連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第58回
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。全上映作品を劇場で観て、連載コラムで紹介するこの企画も最終回を迎えました。
最後を飾る作品は、戦争を背景にした愛と奇跡の実話を基にした映画を紹介します。
1950年に始まった朝鮮戦争。南側の韓国を支援したのはアメリカ軍だけではありません。国連軍の名の下に、様々な国が参戦しました。
まとまった兵力を送った国の1つがトルコでした。独立した戦闘単位として扱われた“トルコ旅団”は、中国軍が参戦した直後に苦しい時期を戦い、国連軍を全滅から救った功績で、米国議会から「名誉勲章」を授けられる活躍をみせました。
そのトルコ軍部隊の一兵士が、戦乱の中家族を失った一人の少女を救います。
戦災孤児の少女との出会いと別れ、そして再会の物語が語られます。
第58回は戦争ドラマ映画『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』を紹介いたします。
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CONTENTS
映画『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』の作品情報
【日本公開】
2019年(トルコ映画)
【原題】
Ayla The Daughter of War
【監督】
ジャン・ウルカイ
【キャスト】
イスマエル・ハシオグル、キム・ソル、セティン・テキンドル、アリ・アタイ、ムラート・ユルドゥルム、タネル・ビルセル、ダムラ・ソンメズ、エリック・ロバーツ、イ・ギョンジン
【作品概要】
朝鮮戦争を舞台に、実話を基に描かれた、トルコで大ヒットを記録した戦争ドラマ映画。
この映画は数多くの映画祭で賞を受賞していますが、アジア映画の普及を目指し、LAで開催されている、アジアワールド映画祭の2017年観客賞を受賞しています。
またアカデミー賞外国語映画賞の、トルコ映画代表としても出品されました。
ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。
映画『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』のあらすじとネタバレ
1950年6月、朝鮮半島。韓国の農村で、両親と共に幸せに暮らす少女ソラ(キム・ソル)。ソラは父から手製の三輪車が与えられ、喜んでいました。
突如その村に爆弾が落ちます。朝鮮戦争が始まりました。爆撃の後、村に北朝鮮軍の兵士と戦車が姿を現します。ソラの母は娘を安全な場所に隠し、静かにするよう言い含めます。
1人残されたソラは泣き出します。銃声が響き村人は次々射殺されていきます。ソラに与えられた三輪車は戦車に引き潰されました。
1950年6月のトルコの都市イスケンデルン。身支度するスレイマン(イスマエル・ハシオグル)に、自転車に乗ったアリ(アリ・アタイ)が、早く出て来るように声をかけます。
中々現れないスレイマンに文句を言うアリに、彼はすました顔で、身支度は下士官の基本と言います。2人はトルコ軍の軍人でした。彼らは仲間と共に、自転車で兵営に向かいます。
途中の店で、マリリン・モンローとマルクス兄弟の出演映画、『ラヴ・ハッピー』のポスターを手に入れるアリ。射撃の名手である彼は、モンローの大ファンでした。
兵営に向かう彼らの、気を引こうとする2人の若い女。その1人ヌーラン(ダムラ・ソンメズ)はスレイマンと、互いに気がある様子です。
男たちの反応に気を良くする2人。彼女らは近々トルコ軍が、朝鮮に派遣されるとの噂します。
トルコ陸軍の第39機械化歩兵師団本部。上官に呼ばれたスレイマン軍曹は、間もなくトルコ軍が、朝鮮半島に派遣されると聞かされます。
