オリビエ・アサイヤス監督の前作『アクトレス 女たちの舞台』で素晴らしい演技を見せつけたクリステン・スチュワート。
ふたたび、アサイヤス監督とクリスティンがタッグを組んだ『パーソナル・ショッパー』がまもなく公開。
今回は2017年5月12日から上映が始まる『パーソナル・ショッパー』に注目します!
CONTENTS
1.映画『パーソナル・ショッパー』の作品情報
【公開】
2017年(フランス映画)
【脚本・監督】
オリビエ・アサイヤス
【キャスト】
クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガー、シグリッド・ブアジズ、アンデルシュ・ダニエル、タイ・オルウィン、アンムー・ガライア、ノラ・フォン・バルトシュテッテン、バンジャマン・ビオレ、オードリー・ボネット、パスカル・ランベール
【作品概要】
『アクトレス 女たちの舞台』のオリビエ・アサイヤス監督が、同作に続いて女優クリステン・スチュワートとコンビを組み、第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞を果たした、ミステリー作品。
また、アサイヤス前作に引き続きシャネルも衣装協力として参加しています。
2.アサイヤス監督お気に入り!クリステン・スチュワート
クリステン・ステュワートはアイサイヤス監督の前作『アクトレス 女たちの舞台』にも出演。
ジュリエット・ビノシュが演じた大女優マリア・エンダースに付く、マネージャーヴァレンティン役を演じました。
ヴァレンティンは雇い主マリアとの関係は信頼を寄せられ、時にまるで友人のように和やかに接するあいだ柄。
しかし、若手女優の台頭に“老いる”ことが受け入れられない女優マリアは葛藤を繰り返すようになると、少しずつ2人の関係は疲弊していきます。
まだ、演技プランで意見をぶつ合うライバル関係までは良かったのですが、“光と影”という雇用契約のバランスが崩れて、ヴァレンティンはマリアを超えた瞬間、静かに変化を見せる素晴らしい作品でした。
その演技が評価され、ヴァレンティン役を演じたクリステン・スチュワートは絶賛され、見事アメリカ人女優としては史上初となる、セザール賞助演女優賞を受賞するまでになりました。
クリスティの演技が名優ピノッシュに共鳴する『アクトレス』(2016)
アサイヤス監督が『パーソナル・ショッパー』のプロットをクリスティンに持ちかけたのは、『アクトレス』の撮影が終了した後のことだったようです。
続けて出演を約束したかったアサイヤス監督にとって、どれだけクリスティンが魅力的な女優であったかは、『アクトレス』を観たあなたには想像に容易いと思います。
また、『パーソナル・ショッパー』と『アクトレス』は、プロットおける設定や人物が従事する構図などに類似点が見られる作品。
アサイヤス監督が前作撮影終了後、即座にクリスティンをキャスティングしたことから見ても、この2つの映画は対となることを意識したものではないでしょうか。
アサイヤス監督の『アクトレス』、こちらもぜひ見ていただきたい作品です。
3.映画『パーソナル・ショッパー』のあらすじとネタバレ
双子の兄を亡くしたモウリーンは、数カ月経ってもまだ悲しみから立ち直れずいます。
そんな彼女の仕事は、パリでセレブのために高級ブランドの服やアクセサリーの買い物代行をするパーソナル・ショッパー。
しかし、モウリーン自身はバイクに安手のセーター、革ジャンをまとう容姿でした。
彼女には夢に向かって生きているようなこともなく、その日を暮らすだけの生活。
だが、たった一つパリに滞在する理由がありました、それはパリで亡くなった兄の霊に会うことが諦められなかったのです。
モウリーンは生前に兄が弟亡くなる前に約束をしました。ています。死んだ後も、互いがわかるように何かのサインを送り合おうと決めていたのです。
ある日、モーリーンはそんな兄が住んでした部屋に泊まることにします。そこは霊が出ると言われる曰く付きの幽霊屋敷。
彼女は望んだ兄の霊と出会えるとことを期待して宿泊をします。すると、奇怪な現象が起きるのです。
