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Entry 2019/04/27
Update

映画『ソリス』あらすじネタバレと感想。結末までスティーブン・オッグの完全ひとり芝居|未体験ゾーンの映画たち2019見破録49

  • Writer :
  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第49回

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は宇宙を舞台にしたソリッドシチュエーションで描く、サバイバル映画を紹介します。

人気TVシリーズ『ウォーキング・デッド』シーズン6から登場した凶暴な男、サイモンを演じたスティーブン・オッグ。

ビデオゲームに詳しい方なら、アメリカでビデオゲーム史上最高の売り上げを記録した、アクション・アドベンチャーゲーム『グランド・セフト・オートV』の主要キャラクター、トレバー・フィリップスの声と、モーションキャプチャを担当した俳優としてご存知でしょう。

その彼がただ1人宇宙を舞台に、極限状態の中で生存を賭けた闘いに挑みます。

第49回はSFサバイバル映画『ソリス』を紹介いたします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

映画『ソリス』の作品情報


(C)SOLIS FILM LIMITED

【日本公開】
2019年(イギリス映画)

【原題】
Solis

【脚本・監督】
カール・ストラシー

【キャスト】
スティーブン・オッグ、アリス・ロウ

【作品概要】
鉱物資源採掘の為、小惑星に向かった宇宙船。しかし作業中爆発事故に巻き込まれ、乗組員のトロイ・W・ホロウェイは緊急避難船で脱出します。

他の乗組員は全員死亡、しかも避難船は制御不能に陥り、太陽に向かって突き進んでいました。

ホロウェイは救出船の女船長、ロバーツの声だけを頼りに生存の可能性を探ります。しかし太陽への突入は70分後、救助船の到着は75分後。彼の生存を賭けた過酷な闘いが始まります。

NASAで宇宙開発を指揮するレス・ジョンソン、マサチューセッツ工科大学の天文物理学者サラ・シーガー教授がアドバイザーとして参加した、本格派SF映画です。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『ソリス』のあらすじとネタバレ


(C)SOLIS FILM LIMITED

小惑星アテン2024に資源採掘を行っている、オービス社の作業宇宙船のクルーたち。しかし作業中、突如発生したガス爆発事故に巻き込まれ宇宙船は全壊し、生存者は緊急避難船での脱出を余儀なくされます。

気を失っていたトロイ・W・ホロウェイ(スティーブン・オッグ)は、緊急避難船のシートで目を覚まします。隣のシートにはハリス中尉の遺体がありました。

ホロウェイの乗り込んだ緊急避難船カペラ2号も、大きなダメージを受けていました。彼は救助を要請する無線を発します。

ホロウェイの救助要請に、彼らを支援していた宇宙船ハトル18号のロバーツ船長(アリス・ロウ)の声が応答しました。ホロウェイは彼女にハリス中尉とミルトンが死亡し、生存者は自分1人であると報告します。

カペラ2号の被害状況を報告するホロウェイ。緊急避難船は自己診断機能が停止し、制御不能状態で航行中、ビーコンも停止した状態で、ハトル18号の追跡も困難な状態でした。

ホロウェイが身に付けたスタットバンドのビーコンを発信することで、ハトル18号に位置を伝えるようと試みます。ホロウェイは友人でもあるハトル18号の正式な船長、セリザワとの会話を望みますが、ロバーツは彼は現在作業中と答え、自分と会話を続けるように指示します。

小惑星アラン2024での採掘作業中、ドリルアンカーがガスだまりに接触して起きた爆発事故が、今回の事態を引き起こしました。ロバーツは改めてカペラ2号の被害状況、並びにホロウェイの健康状態の報告を求めます。

カペラ2号を修理して制御を取り戻す事は不可能、通信と生命維持装置が生きていますが、それを動かす電力も残り僅かな状況です。クルーのミルトンは事故の際貨物室から投げ出され、ハリス中尉も死亡したと報告するホロウェイ。

ロバーツはホロウェイに、窓の外に何が見えるか報告を求めます。カペラ2号を発見出来ずにいたハトル18号ですが、ようやくホロウェイのスタットバンドが発するビーコンを検出、同期させる事に成功し追跡を開始します。

