警察の息子からギャングへ。アメリカン・ドリームを掴むために男が背負った代償とは?!
デニス・ルへインの傑作クライム小説をベン・アフレックが映像化した『夜に生きる』をご紹介します。
CONTENTS
映画『夜に生きる』の作品情報
【公開】
2016年(アメリカ)
【原題】
Live by Night
【監督】
ベン・アフレック
【キャスト】
ベン・アフレック、エル・ファニング、ブレンダン・グリーソン、クリス・メッシーナ、シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナ、クリス・クーパー、ロバート・グレニスター、タイタス・ウェリヴァー、クリス・サリヴァン、スコット・イーストウッド、ミゲル、デレク・ミアーズ、アンソニー・マイケル・ホール、マックス・カセラ、クラーク・グレッグ
【作品概要】
『ザ・タウン』やアカデミー作品賞を受賞した『アルゴ』でおなじみのベン・アフレックが監督・脚本・製作を務め、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に続いて2度目となるデニス・ルへインの同名小説を映像化した犯罪ドラマ。
ベン・アフレックが主演も兼務し、共演にエル・ファニング、ブレンダン・グリーソン、クリス・メッシーナ、シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナ、クリス・クーパーら実力派俳優が大集結している。
映画『夜に生きる』のキャスト一覧
ジョー・コグリン / ベン・アフレック
元々幼い頃から子役として活動していたベン・アフレックは、ケヴィン・スミス監督の『モール・ラッツ』(1995)や『チェイシング・エイミー』(1997)に出演して知名度を上げました。
最初に大きな注目を集めるようになったのは、マット・デイモンと共同で脚本を執筆した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)でしょう。
この特は俳優としてというよりも脚本が評価された形でしたが、1998年にはメガヒットとなった『アルマゲドン』にA・J役で出演し、俳優としても高く評価されることになります。
その後『パールハーバー』(2001)のようなヒット作には恵まれたものの、2003年の『デアデビル』、『ジーリ』、『ペイチェック 消された記憶』の3作品全てにおいてラジー賞に選ばれてしまうという不名誉な事態に見舞われることに。
そんな悪い流れのベン・アフレックでしたが、2006年の『ハリウッドランド』ではヴェネツィア国際映画祭男優賞とハリウッド映画祭助演男優賞を受賞し、ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされるなど、再び高い評価を獲得しました。
2007年以降は初監督作品となった『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を発表(監督業については後述致します)。自身の監督作品に自ら主演を務めるパターンが増えていく一方で、『ゴーン・ガール』(2014)や『ザ・コンサルタント』(2016)などの話題作に常に出演し続けていますね。
さて、本作『夜に生きる』でベン・アフレックが演じているのは、主人公となるジョー・ゴグリン。
警察幹部の息子であるにもかかわらず、父親に反発してギャングになっていくというジョーですが、今回はどう自らを演出していくのか…楽しみですね!
ロレッタ・フィギス / エル・ファニング
ダコタ・ファニングの妹として非常に有名なエル・ファニングは、2歳の頃に『アイ・アム・サム』(2001)で姉ダコタの幼少期役として出演し、女優デビューを飾りました。
2006年には子役としてトニー・スコット監督の『デジャヴ』、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バベル』に出演。
2008年にデヴィッド・フィンチャー監督の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』した後あたりからは主要キャストを演じるようになり、『SOMEWHERE』(2010)、『SUPER8/スーパーエイト』(2011)、『Virginia/ヴァージニア』(2011)などといった話題作に次々と出演し続けます。
特にJ・J・エイブラムスが監督を務めた『SUPER8/スーパーエイト』での演技は高い評価を獲得し、一気にブレイクを果たすことに。
その後『マレフィセント』(2014)ではオーロラ姫役務めて人気を博し、『マッド・ガンズ』(2014)、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)、『ネオン・デーモン』(2016)などで主要キャストとして出演し続け、まだ10代であるにも関わらず、とてつもないキャリアを積み上げていますね。
そんなエル・ファニングが本作で演じているのは、ロレッタ・フィギス。警察署長の娘で女優を目指してハリウッドに行くが、ドラッグにおぼれる役だそうですが、大人の女性へと成長しつつあるエル・ファニングが一体どのように演じているのかに注目が集まっています!