“蛇口から水が勝手に出たり”、またはラップなど、超常現象がモウリーンを襲います。
やがて、彼女は幽霊に遭遇。兄弟の霊を期待していたのですが、現れたのは口からエクトプラズムを吐く女性の例でした。
モウリーンは見知らぬ霊に驚き、慌ててその場を後にします。
また、ある日、モウリーンはパーソナルショッパーの仕事をこなしていると、見知らぬメールが届きます。
その1通のメールに、私はあなたを知っている。あなたも私を知っている…と書いてありました。
気味の悪いメールだとは思いつつモウリーンはメールに返信を送ります。
そのメールは彼女の行先や行動を先々まで理解していて、メール送信者を不気味に感じつつも、これこそが兄の霊が送るものではにかと思い始めます…。
メールのやり取りは徐々にモウリーンの個人的なことに触れていき、彼女もそれを受け入れていくのです。
4.映画『パーソナル・ショッパー』の感想と評価
『パーショナル・ショッパー』は、一方的な師従関係のようなコミュニケーションをいくつかの点から感じることができます。
それはモウリーンを見つめることでコミュニケーション不全を引き起こしていることに観客は気が付くのではないか。
多忙すぎて姿を合わせないセレブリティな雇い主と献身的に服を買い集めるモウリーン。
一方的で姿の見えない霊たちはとモウリーンの計り知れない方法でアクセスをしてくる。
または、モウリーンに送られるメールといった現実的な物でさえ、正体を示さない質量のない言霊。
これらの一見では異なるものがモウリーンを通してコミュニケーションとは何かを考えさせてくれるのではないか。
そこに共通点が見出だすことが出来ずにいると、不可解なB級ホラー映画のなのと感じる観客もいるはずです。
“霊”とはなんでしょう。幽霊とはこの世に未練があり、そのことに納得がいかないものが具体化して現象になったものだと思います。
つまり、何か言いたい、納得が出来ない、などといった念があるからではないでしょうか。
象徴的なのは霊の登場するシーンをあげても良いのですが、ヒネタ感覚から言えば、パーショナルショッパーのモウリーンに雇い主が要件がなくなった後、(要件が言えなくなったとも言えますが)姿を遺体という形で登場した点は面白いですね。
一方的に買い付けのお願いをしている時には、まるで霊のように姿がなく、モウリーンに用件を言えなくなったゴロリと転がっている。
さて、本来コミュニケーションとは一方通行なのでしょうか。双子の兄と亡くなってからも気がつくようにとした約束したサイン。
メールなどで姿を見せずに要望を告げるのでなく、会ってお互いの存在を知りつつ確かめるような相互関係のコミュニケーションは希薄になってしまったのでしょうか。
ラスト・シーンの完結されたコミュニケーションに、人は何を思うのか。また、あなたは何を感じるのか。
この世から成仏できない霊のように一方的に念のようなコミュニケーションしかない人が出来ないとすれば、現世に生きてるとは言い難いのかもしれませんね。
『パーソナル・ショッパー』をそのように見るのは、歪んだ一方的な私からのコミュニケーションなのでしょうか。
後ろを振り返ってください。コップが空中をフワフワと浮いてないかご用心を。
5.まとめ
オリビエ・アサイヤス監督とふたたびタッグを組んだクリステン・ステュワート。
『パーソナル・ショッパー』は、前作『アクトレス』が人間の価値観を超えた“マローヤのヘビ”という景勝地「シルス・マリア」で見た光景のように、今度は霊を用いて、人の持つ価値観の狭さをついてくるような作品です。
霊は念。であるならそれは霊自体が“メッセージ”という存在なのかもしれません。しかし、この映画はそれぞれ観客の数だけ感想も豊富にあるのです。
その多様さこそがコミュニケーションをとる真理なのでしょう。
2017年5月12日から、東京のTOHOシネマズ六本木ヒルズとTOHOシネマズ新宿ほか、全国順次公開です。
アート系映画は難しいと敬遠せずに見ていただきたい作品。答えはあなたと観客の数だけある映画。素敵な作品をお見逃しなく!