可愛らしさと不気味さが混在する世界観が人気のティム・バートン監督作品。
今回取り上げるのはそんなバートン監督が人気ソープオペラを映画化した『ダーク・シャドウ』です。
ゴシック好きにはたまらない魅力が詰まった映画『ダーク・シャドウ』の魅力を紹介します。
CONTENTS
映画『ダーク・シャドウ』の作品情報
【公開】
2012年(アメリカ映画)
【原題】
Dark Shadows
【監督】
ティム・バートン
【キャスト】
ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、ヘレナ・ボナム=カーター、エヴァ・グリーン、ジャッキー・アール・ヘイリー、ジョニー・リー・ミラー、クロエ・グレース・モレッツ、ベラ・ヒースコート、ガリバー・マクグラス、クリストファー・リー、アリス・クーパー
【作品概要】
『ダーク・シャドウ』は1966年から1971年に放映されたソープオペラ。『ダーク・シャドウ』が映画化されるのは『地の唇』(1970)に続き本作は二回目で監督はティム・バートン。
衣装デザイナーは『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したコリーン・アトウッド、作曲は『バットマン』(1989)『シザーハンズ』(1990)などバートン作品に数多く携わってきたダニー・エルフマンが務めました。
主人公の吸血鬼バーナバスをジョニー・デップが演じ、ティム・バートン監督と8回目のタッグ。
映画『ダーク・シャドウ』のあらすじとネタバレ
今よりはるか昔の1752年。コリンズ家はイギリスのリヴァプールから、当時未開拓だったアメリカに目をつけ移住します。
そこで彼らは水産業で大成功を収め地元の名士となりました。
バーナバスはそんなコリンズ家に生を受け、恵まれた暮らしを送っていました。
それから20年後、プレイボーイのバーナバスは家の女中アンジェリークに手を出します。
彼を心から愛していたアンジェリークですが、バーナバスは彼女を弄んでいるだけでした。
バーナバスはジョゼットという娘を本気で愛するようになり、アンジェリークに関係の終わりを告げます。
しかしアンジェリークの正体は、実は魔女だったのです。
怒り狂ったアンジェリークはジョゼットを呪い、崖から身を投げさせます。
絶望したバーナバスは、自分も命を絶とうとしますがアンジェリークはそれを許さず、魔法で不老不死のヴァンパイアへと姿を変えさせました。
そしてアンジェリークは住民を巧みに煽動しバーナバスを襲わせ、彼を棺に入れて深い森の地中へ生き埋めにしたのです。
それから200年の月日が流れた1972年。その地ではある工事が行われていました。
棺を掘り返され地上へと這い上がったバーナバスは、かつての自分の屋敷へ向かいました。
しかし屋敷は荒廃した姿に。コリンズ家は没落しかけていました。
屋敷に住むのは女主人のエリザベス、15歳の反抗期の娘キャロリン、エリザベスの甥で母親を亡くした10歳の少年デヴィッド、デヴィッドの父親のロジャー、そしてエリザベスに雇われた精神科医のホフマン、家庭教師のヴィクトリア。
デヴィッドは溺死した母親の姿が時折見えるといい、家族に心配されています。
キャロリンはデヴィッドばかり気をかけられることをよく思っていませんでした。
バーナバスは最愛のジョゼットに生き写しのヴィクトリアに一目惚れします。
バーナバスは彼らに自分の正体を明かしますが、もちろん彼らは信じようとしません。
しかしエリザベスでさえ知らなかった屋敷の隠し部屋を言い当てて見せ、バーナバスは信頼を得ることができました。
バーナバスはコリンズ家を復興させようと考えます。
しかし、今やこの街は魔女アンジェリークによって支配されていました。
映画『ダーク・シャドウ』の感想と評価
ソープオペラの意味
本作『ダーク・シャドウ』は、1966年から1971年に放映されたテレビ番組のソープオペラでした。
