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Entry 2019/05/16
Update

映画『パージ:エクスペリメント』ネタバレあらすじと感想。【The First Purge】をアメリカ独立記念日に公開させた意図とは⁈

  • Writer :
  • 奈香じゅん

『パージ:エクスペリメント(原題:The First Purge)』は、「パージ」シリーズの第4作。

1年に1度、殺人を含め全ての犯罪が12時間合法となるパージ(粛清)法。

パージ:エクスペリメント』は、アメリカ現代社会を背景に虚構の社会を舞台とした『パージ』シリーズの4作品目です。

本作では、パージ法が施行する前に遡り、政府の陰謀が明らかになります。

『パラノーマル・アクティビティ』や『ゲット・アウト』等を製作し突出した投下資本率でヒット作を連発するブラムハウス・プロダクションが引き続き製作しました。

映画『パージ:エクスペリメント』の作品情報


(C)2018 Universal Pictures

【公開】
2019年6月14日(アメリカ映画)

【原題】
The First Purge

【監督】
ジェラルド・マクマリー

【キャスト】
イラン・ノエル、レックス・スコット・デイビス、ジョイバン・ウェイド、ローティミ・ポール、スティーヴ・ハリス、ローレン・ヴェレス、マリサ・トメイ

【作品概要】
ブラムハウス・プロダクションの代表で本作のプロデューサーであるジェイソン・ブラムが選出した『ヘルウィーク』の新鋭ジェラルド・マクマリーが監督です。

これまで監督を務めてきたジェイソン・デモナコは脚本を執筆し、マクマリーと共に編集も担当しています。主要登場人物を演じる俳優陣は、オーディションで選ばれたニューフェイスです。

映画『パージ:エクスペリメント』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Universal Pictures

経済が破綻したアメリカでは、現状に不満を持つ市民がデモを起こす中、既存政党に代わり新政党「アメリカ建国の父(NFAA)」が政権を握り新大統領が選出されました。

ニューヨーク州、スタテンアイランド。パージの実験開始2日前。政府は、島民に実験中島に居残れば5千ドル、更に外へ出て憂さを晴らせば報酬を増額すると約束し参加者を募ります。

12時間全犯罪を合法とする前代未聞の政府決定に対し、反対派と賛成派の住民が抗議を行う中、世界中からメディアが押しかけ実況中継が始まりました。

実験を考案した行動科学者のアップデールは意図をマスコミに訊かれ、責任を問われず暴力的な行動が取れる環境にあるからこそ暴力は抑止されるという見解を述べます。

島のギャングを統括するドミトリは手下を集め、お金や麻薬を守るためライバルから襲撃されないよう実験中は大人しくするよう命じました。

パージ反対のデモで先頭に立ったナイアは、弟・アザイアが家計を助けるため学校をさぼってドミトリの麻薬を売っていたことを知り、ドミトリの事務所に怒鳴り込みます。

街角で誰が自分の麻薬を売っているのかまで把握していないドミトリは、お金が必要なら渡すと申し出、パージの実験中も自分がナイアとアザイアを守ると話します。

しかし、ナイアは血で汚れたお金など要らないと突っぱね、ドミトリが道を踏み外してギャングのボスになったことを批判しました。

実験開始1時間前。教会には苦しい生活のため、島に残る決断をした島民が集まっています。ナイアは、訪れる人達に警備員が配置され食事も用意してあると伝えます。

一方、アザイアは5千ドル目当てに政府施設で実験参加の登録をし、追跡装置を埋め込まれます。姉から連絡が入ると約束通りブルックリンの叔父の所へ到着する所だと嘘をつきます。

実験開始直前。アザイアは、登録時に政府から受け取ったライブ映像送信装置が内蔵されたコンタクトレンズを目に入れ、ベッドのマットレスに隠していた拳銃を取り出します。

以下、『パージ:エクスペリメント』ネタバレ・結末の記載がございます。『パージ:エクスペリメント』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 Universal Pictures

大統領がテレビ演説でスタテンアイランドの島民を激励。NFAAは殺人を含む犯罪が今後12時間合法化すると宣言し、実験が開始されます。

アザイアはパージの実験に乗じて、日中自分を襲ったジャンキーのスケルターに一矢報いようと外へ出かけて行きます。

スケルターは、イベントの乗りで野外パーティが開催されている町の一角に現れ、次々に女性を刺していきます。

そこへ、アザイアが現れスケルターに対峙しますが、結局銃の引き金を引けず逃走。スケルターが後を追いかけます。

追い詰められたアザイアは、ナイアに電話して事実を話し助けを求めます。姉は教会を飛び出し弟の下へ向かいました。

スケルターをかわして逃げた姉弟は教会に戻りますが、武器を持った男達が教会を襲撃して出てくる所を目撃します。姉弟は、混沌とした町中を必死に自宅のある高層アパートへ向かいます。

仲間を率いたドミトリは、突然覆面をした集団に襲撃されます。相手グループを撃退した後、全員同じ刺青をした傭兵であると気付きます。彼等が落とした無線を拾い、ドミトリは自分達の武器庫へ行きます。

