勇気を出して、ホップ・ステップ・ダンス!
幸せのステップで、泣いて笑って第二の人生を生きていくシニアたち。
若者もカリスマな人も出てこないのですが、れっきとした心温まる青春映画です。
映画『輝ける人生』の作品情報
【公開】
2018年(イギリス映画)
【原題】
Finding Your Feet
【脚本・監督】
リチャード・ロンクレイン
【キャスト】
イメルダ・スタウントン、ティモシー・スポール、セリア・イムリー、デヴィット・ヘイマン、ジョアンナ・ラムレイ
【作品概要】
主人公サンドラには、英国アカデミー賞主演女優賞を受賞した『ヴェラ・ドレイク』(2004)の実力派イメルダ・スタウントン。
相手役のチャーリーには「ハリーポッター」シリーズのピーター・ペティグリュー役で知られる個性派ティモシー・スポール。
サンドラの第二の人生を導く姉ビフ役には『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(2013)、続編の『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(2016)に出演のセリア・イムリー。
イギリスの名優が勢揃いの上に、ダンス教室のメンバーには元プロダンサー20名が選ばれ、見事なダンスを披露してくれます。
映画『輝ける人生』のあらすじとネタバレ
イギリスのサリー州、大きな庭に森繁く芝生が広がるある豪邸で、多くの招待客のパーティーが開かれています。
州警察本部長のマイクは、勤続35年の功績が認められナイト爵を授与され、定年退職パーティーを開いていました。
妻のサンドラは、専業主婦一筋でまさに幸せの絶頂でした。
横の席には、一人娘のニコラが元気な男の子を育児中で、サンドラは鼻高々。
サンドラは幸せな年金生活を思い描きながら、テニス仲間の友人と会話を弾ませていました。
パーティー中にマイクの姿が見えないので、サンドラは奥の部屋へと探しに行きました。
ドアを開けると、そこではマイクとサンドラの親友が浮気の真っ最中!「一体いつからなの!!」と逆上して問いただすサンドラ。
「5年前からだ。君を傷つけるつもりはなかったんだ。」と謝る気もないマイク。
酒に酔い、荷物をまとめて出ていくサンドラは、10年も疎遠になっている姉のビフの元へ向かいました。
ビフの団地の入り口に不良っぽい青年達が屯し、憤ってスーツケースを引きずるサンドラの姿に薄笑いを浮かべています。
ビフの部屋に入るとビフの親友チャーリーもおり、突然のサンドラの訪問に二人とも動揺を隠せない様子でした。
いきなり男性のチャーリーがいたので、サンドラは高慢で失礼な態度を取ります。
奥の部屋でチャーリーは、窓を修理しています。
ビフは、お金や名誉とは無縁のまま、独身生活を謳歌していました。
「核兵器に反対して私が運動に参加している間に、あなたは反対派と結婚したのよ」と言うビフに対し、サンドラは「警察官は守るのよ、反対側ではないわ」と反論します。
サンドラは、毎日呑んだくれ愚痴をこぼし、ビフの団地に居候を続けます。
ある日中華レストランで食事をとっていたところ、イライラしているサンドラは店主に差別発言で罵倒し、警察に連行されてしまいます。
ビフは呆れて家で待っていると、翌朝サンドラが帰ってきました。
ある日、ビフは気分転換にサンドラをダンスに誘います。そこは、地域のシニア向けのダンス教室でした。
「サンドラは。結婚前までダンスに夢中だったでしょ」とビフが話すと、サンドラもまんざらでもない様子。
教室に入ると、シニアのメンバーがサンドラを温かく迎えてくれました。
踊っている最中に、気分を悪くして出ていく男性がいました。
チャーリーが心配そうについていきます。その男性は、最愛の妻を亡くしたばかりで、今踊っている曲が最愛の妻との結婚式の思い出の曲だったと涙ぐんでいます。
チャーリーに抱きつく男性、その時丁度サンドラがトイレに行こうと通り過ぎます。
完全に勘違いをしているサンドラに、チャーリーは目で訴えています。