トーマス・コグリン / ブレンダン・グリーソン
ジム・シェリダン監督の『ザ・フィールド』(1990)で映画デビューを果たした時、すでに35歳だったという遅咲きのアイルランド人俳優ブレンダン・グリーソン。
その後、メル・ギブソン監督の『ブレイブハート』(1995)、ニール・ジョーダン監督の『マイケル・コリンズ』(1996)などの英国・アイルランドを舞台とした作品に出演し、存在感を発揮します。
2000年には『ミッション:インポッシブル2』、2002年には『28日後…』など話題作に出演する一方、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)や『トロイ』(2004)、『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)などといった歴史系の作品に頻繁に顔を出すことに。
さらには『ハリー・ポッター』シリーズのマッドアイ・ムーディや『ベオウルフ/呪われし勇者』(2007)、『推理作家ポー 最期の5日間』(2012)など、やはり現代劇よりも歴史ものの比重はかなり高いように思われますね。
本作『夜に生きる』も禁酒法時代(1920年代)を舞台にしていますから、ブレンダン・グリーソンの腕の見せ所でしょうか。
彼が演じているのはジョーの父親で警察署長のトーマスということで、きっとピタリとハマっているはず!非常に楽しみですね!
ディオン・バルトロ / クリス・メッシーナ
1995年に映画やテレビドラマでデビューを果たしたクリス・メッシーナ。
1998年には『ラウンダーズ』や『ユー・ガット・メール』に出演していますが、かなりのチョイ役だったので、そこまでのインパクトは残せませんでした。
最初に注目されるようになったのは、ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』(2008)でしょうか。
この作品以降、話題作に主要キャストとして顔を出すことが多くなり、ノーラ・エフロン監督の『ジュリー&ジュリア』(2009)や『デビル』(2010)、『あるふたりの情事、28の部屋』(2012)などに出演を重ねます。
その他にもベン・アフレック監督作『アルゴ』(2012)、『ルビー・スパークス』(2012)、『パロアルト・ストーリー』(2013)と、着実にステップアップしているといった所でしょう。
本作『夜に生きる』でクリス・メッシーナが演じているのは、ジョーの右腕ディオン。『アルゴ』ですでにベン・アフレックとは仕事をしているので、息の合った演技を期待出来ると思います!
エマ・グールド / シエナ・ミラー
元々はイタリア版の『ヴォーグ』やプラダのモデルとして活動していたシエナ・ミラー。
2000年代に入ってから女優としても活動するようになり、『レイヤー・ケーキ』(2004)や『アルフィー』(2004)、『カサノバ』(2005)に出演。
イーディ・セジウィックの自伝的映画『ファクトリー・ガール』では主演を務めるもあまり評判は良くなく、2009年の『G.I.ジョー』でもラジー賞を獲得してしまうという不名誉な事態に。
しかし、2014年にはベネット・ミラー監督の『フォックスキャッチャー』、クリント・イーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』と立て続けに好演を見せ、高評価を得ました。
他にも『ハイ・ライズ』(2015)や『二つ星の料理人』(2015)にも主要キャストとして出演しています。
そんなシエナ・ミラーが本作で演じているのは、ジョーが最初に恋をする女性であるエマ。対立組織のボスの情婦でもあるこの女性をシエナ・ミラーがどう演じているのかに注目です!
グラシエラ・スアレス / ゾーイ・サルダナ
幼少から学んでいたバレエの技術を活かし、2000年にバレエ・カンパニーを舞台にした『センターステージ』で映画デビューを果たしたゾーイ・サルダナ。
その後は、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)、『ターミナル』(2004)、『バンテージ・ポイント』(2009)と話題の作品に出演し続け、着実にステップアップを重ねます。
ゾーイ・サルダナにとってもっとも大きな転機となった年は2009年でしょう。J・J・エイブラムス監督のリ・ブート版『スター・トレック』でウフーラ役で出演したり、何と言ってっもジェームズ・キャメロン監督の『アバター』でヒロイン役を演じ、一躍時の人となりました。
2011年にオリヴィエ・メガトン監督の『コロンビアーナ』で主演を務めた後も、『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012)、『マイ・ブラザー 哀しみの銃弾』(2013)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)など数々の話題作に出演し、注目を集めていますね。
そんなゾーイ・サルダナが『夜に生きる』で演じているのは、やがてジョーと恋に落ちていくことになるグラシエラ。
どうやらジョーとの間に子供を授けることになるようですが、どんな結末を2人が迎えるのか要注目です!
