭から選りすぐりの20本を山口初上映! 山口情報芸術センター(YCAM)では、劇場のスクリーンで見る機会の少ない世界の短編映画を上映する「ショートショート フィルムフェスティ …

新作映画ニュース

映画『ソング・オブ・ザ・シー』あらすじ/吹き替え版オンライン上映情報。子供向けおすすめイベントも開催

春のこどもオンライン上映会+ワークショップ開催。 数々の優れたアニメーション映画を日本に紹介してきた配給会社チャイルド・フィルム。 コロナ禍で「映画館に行くのが心配」という子どもたちに向けたオンライン …

新作映画ニュース

ドニーイェンの映画『イップ・マン完結』インタビュー動画紹介!新公開日は7月3日と決定

主演ドニー・イェン、ウィルソン・イップ監督のインタビュー含む貴重なメイキング映像解禁。 ドニー・イェンが詠春拳の達人イップ・マンを演じる“イップ・マン”シリーズ最新作にして完結版となる『イップ・マン …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学