ヤバいぜ、不二子。
ダーティでハードな、ルパン三世を描く「LUPIN THE ⅢRD」シリーズの第三弾『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』。
『ルパン三世』の人気キャラクター・峰不二子が主役の本作では、彼女に絶体絶命の危機が訪れます。
映画『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』作品情報
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
【公開】
2019年5月31日(日本映画)
【原作】
モンキー・パンチ
【監督】
小池健
【脚本】
高橋悠也
【キャスト】
栗田貫一、小林清志、沢城みゆき、宮野真守、半場友恵
【作品概要】
長きに渡り日本アニメ界を牽引し、日本のみならず世界にも人気を博する『ルパン三世』を新たな視点によってその魅力を照らし出し、ハードで危険なルパンを描いた「LUPIN THE ⅢRD」シリーズの最新作。
監督には、これまでのシリーズ『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』でも監督を務めた小池健。脚本は『ルパン三世 PART4』でシリーズ構成・脚本を担当し、『仮面ライダーエグゼイド』などでも知られる高橋悠也が務めました。
映画『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』あらすじとネタバレ
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
峰不二子はある目的を果たすため、ランディとジーン父子のメイドとして働いていました。
ある日、この親子の下に殺し屋が送られてきます。父ランディは不二子にジーンを連れて逃げるように言い、一時間後に合流しようとメモを渡します。
殺し屋たちは車内に拘束していた男ビンカムを解き放つと、金のありかを吐かせるよう命令します。
ランディに迫るビンカムは体から砂嵐を巻き起こし、不思議な催眠術で金のありかを聞こうとします。しかし、ランディは素早く逃れると持っていた爆弾を起爆させ、自宅ごと吹き飛ばします。
その頃、ルパン三世と次元大介は投資信託会社ゴドフリー・マイニングの社長ゴドフリーを盗聴していました。
ゴドフリー・マイニングでは最近、会計士が5億ドルを横領するという事件が発生していました。
5億ドルを狙うルパンたちはそのありかに関する手がかりを得ようとしていましたが、ゴドフリーの会話の中で、横領した会計士がメイドを雇っており、その女が不二子であることを知ります。
5億ドルを横領した件の会計士とはランディのことであり、殺し屋たちをランディの下へ送ったのはゴドフリーだったのです。
不二子とジーンは合流場所でランディを待ちますが、ランディは現れません。そこに二人を追って来たビンカムが現れ、ランディが死んだと告げ、ジーンから情報を聞きだそうとします。
催眠術にかかったジーンは金は貸金庫にあると答え、暗証番号を口にしようとしますが、不二子に止められます。
ビンカムは邪魔をする不二子を殺そうとしますが、彼女とジーンは駆けつけたルパンと次元に助けられます。
ルパンは不二子もランディが横領した5億ドルを狙っていると察し、金のありかを聞こうとしますが、ランディが死んだことでありかは分からなくなったと彼女は答えます。
しかし、金のありかを知っているジーンはそれを教えることを引き換えに、ランディの仇討、すなわちビンカムの殺害を依頼します。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』ネタバレ・結末の記載がございます。『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
ジーンの依頼を快諾するルパンと次元、成り行き上ともに行動する事になった不二子はゴドフリーにジーンの居場所に関する情報をわざと流し、ビンカムを誘い出そうとします。
現れたビンカムを殺そうとするルパンと次元。しかしビンカムを管理する殺し屋の妨害を受けてしまいます。その隙に、迫るビンカムから不二子はジーンを連れて逃げ出します。不二子はビンカムの追跡を振り切り、逃げ切ることに成功します。
ビンカムを取り逃がしたルパンですが、気になることがあり、次元と共にある場所へと向かいます。
一方、ビンカムから逃げ切った不二子とジーンはモーテルに身を潜めることにします。不二子はジーンに死んだランディの事は忘れろと言い、貸金庫の暗証番号を聞き出そうとしますが、ジーンは不二子が金が目的で近づいてきた事に気付き、頑なに教えようとしません。