アップデールは、島のあちこちで正体不明の一団が殺戮を行っていることを察知します。追跡装置を辿ったアップデールは、政府が傭兵を送り込み低所得者層が住む地域だけを狙っていることを突き止めます。

アップデールに問い詰められた係官は、平然と人口を抑制し犯罪や失業対策だと述べました。その直後、係官はアップデールの殺害を部下に命じます。

町には、KKKのマスクを被った傭兵達が次々にパージの実験に参加した島民を襲っていました。

ドミトリは、政府が自分達に殺し合いをさせていると部下達に告げ、皆で島の住人とコミュニティを守ろうと檄を飛ばします。しかし、ドローンの攻撃を受け、ドミトリは部下達を失います。

政府が次に標的にしたのは低所得者層のために建てられた高層アパートだと知り、ドミトリは単独で向かいます。

自宅に戻ったナイアとアザイアですが、何台も車両がビルに乗り付ける所を窓から目撃します。

そこへドミトリから電話があり、奴らは皆殺しにするつもりなので自分が行くまで何としても生き残れとナイアを励まします。

覆面をした傭兵達は、1階1階襲い、全ての住民を射殺して行きます。アパートに到着したドミトリは銃声を聞きながら階段を上がり、背後から忍び寄って傭兵を1人ずつ倒していきます。

遂にナイア達が住む部屋がこじ開けられ傭兵達が押入ってきますが、バリケードを築いていた姉弟は協力して何とか持ちこたえ、駆けつけたドミトリに救われます。

しかし、兵隊が襲われたことに気づいた指揮官が傭兵全員を集め、一気にナイア達の部屋を銃撃します。ドミトリはアザイアをクローゼットに押し込み、被弾するもののC4(プラスチック爆弾)を掴んで傭兵達の方へ放り投げます。

そこへスケルターが現れ傭兵達を襲っている間、ドミトリはC4を狙い引き金を引きました。凄まじい炎が指揮官を含む部隊を包み、ホールを駆け抜けます。

実験終了のサイレンが鳴り響き、朝を迎えた町に怪我を負った多くの生存者が溢れていました。ナイアとアザイアに脇を抱えられたドミトリを、人々が称えます。

これからどうなるの?と尋ねるナイア。ドミトリは闘うんだと言い、決意の表情を浮かべます。

映画『パージ:エクスペリメント』の感想と評価


(C)2018 Universal Pictures

いわゆるスラッシング映画と呼ばれる残酷シーンの多い作品が苦手な人は、目を背けたくなる場面が多いかもしれません。

しかし、『パージ:エクスペリメント』には、アメリカ社会に対する痛烈な風刺が込められているのです。

お金持ちがより潤い、貧しい人達がより困窮する所得格差が顕著なアメリカ。移民の国でありながら移民に冷たい政府が下流社会を標的にする中、自分達の生活を守る為に立ち上がる市民の姿を描いています

「パージ」シリーズのプロデューサーであるジェイソン・ブラムは、政治に深い関心を寄せる筋金入りのリベラル派です。

本作の監督を務めたジェラルド・マクマリーは、撮影中バージニア州のシャーロッツビルで極右団体が人種差別を掲げたデモで、1人が死亡する事件が起きたことから、KKKを盛り込みたいとブラムに相談しました。

ブラムは快諾し、マクマリーはどんどんやれと激励されたことをインタビューで明かしています

また、これまで監督・脚本を担当して来たジェイソン・デモナコは、パージに参加して人を殺害したキャラクターは必ず死亡するようにしており、実はパージを拒絶する意図があると話しています。

「パージ」シリーズを製作してきたブラム所有のブラムハウス・プロダクションは、卓越した経営手腕が注目されハーバード大学ビジネススクールで研究対象になったほどです。

ブラムは斬新なアイデアを持つ優秀な監督を発掘することに長けており、低予算で映画を制作する代わりに大手スタジオのように干渉せず、監督の好きなように撮らせます。

監督はお金のかかるCG等大仕掛けが使えないため、キャラクターと物語で勝負せざる負えなくなります。

その結果、クリエイティブで他と異なる新しいアイデアに溢れる作品が出来上がり、ヒットを飛ばし続けるブラムハウスのビジネスモデルが確立しました。

まとめ


(C)2018 Universal Pictures

『パージ:エクスペリメント』は、政府が意図的にマイノリティを狙う陰謀を企て、殺し合いをさせるという突拍子もない物語です。

しかし、そこには製作者達の圧政に抵抗するレジスタンスのスピリットが表現されています。

生存権を守るために闘えと鼓舞する主人公をギャングのボスにした理由は、その統率力とコミュニティに対する愛情を描くためです。

殺るか殺られるかという社会に向かっていることに懸念を抱いたクリエイターが、市民を分断する権力に抗議する骨太の作品です。

2018年7月4日のアメリカ独立記念日に映画『The First Purge』は公開されましたが、日本では邦題『パージ:エクスペリメント』として、2019年6月14日にTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開されます。

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