今とは違う世界や、想像も出来ない技術を描く「SF」映画。
実写では描写の難しい部分も「アニメ」なら表現できます。
今週末は、そんな「SFアニメ」映画に触れながら様々な世界観を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Cinemarche内で連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」を担当連載しています、糸魚川悟です。
今回は【糸魚川悟セレクション】として、「SFアニメ映画おすすめ5選!「夢の世界」や「ヒーロー」、「ロボット」まで!」と銘打ってご紹介。
「SF」的視点や映像技術はもちろん、物語にまで拘りぬいた5作を厳選しご紹介させていただきます。
CONTENTS
おすすめのSFアニメ①『GANTZ:O』
映画『GANTZ:O』の作品情報
【公開】
2016年(日本映画)
【監督】
さとうけいいち
【キャスト】
小野大輔、郭智博、早見沙織 、M・A・O
【作品概要】
2000年から2013年にかけて「週刊ヤングジャンプ」で連載された奥浩哉による漫画『GANTZ』。
その中でも特に読者人気の高いエピソード「大阪篇」に物語を絞り、フル3DCGで制作されたアニメ映画。
映画『GANTZ:O』のあらすじ
通り魔に襲われ命を落とした高校生の加藤勝(小野大輔)は黒い球体が鎮座する部屋で目を覚まします。
ここは黒い球体、通称「ガンツ」が死んだ人間を再生し異星人と戦わせている狂気に満ちた場所で……。
3DCGで描かれる圧倒的な迫力の戦い
アニメ化だけでなく、二宮和也主演で2部作での映画化がされるなどSF漫画として人気の高い『GANTZ』。
フルCGで映像化された今作は、次から次へと戦闘が巻き起こる「大阪篇」を題材としたため、息もつかせぬほどのハードな戦いが凡そ100分の上映時間内にたっぷり詰め込まれています。
3DCGのクオリティも日本最高峰と言える出来で、原作の魅力のひとつであった「SF」的デザインのガジェットが「SF」的な挙動で活躍する様はそれだけで感動してしまうほどです。
キャラ造形も魅力が深く、原作やこれまでのエピソードを知らない人にでも楽しめる配慮があり、入門編としても劇場アニメ化作品としても日本屈指の作品であると言える作品です。
おすすめのSFアニメ②『パプリカ』
映画『パプリカ』の作品情報
【公開】
2006年(日本映画)
【監督】
今敏
【キャスト】
林原めぐみ、江守徹、堀勝之祐、古谷徹
【作品概要】
「時をかける少女」など、SF作家としておなじみの筒井康隆による同名小説を長編アニメ映画化した作品。
監督を勤めたのは『東京ゴッドファーザーズ』(2003)などで広く知られたアニメ監督の今敏。
映画『パプリカ』のあらすじ
他人の「夢」を操作できる装置を悪用し、精神崩壊を意図的に起こす事件が発生。
サイコセラピストの千葉敦子(林原めぐみ)は犯人の正体を追うが……。
「夢」の世界を独特な世界観で描く怪作
和製アニメーション映画として海外で高い評価と人気を誇る『パプリカ』。
「夢」と言う不合理かつ不条理な世界をアニメーションでしか描けないような手法で描写したことが今作の最大の魅力と言えます。
音楽を担当した独特の世界観を持つ平沢進の楽曲も「夢」の世界の構築に確実に影響を与え、視覚情報だけでもお腹がいっぱいになるほど。
かと言って、物語部分がおざなりにはなっておらず、事件の犯人がしっかりとした形で用意されている美術的完成度も物語の完成度も高い作品です。
おすすめのSFアニメ③『バイオハザード ヴェンデッタ』
映画『バイオハザード ヴェンデッタ』の作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【監督】
辻本貴則
【キャスト】
ケビン・ドーマン、マシュー・マーサー、エリン・カーヒル、ジョン・デミータ
【作品概要】
カプコンの人気ホラーゲームシリーズ「バイオハザード」の長編アニメーション映画作品。
モーションアクターとしてスタントマンとして世界で活躍するルーベン・ラングダンを起用して製作された圧巻のアクションシーンが話題となった。
映画『バイオハザード ヴェンデッタ』のあらすじ
対バイオテロ組織のエージェント、クリス・レッドフィールド(ケビン・ドーマン)は任務中に新種のゾンビと、そのゾンビを高度に操る武器商人の襲われ仲間を失います。
ワクチン精製の研究を行うレベッカ・チェンバース(ジョン・デミータ)の調査で過去の事件との類似性を見つけたクリスは、酒に溺れる元凄腕のエージェント、レオン・S・ケネディ(マシュー・マーサー)に協力を求め……。
ゾンビをなぎ倒していく爽快感
ミラ・ジョヴォヴィッチ主演でハリウッド映画化されたシリーズも大人気となったゲームシリーズ「バイオハザード」。
『バイオハザード ディジェネレーション』(2008)から続く3DCGアニメ映画シリーズとしての流れを組む今作は、シリーズの総決算とも言える作品になっています。
何と言っても、今作の最も評価を集めるアクションシーンは圧巻の一言で、『ジョン・ウィック』(2014)さながらのアクションでゾンビを倒していくシークエンスはとにかく爽快。