カペラ2号の窓から明るく、強い光が差し込みます。宇宙船の窓ガラスの偏光フィルターが作動して、ホロウェイを太陽の発する光から守ります。

ホロウェイは友人でもあるセリザワ船長との会話を望みますが、ロバーツは無理だと断ります。セリザワと話せない事にいら立つホロウェイに、彼女は健康状態に関する質問を重ねます。自分を生かす事がそんなに重要なのかと、吐き捨てるように告げるホロウェイ。

ロバーツは彼をなだめ、脳震盪を起こしたホロウェイに異常が無いか確認するため、様々な質問を行います。まず最初に彼に自分のフルネームを答えさせます。

彼はオービス小惑星鉱業株式会社のエンジニアとして働いており、小惑星アテン2024の採掘現場で、メンテナンス管理を行っていたと正確に伝えます。ロバーツは一連のやりとりから、彼に異常は無いものと判断します。

ホロウェイは管制室との交信を望みますが、ハトル18号も爆発事故で損傷を受けセリザワ船長も復旧作業中、1時間程度たたないと管制室との通信は出来ないとロバーツは告げます。

そして現在も爆発で発生した細かな破片が宙を飛び交い、危険な状況が続いていると彼女は説明を続けます。

緊急避難船カペラ2号の進行状況と損傷状態の分析を終えたロバーツは、厳しい状況をホロウェイに伝えます。現在彼は宇宙船と共に、太陽に向けて一直線に突き進んでいました。

カペラ2号は推進システムと、回転コントロールを失った状態で太陽に向かっていました。酸素供給装置は働いていますが、船内の温度制御機能は故障し、修理を行わないとホロウェイは低体温症で間もなく死亡します。

ところが修理を完了しても、宇宙船が太陽に接近した結果今度は逆に熱くなり、70分後にカペラ2号は燃え尽きてしまいます。激しい光から彼を守る偏光フィルターも、機能するのは電力が供給されている間のみ。ハトル18号の到着は現状では75分後と計算されました。

またカペラ2号がハトル18号と合流出来たとしても、ホロウェイがハッチから脱出する為には船内の圧力の維持が必要です。

ロバーツは最善を尽くし、我々は可能性がある限り、ホロウェイの救出を諦めていないと伝えます。事故を忘れて家に帰るよう彼を励まし、1時間以内には管制室を通じて、家と連絡がとれる様にすると約束します。

ホロウェイの身体状況をモニターしたロバーツは、低体温症が始まっている事を告げます。いずれは太陽に接近し灼熱地獄となりますが、今は冷却装置を切る事が必要です。装置を修理し船内温度を安定させたいと告げるホロウェイ。

ロバーツは彼の置かれた状況を判断し、まずは冷却装置を停止、船内が熱くなってくれば緊急用の宇宙服を着用してしのぐ事を指示します。しかし宇宙服の酸素は予備を含めて30分しか持ちません。

まず冷却装置を停止した後、温度が急激に上昇する時間を耐え、その後15分は宇宙服を着て過ごし、さらに最後の予備である15分分の酸素を補充すれば、救出までの時間を無事過ごせるはず。困難ですが切り抜けるにはやり遂げるしかありません。

カペラ2号の正面の窓ガラスにはひびが入っています。船外の高温と船内の低温がガラスに影響を与えており、冷却装置の停止は急を要する作業になりました。


(C)SOLIS FILM LIMITED

ホロウェイは南極のような寒さの機械室に入り、凍傷の危険を冒しながら作業を進めます。ロバーツとの無線が途切れがちになる中、装置の停止に成功しますが、飛んできた破片が左胸に刺さります。

幸いにも命や行動に関わる傷ではありません。しかしホロウェイからの負傷の報告に対し、気温が上昇すると多量の出血が始まり、痛みも増すだろうと告げるロバーツ。

ホロウェイはセリザワと言葉を交わしたいと望みますが、やはり叶えられません。ロバーツは彼に傷口を焼いてふさぐ様に指示します。

周囲に何か使えるものがないかと確認するホロウェイ。隣のシートに座るハリス中尉の遺体のポケットに、マグネットグリップがありましたが、治療に役立つものではありません。

船内の気温が上昇する中、家族の写真を眺めたホロウェイはトーチで金属を焼き、それを傷口に押し付け止血に成功します。

この後気温が上昇すると、痛みは悪化すると告げるロバーツ。ホロウェイは強い口調でセリザワと話させるように要求しますが、ロバーツはセリザワは死んだと打ち明けます。

セリザワ船長は爆発事故の後、乗員を救うため生命維持装置の修理中、破片に当たり殉職していました。代わってハトル18号を指揮しているロバーツは、彼がセリザワと親しかった事を知っており、動揺させぬよう今まで隠していたのです。

