1988年に一世を風靡した『チャイルド・プレイ』のリブート版が2019年7月に日本公開。
殺人犯の怨霊が宿る人形という設定から30年を経て、家庭で普及する人工知能へと進化したチャッキー。
日本では同日公開されるホラー映画『ポラロイド』共にノルウェー出身の新鋭ラース・クレヴバーグが監督を務めます。
殺人人形チャッキーの声を担当したのは、『スターウォーズ』のルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミル。
映画『チャイルド・プレイ』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Child’s Play
【監督】
ラース・クレヴバーグ
【キャスト】
オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、マーク・ハミル
【作品概要】
『IT“それ”が見えたら、終わり。』の製作陣が本作をプロデュース。自作の短編映画『The Wall』や『ポラロイド』で注目を集めたラース・クレヴバーグが監督を担当し積極的にキャスティングにも加わりました。
デヴィッド・サンドバーグと『カン・フューリー』の続編で共同執筆したテイラー・バートン・スミスが本作の脚本を書いています。
映画『チャイルド・プレイ』のあらすじとネタバレ
ハイテク企業カスラン社はAI搭載の人形を販売。システムとクラウド接続したカスラン社のスピーカーや空調システム、そしてロボット掃除機等を集約するネットワーク機能に加え学習能力も備えています。
製造工場が在るベトナムで、上司からいきなり頬を叩かれ厳しい叱責を受けた行員が腹いせにバディ人形の安全対策に施された全機能を無効化したチップを取り付けます。
梱包されたバディ人形がベルトコンベアで流れて行く中、工員は投身自殺しました。
ゼッドマートの返品対応窓口で働くカレン・バークレーとアンディは町に引っ越して来たばかり。補聴器を必要とするアンディは新モデルのバディ人形に興味を持つ13才で、まだ友達がいません。
隣人のマイク・ノリス刑事は、アパートの廊下に座り1人スマホで遊ぶアンディを頻繁に見かけ、気に留めていました。
ある日、購入したバディ人形の目が赤くなり奇妙だと訴える客が返金を求めて店にやって来ます。カレンは息子の誕生日を控え、上司に掛け合い返品された人形を貰い受けます。
アンディを所有者と認識したバディは、指示を無視し勝手にチャッキーと自分を命名。更に眠ろうとするアンディに「最後まで君が親友」と歌い出します。
最初は苛つくものの側を離れず従順で日々学んでいくチャッキーに、アンディは愛着を持ち始めるようになり、人形のお蔭で友達もできます。
母親のボーイフレンド・シェインの無神経な振る舞いに傷ついていたアンディは、友達を交えチャッキーを使っていたずらを仕掛けます。
その様子を人形に録画させて皆で楽しみ、80年代のホラー映画を観ながら大笑いするアンディ。
特撮による残酷シーンを一緒に見つめる人工知能は、所有者を喜ばせるものとして認識します。
嫌われていることに苛立つシェインは、アンディに度を超えた態度を取ります。
「あんな奴大嫌いだ。消えてくれ」思わずそう言ったアンディの言葉に反応するチャッキーの表情は歪んだ笑みを浮かべ、目が赤く変わりました。
映画『チャイルド・プレイ』の感想と評価
1988年のリブート版として、全く別のテーマを掲げた2019年公開の『チャイルド・プレイ』。
怨念も呪いも関係なく、現代人に対する風刺が込められており、80年代のアナログ特撮をコメディ要素として利用した面白い作品です。
ハイテクメーカー・カスラン社は、クラウド接続で起動する人工知能を搭載した子供用の人形“バディ”をリニューアルして発売するという設定。
所有者を喜ばすことが目的とプログラムされており、80年代のホラー映画で描写されるアナログな残酷シーンを笑うアンディ―を見たチャッキーは、その行為が悪いことだと認識しない所が鍵となっています。
冒頭、上司の暴言に対する腹いせに、バディ1号の製造工場で働く行員が人形の安全装置を無効化した後、投身自殺する場面があります。
長時間労働、残業代未払い、1部屋に工員8人を住まわせる等、劣悪な労働環境で次々従業員の投身自殺が起きて報道された2010年当時のiPhone最大工場フォックスコン社の事件を例えたものです。
本作の監督を務めたラース・クレヴバーグは、親がおもちゃを買い与えても子供は直ぐ飽きて新しい物を欲しがるが、人々の犠牲によって製造されている現状があるとインタビューで答えました。
一方、利便性を叶える新技術は日々の生活に深く入り込んでおり、クレヴバーグ自身もスマホに頼りきりだと話します。
しかし、その潜在能力は、一度間違えば人間には有害かもしれないと本作は描いているのです。
2018年の『ビール・ストリートの恋人たち』で凄みがある演技を見せたブライアン・タイリー・ヘンリーがマイク・ノリス刑事役を演じています。
ホラー映画の大ファンであるヘンリーは、『チャイルド・プレイ』と聞き即出演を決めました。
皮肉の利いた冗談が得意なヘンリーのアドリブであろう小気味好さや、一瞬見せる刑事の気迫など幅のある表現力を見せており、マーク・ハミルの熟練した声の演技と共に作品を締める役割を果たしています。
そして、ヘンリーが絶賛するのは、主人公アンディ・バークレーを演じた『ライト/オフ』(2016)のガブリエル・ベイトマン。
孤独な少年から母・カレンを救う小さな戦士に至る変遷は説得力があり、彼の視点で進行する物語の主役を見事に担っています。
まとめ
新居地に馴染めないアンディの新しい友達はAI内臓の人形でした。
スマートハウスで暮らす家族をターゲットに売り出され、更なる快適さを実現するはずだったチャッキー。
しかし、意図的に安全装置が外された先端技術は善悪の区別がつかず、同期できるシステムを悪用し更に狂暴になって行きます。
2019年度公開の『チャイルド・プレイ』は、笑いを上手に取り入れたホラー映画で、GPS、ドローン、自動温度設定装置も人間に対する凶器になり得る可能性を描いたちょっと身につまされる物語です。