アーヴィング・フィギス / クリス・クーパー
その低くて渋い声が非常に印象的なクリス・クーパーは、1985年にジョン・セイルズ監督作品で映画俳優としてデビューを果たします。
おそらく最初に注目を集めるようになったのは1999年の2作品でしょう。
ひとつはジェイク・ギレンホール主演の映画『遠い空の向こうに』。そしてもうひとつがサム・メンデス監督の『アメリカン・ビューティー』。
後者の方がより印象深く、ナチスの信奉者だが実はある“秘密”を抱えているというフィッツ大佐を演じ、高い評価を獲得。
2002年のスパイク・ジョーンズ監督作『アダプテーション』では、これまでのイメージ(厳格な父親像)を一新するような演技を披露し、アカデミー助演男優賞やゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞。
そんなクリス・クーパーが『夜に生きる』で演じているのは、ロレッタの父親で警察署長でもあるアーヴィング。
おそらくまたも厳格な父親を演じることになろうかと思われますが、2010年の『カンパニー・メン』や『ザ・タウン』ではベン・アフレックとも共演(後者ではベンが監督を務めた)しており、本作でも息の合った演技に期待したいところです。
映画『夜に生きる』の監督紹介
映画『夜に生きる』の監督・脚本を務めるのはベン・アフレックです。
俳優ベン・アフレックについては上記にてご説明させて頂いた通りですが、こちらでは監督ベン・アフレックについて掘り下げていきたいと思います。
彼が最初に映画制作(メジャー作品で)を手掛けたのは、先述した通り『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』です。
マット・デイモンと共同で制作した脚本の素晴らしさは、アカデミー賞やゴールデングローブ賞において脚本賞を受賞するなど、いきなりの高評価を獲得することに。
アフレック初監督作品は日本未公開作!『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007)
そこからしばらくは俳優としての活動が続くのですが、2007年に弟のケイシー・アフレック主演で『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を初めて監督(脚本・製作を兼務)として制作にあたります。
この作品はベン・アフレックにとっておそらく大きなターニング・ポイントになったはず。
なぜかというと、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は本作『夜に生きる』と同じデニス・ルへイン原作によるものだからです。
デニス・ルへインはクリント・イーストウッド監督が映画化した『ミスティック・リバー』(2003)やマーティン・スコセッシ監督の『シャッター・アイランド』(2010)の原作者として日本でも非常に有名な小説家。
『スコッチに涙託して』(1994)から始まった探偵パトリック&アンジーシリーズも有名で、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は同シリーズの4作目『愛しきものはすべて去りゆく(邦題)』(1998)を原作としています。
このシリーズや『ミスティック・リバー』、『運命の日』や『夜に生きる』など著作のほぼ全ての舞台をボストンとしていることが特徴的で、おそらくベン・アフレックがデニス・ルへイン作品を好んでいるのもこのことがかなり大きな影響を与えていると思われますね。
なぜなら、ベン・アフレックの出身自体はカリフォルニアですが、1984年に両親が離婚してからはマサチューセッツ州ケンブリッジ(チャールズ川を隔てた対岸がボストンの街)で暮らしていたからです。(『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の舞台もケンブリッジ)
2010年の『ザ・タウン』もボストンを舞台としており、この地への特別な思い入れを強く感じさせてくれます。
そういった郷土愛というのももしかしたら監督ベン・アフレックが愛されている理由かもしれませんね。
アフレック監督が数多くの映画賞受賞!『アルゴ』(2011)
翌年の『アルゴ』(2011)では舞台こそ変わったものの(本作で脚本は担当していない)、アカデミー作品賞やゴールデングローブ賞監督賞、英国アカデミー賞監督賞などを受賞するなど、最高の評価を獲得。
1970年代末から80年代初頭の雰囲気を見事映像化(衣装やフィルムの雰囲気まで)したこの作品があったからこそ、本作『夜に生きる』につながってくるような気もします。
『夜に生きる』は1920年代アメリカ(禁酒法時代)・ボストンを舞台としているため、その時代性をいかに再現するか(外面・内面の両方を)、またその上でどう原作を脚色し、どうまとめ上げていくのか、監督(そして脚本家)ベン・アフレックのさらなる真価が問われているといえるでしょう!