かと言って、「ホラー」や「SF」描写もおざなりと言うわけではなく、未知のウイルスによって死の街となっていく恐怖感や、バイオテロの恐ろしさがしっかりと描かれています。
原作シリーズでの人気が高いにも関わらず、なかなか以降の作品に登場しなかった「レベッカ」も再登場する、原作ゲーム好きにもアクション映画好きにもオススメしたい作品です。
おすすめのSFアニメ④『ベイマックス』
映画『ベイマックス』の作品情報
【原題】
Big Hero 6
【公開】
2014年(アメリカ映画)
【監督】
ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ
【キャスト】
ライアン・ポッター、スコット・アドシット、ダニエル・ヘニー、T・J・ミラー
【作品概要】
ディズニーが制作した長編アニメ作品。
「アベンジャーズ」シリーズでお馴染みのアメリカンコミック最大手、マーベル・コミックスの『ビック・ヒーロー・シックス』が原作となった。
映画『ベイマックス』のあらすじ
天才的な知識と才能を持つ少年ヒロ(ライアン・ポッター)は兄のタダシ(ダニエル・ヘニー)に連れられ大学の研究発表会へと足を運びますが、会場で火災が発生しタダシが死亡してしまいます。
失意に暮れるヒロに残された、タダシの制作したケアロボット「ベイマックス(スコット・アドシット)」との出会いが、ヒロの行くべき道を照らしだし……。
ディズニー制作の熱いヒーローアニメ
『アナと雪の女王』(2013)や『ズートピア』(2016)を手掛けたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作した3DCG長編アニメ。
日本では「ハートフルさ」を前面に押し出した宣伝が行われていたことでも記憶に新しい作品です。
自分が立ち直るきっかけをくれた兄の死に心のバランスを乱すヒロが、「ベイマックス」との出会いによって進むべき道を見つけていく「ハートフルさ」も見どころの1つではありますが、今作の最大の魅力は「ヒーロー」映画としての部分にあります。
もともと、原作が「アベンジャーズ」でお馴染みのアメリカンコミックであり、今作もヒーローチーム「ビッグ・ヒーロー・シックス」の誕生の物語であることから「ヒーロー」映画としての土台は既に固まっています。
その土台に、兄の死の真相と言うサスペンス要素や、前述した「ハートフルさ」も加わり「熱さ」と「驚き」、そして別れの「辛さ」を体感できる「ヒーロー」映画が好きな人にオススメのディズニー映画です。
また、2018年11月12日に肺炎により死去した「マーベル・コミックス」の顔役であり、マーベル作品にカメオ出演することでお馴染みのスタン・リーは今作にもカメオ出演。
彼の功績に想いを馳せながら再鑑賞するのも良いかもしれません。
おすすめのSFアニメ⑤『機動警察パトレイバー the Movie』
映画『機動警察パトレイバー the Movie』の作品情報
【公開】
1989年(日本映画)
【監督】
押井守
【キャスト】
古川登志夫、冨永みーな、大林隆介、榊原良子
【作品概要】
歩行式の作業用ロボット「レイバー」が普及した世界、を題材とした人気メディアミックス作品の初の劇場版作品。
監督を勤めたのは後に『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)で世界的な名声を得ることになるアニメ映画界の巨匠、押井守。
映画『機動警察パトレイバー the Movie』のあらすじ
首都圏の各地で「レイバー」が暴走する事件が多発。
暴走事件の対応に追われる特車二課の篠原遊馬(古川登志夫)は、事件が起きた「レイバー」にある共通点を見出し……。
80年代にサイバー犯罪の根幹を描いた名作SF
パソコンやスマートフォンを動かすためのソフトウェアである「OS(オペレーティングシステム)」。
現実世界で例えるなら、大規模な世界シェアを誇る「Windows」や「Mac」と言ったOSに「誤作動を起こすプログラム」が「意図的に」埋め込まれていたら、と言うサイバー犯罪の胆を描いた物語が話題となった今作。
既に死亡している事件の黒幕との事件の真相を巡る頭脳戦は、張り巡らされた伏線が1つの結論に収束し終盤のレイバー戦への高揚感へとつながる見事な脚本。
東京郊外の老築化した建物の数々を歩き黒幕の生い立ちを探る捜査パートも「レイバー」と言う最新技術の誕生に相反するような、時代に取り残された街並みに胸が詰まる感覚に陥ります。
事件の黒幕「帆場暎一」は「天才」に生まれながら何に慟哭し狂気に走ったのか。
巧みな脚本に残された「謎」を明かすため、「台風」の時期に毎年観たくなる傑作アニメ映画です。
まとめ
【糸魚川セレクション】は、いかがでしたか。
映像技術は年々向上し、実写映画で「SF」的世界観を描き切ることも容易になっています。
しかし、それでも「アニメーション」ならではの視覚体験や発想にこだわりぬいた作品も多くあります。
今回ご紹介させていただいた作品の世界に「ビビっ」と来た方は、是非とも鑑賞してみてください。