ビフが、サンドラに女性を紹介します。「彼女はジャッキー、弁護士で5回も結婚しているわ」サンドラはそれを聞いて、笑っています。
その夜、テレビにサンドラの子ども時代のダンスの映像が映っていました。
「父がビデオに撮っていたのをDVDで観られるようにしたのよ」とビフが説明し、サンドラは静かに見入っていました。
ある日いつも通りチャーリーは妻の介護施設で、妻と食事をしています。
お皿の野菜や肉を切り分け妻に差し出すチャーリーに向かって、妻は雑言を吐き、お皿ごと投げつけパニックを起こします。
唖然とするチャーリーの横で、施設の職員が妻を宥め、「妻はもう僕が必要ないのでしょうか」とうなだれるチャーリーに、施設長が優しく、「あなたは夫として、家まで売って尽くして来られました」語ります。
運河の船上で生活しているチャーリーは、船の中で一人、妻のことを考えています。
日が経つにつれて、居心地が悪かったサンドラはダンスと友人に惹かれ、笑顔を取り戻していきます。
ある日、チャーリーとダンスを組むことになり、ぎこちないステップを踏む2人でしたが、チャーリーにリードを任せたところ、見違えるようにスムーズな動きとステップになりました。
サンドラは心と体が解放されたのを感じるようでした。
そんな時に娘から、浮気相手とマイクが結婚すると連絡がありました。
サンドラは、マイクが反省をしてまたすぐに元に戻れると期待していました。
冬の近づいた日のダンス教室で、ジャッキーが恵まれない人のために暖房費を募るゲリラライブを提案しました。
全員が喜び、ビフは新しい振付を友人と練習に勤しむ中、サンドラは観られるのは恥ずかしいと言って、一人ビフの部屋で過ごしていました。
ビフが帰ってくると、部屋の中がピカピカに掃除されており、サンドラは掃除機をかけながら踊っていると、「今日は機嫌がいいのね」とビフ。
翌朝郵便が届き、ビフがサンドラに渡し、サンドラが開くとマイクからの離婚申請書でした。
サンドラは最悪のシナリオ“熟年離婚”を受け入れ、ダンスに向かいます。
映画『輝ける人生』の感想と評価
人生を踏み出すステップ!この映画の魅力は何と言っても、最初は高慢ちきのいけ好かないオバちゃんのイメルダ・スタウントン扮するサンドラにだんだん好感を持ち、パワフルダンサーとなるサンドラに自分を重ね、映画に入っていくところでしょう。
イメルダ・スタウントンの魅力は、映画の冒頭、夫マイクのナイト爵を受け、35年勤続州改札本部長の功績などという地位に、自分も同じように自慢げに振る舞うあの傲慢さと思ったら親友に夫を寝取られ、逆上するヒステリックな女に変身します。
10年間も疎遠にしていた姉ビフの団地に転がり居候する図太さです。
ダンス得意なくせに、無様な格好は見せたくないとダンス教室を拒否するプライドの高さも見せます。
チャーリーとダンスのパートナーとなって、心が通じた瞬間にはにかむ表情が可愛いこと。
ピカデリーサーカスで踊りたくないと言っていたのに、当日誰よりもエキサイトして踊る「子どもか!」と突っ込みたくなるほどのひたむきさも持っています。
ローマのホテルのバルコニーで、美しいとチャーリーに褒められ、嬉しそうに微笑むのが本当にチャーミングです。
彼女の1つ1つの表情や仕草そして行動に、観ているものは翻弄されながらもサンドラを応援し、いつの間にか自分と同化しているようです。
ゴールは、もう誰もが分かっているのだけれど、声を上げてエールを送り、共にホップ・ステップ…そして最後を観客全員で迎える瞬間がやってきます。
まとめ
もうラストシーンは、早く早く!運河を進み出す船を追いかけるサンドラを、チャーリーに会わせてあげたい。いやもう会いたいのが自分になってしまって、一緒に追いかけているようです。
船に近づくけど、チャーリーはどうしたらいいかオロオロしてるだけだし、ああもう!そう思った途端、やっぱりサンドラは飛んだんです。
それもかっこよく、ジャンプ!
船に飛び乗っただけではなく、自ら自分の人生に向かってジャンプ、一歩のステップを踏み出しました。
ぜひ、サンドラと共に、人生の新しいステップへジャンプしてみませんか。