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Entry 2017/03/14
Update

映画『ラビング 愛という名前のふたり』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • 西川ちょり


ただ一緒にいて普通の生活がしたいだけなのに…。ある夫婦の切なる願いは、アメリカの法律を変えることができるのか?! 実話から生まれた感動の物語です。

映画『ラビング 愛という名のふたり』作品情報

【公開】
2017年(アメリカ)

【原題】

Loving

【監督】
ジェフ・ニコルズ

【キャスト】
ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、アラーノ・ミラー、ニック・クロール、テリー・アブニー、ニック・クロール、ジョン・ベース、マートン・ソーカス

【作品概要】
ほんの60年前、アメリカでは異人種間結婚を認めていない州がいくつもありました。異人種間結婚の罪に問われ、バージニア州を追放されたラビング夫妻の実話に基づく感動作。

映画『ラビング 愛という名のふたり』あらすじとネタバレ

逮捕

ミルドレッドが「妊娠したの」と呟くと、恋人のリチャードは顔をほころばせて「すげえ」という言葉を繰り返しました。

時は1958年、バージニア州キャロライン郡。レンガ職人のリチャードは、地元の馴染み深い土地を購入し、ここに家を建てるよと言って、ミルドレッドにプロポーズします。

二人はワシントンD.C.に赴き、ミルドレッドの父に立ち合い人になってもらい、結婚式をあげました。晴れてラビング夫妻となった二人はミルドレッドの家で生活を始めます。

しかし、二人がぐっすり眠っている真夜中を狙って、地元の警官が二人を逮捕しにやってきました。バージニア州では白人のリチャードと黒人のミルドレッドのような異人種間結婚は法律で禁じられているのです。ワシントンD.C.で得た結婚証明書もここでは何の意味も持ちません。

翌朝、リチャードは保釈されますが、ミルドレッドはさらに数日拘留され、判事がやってくる月曜日になってやっと開放されます。

真夜中にひと目を忍んでミルドレッドに会いにやって来たリチャードは彼女を気遣い、強く抱き締めます。しかし、その姿を誰かに観られるとまた何が起こるかわかりません。リチャードは静かにその場を離れるのでした。

弁護士は、司法取引をしたことを二人に告げます。罪を認めなければ一年間の実刑。罪を認めれば執行猶予がつきます。ただし、25年間、二人一緒にバージニア州に戻ってはいけないという条件です。

二人は法廷で罪を認め、ワシントンD.C.で暮らすミルドレッドの親戚の家へ身を寄せることになりました。ミルドレッドの姉は妹との別れが耐えがたく、リチャードに「あなたのせいよ!」と叫んで家に入ってしまいます。

二度目の逮捕

不慣れな都会での生活は日に日にミルドレッドの生気を奪っていきました。心配したリチャードが声をかけると、ミルドレッドは「お義母さんの元で、赤ちゃんを生みたかった」と言います。リチャードの母親はベテランの助産婦なのです。

リチャードはミルドレッドを故郷に連れて帰る決心をしました。誰かに見つかって通報されないように、真夜中を選び、すれ違う車におびえながら、車を停めてあたりを見渡します。

やってきたのは、友人の黒人青年レイモンドです。彼の車に乗り換え、ようやく母の元へ帰ってきました。

ミルドレッドの家族が集まり、お産が始まりました。しかし、母はリチャードに「この結婚は間違いよ。彼女はいい子よ。でも法を犯すなんて」と言うのでした。

赤ちゃんは無事生まれますが、どこから聞きつけてきたのか、保安官が現れ、二人を連行していきます。

早速裁判が行われ、執行猶予中に約束を守らなかったことで実刑の判決がくだされました。しかし、そこに弁護士が「情状酌量をお願いします」と飛び込んできました。

「出産の時は帰郷できると私が言ったのです。私のミスです」という弁護士の言葉に裁判官は少しためらった後、「よかろう」と情状酌量の処置を取りました。

弁護士は感謝する二人に「もう次はないぞ」と言って立ち去りました。

生得権のための闘い

再び、ワシントンD.C.での生活が始まります。リチャードはレンガ職人の仕事をこなし、いくつもの季節が過ぎていきました。子供も二人目、三人目が生まれ、すっかり賑やかになりました。

しかし、都会の生活は子どもがのびのびと成長する環境ではありません。遊び場もなく、交通事故の心配が常につきまといます。広々とした農村で育ったミルドレッドにとっては檻の中で生活しているような息苦しさがついて回りました。

ある日、テレビに目をやると、公民権運動のデモで10万人以上の人々が集まっている姿が映し出されていました。ミルドレッドには別世界の話のように思えましたが、親戚から「ケネディ司法長官に手紙を出してみれば」と勧められました。

手紙を書いて数日後、バーナード・コーエンという弁護士から電話がかかってきました。ケネディ司法長官からアメリカ自由人権協会(ACLU)に連絡が行き、そこから彼に弁護の依頼が来たのだそうです。弁護料は協会が持つので無料とのこと。

一度会って話がしたいとと言われ、ミルドレッドとリチャードは出かけて行きますが、米国連邦最高裁判所の話が出るなど、リチャードには突拍子もないことのように思えました。

そんな時、外で元気に遊んでいた子どもの一人が交通事故にあいます。幸い、軽症ですみましたが、ミルドレッドは、ここではもう子どもを育てられない、たとえ逮捕されても故郷に戻るのだと堅い決意をします。

