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Entry 2019/05/15
Update

映画『貞子』のあらすじと解説。「リング」シリーズから2019年版までを紹介|SF恐怖映画という名の観覧車49

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile049

今回のコラムでは「死後の世界」を題材にした韓国映画『神と共に』(2019)をご紹介する予定でしたが、本コラムで語らざるを得ない作品の公開が迫り、急遽予定を変更させていただくことになりました。

斬新なホラー描写と印象的なキャラクターで、一気にジャパニーズホラー界の代表的作品となった映画『リング』(1998)。

様々な派生作品を経て、2019年5月24日に公開されるシリーズの最新作『貞子』(2019)では、監督に『リング』の中田秀夫が復帰することとなり、身震いする怖さが約束されています。

今回はそんな『リング』シリーズから、呪いの元凶とも言える存在「貞子」の歴史を振り返っていこうと思います。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『貞子』の作品情報


(C)2019「貞子」製作委員会

【日本公開】
2019年(日本映画)

【監督】
中田秀夫

【キャスト】
池田エライザ、清水尋也、塚本高史、桐山漣、姫嶋ひめか、ともさかりえ、佐藤仁美

映画『貞子』のあらすじ


(C)2019「貞子」製作委員会

自分の名前すら言えない記憶喪失の少女(姫嶋ひめか)のカウンセリングを任された秋川茉優(池田エライザ)は、その少女の周囲では怪奇現象が起こることに気がつきます。

一方、茉優の弟の和真(清水尋也)は動画配信者としての知名度を得るため、何人もの死者を出した火災現場へ忍び込みますが…。

「貞子」の容姿


(C)2019「貞子」製作委員会

鈴木光司による同名小説を実写化し大ヒットとなったホラー映画『リング』。

非業の最期を遂げ、現世に強い想いを残し「呪い」となった「山村貞子」をホラーヴィランとして描いた映画版では、「死の呪い」からの逃避行と「呪いの謎」を追うミステリ要素の融合が日本のみならず世界で大ヒットとなり、ジャパニーズホラーの知名度を一気に押し上げました。

特に有名なのが、本作を今までに鑑賞していない人でさえも知っている貞子の独特な容姿。

実は、原作小説では呪いとなった貞子は直接登場することがなく、その容姿は謎に包まれていたんですが、映画『リング』で初めてその姿を現します。

白装束を身に纏い顔を覆うように垂らした長い黒髪、そしてその長髪から覗く血走った目。

鮮烈すぎるほどのビジュアルが強烈な印象を残し、その後の「貞子像」を決定づけることとなりました。

特定のキャラクターがメインとなる作品群では、設定が固まっておらず、キャラクターの印象が作品によって大きく変わることがしばしばあります。

しかし、「貞子」は1作目の公開からおよそ20年変わることのない「恐怖」を現在もバラまいているのです。

「貞子」の呪いの遍歴


(C)2012「貞子3D」製作委員会

貞子の呪いと言えば、『リング』に登場した「呪いのビデオ」が有名です。

鑑賞した7日後に死に至る恐怖の呪いですが、ある特定の条件を満たすことによって生存することが出来ます。

『リング』では、その方法が貞子の無念を晴らすことだと考え主人公たちは行動しますが、やがて衝撃の真相に辿り着くことになります。

この「呪いのビデオ」と言う呪いのスイッチと、『リング』最終盤での「貞子がテレビから這い出す」と言う2つの要素は時代を重ねるごとに進化していき、シリーズ5作目となる『貞子3D』(2012)ではパソコン、その続編となる『貞子3D2』(2013)では貞子はスマホからも登場。

呪いのスイッチも「呪いのビデオ」から「インターネット配信動画」に移り変わるなど、感染力が更に凶悪さを増しています。

『貞子3D』では貞子になり切れなかった怪物に鉄パイプによる殴打が効いていたり、『貞子vs伽椰子』(2016)では呪い同士をぶつけると言う斬新な方法で撃退を試みたりされるなど、時代の潮流にしっかりと乗る貞子は、ジャパニーズホラーの分野に新しい風を常に吹かせていると言っても過言ではありません。

シリーズを彩った実力派女優たち


(C)2019「貞子」製作委員会

本シリーズではおどろおどろしいジャパニーズホラー独特の雰囲気の他に、画面に華を添える実力派女優の活躍が魅力でもあります。

今までに松嶋菜々子、中谷美紀、石原さとみ、瀧本美織、山本美月、玉城ティナなど、名前を並べただけでも豪華かつ美しい俳優陣が貞子の呪いに襲われてきました。

また貞子自身も仲間由紀恵や橋本愛など様々な女優が演じたことで、恐ろしさの中に美しさを感じさせ、ジェイソンやブギーマンなど海外の名だたるホラーヴィランとは一味違った、ジャパニーズホラー独特のスタイルを確立させてきました。

最新作『貞子』では、巻き込まれる形で貞子の恐怖と戦うこととなるカウンセラー役に、モデルであり俳優でもある池田エライザが抜擢。

『ルームロンダリング』(2018)の演技で高い評価を受け、着々と俳優としてのキャリアを重ねる彼女の演技に期待が高まります。

まとめ

ニューズウィーク日本版による「世界が尊敬する日本人100」にイチローや、コンマリこと近藤麻理恵など、世界で活躍する日本人に並び「貞子(怨霊)」として選出された山村貞子。

まだまだ活躍が止まらず、TwitterやInstagramなどSNSでは可愛らしい姿も覗かせ、様々な意味で心を掴んで離さない彼女が登場するシリーズ最新作『貞子』。

しかし、5月24日より全国の劇場で公開される本作を鑑賞すると、もう「可愛い」なんて言葉が出なくなるかもしれません…。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

いかがでしたか。

次回のprofile050では、今度こそ「死者の裁判」を描いた韓国産ファンタジー映画『神と共に』(2019)をご紹介させていただきます。

5月22日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら


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