YouTubeやテレビでは、多くの「衝撃映像」を見ることができます。
事件や事故の映像は、個人でアップされるものありますが、映像パパラッチの手によって撮影されたがあるとか。
“刺激的な瞬間が見たい”という欲望がある限り彼らは存在するのでしょう。
今回は、映画『ナイトクローラー』をご紹介!俳優ジェイク・ギレンホールの眼力の強さが印象的だと言われた作品です。
映画『ナイトクローラー』の作品情報
【公開】
2015年(アメリカ)
【脚本・監督】
ダン・ギルロイ
【キャスト】
ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン
【作品概要】
『ブロークバック・マウンテン』『複製された男』などに出演したジェイク・ギレンホールの主演作品。
深夜のロサンゼルス舞台に、事件や事故の刺激的な映像を求める報道パパラッチ。視聴率主義のテレビ業界の裏側で、刺激的な映像を撮る男が、次々にサクセスストーリー化する姿を描いたサスペンススリラー。
共演は『マイティ・ソー』シリーズなどに出演のレネ・ルッソ。『ボーン・レガシー』『リアル・スティール』などの脚本家を務めた、ダン・ギルロイの初監督作品です。
映画『ナイトクローラー』のあらすじとネタバレ
深夜のロサンゼルス。工事現場の金網をで金切ペンチで切断して盗むルイス・ブルーム。
警備員に見つかると、逆に彼に襲い掛かると腕時計とフェンスを盗んでいきます。
スクラップ工場のバイヤーに、ルイスは、盗品の金網やマンホールの値段ついて交渉する際に、自身を工場で働かせてくれ仕事を求めます。
しかし、現場責任者はコソ泥棒を雇う気と断られてしまいます。
その帰り道、偶然に自動車事故の現場に遭遇した際に、テレビ局に撮影した映像を売るパパラッチ2人組を見かけます。
カメラで撮影する彼らの姿に触発され、ルイスは、自分も同じ商売を始めることを思いつきます。
盗んだロードバイクを売って、ホームビデオと警察無線受信機を買い求めたルイス。
深夜の街で、ルイスは、カージャックの襲撃されて血みどろとなった瀕死の男性を撮影。
それを持って、以前に見かけた映像パパラッチのように、テレビ局へと売り込みに行きます。
朝のニュース番組のディレクターのニーナは、ルイスが撮影した映像を購入します。
これからも撮影を続けることを勧めるニーナ。
彼女のアドバイスは、テレビ局で放送する価値があるのは、裕福な住宅街の白人の暴行事件だと、ルイスに取材映像のアドバイスをします。
その後、ルイスは、ホームレスでお金が欲しくてたまらないリックを助手として雇います。
その光景は、まるでルイスが、スクラップ工場で見たこと、彼がされたことを学んだかのように、彼は得意げに行なっていくのです。
ルイスは、刺激的な映像を撮影したいがために、事件現場で不法侵入を犯して、臨場感があるような撮影をします。
また、交通事故の現場では、カメラアングルにこだわり、遺体を動かして映像のクオリティを上げる。
これらの刺激的な映像で儲けた金で、ルイスは、映像のクオリティと現場直行の効率化のため、高価な機材と赤いスポーツカーを購入します。
次々に欲しいものを手にしていくルイスは、テレビ局のニーナを食事に誘い、ビジネスパートナーとして、彼女を脅して肉体関係を迫ります。
映像パパラッチの同業者ジョー・ローダーは、ルイスの躍進的に活動してきたことで仕事が減ったのか、ビジネスパートナーとして組む話を持ちかけてきます。
しかし、ルイスは、自分にはパートナーは必要ないと、ジョーの誘いを断ります。
しばらくすると、ジョーは、他のメンバーとパートナーを組み、映像パパラッチの仕事の巻き返しにかかります。
ルイスは、そんなジョーの活躍を苦々しく思い、苛立ちを覚えます。
ついに、ルイスは超えてはいけない一線を越えるのです…。