しかし、ベン・アフレックなら最高の作品を創り上げてくれることは間違いありません!
映画『夜に生きる』のあらすじ
1920年代、ボストン ―
1920年からアメリカ合衆国憲法修正第18条下において施行されたボルステッド法(国家禁酒法)の時代。
この法律はかえって、ギャングたちの密売ルートを拡大し、繁栄を導いていました。
ボストン警察の署長トーマス・コグリンの息子ジョーは、厳しい親の教えに反発し、背き続ける毎日。
1917年、戦争で戦ったことが、彼の生き方を決めたといっても過言ではありません。善人が多くなくなるという不条理の世界。ルールを作ったやつはことごとくいい加減なやつらばかり。彼はソルジャーから無法者として生きていこうと決めたのです。
ある日、ジョーはある内通者の手引により賭博場を襲いました。内通者はエマという女性で、彼女はアイルランド系組織のボスであるアルバート・ホワイトの情婦でした。
ジョーはホワイトから部下になるよう命じられますが、組織にははいらないと一匹狼を気取ります。
ジョーとエマはホワイトに見つからないように交際を続け、ジョーはすっかりエマに惚れ込んでいました。
そんな二人の元にジョーの父親が現れます。父親はエマを情婦と呼びつけ、彼女を傷つけます。「ずっとあんなふうに見下されてきた」と涙を流すエマを抱きしめるジョー。
そんな時、ホワイトと対立するイタリア系のギャング、マソ・ペスカトーレがジョーの前に現れました。ジョーがホワイトの女と付き合っていることを彼は知っており、道は2つだと迫ります。
一つは、ジョーがホワイトを殺す、もう一つが、エマとのことをホワイトにバラす。
ジョーは、もう殺しはいやだ、ばらしたかったらどうぞ、と告げ、その場を去りました。
マソはもうホワイトに密告したかしらとエマが尋ねると、もしそうなら俺は既に生きてはいないとジョーは答えます。ジョーの兄がハリウッドで脚本の勉強をしているので、カリフォルニアに逃げようと二人は相談し、土曜日に最後の仕事をしたあと、落ち合おうと約束しました。
最後の銀行強盗で、逃走資金も出来ると気楽に考えていましたが、銀行から出た途端、警察がやってきて、激しい銃撃戦になりました。なんとか逃げようとするも、執拗に追われ、最後は転倒したパトカーにぶつかり、ジョーは車から放り出されてしまいました。気がつけば、警官が死んでおり、湖面に突き刺さるように落ちた車が激しく燃えていました。
ジョーは待ち合わせのパーティー会場に向かい、エマと合流し、業務用エレベーターに乗り込みますが、実はこれは全てホワイトの罠でした。二人の関係はホワイトに既に知られており、エマはホワイトに脅されてジョーを裏切ったのです。
ジョーはエマも殺されると直感し、彼女を殺すなとホワイトに怒鳴りますが、自分のことだけ心配していろと銃をつきつけられます。「命だけは助けてやるといったが、彼女も殺す」とホワイトは冷たく言い放ちますが、彼らが外に出ると、ジョーの父が警官を引き連れてやってきました。ホワイトたちは逃げ、ジョーは逮捕されました。
警官殺しとして罪を問われますが、実際のところ、彼は警官を殺しておらず、父親の力もあって、強盗補助の罪で、三年四ヶ月の刑に処せられます。
出所二ヶ月前に父が死亡し、ジョーは人生は一度だけ、生き抜こうと決心するのでした。
ジョーはマソ・ペスカトーレの傘下に入ることにしました。ギャングは嫌いですがホワイトに復讐するためです。
マソの命令で、フロリダに向かい、ラム酒の密造に携わることになりました。強盗仲間で国境を超えて生き延びたディオンを呼び戻します。フロリダのタンパには地下通路があると教えてくれるディオン。彼はこの土地に詳しく、片腕として力を奮ってくれるのでした。
