何度でも、立ち上がる。何度でも、立ち上がる。
2019年3月9日より映画『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』が公開
福島県白河市で活動しているご当地ヒーロー・ダルライザー。
何の特殊能力も持たない、生身の、“普通の人間”が最大の特徴である彼を題材にした映画『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』。
今回は佐藤克則監督のアツい映画『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』をご紹介します。
CONTENTS
映画『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【原作】
和知健明
【監督・脚本】
佐藤克則
【キャスト】
和知健明、三浦佑介、桃奈、佐藤みゆき、山﨑さやか、フスト・ディエゲス、井田國彦
【作品概要】
名産品のダルマがモチーフの福島県白河市のご当地ヒーロー・ダルライザーの誕生、そして町で暗躍する謎の集団・ダイスとの戦いを描いたアクション映画。
2017年にフォーラム福島、2018年にはポレポレいわきと池袋シネマ・ロサで限定上映された『ライズ ーダルライザー THE MOVIEー』が好評を博し、再上映を求める声が高まったの機に、再編集が施されました。そうして新たに生まれ変わった、まさに『NEW EDITION』な作品です。
原作・主演はご当地ヒーロー「ダルライザー」の生みの親であり、ヒーローショー等の活動では自らダルライザーに扮している和知健明。
そして監督・脚本は短編作品で数々の賞を受賞し、本作が初の長編作品である佐藤克則。
さらにアクション振付はハリウッドでも採用された護身術「KEYSI」の創始者であるフスト・ディエゲス、
主題歌はTHE BACK HORNの松田晋二、SILENT SIRENのすぅ、元・WHITE ASHの山岡トモタケという福島県出身の三人のアーティストによるユニット「White Re:birth」が担当しています。
映画『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』のあらすじとネタバレ
東京で役者を志しながらも限界を感じつつあったアキヒロは、妻ミオの妊娠を機に故郷である福島県白河市へと帰り、生まれてくる子供のためにも真っ当な仕事に就くことを決意しました。
親友でありフリーのカメラマンである田辺に迎えられつつ、久しぶりに実家に訪れるアキヒロ。
しかしホテル経営者であり未だに跡継ぎとなることを彼に求めている父親・アキラとすぐ喧嘩してしまい、瞬く間に「家出」してしまいました。
夕飯の時間、実家に戻ってきたアキヒロはショッピングモールの警備員として働くこと、お金を貯めて一刻も早く実家を去ることを家族に告げます。
警備員の仕事に「慣れ過ぎた」頃、アキヒロは同僚である湯本から「パーソナル・シート」というシールのようなウェアラブル端末を勧められます。
安眠効果があり、スマホとリンクすることで健康管理もできる、その上無料で配布されているというパーソナル・シートを訝しみながらも、アキヒロは自身の手首に貼り付けて眠りにつきます。
夢の中で、アキヒロは「美しい町」に立っていました。
宙に浮かぶテレビには、繰り返し「美しい町」を謳う謎の男が映っています。
次第に「美しい町」へ惹かれてゆくアキヒロ。
すると、彼の前にやはり謎の女性が現れます。ハルと名乗る女性は、アキヒロに「この町が、危ない」告げました。
夢から覚めた後も、ハルの姿と言葉がフラッシュバックし続けるアキヒロ。そんな時、彼は市が主催するキャラクターコンテストのチラシを見つけます。
「危ない」というこの町を守る存在。つまり、「ヒーロー」。
アキヒロはオリジナルのヒーローをデザインし、コンテストに応募することを決意します。
アキヒロは寝る間を惜しんでヒーローのデザインに取り組みます。ミオの協力を得ながらも、ついに「ダルライザー」を完成させました。
ある日、アキヒロが警備員の仕事をしていると、湯本が泣き続ける赤ん坊を放置している母親に激昂し暴れ出すのを目撃しました。
見兼ねて制止に入ったアキヒロにも暴力を振るう湯本。落ち着いてからも母親のことを「ゴミみたいな奴ら」と言い切り、そのまま失踪してしまいます。
その後、コンテストの選考結果がアキヒロの元に届きます。
一次選考で落選したと知り、落ち込むアキヒロ。しかし「何度でも立ち上がる」という言葉を思い出したことで、再スタートを決意します。
