いよいよ開幕が迫ってきた、第31回東京国際映画祭。チケット販売開始と同時に完売の作品も続出しました。
この記事では、コンペティション部門に選出された16本の作品から気になる海外映画5作を取り上げてご紹介します。中にはキャストや監督などゲストの登壇が予定されている作品も!
今年はどんな名作に出会えのでしょうか。
CONTENTS
映画『ブラ物語』(2018 / ドイツ・アゼルバイジャン)
監督は『ツバル』『ゲート・トゥ・ヘヴン』『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』のファイト・ヘルマー。
長編デビュー作品『ツバル』以来、ヘルマー監督は架空の地を舞台にしたユーモラスなヒューマンドラマを描き、恋愛ものから児童映画まで幅広いジャンルを手掛けています。
今作でもノスタルジックなタッチと、大人のファンタジーが巧みにブレンドされて観客を幸福にしますが、全編セリフを排し、国境を見えなくしたことに深いメッセージが伺えます。
言葉の壁が無いことは、スペインの人気女優パス・ベガをはじめ、フランス、ロシアなど各国から女優を集めることも可能にしました。
主演のミキ・マノイロヴィッチはE・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』の主演などで知られるセルビアの名優。
共演のドニ・ラヴァンも得意の肉体を活かした演技でヘルマー監督の世界に溶け込んでいます。
【キャスト】
ミキ・マノイロヴィッチ、パス・ヴェガ、チュルパン・ハマートヴァ
映画『ブラ物語』のあらすじ
鉄道運転士のヌルランは定年退職前の最後の乗車となるバクー行きの列車を運転しています。
目的地近くを走行中に、物干しロープから外れた青いブラが列車に引っかかりました。
ヌルランは退職後の孤独から逃れるため、自発的にこの可愛らしい下着の持ち主を探し出す決意をします。
線路沿いの全部の家を訪ね、女性たちがそれぞれの事情を持ちながら、亭主には気付かれないように極めてプライベートな領域に彼を招き入れてくれました。
状況が難しくなればなるほど、全女性にこのブラを試させようと決意を固めたヌルランはクリエイティブな方法を次々と編み出していき…。
映画『ブラ物語』上映日時と上映館
10月31日(水)16:55 TOHOシネマズ六本木ヒルズSCREEN2
登壇ゲスト(予定):ファイト・ヘルマー(監督/脚本/プロデューサー)、パス・ヴェガ(女優)、ドニ・ラヴァン(俳優)、フランキー・ウォラック(女優)、サヨラ・サファーロワ (女優)、ボリアナ・マノイロワ(女優)、イルメナ・チチコヴァ(女優)
11月1日(木)21:30 EXシアター六本木
登壇ゲスト(予定):ファイト・ヘルマー(監督/脚本/プロデューサー)、パス・ヴェガ(女優)、ドニ・ラヴァン(俳優)、フランキー・ウォラック(女優)、サヨラ・サファーロワ (女優)、ボリアナ・マノイロワ(女優)、イルメナ・チチコヴァ(女優)
映画『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』(2018 / ハンガリー・カナダ)
映画『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』の作品情報
パールフィ・ジョルジ監督は、想像力と表現力において世界屈指の存在のひとりです。
古今東西の無数の作品をコラージュした『Final Cut』、映画の様々なスタイルを1本の作品に凝縮した『フリー・フォール』などは、映画を知り尽くした芸術家の仕事。
その上で、常人には思いもよらぬ発想を映像化する技術を持ち合わせ、まさに鬼才と呼ぶにふさわしい監督です。
本作も映像マジックが満載の要約不能な快作ですが、主人公の年齢が監督に近いハンガリー人であるという設定から、冷戦を知る監督の自伝的ビジョンが含まれていると見ることもできます。
家族のドラマを現代史に絡めた上に宇宙と繋ぎ、人類創生の源までを射程に入れた壮大な作品です。
【キャスト】
ポルガール・チャバ、エリック・ピーターソン、キシュ・ディアーナ
映画『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』のあらすじ
ハンガリーに暮らすペーテルは、アメリカで起きた謎めいた事故のドキュメンタリーの中で自分の父親を見つけたような気がしました。
父親は70年代に共産主義政権下のハンガリーから亡命し、以来、消息を絶っていました。
父を探しにアメリカに向かったペーテルの前に、米軍の陰謀が立ちはだかります。
その旅はやがて宇宙と繋がり、人類は孤独でないと世界は知ることに…。
映画『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』上映日時と上映館
10月31日(水)21:10 EXシアター六本木
登壇ゲスト(予定):パールフィ・ジョルジ(監督/脚本)、ポルガール・チャバ(俳優)、ルットカイ・ジョーフィア(脚本)
11月1日(木)16:55 TOHOシネマズ六本木ヒルズSCREEN2
登壇ゲスト(予定):パールフィ・ジョルジ(監督/脚本)、ポルガール・チャバ(俳優)、ルットカイ・ジョーフィア(脚本)
映画『アマンダ(原題)』(2018 / フランス)
映画『アマンダ(原題)』の作品情報
「日常的で些細な出来事を、美と抒情性で描写する」ことが映画作りの目的だとミカエル・アース監督が語るように、隅々まで美しさに満ちた作品です。
悲しみを受け止める人々の繊細な心情描写は監督の過去作にも共通。光の扱いに長けたアース監督は仏映画の伝統を未来へ繋ぐ才能です。