爆発事故の後、宇宙を突き進む破片の1つがカペラ2号に命中、緊急避難船は激しく回転を始めます。1分間に70回を超える回転にホロウェイは苦悶します。

ロバーツに対し、これ以上犠牲者を出さぬ様引き返せと告げるホロウェイ。激しい回転が続く中、ようやくシートを抜け出した彼は、宇宙船のハッチを開けようとします。

覚悟を決めたホロウェイに必ず助けに行くと告げ、早まった行為をいさめたロバーツ。彼はハッチに手を伸ばしますが、その手がハンドルを掴む事はありませんでした。

カペラ2号はまた破片と衝突し、徐々に回転が収まってゆきます。応答を求めるロバーツに、まだ生きていて今は暖かい、ひどい頭痛がするだけだと答えるホロウェイ。

ロバーツは安心しましたが、これから訪れる厳しい現実を彼に伝えます。あと10分暑さに耐えて緊急用の宇宙服を着用、15分で酸素が尽きれば予備を補充し、最後の15分を過ごさねばなりません。

彼女は努力の結果、35分後にはハトル18号が到着し救出に当たれると、そして30分後には管制室を経由して、ホロウェイは自宅とも交信できるとも告げ、彼を励まします。

ロバーツは自分について語り始めます。幼い彼女は宇宙に行く事など考えてもいませんが、彼女の父はオービス社に勤め、ハトル1号で宇宙に出る事を目指していました。しかし出発直前に父は転倒、その怪我の影響で宇宙に出る機会を失ったと話します。

その後父の指導で宇宙を目指しパイロットになった彼女は、17年後の今日ハトル18号の船長になったと、ホロウェイに告げました。

ロバーツはホロウェイにも自分自身を語るよう求めます。今は早期退職だけを考えている、との言葉にロバーツは笑います。ホロウェイは彼女に対してごめん、と言いたいと続けます。

何故彼女にごめんと言うの、他に何も言わなくていいのと尋ねるロバーツ。ホロウェイはごめん、ただその言葉だけでいいと返します。ロバーツはあなたの言葉で昔の事を、忘れていた過去の出来事を思い出したと語ります。

何があったの、何故彼女にごめんと伝えるのと、彼に問うロバーツ。その問いに息子がいたと答えるホロウェイ。

突然起きた事態に会話が遮られます。ガスが噴き出し緊急避難船内の気圧が低下します。破片が命中した結果船内は減圧され、このままでは彼が船外に脱出する際、飛び出す事が出来ません。

修理するにはホロウェイが船外に出る必要がありますが、命綱はありません。船外にでて直射日光に当たれば、危険な程太陽に接近しています。予備を除く宇宙服の酸素残量は18%。

ホロウェイは生還するために、大きな決断を迫られます。

以下、『ソリス』ネタバレ・結末の記載がございます。『ソリス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)SOLIS FILM LIMITED

ハトル18号のロバーツも、緊急避難船カペラ2号を襲った事態を把握していました。船内の気圧を修理するには、船外に出て作業を行うしかありません。仮にホロウェイが出ても太陽に接近し過ぎた現在、凄まじい熱と放射線に曝されてしまいます。

ロバーツに出来る事はありません。ホロウェイはハトル18号に立ち去るよう求めますが、それは出来ないと彼女は答えます。

今回の小惑星アテン2024の爆発事故で、作業中のクルー全員が死亡した場合、責任を問われ鉱物資源採掘現場は閉鎖され、オービス社は存続の命運が尽きかねません。何としてもクルーの生存者を救出せよ、それが会社からの至上命令でした。

そんな指令が無くてもあなたを助ける、と語るロバーツ。彼女は決して引き返さないし、諦めもしないと言葉を続けます。

息子はいつも何か作っていたと、話題を変えるホロウェイ。歩き回って何かを見つけ組み立てる。頭のいい子で、まだ6歳だったと続けるホロウェイ。

自分にはチャンスがあった、やるべき事を行うチャンスが。しかし俺は逃げ出した、誰もいない闇の世界に。こうして家族を捨てた過去があり、だからこそ彼女にごめんと言いたいと、ホロウェイは語ります。