ジョーの前任者はあっさりマソに消され、何くわぬ顔でこっそり裏でホワイトと通じ金を稼いでいた男をジョーは追い出しました。
ラム酒の密造販売には、地元のエステバンとその姉のブランシェラの協力が必須でした。ジョーとブランシェラは次第に惹かれ合っていきます。
ジョーは地元の市場を牛耳り、中部のホワイト一味を金で丸め込みました。そうするとホワイトは部下をこちらに送り込まねばならず、送り込まれてきたやつらは徹底的に倒し、ジョーはホワイトの影響力を押さえ込むことに成功します。
ある日、地元警察から呼び出しを受け、出かけていくとフィギス本部長が彼を迎えました。フィギス本部長はギャングにも目溢しをし、うまく街を統治していました。
そんな彼の娘が家から出てきました。可憐な外観をした少女ロレッタはハリウッドにテストを受けに行くことになったのだと言い、出かけていきました。
ジョーが仲間たちとパーティーで陽気に踊っていると、外で何が気配がし、ジョーはドアを開けました。するとそこには燃え上がった十字架が突き立っており、その横に三角巾と丈長のガウンを身に着けた男たちがいました。白人至上主義団体のKKK(クー・クラックス・クラン)です。
エステバンとブランシェラは黒人であり、彼らと親しいジョーへの嫌がらせが始まりました。やっかいなのが、R・Dと呼ばれる男でした。本部長がジョーにR・Dと商売で組むように命じるので、従っていると、R・Dは店の売上の六割を渡せなど無理の言い放題。挙句に店で発砲するなど、妨害行為を重ねてきます。
KKK団を盾にして交渉に応じないR・Dに業を煮やしたジョーは本部長を訪ねました。
ジョーは彼にある写真を見せました。実はロレッタはハリウッドにおらず、悪党の餌食になって薬漬けになってしまっていたのです。本部長はショックを隠そうともしませんでした。娘は特別な医者に預けたとジョーは言うと、R・Dに電話するように言います。
娘の居場所は俺が無事に帰ったら教えると告げると、本部長はR・Dを殺したいのなら自分で殺せ、他人に頼るなと応え、R・Dにジョーに会うよう、電話するのでした。
実は、R・Dはホワイトと通じていたのでした。撃ち合いとなり、ジョーはR・Dを撃ち殺しますが、彼もまた負傷してしまいます。
入院したジョーの元にKKKの仲間が復讐にやってきますが、見張りがいるために引き返さざるをえず、ディオンがその後をつけ、殺害。それを続けたことでKKKは力を失っていきます。
ジョーは退院し、ブランシェラは「私にはあなただけ」と愛を告白。二人は結婚します。
ブランシェラは、不幸な女性や子どもたちのシェルターを作る計画をたてていました。
ロレッタは家に帰りましたが、本部長の妻は息子を連れて家を出て行きました。ロレッタは家に引きこもり、父は哀しみにくれるのでした。
ジョーは禁酒法が近々廃止されるだろうと見越し、次の手を考えていました。カジノ建設です。着々と工事が進み、スムーズにことが進行しているように見えましたが、思わぬことがふりかかってきました。
それはロレッタでした。彼女は教会で説教を初め、信者の数を増やしていました。説教中に彼女は無数の注射針のあとがある腕を聴衆に見せ、聴衆はどよめき、父親は苦痛に顔を歪めました。
ロレッタは、カジノが建設されていることに触れ、「ギャンブルは魂を滅ぼす。ギャンブルの建物が建とうとしている。見逃すのですか?」と激しく非難しました。
彼女は今や強い影響力を持ち、カジノ建設への風当たりは強くなっていきました。ジョーは、「カジノは雇用を生み出す」と言ってロレッタを説得しますが、彼女の心は変わりません。やがて出資者が断りを入れ始めました。
マソはロレッタを殺すように命じますが、ジョーはカジノ建設を断念します。皮肉にもちょうどその時、ルーズベルトが禁酒法を廃止したというニュースがはいってきました。
