今世紀最大のハリケーンが迫る中、ある町で犯罪者集団による現金強奪の計画が動いていた!
立ち向かうのは、ただの学者と元軍人の兄弟と、財務省職員。
懐かしい匂いのする大味アクションと、ド迫力のディザスター描写の組み合わさった、とてもワクワクさせられるポップコーンムービーです。
CONTENTS
映画『ワイルド・ストーム』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
The Hurricane Heist
【監督】
ロブ・コーエン
【キャスト】
トビー・ケベル、マギー・グレイス、ライアン・クワンテン、ラルフ・アイネソン、メリッサ・ボローナ、ベン・クロス、ジェームズ・カトラー
【作品概要】
今世紀最大のハリケーンのドサクサにまぎれて強盗を働こうとする悪党と、それを阻止しようとする天候学者とその兄、そして財務省の職員。
ありがちな強盗映画とディザスター大作を合体させたアクション映画です。
主演は『ロックンローラ』(2008)や『悪の法則』(2013)などのトビー・ケベル。
その脇を「96時間」シリーズのマギー・グレイスや、ラルフ・アイネソンが固めます。
監督は『ワイルド・スピード』や『トリプルX』などアクション路線で実績を残してきたロブ・コーエン。
映画『ワイルド・ストーム』のあらすじとネタバレ
1992年、ラトレッジ一家は最大級のハリケーン“アンドリュー”から車で逃げていました。
彼らは自宅に帰ると備えを始めますが、アンドリューの威力は予想以上で、外に作業に出た父親は風で飛んで来た倉庫が激突し死亡。
残された兄弟、兄のブリーズと弟のウィルは父を失い取り乱して口論になります。
それから20数年が経ち、ウィルは気象学者になっていました。
今世紀最大と言われるハリケーン“タミー”が迫っており、彼は観測のため、ハリケーン観測用にさまざまな機能を積んだ特殊車両“ドミネーター”に乗って、トラウマの残る故郷のアラバマ州の町に向かいます。
タミーの接近に伴い、町の警察署長ディクソンは住民を避難させていました。
そんな中、崩壊の可能性すらある町に、財務省の職員ケイシーが同僚のコナーと一緒に、古くなった紙幣の回収にやってきます。
町の財務局ではいつも古紙幣を裁断するシュレッダーが故障していました。
電気システム系統も故障しており、ケイシーは町唯一の修理工のもとに向かいます。
その前に彼女は紙幣の保管庫の暗証番号を変更していきました。
その後、財務局に不審な車が訪れます。
彼らは同じ財務局員だと言いますが、不意を突いて警備員たちを麻酔銃で戦闘不能にし、地下に監禁します。
彼らの目的はハリケーンのドサクサに紛れ、裁断予定の紙幣6億ドルを盗んで逃走すること。
そして強盗団の主犯格は、スパイとしてケイシーに同行していたコナーでした。
シュレッダーが故障したのも、あらかじめシステム担当として潜入していたハッカーカップル、フレアーズとキャシーの仕業でした。
彼らは誰も殺す予定はないと言うものの、財務局の責任者モレーノを人質に取ります。
暗証番号を変更されていたため、モレーノには金庫が開けられず、強盗団は嵐の中ケイシーを探しに行きます。
町の修理工とはウィルの兄ブリーズでした。
ウィルは町に来たついでに疎遠だった兄を訪ね、危険だから避難しろと言いますが、ブリーズは逃げることを拒否します。
彼はフットボールの選手をした後、米軍に入っていました。
兄の説得を諦めたウィルが家の修繕を手伝っていると、ケイシーがやってきてブリーズに修理を依頼してきます。
しかし、そこにケイシーを連れ帰ろうとやってきた強盗団と彼女が銃撃戦になり、巻き込まれたブリーズがさらわれてしまいます。
残されたウィル。
戦闘は門外漢ながら、兄を救うためケイシーと手を組み強盗団と戦う決意をしました。
警察署長のディクソンに助けを求めに行きますが、大金に目がくらんで強盗団側に寝返っており、彼らに銃を突きつけます。
不意を突いてケイシーとウィルはドミネーターで逃げ出し、それをディクソンと合流した強盗団メンバーのザンダーが車で追いかけます。
追いつかれそうになったとき、ウィルはドミネーターに搭載していた「スパイクを地面に埋め込んで車体を固定する」機能を使用。
その結果ドミネーターに追突してきたザンダーたちの車両の方が吹っ飛ばされ、彼らは意識を失ってしまいます。
ハリケーンはどんどん強大になってきていました。
財務局に連れてこられたブリーズは、なんとしてもシステム系統を直せとコナーに脅されます。
その頃ケイシーは敵側にハッカーがいることを察知し、財務局から財務省のシステムに侵入されることを懸念。
ウィルは町にある電波塔を倒壊させてアクセスを防ごうと提案します。
無線でディクソンたちの車がやられていることを知ったコナーは、仲間を複数連れて外に出ます。
電波塔にウィンチを巻きつけて引き倒そうとしていたウィルたちでしたが、そこにコナーたちがやってきて銃撃戦になります。