ホロウェイの息子の身に、そしてその後、妻との間に何にがあったかを察したロバーツは、自分の身の上を語ります。彼女も7年前、12歳の娘を亡くしていました。

ロバーツの夫はその悲しみに耐えきれず、彼女を置いて去ってしまいました。エヴァ、ごめんとの一事を残して。今彼に何か言えるなら、謝らないでと言いたいと、ロバーツは語ります。そして夫には、あの時ただ傍にいて欲しかったと言葉を続けます。

状況の分析と連絡の為、交信は一時中断されます。巨大な姿となった太陽は、炎の柱を立ち上らせていました。

ホロウェイは隣のハリス中尉の遺体のポケットに、試作品のマグネットグリップが入っていた事を思い出します。使用時間は限られていますが、手に装着すると磁力で体を固定する事が出来ます。

彼はロバーツに呼びかけます。船外に出て修理を行い船室の気圧を高めれば、ハトル18号が接近した際に飛び出して脱出し、救出が可能となるか改めて確認します。ならばマグネットグリップを使用して体を固定しながら、船外で修理作業を行うと提案します。

激しい太陽光が灼熱と放射線を発していますが、日陰に入っていれば無事修理作業が行えます。ホロウェイはロバーツに、修理すべき故障個所とそこが日陰となる時間の分析を依頼します。

ハッチと故障個所が日陰になるのは15分後です。カペラ2号船外の日に当たる場所は灼熱地獄、一方日陰は極寒の世界。非常に困難ですが成功するかは五分五分。ロバーツが分析した結果を、今日一番良いオッズだと表現したホロウェイ。

緊急用の宇宙服を着用し、手のひらにマグネットグリップを装着したホロウェイ。宇宙服の酸素残量はどんどん減っていきます。彼はロバーツのカウントダウンに従って船外に出ます。

酸素残量は11%、まだ細かな破片が飛び交っています。船外は日陰は-100度、日があたる部分は300度を遙かに超える環境で、ホロウェイは損傷個所に近づき修理を開始します。

ホロウェイを頭痛と視界不良が襲いますが、ロバーツが落ち着いて呼吸する様指示し、彼を切り抜けさせます。太陽光に晒されるまであと5分、残り少なくなる酸素の量とも戦いながら、何とか彼は修理を行います。

マグネットグリップのバッテリー残量も減少する中、太陽光の直射を受ける前に困難な修理を終えたホロウェイ。酸素残量があと僅かになる中、なんとか船内に戻ります。

彼は予備の酸素を補充するパイプと、宇宙服との接続を試みますが酸素が切れ意識を失います。その瞬間パイプは接続され酸素の供給が始まると、ホロウェイは意識を取り戻します。

ロバーツの呼びかけに返事し、宇宙船のハッチを閉めたホロウェイ。しかしカペラ2号の窓の偏光フィルターが故障し、日光に晒された彼は目を傷めてしまいます。

苦悶の声を上げるホロウェイに、ロバーツは救助のハトル18号があと僅かの距離まで近づいた事を伝えます。彼女は船室を加圧し、救助可能なタイミングになってから脱出するよう告げます。

ロバーツは管制室を通じ、ホロウェイが家族と話せるよう手配を続けていました。接近したハトル18号はカペラ2号と太陽の間の位置に付けます。

宇宙船は共に、危険なまで太陽に接近していました。宇宙服の酸素残量もあと僅かとなり、ホロウェイはロバーツに引き返せと告げますが、逆に彼女がホロウェイに最後まで力を尽くすよう励まします。

船外の高温に耐えられず、カペラ2号の窓のひびは広がっていきます。酸素残量が0%を表示する中、ロバーツはホロウェイが無線で妻と話せるようになったと告げます。

ロバーツに礼を言うホロウェイ。無線の声は妻に代わり、彼の名を呼びます。カペラ2号の窓の前に立つホロウェイ。

家に帰るよ、と妻に告げたホロウェイ。窓が破れると彼の体は、ハトル18号に向けて飛び出していきます。暗黒とノイズに全てが包まれました。

映画『ソリス』の感想と評価


(C)SOLIS FILM LIMITED

宇宙を舞台にスティーブン・オッグのひとり芝居映画

出演はスティーブン・オッグのみ。他の人物は声での登場。他には隣にクルーの遺体があるだけ、という環境で全編描かれる映画です。

密閉空間の潜水艦映画にハズレ無し、という言葉があります。また密室を舞台にしたソリッドシチュエーション映画も、数多くの傑作を生み出しています。

その様な状況でも、登場人物が1人の映画となると、全編に渡り緊張感を維持するのは難しいもの。『ソリス』も宇宙空間でのサバイバル、という特殊な舞台を用意しましたが、常に緊張感が維持出来ていたかというと、少々辛い評価になりそうです。

