2017年4月7日から公開中のアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅政明監督の引き続き、5月19日全国公開される完全オリジナルのアニメ映画の『夜明け告げるルーのうた』が話題沸騰中。
今度の新作は、なんと!宮崎駿監督のジブリ作品『崖の上のポニョ』と類似性が見られることが注目を浴びています。
CONTENTS
映画『夜明け告げるルーのうた』の作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【脚本・監督】
湯浅政明
【キャスト(声の出演)】
谷花音、下田翔大、篠原信一、柄本明、斉藤壮馬、寿美菜子、大悟、ノブ
【作品概要】
『マインド・ゲーム』『四畳半神話大系』『ピンポン THE ANIMATION』などユニークな作風で人気の高い湯浅政明監督の完全オリジナルによる劇場用長編アニメ。
少年と人魚の少女の出会いと別れを繊細な描写でつづった作品で、人魚の少女ルーの声を人気子役の谷花音、主人公カイの声を映画『くちびるに歌を』の下田翔大が担当。
映画『夜明け告げるルーのうた』のあらすじ
寂れてしまった漁港の日無町。父親や祖父と3人で暮らしている男子中学生カイ。
両親の離婚が原因で東京からこの町へ引っ越してきた彼は、両親に対し複雑な心境を抱えながらも、口に出すことはありませんでした。
そんなフラストレーションを持ちながら日々を過ごしていたある日。クラスメイトの国男と遊歩に誘われるまま人魚島を訪れます。
少年カイは、そこで人魚の少女ルーと出会う。カイは天真爛漫であるルーと過ごすうちに、自分の気持を解放することができるようになっていきます。
しかし、古来より日無町では人魚は災いをもたらす存在と言われてしまう…。
「ルー」と「ポニョ」は何者なのか?
湯浅政明監督の「ルー」と宮崎駿監督「ポニョ」は、設定上ではどのような生物として描かれたのでしょうか。
『夜明け告げるルーのうた』の主人公の少年カイと交流を持つ、ルーは人魚のようです。ホームページなど公にもそのことは発表されています。
また、『崖の上のポニョ』の主人公ソウスケと交流した、ポニョは魚です。
ご存知!『崖の上のポニョ』(2009)の「魚のポニョ」
設定上では同じ海中の生物ですが、ルーは人魚、ポニョは魚と、違ってはいるようです。
また、キャラクターの画像を見比べてみましょう。
似てる似てないと聞かれれば、似てるようにも見えますし、そうでも無いと言われればそうでないようにも見えてきます。
それぞれの観客の主観によって類似して見える見えないは異なるかもしれませんね。
但し、日本アニメや漫画の大きな特徴ですが、主人公の少年(少女)と交流をする異界者たちの多くは、身体の触感をゴムのように軟らかそうに見える特徴が指摘できます。
例えば、藤子不二雄Aの「オバケのQ太郎」はそうですし、他にも未来から来たネコ型ロボットのドラえもんですらそうです。
子どもの視聴者がキャラクターへの親しみ易さを軟らかさを感じることを目的にしています。
アニメーションを製作する際に、キャラクターを動かす映像表現は「軟らかさという触感」は、生き生きとした生命感を持たせることにとても適しています。
このことは、外国のアニメーションにも見られ、「トムとジェリー」なども、ネコとネズミが追い駆けっこをしながら、ゴム人形のように身体表現が変化するのは誰もがご存知のことかと思います。
「ルー」と「ポニョ」は、「海から来た者、人魚と魚、キャラクターの軟らかさ」など、これらを通して観客のあなた自身の感じ方かもしれませんね。
ちょっと待った!「ポニョ」は人魚ではない、カエルだと⁈
宮崎駿監督は書籍「海辺の小さな町」の中で、『崖の上のポニョ』はアンデルセンの童話『人魚姫』(1836)をモチーフにした作品だとは述べています。
しかし、ヴェネツィア国際映画祭に出席した際に、「製作中に『人魚姫』の話に似ていると気付いたものの、元来意図的にベースとしたわけではない」ということも話されていました。
しかも、鈴木敏夫プロデューサーは、これらの因果関係に対して、カエルの話を作ろうとしていたのがポニョの始まりだと述べています。
カエルが人間になる話を考えながら、やがて、カエルが半魚人に変更され、さらにそれが魚になり、人間になると考えるに至ったそうです。
もう、こうなると、魚でも人魚、半魚人でも何でもよくなりますね。何かオリジナルなものを生み出すことや、映画制作をしていく過程とは、そのような繰り返しなのではないでしょうね。
また、日本アニメの一端を先導してきた湯浅政明監督が、過去の何かに触発されたり、影響されてたとしても、それでもなお作ってみたいとモチーフはあるのでしょう。
そのことに関して、簡単に真似とばかりは決め付けられないのかもしれませんね。
まとめ
今回は「ルー」と「ポニョ」は似ているのかということに注目をして見ました。
宮崎駿監督は『崖の上のポニョ』を「人間が手で描く」というアニメーションの根源に拘った作品だと語りました。
これを踏まえて観ても宮崎作品の中でも、『崖の上のポニョ』は触感性はズバ抜けて高い作品として完成しました。
先人である宮崎駿の革新的な試みを当然のことですが、湯浅政明監督が知らない、「ポニョ」は見たこともないはずはありません。
例え一般的に似通った設定の作品になったと知りつつも、あえて、宮崎作品とは異なったアニメーション表現に挑戦したと考える方が理解ができます。
2017年5月19日から『夜明け告げるルーのうた』は全国公開。先ずは、あなたの目で人魚のルーに会いに行きませんか?
劇場では大きなスクリーンに映し出された映画とあなたは、向き合うときは一対一の出会いです。
あなた自身の印象や感想を大切にして映画鑑賞することも良いのではないでしょうか。
湯浅政明監督の新作『夜明け告げるルーのうた』を観に行きませんか?