派遣部隊が編制されるが、その候補が君だと告げた上官は、スレイマンに恋人はいるかと尋ねます。
兵営を出た後、スレイマンはアリたちとレストランで戦争について議論します。車両整備の後方要員であるスレイマンは、神は戦争で人を試さないと語ります。
その後、ヌーランと会ったスレイマンは、自分が朝鮮半島の戦場に行く事になったと告げます。動揺するヌーランに、戦地から手紙や写真を送ると約束するスレイマン。
ヌーランはスレイマンの目を隠すと、彼とキスを交わします。
故郷のマラスに住む父母は、スレイマンから手紙を受け取ります。それを近くに住む娘ニメットに読ませると、彼が派遣部隊の一員として、韓国に行くと告げる内容でした。
ラジオのニュースは、4500名のトルコ軍部隊の朝鮮派兵を告げていました。
韓国に向かう輸送船の上に、スレイマンはいました。船の中での様々な出来事を、ヌーランと両親に手紙に書いて送るスレイマン。
1950年10月。釜山に上陸したトルコ軍部隊は、韓国市民に歓迎されます。一時は北朝鮮に征服されるかに見えた韓国でしたが、国連軍が反撃に転じ楽観的なムードすら漂っていました。
トルコ旅団はまず韓国のテグに集結、米軍に続いて進軍します。難民とすれ違い北上するスレイマンたちの部隊は、クヌリに到着します。
勝利を確信するトルコ旅団の将兵たち。1人でも多くの敵を倒したい反共的な姿勢のアリと、敵との和平と共存を望む、共産主義者のメスト中尉(ムラート・ユルドゥルム)の意見は対立します。
突然トルコ旅団は敵の空襲を受け、混乱に陥ります。指揮所に向かったスレイマンらは、上官のフート少佐(タネル・ビルセル)から米第9軍団と連絡をとるよう命じられます。
前線の様子を知らないトルコ国内に、朝鮮戦争が早期に終結する見込みとの報道が流れていました。ヌーランらはその知らせに安堵していました。
フート少佐と共に、夜道を車両で第9軍団司令部へ向かうスレイマンたちを、敵が攻撃します。車両は爆破されるも、アリが敵を倒して一同は救われましたが、戦場の現実を思い知らされます。
月明りの中、森の中を進むスレイマンたち。ペペと呼ばれる兵士が不気味な雰囲気に怯えますが、そこには無数の避難民の遺体がありました。
何かの物音を聞いたスレイマンが辺りを調べます。彼が遺体の中に見つけたのは、泣きじゃくる幼い少女の姿でした。それは戦火に見舞われた村の少女ソラでした。
泣きじゃくる少女は何も語りません。スレイマンらは彼女を連れて先を進み、ようやく一行はウヌンニの第9軍団司令部に到着します。
何も語らない少女に、スレイマンたちはとりあえず名を付けようと決めます。様々な意見が出る中、スレイマンの出した「アイラ」が少女の名となりました。
「アイラ」とはトルコ語で月の光輪、月明りを指す名前。スレイマンは月明りの中見つけた少女に、この名を選んだのです。
米第9軍団のコールター将軍(エリック・ロバーツ)は、フート少佐に周囲の戦場に、中国の人民解放軍兵士が現れたと説明します。戦争は新たな局面を迎えていました。
韓国軍と共に移動するトルコ軍部隊の車列の中に、スレイマンとアイラの姿もありました。メスト中尉は戦場にアイラを連れて行く事に反対ですが、彼女はスレイマンから離れません。
今だに何も語りませんが、ようやく笑顔を見せる様になったアイラ。ところが車列の1台のジーブが故障します。その修理にスレイマンらが残り、部隊は先へと進みます。
突然狙撃され倒れる韓国軍兵士。中国軍部隊が孤立したスレイマンたちを襲ってきます。アリが反撃し、スレイマンはアイラの身を車の下に隠します。
姿を現し突撃してくる人民解放軍兵士。スレイマンはとっさに手製の火炎ビンと手榴弾を、予備のタイヤにくくり付け、向かって来る中国兵へと転がします。
それをアリが射撃して爆発させると、中国兵は吹き飛ばされます。先行した部隊は爆発に気付き、急ぎ駆け戻ってきます。
押し寄せる人民解放軍の人海戦術で、スレイマンとアリは白兵戦を余儀なくされます。道ぞいにガソリンを撒いて炎の壁を作り、敵を阻止するスレイマン。
