映画『スパイダーマン:スパイダーバース』は、2019年3月8日より全国ロードショー。
全米公開時には初登場で1位を獲得、多くのメディアから“スパイダーマン映画史上最高傑作”と賞賛を受けた作品。
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』は、ゴールデングローブ賞でアニメーション作品賞を受賞し、第91回米アカデミー賞では長編アニメーション部門にノミネートされました。
この映画がなぜこれほどまでに大きな評価を受けたのか?
今回はアニメ『スパイダーマン:スパイダーバース』の魅力に迫ります。
CONTENTS
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Spider-Man: Into The Spider-Verse
【監督】
ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
【キャスト】
シャメイク・ムーア、ジェイク・ジョンソン、ヘイリー・スタインフェルド、ニコラス・ケイジ、キミコ・グレン、ジョン・モラニー
【作品概要】
「スパイダーマン」シリーズの全く新しい作品で、全編がコミックの世界観やタッチの良さを活かしたCGと手書きで制作されたアニメ作品。
複数のスパイダーマンが存在する世界が舞台となり、シャメイク・ムーア演じる主人公マイルス・モラレスを中心に描かれ、共演はニコラス・ケイジ、ジョン・モラニー、キミコ・グレン、リーヴ・シュレイバー。
監督はボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン。
日本語吹替版のキャストは、小野賢章、宮野真守、悠木碧に加えて、大塚明夫、吉野裕行、高橋季依、玄田哲章の豪華声優陣も日本語吹替に参加しています。
日本語吹替版主題歌で彩るのは、TK from 凛として時雨。書き下ろしの新曲「P.S. RED I」が新生スパイダーマンの魅力に一役かっています。
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の受賞データ
本来であれば映画賞についての表記はあまり好みではありませんが、本作に関してはあえて羅列して挙げておきましょう。
理由はこの先10年は『スパイダーマン:スパイダーバース』は古びることがないスタンダード作品にきっとなるからです。
さまざまなコンテンツとして次世代の映像や、ゲームの可能性に大きな貢献が寄せられるものと感じることでしょう。
単にアニメーションの素晴らしいさだけではなく、“コミックが持つ偉大なボーダレスの魅力”という、ミクストメディアの起爆剤になる価値がこの作品にはあります。
【受賞】
☆ゴールデン・グローブ賞(アニメーション作品賞)
☆ニューヨーク映画批評家協会賞(アニメ映画賞)
☆ニューヨーク映画批評家オンライン賞(アニメ映画賞)
☆デトロイト映画批評家協会賞(アニメーション賞)
☆シカゴ映画批評家協会賞(アニメ映画賞)
☆ロサンゼルス映画批評家協会賞(アニメ映画賞)
☆ロサンゼルス・オンライン映画批評家賞(アニメーション賞)
☆シアトル映画批評家協会賞(アニメーション賞)
☆アフリカン・アメリカン映画批評家協会賞(アニメーション賞)
☆インディアナ映画ジャーナリスト協会賞(アニメーション映画賞)
☆ユタ映画批評家協会賞(計3部門)
☆アニメーション・マガジン・ベスト・オブ2018賞(スタジオ・アニメーション賞)
☆カンザスシティ映画批評家協会賞(アニメーション映画賞)
☆フェニックス映画批評家協会賞(計2部門)
☆サンフランシスコ映画批評家協会賞(アニメーション映画賞)
☆セントルイス映画批評家協会賞(アニメーション映画賞)
☆ボストン・オンライン映画批評家賞(アニメーション映画賞)
☆オクラホマ映画批評家協会賞(計2部門)
【ノミネーション】
☆アニー賞(長編作品賞ほか、計7部門ノミネート)
☆全米映画批評家協会賞
☆サンディエゴ映画批評家協会賞
☆トロント映画批評家協会賞
☆ワシントンDC映画批評家協会賞
☆ダラス・フォートワース映画批評家協会賞
☆ヒューストン映画批評家協会賞
☆女性映画ジャーナリスト同盟映画賞(計2部門)
☆ブラック・リール・アワード
☆セントラル・オハイオ映画批評家協会賞(計3部門)
☆フロリダ映画批評家協会賞
☆インディアナ映画ジャーナリスト協会賞
☆アイオワ映画批評家協会賞
☆ノース・カロライナ映画批評家協会賞
☆ノース・テキサス映画批評家協会賞
☆サウスイースタン映画批評家協会賞
☆アメリカ映画編集者協会賞
☆美術監督組合賞
☆映画音響協会賞
☆音楽監督組合賞
☆PGA賞
もう1度、説明するね!
