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Entry 2019/01/11
Update

映画『この道』あらすじネタバレと感想。EXILE AKIRAが山田耕筰と北原白秋の友情を熱演

  • Writer :
  • もりのちこ

歌い継がれて100年。童謡誕生から100年経った今でも、日本人の心の故郷を思い起こさせる童謡『この道』は、どのようにして誕生したのでしょうか。

詩人・北原白秋と音楽家・山田耕筰が出会って生まれた歌「この道」

いつまでも子供の心を持ち続けた北原白秋と、そんな白秋の詩(うた)を、託いまれな才能で歌(うた)にした山田耕筰の名コンビが蘇ります。

変動する時代と共に、揺れ動く文化人の心。詩を通して育まれた友情。

白秋と耕筰が童謡「この道」に託した想いとは。映画『この道』を紹介します。

映画『この道』の作品情報


(C)映画「この道」製作委員会

【公開】
2019年(日本映画)

【監督】
佐々部清

【キャスト】
大森南朋、EXILE AKIRA、貫地谷しほり、松本若菜、小島藤子、由紀さおり、安田祥子、津田寛治、升毅、柳沢慎吾、羽田美智子、松重豊、近藤フク、佐々木一平、稲葉友、伊嵜充則、松本卓也

【作品概要】
「雨ふり」「待ちぼうけ」「からたちの花」、日本人なら誰もが聞いたことがある童謡作品を数多く残した詩人・北原白秋の半生と、一緒に童謡を作り上げた音楽家・山田耕筰との友情を描いたヒューマンドラマ。

監督は、『陽はまた昇る』『半落ち』『ツレがうつになりまして』など、社会問題に寄り添い家族の在り方を問うて来た佐々部清監督。

自由奔放で破天荒な性格の北原白秋を演じるのは、安定の演技力で見る者を魅了する俳優・大森南朋。ドイツ帰りのインテリ音楽家・山田耕筰を演じるのは、俳優としても大活躍、EXILEのパフォーマーとしても有名なAKIRA。

異色な2人のコンビにも注目です。

映画『この道』のあらすじとネタバレ


(C)映画「この道」製作委員会

昭和27年小田原市では、「北原白秋・没後10周年記念コンサート」が開かれていました。

オーケストラの演奏と少女合唱団で歌われている曲は、童謡「この道」。

指揮は、山田耕筰。耕筰はすっかり歳をとっていました。

観客はみな穏やかな顔で聞き入っています。なんと心落ち着くメロディーと詩なのでしょう。

演奏終了後、ひとりの記者が耕筰の元に取材に立ち寄ります。

「この道」の詩を書いた、北原白秋先生のことをぜひ聞かせて下さい。

「彼のことは語りたくない」と初めは断る耕筰。しかし、ポツポツと彼のことを話し始めます。「彼はダメはやつでした……」

時は、明治43年。日本は近代化と共に文学も盛んになっていました。写実主義的な近代小説に開放的な自由を求めるロマン主義文学、また北原白秋の象徴詩も人気を集めていました。

