FILMINK-vol.7「David Harbour: Raising Hell In Hellboy」
オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。
「FILMINK」から連載7弾としてピックアップしたのは、日本では2019年秋より公開予定の映画『ヘルボーイ』主演のデヴィッド・ハーバー。
俳優デヴィッド・ハーバーの憧れの存在についてや、ヘルボーイという大役への取り組み方をギル・プリングルのインタビューでご紹介します。
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CONTENTS
警官からスーパーヒーローへ
ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で知られるスター、デヴィッド・ハーバー。
警察官のユニフォームを脱ぎ捨て、荒々しく奇天烈なスーパーヒーロー“ヘルボーイ”に変身を遂げました。
憧れのハリソン・フォード
──この抜擢を予想していましたか?また、今年を代表するアクションスターになるとお考えですか。
デヴィッド・ハーバー(以下ハーバー):特に映画界では、私は悪役として使われるだろうと考えていました。「ストレンジャー・シングス」まで、映画での仕事は悪役が多かったんです。もしくはいつも死ぬ役、リーアム・ニーソンにボコボコにされるような役でした。
アラン・リックマンやクリストファー・ウォーケンタイプの俳優だと思っていたんです。
ところが、今いるのはアーノルド・シュワルツネッガーやブルース・ウィリス側。私は彼らの映画を見て育ってきました。
初めて劇場で見た映画は『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』で、もう14回くらいは見返しています。いつも、畏敬の念を抱いて見ています。
私もそのような映画に参加できる、そんな俳優になれる、そう思えることがたいへん嬉しいです。
──あなたにとって最高のアクションスターはハリソン・フォードですか?
ハーバー:ハリソン・フォードが作中で戦いに行く時や何かをしなければいけない時、本当に素晴らしい表情を見せてくれます。近頃だとクリス・エヴァンスもそうです。そういう時の彼らの顔は「うわ、あいつは俺をこてんぱんにする気だな」と信じさせてくれる。
英雄的な表情や行動、「俺はここをコントロールしている」という冷静さとは対照的ですよね。
そしてハリソン・フォードは脆い部分も見せてくれます。彼が劣等感を抱きながらも、戦いを乗り越えた時、物語はもっと劇的に変化します。ブルース・ウィリズもそんなドラマを見せてくれますが、やっぱりハリソン・フォードが私の一番の憧れです!
メイクアップは恐ろしい
──ヘルボーイは飛び抜けて不気味なヒーローですね。
ハーバー:ええ。私は長年このキャラクターのファンでした。ダークホースコミックスが好きで、少し前に映画化された2つの作品も大変面白かったです。キャラクターたちが本当に興味深くて。
ヘルボーイ役が決まった時、いくつかの感情が浮かびました。1つは、製作陣が私を選んでくれて本当に嬉しかったということ。もう1つは、この人々に愛されるキャラクター、そして以前も映画化されているという事実に不安を抱いたということ。
プロデューサー達は、この映画が本当にダークで残忍なものだと私に伝えました。それから台本を読んだら、そこには素晴らしくダイナミックな闘争が描かれていました。
何が正義で何が悪なのか?私たちは自分自身をどのように定義するのか?それは私たちの遺伝的な問題か?それとも意識的なものか?…そこにあった全てが面白くて魅力的だったんです。
それからメイクアップをはじめとして恐ろしいものがあることを知って…。それでもこのキャラクターを目覚めさせるというアイディアには本当に興奮しました。これはスーパーヒーローものですが、同時にスーツや角付きのクラシックな怪物映画でもあるんです。
──メイクにはどのくらい時間がかかったんでしょうか?
ハーバー:朝に3時間、そのうちの2時間は顔のメイクでした。それから体、角、目、歯、手、尾は残りの1時間です。
──メイクが完了した後に動き回ってみて、いかがでしたか?
