2016年は日本映画の当たり年。
年の瀬に才気ある監督デビューを果たした足立紳監督作品をご紹介!
秀作である『百円の恋』で多くの映画祭で脚本賞を受賞した脚本家の足立紳。映画『14の夜』のあらすじを結末までネタバレありでご紹介しています。
まだ作品をご覧になっていない方は、『14の夜』あらすじネタバレにご注意ください。
映画『14の夜』作品情報
【公開】
2016年(日本映画)
【脚本・監督】
足立紳
【キャスト】
犬飼直紀、濱田マリ、門脇麦、和田正人、浅川梨奈(SUPER☆GiRLS)、健太郎、青木柚、中島来星、河口瑛将、稲川実代子、後藤ユウミ、駒木根隆介、内田慈、坂田聡、宇野祥平、ガダルカナル・タカ、光石研
【作品概要】
この映画に登場する14歳の少年たちの行動は、男性なら誰しもが身の覚えのあるものばかりです。女性の豊満な胸元に興味を持ったり、不甲斐ない父親へ抱く反抗心、仲間との友情などを夏休みの経験を通して描いた作品。
主人公のタカシの夏の一夜の冒険譚は、情けなくも愛すべき“青春(性春)”の様を笑いとペーソスを描きながら、友情や家族愛をテーマに、少年の成長する姿を見つめていきます。
また、青春映画の名作と言われた『スタンド・バイ・ミー』を彷彿させる内容に、少年のほろ苦くも勇敢な姿は感動を与えてくれます。
監督を務めたのは、『百円の恋』で、一躍注目を集めた脚本家の足立紳による初監督作品。
2012年に、オリジナル脚本『百円の恋』が、「第1回松田優作賞」にてグランプリ受賞したのを始まりに、「第17回菊島隆三賞」、「第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞」など、国内映画賞の12冠独占に輝き、米アカデミー賞外国映画賞日本代表に選出された、実力派の脚本家として知られています。
その足立紳が、自己体験を踏まえたアイデアを長年温め続け、脚本に起こした渾身の処女作です。
映画『14の夜』あらすじとネタバレ
1987年のある田舎町。中学生の大山タカシは、隣の家に住んでいる幼なじみで巨乳のメグミが妙に気になっています。
そんな思春期ならではの悶々とした夏休みを過ごしていました。タカシの父親の大山忠雄は高校教師。
しかし、忠雄は、交通事故を起こした際に飲酒運転であることが発覚。しばらくの間、自宅での謹慎処分を受けています。
そんな父親が、夏休みに家に引きこもりウジウジとしている姿に、タカシは父親が格好悪く、疎ましくと思っています。
また、今日は姉の春子が婚約者の前田を連れて両親に挨拶にやって来る予定。
鬱憤の溜まった父親は、まだ家族が留守なこといいことにアダルトビデオ観て自慰行為をしたり、何をやっても落ち着かずオドオドするばかりで情けない態度をとっていました。
タカシは、柔道部の仲間のリーダー竹内の発案した男を挙げる計画に誘われます。
町に一軒だけあるレンタルビデオ屋「ワールド」に、深夜12時にAV女優の「よくしまる今日子のサイン会」をやってくるという噂を確かめに行こうというものでした。
その根端は、運良く本物の乳を揉ませてもらおうという作戦です。タカシは、仲間のミツル、岡田、竹内と夜9時に学校集合の約束をします。
久しぶりに実家に帰宅した姉春子と、彼女が連れてきた婚約者の前田を囲んで大山一家は、豪勢な夕食を食べ始めます。
しかし、父親の忠雄は、娘たちの結婚承諾の挨拶が受けたくないのか、なかなか同席をしません。
その子供じみた父親の態度に、妻の佳子や祖母ウメもなだめるばかりです。
一方でタカシの心中は、「よくしまる今日子のサイン会」に向かう約束の9時が気がかりで仕方ありません。
