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Entry 2018/07/31
Update

スーパー戦隊はマンネリなのかを考える⁈【黎明期】ゴレンジャーからサンバルカン|邦画特撮大全6

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第6章

現在放映中のスーパー戦隊シリーズ第42作目『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』。

2つの戦隊と敵組織による三つ巴の戦いが描かれています。2つの戦隊が登場するということもあり、一部の媒体では“マンネリからの脱却”と報道されていました。

スーパー戦隊シリーズは本当にマンネリなのか? 

そんな疑問が頭に浮かんだため、今回から複数回に分けてスーパー戦隊シリーズを歴史的に分析してみようと思います。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

誕生の裏に仮面ライダーあり『秘密戦隊ゴレンジャー』

スーパー戦隊シリーズの記念すべき第1作目は『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977)。

実は『ゴレンジャー』誕生の背景には、腸捻転解消によるネットチェンジという問題がありました。

1975年の春から、大阪のキー局・毎日放送がTBS系列局に、朝日放送がNET(現・テレビ朝日)系列局になりました。これが上記のネットチェンジです。

それまで毎日放送制作の『仮面ライダー』シリーズを東京ではNETが放映していました。

しかしネットチェンジにより、『仮面ライダー』シリーズの放映権はNETからTBSに移ってしまいます。

人気コンテンツの『仮面ライダー』を失ったNETは新たなヒーロー番組の制作を東映に打診。

そして誕生したのが『秘密戦隊ゴレンジャー』です。

色分けされた5人の集団ヒーローが悪の組織と闘う……。

戦隊シリーズで最も重要な要素はこの段階で完成されました。

これは仮面ライダーとの差別化により誕生したものです。

仮面ライダーが基本的に単体ヒーローだったこともあり、新番組は5人による集団ヒーローと企画されました。

ゴレンジャーの必殺技は“ゴレンジャーハリケーン”という5人の力を合わせたものです。5人による合体必殺技もその後のシリーズで踏襲されています。

実際『ゴレンジャー』以前から『サイボーグ009』『科学忍者隊ガッチャマン』など、アニメや漫画では“集団ヒーロー”が描かれてきました。

しかし実写特撮では円谷プロの『トリプルファイター』を除き、他にあまり例を見ません。

実写特撮による集団ヒーローは視聴者の目に斬新に映り、結果『秘密戦隊ゴレンジャー』は人気を博し全84回放送されました。

巨大ロボットの登場『バトルフィーバーJ』

「『ゴレンジャー』が長期間続いてマンネリになるなら……」、という事で企画されたのがシリーズ第2作目『ジャッカ―電撃隊』(1977)。

集団ヒーローの要素を受け継ぎ、メカニック描写とドラマ性の強化が図られました。

しかしシリアスな作風が裏目に出てしまい視聴率が低下。『ゴレンジャー』の人気とは対照的に、本作は全35回と短命に終わりスーパー戦隊シリーズは一旦中断してしまいます。

この中断期間に製作されたのが東映版『スパイダーマン』です。

当時の東映はアメリカのマーベル・コミックと、「3年間に亘りお互いのキャラクターを自由に使用してよい」という条件で業務提携をしていました。

この契約によって製作された第1弾が『スパイダーマン』、第2弾がスーパー戦隊シリーズの第3作目である『バトルフィーバーJ』(1979)です。

バトルフィーバーのメンバーはバトルジャパン、バトルケニア、バトルコサック、バトルフランス、ミスアメリカ。世界各国とダンスをモチーフにした戦士になっています。

当初はマーベルの人気キャラクターであるキャプテン・アメリカを登場させる予定がNGとなり、代替案として同じマーベルのキャラクター、ミスアメリカを登場させることになりました。

ただし名前こそ同じミスアメリカですが、デザインやキャラクターの背景は全く別ものです。

またタイトルに取り入れられた“フィーバー”という単語は、当時流行していた映画『サタデーナイト・フィーバー』から採用されました。

その後もスーパー戦隊シリーズは、放映当時の流行や時代背景が取り入れられます。

『バトルフィーバーJ』で特筆すべき点は巨大ロボットの登場です。

本作から主人公たちが巨大ロボットに乗り込み、巨大化した敵怪人と闘う趣向が盛り込まれました。

『ゴレンジャー』でも“バリブルーン”や“バリドリーン”といった巨大メカが登場しましたが、巨大ロボットの登場は本作が初。

これは『スパイダーマン』に登場した巨大ロボット・レオパルドンが商業的な成功を収めたことから取り入れられた要素です。

民間人が戦士に『電子戦隊デンジマン』人数の刷新『太陽戦隊サンバルカン』

『バトルフィーバーJ』に登場するロボット・バトルフィーバーロボは合体も変形もしないロボットでしたが、シリーズ第4作『電子戦隊デンジマン』(1980)ではロボットにギミックが追加されます。

デンジマンの5人が搭乗する巨大ロボ・ダイデンジンは、巨大戦闘機・デンジファイターから変形するのです。

またデンジマンの5人は元々民間人で戦いのプロではありません。

それまでの作品では、戦隊メンバーが初めから悪と戦うために、特殊な訓練を受けていた戦いのプロでした。

民間人が戦士になっていくという設定は本作が初出で、以降の作品でも踏襲されることが多いです。

続く第5作『太陽戦隊サンバルカン』(1981)では戦隊の人数を刷新し、5人から3人になります。

途中でレッドが交代しますが、新メンバーが追加される事はなく最終回まで3人のままです。

また『デンジマン』と『サンバルカン』は世界観を共有しており、両作ともに曽我町子女史の怪演が光るヘドリアン女王が敵で登場。

『バトルフィーバー』以降、1年ごと新作に切り替わり各作品の世界観は別なのですが、本作のみ共通の世界が描かれています。

いかがでしたでしょうか。シリーズ黎明期ということもあり、各作品に挑戦的な要素が見られますね。

またこの段階でシリーズの大枠が完成されています。

次回の邦画特撮大全は…

『大戦隊ゴーグルファイブ』以降の80年代のスーパー戦隊を取り上げます。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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