ハーバー:最初は全く慣れず混乱していましたが、だんだん通常の生活よりナチュラルに思えてきたんです!メイクを落として家に帰って鏡を見ると「うーん…」という感じがして。メイクをしてヘルボーイの顔になると「これこれ!これが自分!」みたいに。
ヘルボーイのスーツはかなり可動的で、ウェットスーツのような感触でした。スタッフが潤滑ゼリーを私とスーツの間に入れ、スライドさせてファスナーを閉めるといった流れで、大変だったのは右手の着用だけでした。
右手は操り人形をどうにか操るような感じだったんですが、何もつかめなくて。手を持っているというよりは手首だけある、といった感触でしたね。機能するのは左手だけでした。
バレエの動きを取り入れたヘルボーイ
──ではヘルボーイのスーツを着用している間は、軽食も食べられなかったんですか。
ハーバー:10分ちょっとあれば外すことができたので何とかなりました。
それでも撮影中は、例えば乗馬など、かなり大変なこともありました。右手が使えないから左手だけで乗らなければならなかったんです。想像するとそこまで難しくないように思われるかもしれませんが、すごくハードだったんですよ!
尻尾も変わっていましたから、普通の椅子には座れず、背もたれが無いリンゴ箱に座っていました。撮り終わって座っていて、もう一度撮り直そうとなった時に尻尾が顔の前にあるものだから、「うわ、痛っ!」って。
それほど重さが無くワイヤーが入っていたので、流動的な動きが可能だったんです。これは自分の体の一部なんだと感じるように努めました。
──原作コミックを読み返されましたか?
ハーバー:ええ、引き出しからたくさん取り出して、ダークホースのグラフィックノベルを読み返しました。『ヘルボーイ』の話には順序があるのでその通りに。
原作者のマイク・ミニョーラにも話を伺いました。映画ではクローズアップや表情のシーンなど、原作コミックのフレームを多く取り入れています。顎や額だったり体を使って表現することはとても楽しかったです。
私は可能な限りバレエの型を使用したかったんです。バレエでは第1ポジション、続いて第2、第3ポジションがあり、それらを使い、感情や個々の色で表現をします。
私はヘルボーイを演じるにあたり、彼の怒りや他の心理的なドラマティックさで表現を満たせるよう動こうと試みました。
──この映画はかなり暴力的ですが、それについてはどんなお気持ちでしたか?
ハーバー:私は好きです!例えばタランティーノ作品のように、全体が暴力的で、キャラクターたちはおかしな所で馬鹿げたことをしたりするものが大好きです。
それから本作では黙示録を本当に恐ろしいものとして描いているということも素晴らしい。これはPG-13の黙示録じゃないんです。それからモンスターがめちゃくちゃ怖いということ。みなさん衝撃を受けると思います、暴力と恐怖が見事に描かれています。
こういったジャンルの作品でPGバージョンを追加するのは面白いですよね。デッドプールはPGバージョンで成功しましたし、かなり成熟した映画でした。
似たようなものではなく、様々な要素をジャンルに取り入れることに非常に関心があります。ヘルボーイはスプラッター描写満載、血みどろ、暴力的。新しい企画に乗り出すことは大好きですので大歓迎です!
地獄のような時間とは
──あなたが日常で恐れているものは何ですか?
ハーバー:何が怖いかって?全部ですよ!蛇は大丈夫ですし好きですが、クモはダメですね。
肉体的な痛みも大っ嫌いです。でも一番恐れているものは死ですね。後は年々老いていくことかな。私達は歳をとりますが、私はそれについて今まで誰とも話したことがありません。心と体が老いて壊れていくことはとても怖いです。
意識そのものについて恐れを抱くこともあります。ですが日常で地獄のような時間を経験したことは何度もありますから、それ以上恐れるものはないとも考えています。
──地獄のような時間とは、どのようなものだったのでしょうか。
ハーバー:何と言いますか、これは既に公にしていることなのですが、私は社会の勝手な法律で問題を抱えていたことがあり、20代の頃、精神科の施設に収容されて、人生が壊れかけたんです。
ですから人間が人間として存在し生きることは怖くありません。例えば、自分の脆さにあがきながらも生きることを恐れてはいないんです。この生命への考えは、恐怖も、痛みも、素晴らしくて不思議で、全ての人が抱くものです。
誰かを怖がらせてしまうかもしれないと悩んでいるよりは、私自身がめちゃくちゃになってしまう方が怖くありません。混乱を味わうことも時には面白いものです。ですが死や老いに関することはまだ怖いですね。
──現在、かなりハードな作品に挑戦されたことは大変興味深いです。
ハーバー:つま先を折ったり膝を壊すでしょうから、42歳になってアクションはやるべきではありませんでした。スーツでのアクションはとりわけ大変なことでしたし、いつも暑くて暑くて…。
見かねたスタッフがスーツにエアコンのチューブを入れてくれました。私の汗は角から出ていたんですよ。ワイルドな撮影でした。
先代ヘルボーイとの交流
──前シリーズでヘルボーイを演じたロン・パールマンと話されましたか?