ある朝、ジョーは朝食をとっているロレッタの席に歩み寄りました。「父はなぜあなたを嫌うの?父に何をしたの?」ジョーは写真を見せたことを告げ、見せるべきではなかったと述べました。
「あれ以来、魂を神に捧げてきました。今が天国よ」とロレッタは言い、また次のような言葉も口にしました。目に涙をためて。
「試練を乗り越えて現実を取り戻したわ。神がいるかわからない。でもいてほしい。優しい神が」。
数ヶ月後、ロレッタは自ら命を断ちます。ジョーはロレッタのことで強い痛みを感じていました。「お前がやったことではない」とエステバンは慰めますが、「俺と同じような悪人が彼女を拐かしたのだ」と呟きます。
エステバンの部屋に入ったジョーは壁に貼られた写真を観て驚きました。一枚の写真にエマが写っているではありませんか!
いつの写真かと聞けば、先月の写真だといいます。彼女は生きていたのです!
映画『夜に生きる』感想と評価
「監督ベン・アフレック」は、四作目にして既に円熟の域に達しているように感じました。
1920年代を再現したゴージャスな画づくり。派手なアクションシーンもそつなくこなし、禁酒法時代のギャンクの世界を見事に構築しています。
タランティーノ作品などで知られるロバート・リチャードソンのカメラも、印象的なショットを数多く生み出しています。群青色の湖につき刺さった自動車が炎上している様や、KKK団が燃える十字架とともに佇んでいる場面など、見事な名シーンとなっています。
滅びゆく美学、男たちの非常な世界という従来の暗黒街映画のセオリーを踏襲しながらも、ジョーのナレーションに「生き抜いてみせる」とあったように、最後まで生き抜こうとする主人公の意志が描かれているのが新鮮です。
少女の意志に沿い、カジノ建設を断念する展開には驚きました。従来のギャング映画であれば、この少女を殺すかどうかという選択が一つの見せ場になったでしょう。しかし、主人公はまったく違う選択をします。
ベン・アフレックは、原作のそうした部分を気に入って、映画化したのではないでしょうか?!
心優しきギャンク。 人殺しを嫌ったギャング、ギャングが嫌いなギャンク。この作品の主人公はそんな男なのです。自分自身を貫くことが出来る男なのです。
ただ、少しばかり不満があるとしたら、ジョーを(が)愛した女たちの印象がやや希薄に感じられることです。類型的な人物像にとどまっているのです。
後半登場してくるエル・ファニングが圧倒的な魅力を発揮しているため、余計そう思えるのでしょか。
元恋人への想い、夫婦間の様々な心の機微などがもう少し描かれていたら、と思いますが、そうなると、三時間、四時間の映画になってしまいかねませんので、仕方がないのかもしれません。
にしてもエル・ファニングの輝きときたら!
非常に薄幸な少女を演じているのですが、その表情の一つ一つの素晴らしいこと!
そして彼女の父親を演じたクリス・クーパーも忘れられません。壊れていく男を見事に演じています。
まとめ
ベン・アフレックが監督と脚本を兼務するのは『ザ・タウン』以来という点や、再びデニス・ルへイン作品を映像化するということも含め、非常に話題となっています。
『ミスティック・リバー』以降のクリント・イーストウッドを彷彿とさせる映像感覚を持ち合わせているベン・アフレックは、監督そして脚本家として今後もさらなる活躍が期待される人物ですね。
2018年にはビリー・ワイルダーの映画『情婦』(アガサ・クリスティの『検察側証人』を原作としている)をリメイクするという噂も出ており、ますます目が離せません!
大注目の劇場公開は2017年5月20日(土)より始まります!ぜひ劇場で男たちの生き様をご覧ください!