その頃、ルパンたちはランディの自宅を訪れ、「あるもの」に気がつきました。
やがて、不二子たちが潜伏していたモーテルに警官が現れます。不二子はジーンを連れて逃げようとしますが、ジーンは言う事を聞きません。結局不二子は一人で逃げ、ジーンは警官に保護されます。
ジーンと警官の後を追い、彼を取り戻そうとする不二子ですが、警官はジーンを連れてゴドフリー・マイニングへと入っていきます。警官はゴドフリーによって買収されていたのです。
ジーンを追い社内に潜入しようとする不二子ですが、殺し屋に見つかってしまいます。ゴドフリーの前に連れてこられた不二子とジーンは金のありかを問い質されますが、二人は答えません。
ゴドフリーはジーンをビンカムのいる部屋に入れ、情報を聞き出そうとさせます。
催眠術にかかったジーンは暗証番号を話そうとしますが、隙を突いて拘束を解いた不二子はジーンに「その記憶こそが武器になる」と告げます。ジーンは暗証番号を言う前に我に返ります。
邪魔者である不二子を先に殺すようゴドフリーはビンカムに命令。ビンカムに組み伏せられた不二子は「これほどの力を持っていながら、言いなりになっているのか」と彼に問います。
動揺するビンカムにゴドフリーは「お前にどれだけ金がかかったと思っているんだ!」と叱責します。
我に返ったビンカムは不二子を殺そうとしますが、そこに現れたルパンと次元に彼女は助けられ、ジーンとともに逃げ出します。
助けてくれた礼もそこそこに、不二子はジーンを連れてホテルへと入ってゆきます。「いいのか」と尋ねる次元に、ルパンは「気にかかることがある」と言います。
ジーンは自らの命を顧みずに助けに来てくれた不二子を信頼し、暗証番号を教えます。
その頃、ルパンはある場所に訪れていました。そこは、ゴドフリー・マイニングが多額の金を送金した場所でした。ルパンはその場所が、ビンカムのような高度な殺人技能を持った兵士を製造する施設ではないかと睨んだのです。
そこには、前作『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』にて石川五ェ門と死闘を繰り広げた手斧使いの殺し屋ホークの姿があり、さらには『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』にて次元と会敵した狙撃専門の殺し屋ヤエル奥崎も関係しているらしいことが判明したのです。
不二子はジーンに「ホテルからは出るな」と言い、出かけようとします。ジーンは戻ってくるかと訪ねますが、何も答えることなく不二子は出てゆきます。
その頃、ゴドフリーの下に不二子からメッセージが届きます。そこには5億ドルの現金と共に写る不二子の写真があり、指定の場所で待つというものでした。
ゴドフリーはビンカムを不二子が指定した場所へと向かわせます。到着したビンガムは不二子に金のありかを尋ねますが、彼女は答えません。やがて、力ずくで聞き出そうとするビンカムと不二子の戦闘が始まりました。
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
ビンカムの猛攻の前に不二子は追い詰められていき、ついにはビンカムに捕まってしまいます。催眠術を使おうとするビンカムに、不二子はリモコン式爆弾のスイッチを押します。
爆弾は地下に埋められており、水脈に達した爆発によって周囲には水滴が降り注ぎます。すると、ビンカムの催眠術は効果がなくなってしまいました。
不二子はビンカムが常食していた木の実が「デビルズトランペット」と呼ばれる植物の実であると言い当てます。
ビンカムはその実に含まれている人間の精神に作用する成分を砂嵐と共に放出し、催眠状態を生み出していたのです。
雨のごとく降り続ける水滴によって砂嵐と成分の放出を抑えられ、催眠術を封じられたビンカムは不二子を殺そうとしますが、殺すことが出来ません。不二子はその隙を突き、隠し持っていたナイフでビンカムの胸を貫きます。
なぜ敗れたのか不思議がるビンカムに、不二子は「毒」が効いたのだと言います。彼は毒の名を尋ねます。彼女は「愛と言う名の媚薬」と答えました。
殺人兵士として造られたビンカムには心など存在しなかったはずでしたが、不二子を「女」として意識し始め、いつしか情が芽生えていたのです。
その頃、ゴドフリーの前にルパンと次元が現れます。
次元の早撃ちによって一切の抵抗を封じられたゴドフリーとその部下、そして殺し屋。ルパンは殺人兵士を造る施設を管理する者の正体、そしてこれまでにルパン一味が遭遇してきた事件の黒幕の正体を尋ねます。
答えようとするゴドフリー。しかし、彼は突如頭を撃ち抜かれ、絶命します。