格闘戦となったスレイマンは、自らの手で敵を殺します。襲ってきた敵にナイフで刺され、彼の命も危うくなった時に味方が駆け付け、スレイマンたちは救出されます。
トルコ旅団の活躍は祖国でも大きく報じられ、同時に死傷率が20%に達した事実も伝えられます。スレイマンの両親とその身近にいるニメット、そしてヌーランは心を痛めていました。
野戦病院で目を覚ましたスレイマン。その傍らには眠るアイラの姿がありました。アリとメスト中尉、ペペが見舞いに現れます。アイラはトルコ旅団で家族の様に暮らしていました。
トルコ旅団など他国軍に、多くの戦災孤児が保護されている事実に、韓国軍上層部は憂慮していました。自国民は自国で保護せねばならないと動きます。
フート少佐はスレイマンに、この先我々はアイラを残して移動せねばならないと、いずれ彼女を韓国に引き渡す事を告げます。しかしアイラはスレイマンから離れません。
曹長に昇進し、勇敢な軍人として国連軍の式典に参加する事になったスレイマンは、新たに整備部隊に加わったサディク軍曹に、アイラを預けます。しかしアイラはサディクが目を離した隙に、スレイマンのジープに乗り込みます。
国連軍の式典に参加したトルコ軍将兵は、韓国軍の将軍に讃えられ、米軍のコールター将軍から勲章が授けられます。アリやスレイマンらが並ぶトルコ旅団の列に駆け寄るアイラ。
韓国軍兵士に抱えられたアイラが、スレイマンに渡されます。トルコ軍兵士とともに将軍に敬礼するアイラ。アイラを抱きかかえたスレイマンの姿は写真に撮られます。
その写真と共に送られた手紙を、喜んで見るスレイマンの両親とニメット。しかし恋人のヌーランは友人に、心配で夜も眠れないと打ち明けます。
1951年1月。雪の降るトルコ旅団の駐屯地にアイラはいました。フート少佐が妻に送らせた女の子用の防寒着をスレイマンに渡します。アイラはトルコ旅団の一員のように暮らしていました。
旅団の兵士と仲良く暮らすアイラ。彼女に父親のように接するスレイマン。やがて雪は溶け、春の気配が感じられます。彼女は駐屯地のマスコットの様な存在になっていました。
1951年3月。整列した訓練中のトルコ軍兵士の前で、今まで喋らなかったアイラが初めて喋ります。兵士の使うトルコ語で号令をかけ、同じように動作するアイラ。スレイマンは絵本を使い、彼女にトルコ語を教え始めます。
言葉を覚えたアイラは、スレイマンの事をパパと呼びました。アイラを僕の娘、と呼ぶスレイマン。2人は固く抱き合います。
1951年4月。スレイマンとメストは、東京行きとなる休暇の噂をしていました。するとアイラは、サデックが趣味で組み立てていた、サイドカー付きのバイクを2人に見せます。
サデックは近くに住む韓国人から部品を買い集め、バイクを組み立てていました。民間人と兵士が勝手に取引する事は、軍規で禁じられています。厳しく注意するメスト中尉。
一方アイラは、兵士の語る(イスラム教の)預言者スレイマン(ソロモン王のイスラム名)でも死んでしまう、という例え話を聞いて、スレイマンが死ぬと思い慌てます。
サディクの件を、メストに取りなしていたスレイマンの前に、アイラが現れ泣きじゃくります。アリと共に理由を聞いたスレイマンは、彼女の勘違いに気付き笑います。
4月23日、休暇で東京に着いたスレイマンとアリとメストは、アイラを連れていました。彼らは東京で多くの写真を撮り、思い出深い時間を過ごします。
安らかに眠るアイラの顔を見た3人は、いずれ彼女を残し、帰国せねばばならない事実を噛みしめていました。
部隊に戻ったスレイマンに、サディクがアイラの実の家族が、見つかるかもしれないと訴えます。村人と付き合いのある彼は、そのような話を耳にしたのでした。
その夜、意を決したスレイマンは部隊を離れ、1人サディクから聞いた民家を尋ねます。その家に入ったスレイマンは、潜んでいた男にいきなり殴られます。