ソープオペラとは平日の昼間に放映される日本のいわゆる“昼ドラ”、メロドラマのことです。
また、アメリカでは洗剤会社がスポンサーにつくことから、ソープオペラと呼ばれるようになりました。
バートン映画にかかせないキャスト陣
主人公の吸血鬼バーナバスを演じるのは、本作でティム・バートンと8回目のタッグとなったジョニー・デップ。
本作の鍵を握る女性ヴィクトリア/ジョゼットの2役を演じるのは『ネオン・デーモン』(2016)にも出演する若手女優ベラ・ヒースコート。
バーナバスを愛する魔女アンジェリークを演じるのはエヴァ・グリーン。彼女は『ミス・ペレグリンと奇妙な子供たち』(2016)や2019年公開予定の『ダンボ』など、近年バートン監督作品への出演が多く見られます。
バーナバスの子孫、コリンズ家の女家長エリザベスに扮するのは、『バットマン リターンズ』(1992)でキャットウーマンを演じたミシェル・ファイファー。
コリンズ家に雇われている精神科医ホフマン博士を演じるのは、長年バートン監督の公私にわたるパートナーであったヘレナ・ボナム=カーター。
つまりはこの作品でもバートン映画に欠かせない名優たちの共演を楽しめます。
彼らは『アダムス・ファミリー』に負けないぐらいの個性とインパクトを持つコリンズ家。
吸血鬼だけではなく魔女に人狼、幽霊とたくさんの怪物が登場します。
怪しげな荒廃した屋敷、青白い顔の登場人物たち。ゴシック調の世界観の本作はホラー映画が大好きなティム・バートン監督の手腕が発揮されている作品です。
また使用人ウィリーを演じるのは『エルム街の悪夢』(2010)で殺人鬼フレディ役を演じたジャッキー・アール・ヘイリー、漁師たちのボスを名優クリストファー・リーが演じています。
そのほかにもテレビドラマ版に出演したいた俳優ジョナサン・フリッドやデヴィッド・セルビーらがカメオ出演しており、細部まで目が離せません。
バートン映画で描かれるテーマ
1980年公開の『シザーハンズ』、1989年の公開の『バットマン リターンズ』などで愛されない者たちアウトサイダーたちの孤独。
2003年公開の『ビッグ・フィッシュ』、2005年公開の「チャーリーとチョコレート工場』では、家族の大切さを描いてきたバートン監督。
『ダーク・シャドウ』ではその2つのテーマが在るといえます。
本作のヴィランである魔女アンジェリークは愛しさ余って憎さ倍増、自分の愛情を跳ね返された仕返しに愛する男に永遠の呪いをかけます。
その家族まで徹底的に追い詰める彼女ですが、元はといえばバーナバスが純粋な愛情を弄んだからです。
そんなバーナバスは最後恋人ジョゼットに生き写しのヴィクトリアを吸血鬼に変え、200年の時を超えて結ばれます。
最後のヴィクトリアの表情はジョゼットが乗り移ったかのよう。愛を求めてさまよい、誰かの体を借り、恋人と生きるために血を吸って生きています。
アンジェリークもバーナバスもジョゼットも、“ダーク・シャドウ”表ではなく深い暗闇の中でしか生きられない者たちなのです。
興味深いのは魔女アンジェリークのヴィジュアルがティム・バートンの元恋人で女優のリサ・マリーに髪型やシャープな佇まいなど、どことなく似ていることです。
バートン監督作品で初となるラブシーンを終えた後、バーナバスはアンジェリークに対してこう語ります。
「愛はなくても体は求めてしまう」そして最後、虫の息になったアンジェリークに対して「お前は私を愛しているわけではない」と言い放ちます。
監督の思惑は霧の中ですが、意味深長な“大人”のラブストーリーでもあります。
まとめ
ユーモアもたっぷり添えられた独特の世界観で描かれるファンタジー『ダーク・シャドウ』。
2019年に公開されるティム・バートンの新作『ダンボ』に備えて、ぜひ、過去作品を今一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
みんなちょっぴりおかしい、だけれど憎めない、アウトサイダーたちが繰り広げる物語をぜひお楽しみください。