ハーバー:ええ、一緒にディナーをしました。新しい映画のプロジェクトについてというよりは、私の彼への憧れと称賛だとか、彼がヘルボーイの世界にいたこと、彼がどんな人であるかということについて話しました。
同じ俳優として、また一人の男性としてどんなに憧れているか伝えたかったんです。彼はギレルモ・デル・トロの素晴らしい2本の映画に出演していましたから、それがどんなものであったかも伺いました。ロンは本当に優しくて親切で素敵な方です。
──『ストレンジャー・シングス』、『ヘルボーイ』、それにマーベルの次の作品『ブラック・ウィドウ』への出演とあなたはすっかり世界のオタクたちのアイドルかと思いますが、いかがですか?
ハーバー:それは本当にクールです!私自身もオタクで、ずっとオタクのカルチャーが好きで親しんできました。子どもの頃ずっと遊んでいたゲームは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』です。カルチャーの世界に没入することは最高です。私は今、仲間たちと一緒にこの世界の中にいるような気がします。
──今あなたのファン層は若者、子どもたちが多く占めています!これまで子どもたちがあなたに接近してきた中で、一番変わった場所はどこですか?
ハーバー:不思議なことに、子どもたちはいつでもどこでも私に近づいてくるんですよ。「ストレンジャー・シングス」は大人のファンが多いようです。私自身は有名人に近づいて無理に写真を求めるのは恥ずかしくて出来ないタイプなんですが…。
でも「本当にごめんなさい、でも私があなたに会って写真を撮らなかったら子どもに殺されます」と悲痛な面持ちで写真を求められたことはあります。ニューヨークの路上やレストランでもどこでも写真を頼むほど、お子さんのことを思っているという考えは好きです。
本当に嫌なのはトイレで頼まれることですよ。私は単に用を足したいだけですし、もちろんそこは写真を撮る場所じゃありませんし。でもそれ以外の場所で人々と触れ合うことができるのは、とても素敵なことだと思っています。
転機となった『ストレンジャー・シングス』
──あなたは『ストレンジャー・シングス』の成功に驚きましたか?
ハーバー:ええ、驚く以上でした。あれはある特定の人々がのめり込むようなニッチなドラマだと考えていたんです。しかし今では世界中で大ヒットです。
個人的に「ストレンジャー・シングス」はテレビドラマの中で最高作品だと思います。…もちろん、自分が出演しているからだけではないですよ!演じている最中も自己批判をよくするんですが、それでもあのドラマは大好きで、素晴らしい作品です。。
「ストレンジャー・シングス」は人気作に値しますが、どのような人々がファンか、または好きではないのか分かっていません。
私の俳優人生は易しいものではありませんでした。いつか良くなるだろうといつも考えていましたが、閉じ込められているような気分でした。もっとひどい方向に進むだろうと悩んだこともありました。
ですから「ストレンジャー・シングス」の話が舞い込んできた時は、「ああ神様、これに出られたら最高です!」と祈っていました。スターたちの名前が並んでいて、自分の名前もその中にあるなんて、一度も考えたことがなかったからです。
FILMINK【David Harbour: Raising Hell In Hellboy】
英文記事/Gill Pringle
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au
*本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。
映画『ヘルボーイ』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Hellboy
【監督】
ニール・マーシャル
【キャスト】
デビッド・ハーバー、ミラ・ジョボビッチ、イアン・マクシェーン、サッシャ・レイン、ダニエル・デイ・キム、トーマス・ヘイデン・チャーチ
【作品概要】
マイク・ミニョーラ原作の同名人気コミックをSFホラードラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」でブレイクしたデビッド・ハーバー主演で映像化。
過去にはギレルモ・デル・トロ監督によって映画化されていますが、本作はスタッフ、キャストを一新し、原作者マイク・ミニョーラを監修に招き製作された、全く新たな『ヘルボーイ』となります。
映画『ヘルボーイ』のあらすじ
魔界で生まれた悪魔の子“ヘルボーイ”。
彼は地球で育てられ、超常現象調査防衛局「BRPD」のエージェントとなります。
そんな折、ヘルボーイはある出来事に遭遇しますが…。