しかし役者にとって、映画のほぼ全編をただ1人で演じ切るのは野心的な試み。こういった役柄への挑戦には心躍るものがあるのでしょう。

参考映像:『[リミット]』(2010年)

ライアン・レイノルズが箱の中に入れられ生き埋めにされ、与えられた電話一つでサバイバルに挑む映画『[リミット]』。演じる空間まで限定された、究極の1人芝居映画です。

参考映像:『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(2015年)

車に乗り込んだ主人公の、様々な人物と電話でやりとりする姿だけで描かれた映画『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』。仕事に私生活に人生最大の危機を迎え、本作のトム・ハーディこそ他の出演作に勝る、これぞ最悪の修羅場に遭遇した姿を演じています。

参考映像:『月に囚われた男』(2010年)

SF映画ファンならデヴィッド・ボウイの息子、ダンカン・ジョーンズ監督の異色作『月に囚われた男』を思い浮かべるかもしれません。

この映画は月でただ1人勤務する男の姿を、サム・ロックウェルが演じています。ただし途中から「変則的な1人芝居」になるのがミソの映画です。

才能と意欲ある俳優が挑戦している1人芝居映画。SFサバイバル映画『ソリス』ですが、こういった映画の系譜の中で評価すべき作品でもあります。

「空想科学読本」で分析してほしい宇宙描写


(C)SOLIS FILM LIMITED

SF・ディザスタームービーは派手な描写ありきで、科学考証は二の次。数多くのディザスタームービーを製作したローランド・エメリッヒは、映画にリアルなリサーチを求めず、派手な光景が描ける極端な学説をわざわざ探し出して、自作に採用しています。

2011年にNASAは「科学的に根拠がない映画」のワースト7を発表しています。堂々のワースト1位はローランド・エメリッヒの『2012』でした。

残る作品を順に紹介すると、『ザ・コア』『アルマゲドン』『ボルケーノ』『チェーン・リアクション』『シックス・デイ』『超次元の成功法則~私たちは一体全体何を知っているというの!?』と発表されています。

大作映画のタイトルが並ぶ中、7位の作品は日本未公開の、スピリチュアルブームの先駆けとしてヒットした2004年のドキュメンタリー映画。

後に自己啓発モノとしてDVDレンタルにもなりましたが、偽科学と多くの批判を浴びた作品です。あまり深く触れないでおきましょう。

娯楽重視で作られている映画に、科学的な正確性を求めるのは野暮というものですが、『ソリス』はNASAの技術者と天文物理学者がspecial thanksとクレジットされています。

それだけに地味ながら、説得力がある様に見える展開となっています。ある程度リアル感を意識して製作いるのでしょう。

とはいえ映画的な見せ場も用意されています。ちなみにアドバイザーの天文物理学者、サラ・シーガー教授は、ディスカバリーチャンネルなどで放送の、「NASA超常ファイル」に度々登場している人物。エンタメ業界が求める物をご存知の学者です。

この映画、科学考証の正確性を「空想科学読本」が採点すると、どのように評価されるのでしょうか。

まとめ


(C)SOLIS FILM LIMITED

1人芝居映画として、またリアル性重視のSF映画として意欲的に製作された映画『ソリス』。

本作の製作・監督・脚本はイギリスのカール・ストラシー。彼はシャーロット・キルビーと共に製作会社を立ち上げ数々の短編映画を製作、ついに初の長編映画となるこの作品を完成させました。

シャーロット・キルビーは『ソリス』の製作にも参加、またこの作品の宇宙船や宇宙服の音声としても出演しています。

彼らは現在、SF要素のあるホラー映画を次回作として準備中です。こういったジャンル映画のファンは、カール・ストラシーの今後の活躍に注目して下さい。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)2017 TBAC, LLC

次回の第50回は豪華キャストで贈るクライム・コメディ映画『Mr.&Mrs.フォックス』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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