スレイマンが1人で外に出た事に気付いたペペは、アリにその事実を訴えます。軍規を破っただけではなく、近隣にゲリラが潜んでいるかもしれない中、それは危険な行動でした。
アリはサディクに事情を尋ねます。危機を察したサディクと共に、彼の作ったサイドカーで救出に向かうアリ。
ゲリラに捕えられたスレイマンは、人民解放軍の将校に銃を突きつけられ、尋問されます。その最中に家の扉を開けて、銃を持ったアリとサディクが乗りこんで来ます。
相手が驚いている間に、自分たちに多くの仲間がいると見せかけたアリは、スレイマンを解放させる事に成功します。こちらの人数がバレない内に3人は逃げ出します。
サディクの作ったサンドカー付きバイクは、3人を乗せ快調に走り出し、敵の銃撃を交わして脱出に成功します。
駐屯地では彼らの不在を、ペペが誤魔化していました。フート少佐は彼らを捜しますが、スレイマンとアリは何とか戻って誤魔化します。何かを察した少佐は、アリに前線勤務を命じます。
大ファンのマリリン・モンローが慰問に来る日、前線に配置される事になったアリは、荒れに荒れます。彼に必ずモンローにサインを手に入れるから、と説得するスレイマン。
アリはスレイマンにモンローの写真を渡し、その約束に期待を膨らませます。
モンローが立つ舞台を、多くの兵士が見ていました。アイラを肩車したスレイマンは、その人混みをかき分けて進み、舞台へと近づいていきます。
その頃アリは前線の陣地で狙撃銃を構え、敵と向きあっていました。
スレイマンはアイラを舞台に立たせると、兄のアリの為にサインが欲しいとアイラに言わせ、モンローの関心を引き、サインを貰う事に成功します。
しかし、その頃前線にいたアリは敵に狙撃され、命を落していました。
トルコ軍兵士の墓地に埋葬されたアリ。その墓の前で泣いているスレイマンを、アイラが慰めます。スレイマンはアリの墓に、マリリン・モンローのサインを捧げます。
1951年7月。間もなくスレイマンらはトルコ旅団の任務について1年になります。フート少佐は交代の兵士・下士官が来れば、皆は帰国する事になると部下に告げます。
ペペたち兵士が帰国の途に就く中、アイラと離れがたい思いのスレイマンは任期の延長を希望します。それは彼の両親や、恋人のヌーランには理解し難い行為でした。
ラジオから戻らぬ恋人を、哀しく想う女を歌った唄が流れます。それはスレイマン曹長に捧げられた歌でした。彼はそれを前線で、アイラと共に聞いていました。故郷のマラスでは、それをニメットが聞いていました。
10日後に帰国の日が迫る中、スレイマンはアイラをトルコに連れて行く事を望みますが、それは叶えられる望みではありません。意見を曲げぬ彼は、フート少佐に叱責されます。
ある日トルコ旅団の指揮官に呼ばれたスレイマン。そこにはフート少佐やメスト中尉と共に、アイラを引き取りに来た、韓国の児童養護施設の職員の姿がありました。
映画『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』の感想と評価
ドキュメンタリー化された奇跡の実話
この映画は2010年に作られた、ドキュメンタリー番組で紹介されたトルコ旅団の軍人と、戦災孤児との出会いと別れ、そして再会を描いた物語となっています。
参考映像:『Ayla, My Korean Daughter(Kore Ayla)』(2010年ドキュメンタリー番組)
この実話を軸に、朝鮮戦争時のトルコ旅団の活躍を描いた、歴史ドラマとなっています。
トルコ旅団の動きも史実に即したものとなっており、1950年にスレイマンが敵と戦う状況も、史実にヒントを得て、映画的に脚色した展開の戦闘になっています。史実はもっと長期間で、かつ凄惨な一連の激しい戦闘がありました。
映画として娯楽要素を追求した結果か、この映画はアクションも笑いも、ロマンスも感動も盛り込んだ、サービス精神に満ちた展開になっています。