そして役所の観光課に勤めており市民劇団にも所属しているナナコ、護身術「KEYSI」の指導者・アレハンドロと出会ったことで、ヒーローとしての活動の場、ヒーローとしての格闘技術を得るための努力の日々が始まりました。
一方で、町には不穏な雰囲気が流れつつありました。
「美しい町」を守るためには排除も辞さないという排外主義的な集団「白河理想郷の会」が出現し始めたのです。そこにはあの湯本の姿もありました。
やがて、幾度となく夢の中に現れるハルに導かれ、アキヒロはとある工場へと向かいます。そこで、彼は銀色の仮面を被った六人の集団、
ハル曰く「ダイス」による強盗現場に遭遇しました。アキヒロは追跡を試みますが、翻弄され、逃げられてしまいます。
しかしながら、何者かが投稿した動画によって「アキヒロ扮するダルライザーが強盗を撃退した」ともてはやされ、ダルライザーは一躍有名になります。
間もなく、開設されたダルライザー公式サイトに一件の依頼が届き、アキヒロは指定された場所へと単身向かいます。
そこには近年「白河のカリスマ」と称えられ、夢の中で出会った謎の男の同じ顔をした田村、そして湯本を含む白河理想郷の会・メンバーが待っていました。
「君の敵はなんだ」「少数の強者を排除しなければならない」「君は勝者だ」
田村の言葉に戸惑い、自分は「普通の人間」だとアキヒロは訴えますが、聞き入れられることはなく白河理想郷の会・メンバーによるリンチが始まりました。
アキヒロは努力して習得したKEYSIで何とか抵抗しますが、最後は湯本のスタンガンによって気絶してしまいました。
実家の庭に打ち捨てられ、ベッドで目が覚めた時にはアキヒロは一時的な記憶障害に陥っていました。
そして「ダルライザーが罪なき市民らを暴行した」という怪文書が出回り、ダルライザーことアキヒロはあっという間に悪人扱いされるようになりました。
そんな中、アキヒロは強烈な頭痛と共に「田村脳科学研究所」という名とそこで行われたらしい実験の光景を幻視したことで、田村脳科学研究所について調べることにしました。
映画『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』の感想と評価
本作を鑑賞するため、2019年の3月16日に吉祥寺にある「ココロヲ・動かす・映画館○(通称:ココマルシアター)」で行われた監督、キャスト陣による舞台挨拶付き上映へと赴きました。
客席は満席。比較的小規模な劇場、舞台挨拶というイベント付きとはいえ、ここまで満席になるものなのか。
そして作品の上映を心待ちにしていることがありありと分かる客席の空気は、何に起因するものなのか。
それほどまでに、この作品は魅力的なのか。様々な疑問を抱えたまま、上映が始まりました。
それらの疑問を一掃する答えは、ごく単純なものでした。「ああ、面白いからだ」「“アツい”からだ」ただそれだけでした。
「ご当地ヒーローの映画」という情報によって、あまりにも愚かな偏見と抱いたことに気づかされました。
「田舎のコンテスト」と、どこかでナメていた、劇中のアキヒロと同じようにです。
「特殊能力を持たない」「生身」「普通の人間」を特徴とするヒーローは、それなりにいます。ですが、その中でも、これほどまでに愛に満ち、愛のために戦うヒーローは他にはいません。
妻のために、生まれてくる自分の子供のために、その子と同じ「未来」という時代を生きるであろう全ての子供たちに、存在するだけで素晴らしい者たちのために、戦う。
それはヒーローのあるべき姿というよりも、人間のあるべき姿、大人のあるべき姿に近いです。
だからこそ、アキヒロは最終的に「ヒーロー」としてのダルライザーにあえて拘らなくなるのでしょう。
原作者にして主人公アキヒロを演じた和知さんは舞台挨拶にて、「本作の前半部分は自身がダルライザーを生み出すまでの実話に基にしているため、演技でも素の自分になりがちだった」と語られました。
「何度でも立ち上がる」という不屈の精神を体現し、「普通の人間」なのにではなく、「普通の人間」だからこそ戦い続けるヒーロー。
かっこいいヒーロー像というよりも、かっこいい「普通の人間」像を持つヒーロー。
そんなヒーローを生み出し、活動を続けてきた和知さんでなければ、結末の説得力も、結末に訪れる確かな感動も生み出せなかった。そう確信しました。
まとめ
評価よりも感想が中心になってしまいましたが、それほどまでに観る者をアツくさせた作品が『ライズ ダルライザー ーNEW EDITIONー』。
かっこいい「普通の人間」像を持つヒーロー。
そんなヒーローの姿を見られる、まさに一見の価値ありの作品です。
ぜひ劇場に足を運んで、アツくなってください。