風の流れを熟知しているウィルは暴風雨の中、ドミネーターに積んであったホイールを手当たり次第強盗団に投げつけます。
強風で投げられたホイールは手裏剣のように猛スピードで強盗団にぶつかり、ザンダーが死亡しました。
ハッカーのフレアーズたちは財務省のシステムから大金を抜き出そうとしていましたが、後一歩のところでウィルたちが鉄塔を倒して通信を遮断したため失敗に終わります。
ウィルたちは倒壊のどさくさに紛れて逃走。
ハッキングの計画は頓挫しましたが、ブリーズが電気システムを復旧させたため、強盗団はケイシーのみ知る暗証番号で金庫を開ける計画に望みをつなぎます。
ザンダーの死を知った彼の兄クレメントは怒り狂い、ケイシーたちへの憎悪を募らせました。
ショッピングモールにやってきたウィルとケイシーはあったもので出来る限り武装し、ブリーズ救出に向かおうとします。
ところが、そこにブリーズを人質にした保安官たちがやってきます。
ブリーズと引き換えにケイシーを渡せと要求してきますが、ウィルはブリーズに合図をして拳銃でモールの天井ガラスを割って暴風を室内に雪崩込ませます。
近くにあったロープに捕まるブリーズ、ウィル、ケイシー。
不意を突かれた保安官たちは一気に風に巻き上げられ上空に消えていってしまいました。
しかしその後も敵がやってきてケイシーは捕まってしまいます。
映画『ワイルド・ストーム』の感想と評価
ロブ・コーエン監督ならではのハリウッド娯楽作品
「現金強奪モノ」と「災害パニック」、2つのジャンルを組み合わせたら見たことない新しい面白い映画ができるんじゃないか。
こんな中学生が妄想したような企画を、本当に大金かけてやってしまうのがハリウッドの凄いところ。
そしてとっ散らかってしまいそうな題材を、しっかりと手堅く形にしてしまうロブ・コーエン監督の手腕もさすがです。
「ワイルドスピード」シリーズの創始者であるコーエン監督。
荒唐無稽アクションの代名詞的印象のある同シリーズですが、彼が監督した第一作は現在のシリーズとは違う、硬派でマニアックさすらあるカーアクション×潜入捜査サスペンスの物語でした。
今回もやろうと思えばもっと荒唐無稽な内容にできたはずですが、登場人物も絞り、「ハリケーンのどさくさで現金を強奪しようとする犯罪者集団」と「それを防ごうとする学者と元軍人の兄弟&財務省職員」というシンプルな物語にしています。
キャラクター描写としても主人公は非マッチョな学者、悪役は思想も何もない現金強奪で人生再起をかける負け犬たちと、金に目がくらんだ警官たちというこの手の映画にしてはリアルな路線。
強盗団の計画が杜撰すぎるという批判も目立ちますが、「火事場泥棒を働いて大金をかすめ取ろうとするやつらの計画なんてこんな程度」という意味ではリアルかもしれません。
ドミネーターの格好良さとタミーの破壊力
主人公ウィルが使う特別車両ドミネーターも、あくまで現実でありそうな活用のみ。
このリアルな使用法のみに拘り、過度な演出を抑えたところが、ドミネーターが魅力的に見えた理由でしょう。
そしてドミネーター (Dominator)の英訳は「支配する者」。気象観測という先行きの予測がつかないものにつけた点も気の利いた名称です。
また、人物描写を地味にした分、より際立つのが、劇中の今世紀最大のハリケーン“タミー”の破壊力。
建物を粉々にし、タンカーをひっくり返し、走るトラックすら吹っ飛ばします。
人間なんてひとたまりもありません。まさに”支配者”⁈
ポスターに書かれている「全部吹っ飛ばす」というコピーがあながち嘘でもないのがすごいところです。
特別な人間でも何でもない者たちが圧倒的自然の驚異に翻弄されながら、正義側も悪側も極限状態で戦うというのが本作の見どころ。
最新のCGを使いつつ要所要所では、本当にセットを作って壊す本物志向の撮影をしていたそうで、ディザスター描写はかなり真に迫ったものになっています。
1996年にコーエン監督は、災害映画シルベスター・スタローン主演の『デイライト>』も撮っている実績があるのでその経験も活きたのでしょう。
戦闘経験のない人間が圧倒的大自然のシチュエーションのなか、専門知識を活かして戦う映画という意味では、同じくスタローン主演で山岳救助のプロが雪山でテロリスト集団と戦う、レニー・ハーリン監督の『クリフハンガー』(1993)にも似ています。
またラストのトラックチェイスの撮り方は、完全にジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)を意識しており、コーエン監督が好きなものを衒いなく取り入れているとわかるのが好感が持てるポイントです。
まとめ
予備知識ゼロで肩の力を抜いて楽しめる、懐かしい90年代の匂いのするハリウッドアクションです。
本国アメリカでは大コケしてしまったんですが、ブロックバスター大作だらけの中では、たまには本作のような中予算のB級アクション映画が見たくなります。
今後もロブ・コーエン監督にはこの路線を貫いて欲しいですね。