やがて、家族みんなが勝手なことばかり言う様子に業を煮やしたタカシ。
テーブルを叩き、父親に近づくと背負い投げで投げ飛ばしてしまいます。
玄関を飛び出してきたタカシの姿を見ていたのは、原付バイクに乗って出かけようとするメグミ。
格好の悪い親子ゲンカの事情を知られたタカシは、一目散に自転車を走らせ待ち合わせの学校に向かいます。
しかし、タカシが約束の場所に到着すると、ヤンキーの金田たちグループに捕まったミツルと岡田がいて、現状を電話で知った竹内はトンズラしたというのです。
まんまと金田の使いパシリにされたタカシ、ミツル、岡田の3人は、使い捨てカメラで「心霊写真」を撮ってこいという難題を押し付けられます。
恐る恐るタカシたち3人のみで指定された幽霊が出没するという噂のトイレに行くと、そこで見かけたのは幽霊ではなく、ミツルの父親。
自動車事故で下半身不随の車椅子生活になった彼が、ピンクのバイブレーターを片手に知的障がい者のケメコの乳を揉む姿だったです。
バツが悪くシラケきった3人、岡田は先に自宅へ帰ります。残されたタカシとミツルは、ミツルのお気に入りの秘密の場所へと行くことを決めます。二人乗りで自転車を走らせ、久しぶりに2人だけでのんびりと話ができるタカシとミツル…。
映画『14の夜』の感想と評価
足立紳監督は、出演する少年たちをオーディションで選出。
大山タカシ役で主演を務めた犬飼直紀を始め、中心的な少年たちの青木柚、中島来星、河口瑛将は、フレッシュな4人です。こんな友達が中学生の頃にいたな、似たような出来事をやったなと思わせる演技を、それぞれが生き生きと演じています。
特に主人公の犬飼直紀の表現力は、多彩な表情を見せてくれます。
中でも思春期に特有の微妙な無表情は、何とも言えず愛らしくもあります。
また、若手俳優の犬飼直紀の脇を固めた父親の大山忠雄役を、熟練俳優の光石研が熱演。
一家の大黒柱でありながら、子供っぽいダメな父親ぶりを面白可笑しく演じた姿は、ベテランの貫禄です。
そんな2人が演じた親子の対立は、作品の見どころのひとつ。
父親と息子のそれぞれが相手に思いをぶつける演技と、相手の気持ちを呑み込む演技のやり取りは、日本映画には珍しい父と息子という、男同士の関係を正面から描いた作品です。
インパクトのあるヒロイン役を演じた浅川梨奈は、タカシの憧れの幼なじみメグミ役を務めています。エイベックスのアイドルオーディションで選ばれた「SUPER☆GiRLS」のメンバーで、これまでのイメージにはない大人びたヤンキーに挑戦。
豊満な巨乳をチラ見させるエロカワイらしさに目は釘付けです。
この作品は、2016年10月に開催された、第29回東京国際映画祭の「日本映画スプラッシュ部門」でノミネート上映されています。
足立紳監督は、出演者たちと舞台挨拶に立つと、以前に脚本を手がけた『百円の恋』が、第27回東京国際映画祭の同部門で作品賞に輝いた経緯もあり、初監督として凱旋に多くの観客から拍手で迎えられたようです。
まとめ
足立紳監督のデビュー作『14の夜』の公開は、2016年12月24日にテアトル新宿での上映をスタートに全国順次公開予定。
また、12月8日には、足立紳監督自らの書き下ろし小説版『14の夜』が、幻冬社から発売予定です。
1987年を舞台にした少年たちの性春讃歌を深く味わうために、映画を観る前に小説を読むという楽しみ方も味わえそうです。
2016年の日本映画界は、多くの話題作がありましたが、大詰めの冬休み公開に大型新人監督がスクリーンで咲かせる才能と作品は、ぜひ見逃せませんね。