2019年・秋に公開予定
富田克也監督の映画『典座-TENZO-』
曹洞宗の開祖・道元が遺した『典座教訓』を軸に、3.11以降の仏教と信仰の意義の探求を試みた富田克也監督の映画『典座-TENZO-』。
第72回カンヌ国際映画祭・批評家週間「特別招待部門」への正式出品が決定し、日本国内では2019年・秋の公開が予定されています。
本記事では、富田克也監督のプロフィールと本作へのコメント、特報映像とポスタービジュアルをご紹介致します。
監督・富田克也
本日、代々木公園にて開催中のアースデイ東京の曹洞宗ブースにて、禅に因んで、映画「典座」についてトークイベントに参加します。近くをお通りの方がいらっしゃいましたら是非。 pic.twitter.com/3hYF8qhawC
— Katsuya Tomita/富田克也 (@kuzoku_t) 2019年4月21日
富田克也コメント
『サウダーヂ』『バンコクナイツ』で知られ、国内外問わず多くの映画人から注目を浴びている富田監督。
制作経緯について触れながらも、仏教と信仰の意義、そして本作の意義を以下のように語っています。
この作品は、全国曹洞宗青年会からの依頼を受け作りました。3.11以後、彼らは人々から必要とされ始めたと感じています。そして私たち空族も、『サウダーヂ』で描いた疲弊し空洞化する現代の日本社会の姿、『バンコクナイツ』の撮影を通じてアジア的な仏教感に触れ、今こそ日本人には信仰が必要なのではないかという思いからこれを引き受けました。カンヌ映画祭からの招待は、まさにご縁を頂いたという事だと思っています。
3.11によって生まれた多くの死と、その死を悲しむ人々。そんな消えることのない“傷”を和らげる方法の一つとして“信仰”が存在します。
そしてそれは、死をはじめ、生きる中であらゆる“喪失”を経験する人々の心中にある“空っぽ”を満たす方法の一つでもあります。
現代社会の“空っぽ”さを描き続けてきた富田監督がそんな“信仰”について探求を試みた時、そこにはどのような答えが待ち受けているのでしょうか。
富田克也監督プロフィール
1972年生まれ、山梨県出身。
2003年に発表した処女作『雲の上』が映画美学校映画祭2004にてスカラシップを獲得し、それを元手に制作した『国道20号線』を2007年に発表します。
2011年に発表した『サウダーヂ』ではナント三大陸映画祭グランプリ、ロカルノ国際映画祭独立批評家連盟特別賞を受賞。国内では高崎映画祭最優秀作品賞を受賞したのみならず、毎日映画コンクールでは優秀作品賞&監督賞のW受賞を果たしました。
また、タイ・ラオスでのオールロケを敢行した『バンコクナイツ』(2016)はロカルノ国際映画祭をはじめ世界各地の映画祭に招待されました。そして国内でも、第 72回毎日映画コンクールにて監督賞&音楽賞のW受賞、同年の「キネマ旬報ベスト 10」では6位に選出されるなど、国内外で高い評価を獲得しました。
映像制作集団「空族」とは?
KUZOKU SAGA~空族サーガ~ 空族全作品特集上映【予告編】(2017)
“作りたい映画を勝手に作り、勝手に上映する”をモットーに、2004年から活動を開始した映像制作集団です。
長期の撮影期間を基本とする映画制作スタイルにくわえ、作品ごとにその形を合わせるという徹底した自主配給・宣伝、制作した全作品の未ソフト化=上映のみでの公開という硬派とも言える独自の映像制作活動を続けています。
作品における題材やテーマは日本のみならずアジア全体を視野に見据えており、その広く独特な視点は作品にも顕著に表れています。
「典座」とは?
「典座」とは、禅宗の寺院内で暮らす僧侶や参拝者の食事を司る役職の名前です。
仏道修行に励む僧堂内で調理を司る典座職は、曹洞宗における六知事(寺院運営を深く携わる六人の僧侶。役職名でもあります)においても第五位にあたる、非常に重要な役職です。
それは、禅宗においては調理・食事もまた重要な修行であること、調理・食事という行為そのものが生命の生死、或いは殺生と繋がっていることと深く関わっています。
曹洞宗の開祖・道元は自著『典座教訓』の冒頭にて、典座には修行経験が深く信任もある僧が代々任命されてきたと述べており、同著に記されている故事にも、典座の姿や言葉から様々なことを学ぶ道元が描かれています。
映画『典座-TENZO-』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
富田克也
【脚本】
相澤虎之助、富田克也
【出演】
河口智賢、近藤真弘、倉島隆行、青山俊董
【作品概要】
曹洞宗の開祖・道元が遺した『典座教訓』とある兄弟弟子の姿を軸に、3.11以降の現代日本における仏教の意義、そして信仰とは何かという問いへの探求を試みた作品。
映像制作集団「空族」および富田克也監督が全国曹洞宗青年会から依頼を受けて制作した仏教映画です。
本作は、第72回カンヌ国際映画祭・批評家週間「特別招待部門」への正式出品が決定されています。
映画『典座-TENZO-』のあらすじ
10年前、本山での修行期間を終えた兄弟子の倉島隆行(僧名・リュウギョウ)と弟弟子の河口智賢(僧名・チケン)は、自身の生まれた寺へとそれぞれ戻ってゆきました。
山梨県都留市の耕雲院。智賢は住職である父と、母、妻、そして重度の食物アレルギーを抱える3歳の息子とともに暮らしています。
全国曹洞宗青年会副会長としての顔も持ち、いのちの電話相談、精進料理教室やヨガ坐禅など、意欲的な活動を続けています。
一方、福島県沿岸部の生まれである隆行は、3.11の津波によって、寺も、家族も、檀家も全て失いました。
今では瓦礫撤去の作業員として働きながら、仮設住宅でひとり暮らしをしていました。けれども、彼は本堂の再建を諦め切れずにいました…
まとめ
★カンヌ出品決定!★『サウダーヂ』(11)『バンコクナイツ』(16)に続く、富田克也最新作『典座 -TENZO-』(全国曹洞宗青年会 製作)が第72回カンヌ国際映画祭 批評家週間「特別招待部門」へ正式出品決定!ご期待ください!日本公開は2019年秋となります。
公式HP→ https://t.co/V9mvTue54G pic.twitter.com/Ulf5X0qd01— 空族最新作『典座 -TENZO-』 (@kuzoku_official) 2019年4月22日
3.11の発生以降、劇映画・ドキュメンタリー問わず数々の映画が、それが遺していった消えることのない“傷”を描こうとしてきました。
しかしながら、“宗教”という視点、或いは“信仰”という視点を主軸に置いた映画はほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
その中で、仏教・曹洞宗の僧侶たちの姿、彼らが日々学びを受けている開祖の遺した書物を通じて、3.11以降の日本社会を生きる人々が求める“信仰”とは何かを真正面から描いたのが、富田克也監督の『典座-TENZO-』なのです。
映画『典座-TENZO-』は2019年・秋に公開予定です!