突然の父親役に戸惑う青年と、彼に頼るしかないが逆に励ます側にも回る少女の関係は微笑ましくも痛ましく、悲劇に見舞われるパリの光景は美しい故に大きな衝撃を残します。
主演のヴァンサン・ラコストは18年に仏で主演作が3本公開される若手の代表格であり新スター。アマンダ役のイゾール・ミュルトリエは今作が初の演技経験。
【キャスト】
ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトゥリエ、ステイシー・マーティン
映画『アマンダ(原題)』のあらすじ
便利屋業をしているダヴィッドは、パリに出てきたてのレナに出会い、恋に落ちます。
しかしその直後、妹の突然の死によって無残に壊れていく彼の人生。
ダヴィッドはショックと辛さを乗り越え、まだ幼い姪っ子アマンダの世話をしながら自分を取り戻し…。
映画『アマンダ(原題)』上映日時と上映館
10月28日(日)21:10 EXシアター六本木
登壇ゲスト(予定):ミカエル・アース(監督/脚本)、ピエール・ガイヤール(プロデューサー)
10月29日(月)14:55 TOHOシネマズ六本木ヒルズSCREEN2
登壇ゲスト(予定):ミカエル・アース(監督/脚本)、ピエール・ガイヤール(プロデューサー)
映画『翳りゆく父』(2018 / ブラジル)
映画『翳りゆく父』の作品情報
ホラーや超自然的な恐怖をリアルなドラマと融合させたアート作品の秀作が近年のブラジルから多く生まれ、各国の映画祭を賑わせています。
17年ロカルノ映画祭受賞作『Good Manners』を共同監督したマルコ・デュトラとフリアナ・ロハスとともに、ブラジル映画界の新しいトレンドを牽引するのが、本作のガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督。
母の死後、家族の再生を願いオカルトに頼る少女と、憔悴が進む父との関係にホラー風味が加わることによって、物語が土着的な魅力を放っています。
アウメイダ監督を見出したプロデューサーのロドリゴ・テイシェイラは、『君の名前で僕を呼んで』『フランシス・ハ』などを手掛ける気鋭の存在です。
【キャスト】
ジュリオ・マシャード、ニナ・メデイロス、ルシアナ・パエス
映画『翳りゆく父』のあらすじ
父親の病気と母親の死のために、小さな子供が一家の長にならなければならなくなったとき、物事の自然な順序は入れ替わります。
子供でいることは長く苦しい冒険になり、苛立ちを募らせる父親でいることは罰になる。
本作は少女ダルヴァと彼女の父親の物語。
仕事上の事故と思われる悲劇の後、悲しみに暮れる父親を娘が見つますが、父娘は会話が成り立ちません。
ダルヴァは亡くなった母親をよみがえらせることができると信じています。
父親の存在が薄くなり、やがて危険な状態にまでなるにつれ、ダルヴァは母親の生還こそ唯一の希望と考えるようになって…。
映画『翳りゆく父』上映日時と上映館
10月26日(金)16:55 TOHOシネマズ六本木ヒルズSCREEN2
10月29日(月)18:10 EXシアター六本木
登壇ゲスト(予定):ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ(監督/脚本)、ロドリゴ・サルティ・ウェルトヘイン(プロデューサー)
映画『詩人』(2018 / 中国)
映画『詩人』の作品情報
中国第六世代に属するリウ・ハオ監督は、2002年の長編デビュー以来、ベルリンやサンセバスチャンといった国際映画祭にコンスタントに参加し、本作が5本目の長編となります。
経済改革に揺れる中国において、時代に翻弄される夫婦の愛と、その愛の記録としての「詩」の存在を雄大なスケールで描く作品です。
夫婦の夢を支え自身も詩の一部となる妻に、『好奇心は猫を殺す』(2006)やレッドクリフ二部作のソン・ジア、その夫には、ファンから「歩く男性ホルモン」と称され話題作への出演も続くチュウ・ヤーウェン。
【キャスト】
ソン・ジア、チュー・ヤーウェン、チョウ・リージン
映画『詩人』のあらすじ
中国の経済改革の最中、鉱山労働者のリーは紙とペンで自分の運命を変えようとします。彼の夢を叶えようと全身全霊で支える妻のチェン。
ついに詩集が出版され、有名になったリーは、鉱山の仕事を辞めます。
10年の歳月が経ち、急速な経済成長はあらゆる精神的信条の価値を下げ、詩人でいることなど論外だと考える世の中になっていました。
チェンと離れたリーは、もはや詩を書くことができなくなってしまいましたが、実は彼の知らないところでチェンは彼の生活を支えていました。
リーの死後、チェンはリーの影と匂いに囲まれながら奇妙な人生を送り始めます。
映画『詩人』上映日時と上映館
10月27日(土)13:45 EXシアター六本木
10月29日(月)10:50 TOHOシネマズ六本木ヒルズSCREEN2
まとめ
2018年1月以降に完成した長編映画を対象に、109の国と地域から1829本もの応募があり、そこから厳正な予備審査を経たコンペティション選出作。
選出された16本の中から、国際的な映画人で構成される審査委員のもと、11月2日(金)に行われるアウォード・セレモニーにて東京グランプリ、審査員特別賞、最優秀監督賞などの各賞が決定されます。
満席や、残席わずかな作品もあります。チケット購入や残席情報は第31回東京国際映画祭公式ページでご確認下さい。
コメディ、SF、青春ドラマ、ホラー、大人の愛…。様々なジャンルの、世界中から厳選されたハイクオリティな作品たち。
きっと心に刺さる一作が見つかるはずです。