白秋の元には、石川啄木、高村光太郎など旬な歌人が集まり、日本文学の未来について語り合っていました。

文化人たちがそれぞれの作品に磨きをかける中、白秋はというと、隣の家の人妻と不倫中。女ぐせに酒癖も悪いときた始末。

そんな白秋ですが、いつまでも子供のように純粋で愛嬌のある性格は、周りから好かれていました。

白秋が尊敬する与謝野鉄幹の妻で歌人の与謝野晶子も、そんな白秋を心配し、何かと世話を焼いてしまう一人でした。

当時白秋は、「邪宗門」に続く第二詩集「思ひ出」を出版。出版記念会が盛大に行われていました。

その会のスピーチで、与謝野鉄幹は白秋の詩集にある「曼珠沙華」を朗読し、「彼の詩にはリズムがある。流れるような、弾むような、温かく命がある。生きている」と絶賛。

その言葉を聞いた白秋は感動し、多くの出席者の前で自分のスピーチも出来ないほど泣き崩れます。

与謝野晶子はそんな白秋に「あなたは、そのままでいいのよ」と声をかけます。会場中が温かな拍手で包まれます。詩人として白秋は絶頂期にいました。

順風満帆かと思われた白秋に、事件が起こります。届いた電報には「トシコジサツス」と記してありました。

それを読んだ白秋は、隣の不倫相手・俊子の元に駆け付けます。生きている俊子に安堵の思いで抱き着く白秋。その現場に現れる俊子の旦那。俊子は旦那を選びます。

その事件で姦通罪で告訴された白秋は、逮捕となります。制作の源でもあった俊子の裏切りに悲しみ、牢獄でも一句詠む白秋。自業自得です。

出所後、反省するかに見えた白秋でしたが、すぐに元通り。女に裏切られ自殺まで考えたにも関わらず、懲りずに3度目の結婚へ。

3度目の妻・菊子との間には子供も出来ました。「ねんねこ。ねんねこよ」子煩悩な良い父親です。

そんな白秋のもとに、児童文芸誌「赤い鳥」を創刊した鈴木三重吉から、童謡を書かないかと誘いがかかります。童謡という新境地を開いた白秋は、様々な作品を生み出していきます。

さらに三重吉は、その詩に曲を付けたら良いのではと、音楽家の山田耕筰を白秋に紹介します。

初めて顔を合わせた白秋と耕筰。

「音楽を付けることで詩に命を与えると」言った耕筰に、白秋は「自分の詩は死んでいるのか」と腹をたて喧嘩に発展。二度と来るなと追い出します。

今の手に入れた幸せを守ろうとするあまり、臆病になっている白秋。与謝野晶子はそんな白秋に「幸せは守ろうとすればするほど壊れてしまう」と助言します。

その暗示が示すかのように大正12年、関東大震災が起こります。

命は助かったものの、瓦礫の山と化した街並みに呆然とする白秋。そんな彼の元を心配で訪ねてきた人物がいました。喧嘩別れした耕筰です。

「自分の詩では、苦しみの中にいる人々の何の力にもなれない」と嘆く白秋に、耕筰はバイオリンを取り出し演奏を始めます。

音楽に合わせて歌い出す子供たち。誰もが手を止め口ずさみます。苦しみの中にあっても、音楽は人々の心に癒しを与えるものだと気付いた白秋。

耕筰とともに日本人の心を癒す童謡を作ろうと決意します。

以下、『この道』ネタバレ・結末の記載がございます。『この道』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)映画「この道」製作委員会

白秋が小田原で一番好きだと言う山道を、耕筰は一緒に歩いていました。

ふたりは震災後いつもの暮らしに戻りつつある小田原の街を眺めます。

徐に、からたちの花に癒された幼少時代を話す耕筰。「からたちの花が咲いた」と合わせて詩を作り出す白秋。耕筰の思い出を一緒に歌にしていきます。

「からたちの花」は、震災後いち早く情報を伝えるために始まったラジオ放送の開局記念に演奏されることになりました。

日本初ラジオ放送の日。

耕筰の指揮に合わせて「この道」が、生演奏で流れます。ラジオから流れる歌に誰もが心癒され、聞き惚れます。

白秋はと言えば、緊張のあまり酒を飲みすぎ寝てしまっていました。

ラジオ放送は大成功に終わり、白秋と耕筰の名コンビ誕生です。

その後も2人は曲を作り続けます。もっと子供向けの曲を作りたい白秋と、芸術性にこだわる耕筰は、本音でぶつかり合いながらもお互いの才能を認めていました。

誰もが心に持っている故郷への思いを白秋は言葉に紡いでいきます。「この道はいつかきた道」「あぁそうだよ」耕筰もまたその思いを曲にしていきます。

「からたちの花」に続き「この道」も大ヒットとなり、2人のもとには校歌や社歌の依頼がどんどん寄せられるようになります。

そんな中、日本は戦争へと向かっていました。

昭和16年。治安維持法が制定され、自由な思想・発言が弾圧され、日本国への忠誠心が試される時代です。

白秋と耕筰の2人にもその影響が出始めていました。子供たちのために、人の心の癒しになるためにと曲を作ってきた2人に、軍歌を作り戦争の指揮を上げるようにと依頼がきます。