映画『ナイトクローラー』の感想と評価
この作品は、サイコスリラーと言われてはいますが、私はそのようには感じませんでした。
人間の精神は、ここからが狂っていますという線引きはありませんし、100%正常な人物、100%の正義感なども存在しません。
ですから、ルイス・ブルームは、サイコパス(気狂い)とは一概には言えないような気がしますね。
ルイスのような人は、意外に世間には多く存在しているのでは?と思いますしね。
また、ダン・ギルロイ監督の言うように、「究極のサクセスストーリー」という方がぴったりな気がします。
例えていうなら、資本主義という宗教観の原理的な野獣(信仰者)が、主人公ルイス・ブルームなのでしょう。
野獣が食する獲物をハンティングをする際に、その食欲を見て、狂っとる!イカレテル!と言わないのと同じことです。
つまり、主人公ルイスを演じたジェイク・ギレンホールの眼力や目力を、サイコで狂っていると見間違えるのは具合の悪いことではないでしょうか。
深夜のロサンゼルスで這い回る夜行性の野獣。生き物としての美しい目ではないかと感じて仕方ありません。
だからこそ、ルイスの目が恐ろしいというのは理解できます。猛獣は怖いですからね。
(ちなみに「ポテ〜ト〜」遠吠えする動物もルイスの野獣の隠喩記号です。笑)
今回も映画の隠喩表現について、2つ触れて起きます。1つ目は、冒頭シーンで、ルイスが警備員を襲う場面です。
ルイスは、服装を見て警察官ではなく警備員だと確認してから、あくまで冷静に襲います。
彼から盗んだ腕時計は単に金目のものではなく、意味があるのではないでしょうか。
「他人の時間(命)を奪う」、これは今後ルイスが殺人に関与する暗示。
「時間(時計)を手にする」、これは社会性の保持を意味する。
後にも、腕時計は、インサート・ショットで入れられる箇所があります。
ルイスが、お金が欲しいだけであれば、金網やマンホール等や、ロードバイクのように引き換えていたはずです。
小道具としての腕時計は、ダン監督の見事な粋な演出ですね。
2つ目は、物語の中盤に、ルイスがジョーに苛立ちを抑えられず、洗面所の鏡を割るシーンが出てきます。
通常の映画文法では、鏡を割る描写とは、精神を病み自身が壊れてしまったことを表現します。
確かに、ルイスは、一歩過激な行動にスイッチが入ったことは間違いありませんが、しかし、自己が壊れたとは少し言いにくいようにも思います。
映画の意味を想像するのはそれぞれの自由。あなたは、どのように感じられましたか?
まとめ
ちなみに、「サイコスリラー」のサイコとは、サイコパスのことです。
反社会的な人格になってしまう精神疾患の一種とされ、この障害を持つ人物は感情が希薄で、他者との共感能力が低いという特徴があるようです。
主人公ルイス・ブルームは、どのように見えましたか?
「極端な冷酷さ」「エゴイズム」「無慈悲」「感情の欠如」「結果至上主義」もサイコパスの主な特徴と言われています。
パソコンに情報を求めて24時間向かっているというルイス、また部屋の窓際にある花に水をあげ育てるルイス。
彼はサイコパスですか?
ルイスの身の回りの物は、次々に、サクセスストーリーの成功を見せるかのように高級品へと変化を見せます。
オンボロ自動車は乗り換えられグレードアップされ、ホームビデオも業務用プロ仕様カメラにバージョンアップされて、ついには、ラスト・シーンでは、社名入りの撮影機材車は、戦闘員付きの戦闘車のようですね。
でも、変わらないものがあります。あれだけ水をあげ育てた紫色の花だけは成長しません。
ルイスが水をあげていた花は“造花”だったとしたら?
脚本家出身の豊かなセリフが多く見られるこの作品、ぜひ、あなたに観ていただきたい作品!
オススメ一押しの怪作であり、秀作です!