“コミックが持つ偉大なボーダレスの魅力”は、この先10年は新しい価値です!!
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』のあらすじ
スパイダーマンこと、ピーター・パーカーの突然の訃報により、ニューヨーク市民の多くは絶望的な悲しみにくれます。
13歳のマイルス・モラレスも、そのなかの1人でした。
彼は名門私立校に通う中学生ですが、実はマイルスもスパイダーマンでした。しかし、その力を未だに上手くコントロール出来ずにひとり孤独でした。
そんなマイルスこそがピーターの後を継ぐ、“新生スパイダーマン”だったのです…。
ピーターことスパイダーマンの死は、闇社会に君臨するキングピンが、ある個人的な理由から時空を歪めたことでもたらされました。
若いマイルスには、キングピンの更なる野望を阻止できるほどのパワーはまだありませんでした。
絶命する前のピーターと約束を誓ったマイルスですが、彼はただ不安だらけでした。
ニューヨーク市民の花に囲まれた亡きピーターの墓に向かったマイルス。
突然、そこに現れたのは、なんと死んだはずのピーターでした。ただ、そこし様子が違っていました。
そのピーターは、無精ヒゲに下っ腹の出た頼りない中年男性。おまけに何ともいい加減な性格の持ち主でした。
そんな彼は、キングピンに歪めた時空に吸い込まれ、全く別の次元のユニバースからマイルスの住む世界にやって来たピーターであり、スパイダーマンだったのです。
しかし、マイルスは“真のスパイダーマン”になるため、そのピーターを師として共に戦う決意をします。
すると、2人のもとに、別のユニバースから導かれたさらなるスパイダーマンたちが現れます。
スパイダー・グウェン、スパイダーマン・ノワール、スパイダーマン・ハム。そしてペニー・パーカーと彼女が操るパワードスーツ SP//dr。
キングピンの計画を阻止し、全てを元に戻す戦いのため、スパイダーマンたちが共に立ち上がろうとした矢先、マイルスの最も信頼していた大切な人が…。
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の感想と評価
コミックワールドの温故知新!
本作『スパイダーマン:スパイダーバース』の魅力を何度も、“コミックが持つ偉大なボーダレスさ”と先述しましたが、この先10年は新しい価値とは、どのようなものでしょう。
OK!もう1度だけ説明するね!
1962年にスタン・リーとスティーヴ・ディッコが世に登場させ、蜘蛛の糸を繰り出すスーパーヒーローとして世界中から愛されてきたスパイダーマン。
本作はご存知マーベル作品ではありますが、この作品を中心に製作したのはソニー・ピクチャーズ。
これまでのマーベル・スタジオの実写版に慣れきって、チョッと大きな声では言えない不満のようなものはありませんでしたか。
この作品ではコミックにしかない世界観が思う存分に解放され、より現代的に再現された楽しさがあります。
単にスーパーヒーローを実写版でリアルに描くことが、アメコミの画期的な価値として位置づけられてきた窮屈さが、この作品にはありません。
本作は見る者に新たな自由の選択が示されることでしょう。
それは実写化された映像のなかで活躍するヒーローの派手な動きがCGという奇妙さ。それが全編をアニメにしたことで、違和感はありません。(あ、ここ俳優さんね、ここCGねという鑑賞の不一致)
そもそもリアルというのは、「生」「実写」だからあるのではなく、コミック(漫画)だからこそ、“現実を超えたリアルなフィクションの現実味”というものが存在し、その偉大な力に生身の人間が追いつく表現がなされるものです。
そもそも映画はスクリーンに映し出されたものを眺めているのではなく、スクリーンに映し出されたものと、頭の中にある記憶を融合させたリアルさを作り出して楽しむものです。
このことは2次元である絵画や漫画、写真なども同じでしょう。画としてのフィクションは、脳内で作り出すリアルのひとつのパーツに過ぎないからです。
また、それだけでなく、本作はこれまでのマーベル作品よりも、クールでグラフィカルな映像体験が得られことで、今後もミクストメディアのマスターピース的存在になるでしょう。
この映画は花火大会だ!!