白秋は頑なに断りますが、どんどん仕事が減っていき、家族の負担は相当なものになります。

家族を守るために思想も捨てる白秋。周りの文化人もまた家族を守るためにやむを得ない選択を強いられていました。

作りたいものと求められるもののギャップに、何も浮かばない白秋。

もはや芸術は民衆のためではなく、軍人のためのものになっていました。

幼かった子供たちが出征していく姿に胸を痛める日々。白秋は倒れ、失明します。

白秋の病に見舞いに訪れた耕筰。目が見えないはずの白秋は、耕筰の軍服姿を言い当てます。

海外の留学経験もある耕筰は、日本の敗戦を悟りながらも、音楽の自由を守るために戦うと告げます。また好きな曲を自由に作れる時代が来る。どうかその時まで生きてくれ。

「その時はまた共に僕らの曲を作ろう」約束し合う2人。

すべてを語り終えた耕筰は、すっかり歳をとっていました。白秋が死んで10年。「奴が死んでから良い曲が書けていない」と涙を流します。

この道はいつか来た道。故郷の道かもしれない。これからの未来の道かもしれない。聞く人それぞれの道。すべての日本人のための歌。

映画『この道』の感想と評価


(C)映画「この道」製作委員会

誕生から100年経った今でも歌い継がれる童謡『この道』

北原白秋と山田耕筰の才能が出会ったことで生まれた奇跡の曲「この道」。

聞けばどこか懐かしく、幼かった頃を思い出す。日本人なら誰もがそう感じるのではないでしょうか。

明治期、日本には西洋の文化が流れ込み、言動の自由、自己の開放、ロマン主義、文学も大いに盛んになりました。

西洋化が加速する中、逆行するかのように戦争に進んで行く日本。犠牲になったのは、やはり市民でした。それは日本だけのことではないでしょう。

いつの時代も人間は、音楽に心癒され、文学に学び、自己を表現する場所を求めています。

それを国のため、そういう時代だからと抑えつけることは、人間の心を狭く、暗くしてしまう行為です。

100年経っても歌い継がれる曲が日本にある。そのことが、財産なのではないでしょうか。

音楽家・山田耕筰を演じたEXILE AKIRA


(C)映画「この道」製作委員会

さて映画『この道』で、なんと言っても注目なのが、ドイツ帰りのインテリ真面目男・山田耕筰を演じたEXILEのAKIRAです。

EXILEのパフォーマーとして大活躍のAKIRAですが、俳優としても確かな実績を積み重ねています。

『草原の椅子』『アンフェアthe end』の出演に加え、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイエンス-』でハリウッドデビューも果たしています。

しかし、今回の役はEXILEの華やかさとは余りにもかけ離れた役どころ。

持ち前の運動神経が演技力にも生きている?!バイオリンの演奏や指揮、そして歌にと挑戦しています。

発する声の強さや質がすごく心地よく、佇まいも山田耕筰になりきっています。特殊メイクで臨んだ60代の耕筰の姿にも注目です。

まとめ


(C)映画「この道」製作委員会

日本人なら誰もが聞いたことがある童謡を数多く誕生させた、詩人・北原白秋と、音楽家・山田耕筰との友情を描いた映画『この道』を紹介しました。

自由奔放な天才詩人・北原白秋と、日本人で初めて交響曲を作曲した秀才音楽家・山田耕筰の童謡制作を通して、明治文学が盛んな時代の、文化人の葛藤や熱い思いが伝わってくる作品です。

親から子へ、時代から時代へ、なぜ童謡は今でもなお歌い継がれるのか。先人たちの思いも一緒に受け継がれているからなのかもしれません。

日本人による日本人のための童謡「この道」が生まれた瞬間をご覧ください。

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