ちば映画祭2019エントリー・亀山睦実監督作品『恋はストーク』が3月31日に上映
「初期衝動」というテーマを掲げ、2019年も数々のインディペンデント映画を上映するちば映画祭。
そこで上映された作品の1つが、第2回岩槻映画祭の短編コンペティション部門にて審査員特別賞を獲得した亀山睦実監督の短編映画『恋はストーク』です。
躊躇いなく「好き」を追求してゆく少女が辿り着いた結末とは?
5分という短い時間の中に凝縮された、危険な「好き」の物語です。
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映画『恋はストーク』の作品情報
【公開】
2014年(日本映画)
【脚本・監督】
亀山睦実
【キャスト】
福永朱梨
【作品概要】
「好き」を追い求め、「好き」に執着してゆく少女の末路を描いた短編映画。
監督は、初監督作『好きなんかじゃない!』で第一回池袋映画祭準グランプリを、『ゆきおんなの夏』でTOKYO月イチ映画祭グランプリ、第十回田辺・弁慶映画祭入選を獲得した亀山睦実。
そして「好き」に執着する主人公を、同じくちば映画祭2019で上映された中川奈月監督の映画『彼女はひとり』でも主演を務めた、女優の福永朱梨が演じました。
本作は第2回岩槻映画祭の短編コンペティション部門にて、審査員特別賞を受賞しました。
映画『恋はストーク』のあらすじ
「ある日ふと、あなたのことを想い出したら、こんなところまで来てしまいました…」
少女の恋のドキドキときらめきと、その末路…ーー
(*監督本人によるYouTube公開中の『恋はストーク』のあらすじから引用)
亀山睦実監督のプロフィール
東京都葛飾区生まれ、日本大学芸術学部映画学科卒業。
主な作品は、『好きなんかじゃない!』(2012)、『恋はストーク』(2014)、『ゆきおんなの夏』(2016)、『何度でも大好きだって君に言うよ』(2017)、MV『人生の美しさfeat.DOZAN11』などです。
卒業後は映像ディレクターとして、ウェブCM・TV・MV・イベント映像など様々な映像作品を監督・企画し、2018年5月には、西尾維新原作の人気小説『十二大戦』の舞台化作品で映像演出等を担当しました。
2019年には、「キス」をテーマにした全5話のショートムービー・シリーズ『追いかけてキス』を監督し、作品はYouTubeにて動画配信されました。現在は新作の長編映画を準備中です。
映画『恋はストーク』の感想と評価
映画冒頭から怒涛とも言える勢いで綴られてゆく主人公のモノローグは、止めどなく溢れて出てくる「好き」という感情、或いはありきたりな表現ではありますが、「恋に恋する少女」の心情そのものを観客たちに伝えようとします。
自身で抑えることのできない「好き」を、不安を感じることもなく、ひたすら楽しげに話す主人公の様子は、観客たちに「可愛らしい」という印象を抱かせつつも、主人公に対する仄暗い不安、言い換えれば「翳り」を感じさせます。
主人公の明るさ、可愛らしさから垣間見える、彼女の「翳り」。
それは、アレンジの施されたショパンの名曲『ワルツ第6番』、通称『子犬のワルツ』の明るい曲調と共に語られる「気づけば彼のアパートに辿り着いていた」「どの部屋に住んでいるのかは知らない」という言葉によって見えてくる、主人公と「彼」の関係にも表れています。
そして『子犬のワルツ』が鳴り止み無音と化した時、映画『恋はストーク』は、ただ可愛らしい少女の恋を描いた物語ではないということに確信を持たせてくれます。
その後ある事実を知ったことで、主人公の「好き」はそれとは全く真逆の、けれども双子の姉妹のようにそっくりな、「嫌い」へと変質します。
その瞬間を示す主人公の一言に、観客たちは「この映画は恋愛映画ではなく、ホラー映画だったのか」と困惑する程の恐怖を味わうでしょう。
それは、人によっては「嫌い」どころか、それ以上の、例えば「憎しみ」や「殺意」に変質したのではないのかとさえ考えさせてしまう程の恐怖です。
亀山監督は福永朱梨扮する一人の少女を通して、危険を孕み、もはや暴走しつつある「好き」という感情をポップに描きながらも、その「好き」が一瞬にして「嫌い」へと変質する、まさに戦慄の瞬間をも描いたのです。
まとめ
5分という短い時間の中で、「好き」という感情の危うさ、「好き」と「嫌い」という二つの感情の関係性、そして実際に「好き」が「嫌い」へと変質する瞬間までも描き切った亀山監督の技量には、驚嘆の言葉しかありません。
本記事にもその動画を掲載していますが、映画『恋はストーク』はYouTubeにある亀山監督自身の動画チャンネルにて全編が公開されており、鑑賞することが可能です。
危険な「好き」、そしてその裏にある「嫌い」の影を描いた濃密な物語に興味を持たれた方は、是非一度ご鑑賞下さい。