再びバージニアに戻り、レイモンドがみつけてくれたキングアンドクイーン郡の、周りに誰もいない農家でラビング家は暮らし始めます。

コーエンは、バージニアの州裁判所に判決を棄却するよう訴えていました。彼は経験の浅い新米弁護士でしたが、フィリップ・パーシュコフという切れ者の弁護士が加わることになり、事態が進展していきます。

ライフ誌の取材を受けることも彼らの指示でした。多くの人に事態を知ってもらい、支援を受けるためです。やってきた写真家はリチャードとミルドレッドの人柄に打たれ、二人の関係を眩しそうに眺めるのでした。

ミルドレッドはテレビの取材を精力的にこなしていましたが、彼らはいつ逮捕されてもおかしくない立場にいました。その不安とともに、いやがらせもあり、リチャードは神経を尖らせていました。

ある日、リチャードが昔の黒人の友人たちと酒を飲んでいると、そのうちの一人がからみ始めました。「お前は自分で自分の首を絞めている。肩身が狭いだろ? 黒人の気持ちが少しはわかったか。だがお前はまだましな方だ。離婚すれば自由になる。面倒は終わらせろ。」

その夜、遅く帰ってきたリチャードは「周りのやつらがみんな変わってしまった」と呟きます。そしてミルドレッドを見て「俺はお前を守る」と誓うと、涙を流すのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ラビング 愛という名のふたり』ネタバレ・結末の記載がございます。『ラビング 愛という名のふたり』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
州裁判は敗訴。しかし最高裁が上告を受理しました。興奮気味に報告する弁護士たち。

「あなたがたは当事者として裁判を傍聴できます」と弁護士はいいますが、リチャードは「行かない」と答えます。「あなたは?」と聞かれたミルドレッドは「夫に従います」と微笑みます。

「裁判官に伝えたい事は?」と聞かれ、「あるよ」と応えたリチャードは言います。「俺は妻を愛している」。

裁判が始まりました。ベースは、異人種間結婚の禁止は「人種隔離法のもっとも忌むべき法律」と述べ、「土地の所有権や子どもの人権問題でもある」と訴えます。

コーエンは「何が州にとって危険なのか。人々にとっていかなる脅威になるのか」とバージニア州裁判の判決に疑問を呈します。

リチャードとミルドレッドは毎日の生活をきちんと送っていました。それはいつまた奪われるかわかりません。彼らは日々を大切に丁寧に過ごしているのでした。

1967年6月12日。最高裁はすべての異人種間結婚禁止法を違憲とし、修正第14条の平等の保証に違反しているとする全員一致の判決を下しました。

結婚から約10年、ようやくリチャードはあの購入した土地にレンガを積み始めました。大切な家族に囲まれて。

映画『ラビング 愛という名のふたり』の感想と評価

冒頭、妊娠を告げるミルドレッドの横顔をアップで撮り(右を向いている)、次いで「すげぇ」と応えるリチャードの横顔をアップ(左向き)で撮っています。すると、すっとミルドレッドが振り向きます。

当然二人は向かい合って会話しているのかと思っていたら、二人は並んですわっていて別方向を観ながら会話していたのです。

これはちょっとした撮影と編集のレトリックですが、この話題の繊細さを現すのに考え抜かれた撮影方とも言えるでしょう。

このようにカメラは、ジョエル・エドガートン扮するリチャードやルース・ネッガ扮するミルドレッドのバストショットや顔のアップを多用します。

アップの多用といえば、最近ではカナダの若き天才グザヴィエ・ドランの『たかが世界の終わり』が思い出されますが、本作は、『たかが世界の終わり』のような、登場人物の内面を射抜くような鋭いカメラの視点とはかなり異なります。

まるで息を吸うように自然にじっと見つめるというのでしょうか。慎ましい夫婦の人柄にまっすぐ曇りのない視点を向けるというのでしょうか。

二人への敬愛も当然込められているでしょうが、それすら控えめに、しかし、力強さを持ったカメラの眼差しは、二人の表情から様々な感情を想像させてくれます。

演出にしても、もっとカタルシスをもたせるようなものをと、望む人もいるかもしれませんが、監督のジェフ・ニコルズは、実際の夫妻の生き方を踏襲したように、過剰な演出は一切しません。

その演出方法は「淡々と」、といった表現が適切かもしれません。いわゆるアメリカ映画の王道とは異なります。

だからこそ、この物語は胸に染み込んでくるのではないでしょうか。ラビング夫妻のまっすぐな愛が画面に静かにほとばしるのです。

まとめ

リチャードを演じたジョエル・エドガートンは、リチャードになりきるために、歯並びを悪くし、職業専門学校でレンガ積みを習ったのだそうです。

彼は2016年に公開され話題となった『ザ・ギフト』というスリラー作品で監督デビューもしています。『ザ・ギフト』では主人公を惑わせる怪しげな同窓生役を演じていましたが、本作ではがらりと雰囲気を変え、最初、彼とわからなかったくらいです。

ルース・ネッガはこのミルドレッド役で2017年アカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。これから様々な作品で彼女を観る機会が増えることでしょう。

マイケル・シャノンら、脇を固める役者もとても良い味を出しています。

そして監督のジェフ・ニコルズ。マシュー・マコノヒー主演の『MUD マッド』(12)は「未体験ゾーンの映画たち」という特集上映の一本として公開、『ミッドナイト・スペシャル』(16)はDVDスルーと、いずれも評判がいいにもかかわらず、ロードショー公開されていません。

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