本作『スパイダーマン:スパイダーバース』をひと言で例えるなら、“大紐育(ニューヨーク)花火大会”です。
つまりは、グラフィックとサウンドが炸裂するコミック体験!
「え、漫画に音なんかないじゃん」と言うことなかれ、その画には、擬音語や擬態語のオノマトペもフンダンに表現されます。
またコミックらしい雰囲気を出す「〜〜〜」だって登場します。
本アニメーションはCG作成した画の上から、さら手書きを加えたりしながら魅力も増しています。
迫力ある細かなCG画の立体感のある映像で見せるだけに留まりません。
ポップアートさながらに「ドット」の画家ロイ・リキテンスタインのような荒いタッチのコミック画のように描くなど、変幻自在に美しさで目を楽しませてくれます。
これを日本人に分かりやすく解説すると、“江戸の絵師である葛飾北斎が作った映像作品のようで、北斎漫画が映画になった”といえば良いでしょうか。
アメリカ作品なので、今後のアニメーションに大きな影響を与える、“アメリカ的には次世代のネオ・ディズニーのような作風”というのが良いかもしれません。
少し勇み足ですが、アカデミー賞の長編アニメ部門受賞は間違いない!と言ってもいいかな⁈
運命を受け入れたアメリカ人のキャラクター!!!
参考映像:『ブラックパンサー』(2018)
2019年の第91回アカデミー賞にノミネートされたのが、同じくマーベル作品の『ブラックパンサー』。
黒人がスーパーヒーローということで、その世界観はアフリカの黒人的な芸術性と音楽でファンに新鮮さを与えてくれました。ただ少し、何か無理くり黒人に気を使ったような雰囲気も若干ですが感じましたね。
しかし、本作『スパイダーマン:スパイダーバース』の場合は、黒人におもねくことなく、髪を金髪に染めた白人が黒人系アメリカの若者に時代のバトンタッチをする点は見事です。
白人のピーター・パーカーが死ぬ前にスパイダーマンとしての使命を、ニューヨークのブルックリンに住む黒人ハーフの主人公マイルス・モラレスに託します。
彼は違法なストリートアートのグラフィティに自己のアイデンティティを見出すような、下町のストリートカルチャーのなかで生きる少年です。
しかもマイルスの父親はアフリカ系の黒人で、母親はヒスパニックのラテン系。どことなく夫婦のあいだにも溝を感じますし、その子ども(真相はわかりませんが…)という設定もユニークに感じられます。
そんな孤独感を抱くマイルスの周囲に、ごきげんな音楽があり、ヒップホップやR&Bを選曲しているのも自然であり、非常に現代的なテイストです。
また、ユニバースという時空を超えた世界観から繰り広げられた、トンデモギャグが温故知新になっており、コミックらしさというべきものが抱腹絶倒の安心感も魅力になっています。
まとめ
スパーダーマンの映画実写化には、これまでどの作品も若者の成長物語として受け継がれてきました。
それは本作も変わりません。
スパイダーマンがニューヨークのビルの屋上から、怯えながらもその身をダイブするという通過儀礼があることで核をなしています。
さらに本作スパイダーマンのひとりマイルスは、一見同じような黒人スーパーヒーローであるブラックパンサーの持った高級なブラック・ヒーロースーツは登場しない点も、キャラクター魅力として発揮されています。
13歳の主人公マイルスの場合は、初めに誰からヒーロースーツを手に入れるのか、きっと笑みと共に涙を浮かべることでしょう。
やがて、そんな彼が成長した時、マイルスらしい等身大のヒーロースーツをどうやって作るのかも納得の格好良さ。
OK!最後にもう1度だけ、説明するね!
本作『スパイダーマン:スパイダーバース』は、コミックが持つ偉大なボーダレスの魅力を“花火のように炸裂”させています。
また、この先10年は新しいスタンダードとしてのマスターピースの価値がある作品ですよ!!
大いなる力には、大いなる責任が伴う。
映画『スパイダーマン:スパイダーバース』は2019年3月8日(金)より全国ロードショー!