また別の時代の兵器の流用、モックアップで作られた戦車、どう見ても日本に見えない“東京”の描写、ハリウッドスター、今やジュリア・ロバーツの兄よりも、エマ・ロバーツの父と呼ばれている、エリック・ロバーツのゲスト出演など、指摘したくなる点は山ほどあります。
一昔前の日本映画の、セットで描いた戦争と国内で描いた外国描写、ギャラを積んで招いた外国俳優の使用を思わせるセンスですが、それでも最後にしっかり泣かせる作品です。
歴史に直面した多様な人間像を描写
この映画が2017年トルコで公開されると、大ヒットしたのは当然と思われがちですが、この映画の内容はトルコ人には、我々が思う以上に深い意味を与えています。
1920年にアンカラから始まった、軍人ムスタファ・ケマルの起こした、革命で誕生したトルコ共和国。軍事政権ですが政教分離の世俗主義を採用、女性参政権を早々に認め、古い体質のイスラム国家を近代国家に生まれ変わらせました。
ところが1950年、初の民主選挙でアドナン・メンデレス政権が誕生します。反共・親西側政策をとりながら、イスラム教の正教分離を緩和する政治姿勢が、混迷の時代を招きます。
映画に登場するアリは、異教徒・無神論である共産主義者と戦う事を、誇りに思うイスラム色の強い人物。またメストは公表したら、命を失う事にもなりかねない共産主義者。
あえて当時のトルコ軍では異端の人間を配し、しかも彼らを良き戦友とする、朝鮮戦争を背景に様々な人間像を、多面的に描いています。
またスレイマンの恋人ヌーランは、自由恋愛に生きる都会の女性。彼の妻となるニメットは、親に従って結婚相手を決める地方の女性。ヒロインにも当時の、対極的な女性像を示しています。
またハリウッド映画に関する思慕ある数々の描写。マリリン・モンローの朝鮮慰問は有名ですが、やって来たのはこの時期ではありません。西側の文化に憧れた、当時を描くための創作です。
朝鮮戦争参戦という、血の代償を払ってNATOに加盟できたトルコ。しかし文化はイスラム、地理はアジアのこの国は、最後までヨーロッパの一部にはなれず、EUにも加盟出来ませんでした。
現在のトルコ政権はその反動か、イスラム色を強め西側と距離を置き始めています。世界各国で右傾化・保守化が進む中、トルコもその流れに呑まれつつある感があります。
そんな時代に、歴史に翻弄されながらも、多様な価値を持つ人々と、その時代を描いたこの作品は、トルコの人々に深い意味を持つ映画と言えます。
まとめ
お涙頂戴で、エンタメ重視のサービス精神が豊富な、色々とアラもある映画、という枠に収まらないのが『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』です。
自分と異なる意見を排除する、過激な姿勢がむしろ人気を集める現代において、政治的・信条的な多様性を描いた映画として見れば、貴重な姿勢で作られた作品と言えます。
しかもより価値あるものとして、軍人と孤児の“親子”の愛情の絆を描いたと受け取れば、素直に心に響いてくる映画です。
折角ですので、この映画の持つ“多様性”を、もう少し紹介しておきましょう。
本作でマリリン・モンローを演じた、クラウディア・メモリー・モンローは、そっくりさんの枠を越えた、モンローのトリビュート・パフォーマンス活動をしている人物です。
そしてツッコミ所満載の、謎めいた“東京”に登場するサクマ式ドロップスの缶。しっかり“節子”の絵まで入ってる最新版です。
トルコの映画人も『火垂るの墓』をご存知で、大好きだった結果と解釈しておきましょう。
さて、今回をもちまして「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は、無事最終回を迎える事ができました。
この無謀な挑戦を試みにお付き合い頂いた皆さまに深く感謝いたします。
また全作品を鑑賞することができたヒューマントラストシネマ渋谷様にも、お礼申し上げます。
願わくば「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」を、“読破”頂ければ幸いです。