窓から外を伺うルパン。そこには、隣のビルからゴドフリーを狙撃したヤエル奥崎の姿がありました。以前の次元との戦いで失ったはずの左腕には、高性能な義手が埋め込まれていました。
ヤエル奥崎は姿を消し、ルパンは手がかりを得ることが出来ませんでした。
その頃、ジーンの部屋にある人物が訪れ、扉を開けたジーンは驚きます。そこには死んだはずの父ランディの姿がありました。
不二子の下を訪れたルパンは、なぜビンカムと戦ったのか尋ねます。不二子はジーンに恩を売るためと答えますが、ルパンは本当はビンカムが生きている限り、ジーンが狙われ続けるからではないかと口にします。
ルパンはさらに、本当はランディが生きている事を知っていたのではと彼女に問います。
彼はランディの家で地下室へ通じる扉を見つけていました。そして、不二子はジーンにランディが死んだと思わせ、金のありかを聞き出そうとしていたのではと気付いたのです。
悪びれもせず「そうだ」と答える不二子は、心臓病を患うジーンの手術費用のためにランディは5億ドルを横領していた事を明かし、子供の命を危険にさらしてまで金を得るべきじゃないと分かったはずだとルパンに言います。
話しを終えた不二子は少し休むといい、眠りに落ちます。それを見ていたルパンもいつしか眠ってしまい、彼が目が覚ました時には、不二子はすでに立ち去っていました。
映画『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』の感想と評価
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
「LUPIN THE ⅢRD」シリーズは、これまでの『ルパン三世』のイメージを覆しながらも、それぞれのキャラクターの魅力を深く掘り下げています。
これまでに制作されたシリーズ作品でも、ルパンを「怪盗」ではなく一人の「犯罪者」として、時に非情な、時にダーティなキャラクターとして描き、ルパンと次元の関係性も「相棒」というよりも「仕事仲間」といった、割り切った浅い関係で描かれていました。
そんな中、不二子は誰の味方にもならず、自らの利益のためルパンやその他の男達を利用し、欺き、逃げ、都合のいいように立ち回る本来のイメージから脱せずにいましたが、本作で彼女の印象が大きく変わりました。
特に劇中で不二子が放った「つけない嘘はつきたくない」という言葉は、彼女自身の信条を表わしているように感じられました。
そのセリフは、裏を返すと言葉に出さないことはやり遂げる意思の表れであり、事実、ジーンに対し「絶対に守る」「ビンカムを倒す」といった言葉をかけなかったにもかかわらず、自らの危険を顧みずビンカムに挑んでいった姿がそれを示しているように感じます。
また、ビンカムを倒した後の横顔が少し悲しそうに見えたのも印象的でした。
殺人兵士として生まれ、当たり前の感情を持たずに生きていたビンカムが不二子に対し「恋」や「愛」といった感情を抱き始めた。そこにつけ込むような形で彼を倒したことに引け目を感じたのか、或いはビンカムの境遇そのものを不憫に思ったのかは不二子のみが知ることですが、見たことの無い不二子の表情に彼女の人間味を感じました。
「LUPIN THE ⅢRD」シリーズはモンキー・パンチの原作漫画に近いタッチで描かれており、劇画風の作画で描かれていますが、視覚効果による演出も行われており、懐かしくも迫力のある作風となっていました。
特に、ビンガムが発する砂嵐は、視覚効果による砂の表現と作画による風の表現が相まって、目の前で嵐が巻き起こっているかのように感じました。
まとめ
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
『ルパン三世』の生みの親であるモンキー・パンチは、2019年4月11日に亡くなられました。惜しむ声が上がる中、彼が残した作品の数々は国内外で親しまれ、とりわけ『ルパン三世』の人気の高さは、彼の偉大さを物語っています。
その原作漫画をもとに制作されたアニメーション作品においても、1971年の第1シリーズ放映から約50年もの歴史の中でその時代、その社会を反映させたストーリーでファンを楽しませ続けています。
『ルパン三世』はモンキー・パンチの意志とともに、今後も燦然と輝き続ける作品となるでしょう。
その中で、本作ではシリーズの過去作品『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』で登場した敵キャラクターであるヤエル奥崎とホークが再び姿を見せ、黒幕の存在も示唆されました。
今後、ルパンたちはどんな危難に見舞われ、その時私たちにどのような「生き様」を見せ、魅了してくれるのでしょうか?
これからも広がり続ける『ルパン三世』の世界が楽しみです。