映画『英国総督 最後の家』は、8月11日(土・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
1947年、英国からの独立前夜。混迷を深める激動のインドで、歴史に翻弄された人々を鮮やかに描いた感動のドラマ。
主権譲渡のため新総督任命されたマウントバッテン卿、その妻と娘は、インドのデリーにある壮麗な総督官邸にやって来ます。
しかし、彼らを待ち受けた英国領インドの最後の6ヶ月間の舞台裏とは?
インドの歴史の一端を知る必見の真実の物語です!
CONTENTS
映画『英国総督 最後の家』の作品情報
【公開】
2018年(イギリス映画)
【原題】
Viceroy’s House
【脚本・監督・製作】
グリンダ・チャ―ダ
【キャスト】
ヒュー・ボネビル、ジリアン・アンダーソン、マニシュ・ダヤル、フマー・クレイシー、マイケル・ガンボン、ダンビール・ガニー、オム・プリ、ニーラジ・カビ、サイモン・キャロウ、デビッド・ヘイマン、デンジル・スミス、リリー・トラバース、ジャズ・ディオール
【作品概要】
1947年の独立前夜のインドを舞台に、激動する歴史に翻弄された人たちを描き、演出には祖父母が分離独立を体験したグリンダ・チャーダ監督が渾身の思いをかけて映画化したヒューマンドラマ。
総督ルイス・マウントバッテン役を『パディントン』のヒュー・ボネビルが演じ、その妻でインドに深い想いを持つエドウィナ役を『X-ファイル』のジリアン・アンダーソンが務めます。
映画『英国総督 最後の家』のあらすじ
1947年、インドの首都デリー。ここにある総督の官邸を数百人もの使用人が、すみずみに至るまで清掃を行なっていました。
第二次世界大戦で国力が疲弊したイギリスは、植民地インドを去ることを決めます。
今日、主権譲渡のために任命された新総督とその家族が英国からやって来ます。
インド人青年ジート・クマールは今日から総督の家で勤務することになりました。
以前からここで働く、幼なじみドゥリーブの伝手でした。2人は新総督マウントバッテン卿の秘書に抜擢されました。
ジートは新総督の娘パメラの世話係に任命されたインド人女性アーリアを邸宅内で見かけ、驚愕。
かつて警察官だったジートは、ラホール刑務所に勤務していました。
アーリアの父親はデモ行進が加わって、そこに投獄されていたが、面会は許されずジートが手紙や食料などを届けていたのです。
ジートはアーリアに片思いを寄せていましたが、この2年間居場所すらわからずにいたのです。
一方のインドを返還するために赴任した元軍人のルイス・マウントバッテンは、「最後の総督として主権譲渡の任務を、誇りを持って遂行する」心構えでいました。
またそれ以上に政治に通知した妻のエドウィナは、夫以上にインドの人たちの平安を心から願っていました。
総督官邸内では、マウントバッテン総督は妻エドウィナと娘とともに2階に住むこととなり、下の階には500人のヒンドゥー教徒、イスラム教徒、シク教徒である使用人のインド人が住んでいます。
2階では連日連夜論議が行われ、独立後に統一インドを望む国民会議派と、分離してパキスタンを建国したいムスリム連盟のインド独立の話し合いの攻防と衝突。
世界に多大な影響を与える歴史的な決断が、まさに今なされようとしていました。
一方で新総督のもとで働くインド人青年ジートと令嬢の秘書アーリアは、互いに惹かれあうが、信仰が違うことや、アーリアには幼いとき決めた父親が慕う婚約者が現れます。
その時、国家分断の緊張感に沸き返ったインドの各地では、大きな暴動騒ぎが起きて、インドの独立は分断か?
パキスタンに新しい国を作り出すか?人類史上もっとも大きな移民政策を打ち出そうと…。
映画『英国総督 最後の家』の感想と評価
インド独立の舞台裏を描く大河ドラマ
本作品『英国総督 最後の家』は、ひとことで言えば、“インド版の大河ドラマ”で、1947年のインド・パキスタン分離独立の舞台裏を描いた作品です。
しかし、何か難しい政治の話ばかりになることはありません。
インド人が好むエンターテインメントに仕上げられた映画構成には、インド・パキスタン分離独立の背景のなか、恋愛に揺れるジートとアーリアのラブストーリーが盛り込まれたことで、観客を飽きさせることはありません。
しかも、イギリスからインドのデリーに赴任したルイス・マウントバッテン新総督と、妻エドウィナと娘の家族たちは、インドの歴史に翻弄され、その身を投じた家族の真実が厚みを見せてくれます。
本作が人間の普遍的な価値である“家族”について、宗教、国家、人種に関わらず、中核の願いと祈りあると、グリンダ・チャーダ監督がしっかりと確信を得ているからでしょう。
見事な、見事な、みごとな!インド人とイギリス人の個人的かつ、国民の叙事詩になっています。
グリンダ・チャーダ監督とは
監督作品:『ベッカムに恋して』(2002)
グリンダ・チャ―ダ監督は、1960年にケニヤのナイロビで、シク教徒のインド人家庭に生まれます。
その後、2歳のときに家族でウェスト・ロンドンに移住。イースト・アングリア大学卒業後、BBC放送のニュース・レポーターとしてキャリアをスタートさせました。
1993年にイギリスに住む世代の異なるインド系女性たちを描いた初監督作品『Bhajion the Beach(原題)』で監督デビューを果たします。
2000年にサンダンス映画祭のオープニングナイトで上映された『What’s Cooking?(原題)』が観客賞を受賞、またロンドン映画批評家協会賞最優秀監督賞も受賞。
日本人の映画ファンに馴染み深いのは、2002年に公開された世界的な大ヒット作品『ベッカムに恋して』でしょう。
2008年の『スラムドッグ$ミリオネア』が登場するまで、グリンダ監督は史上最高額の興収を記録したイギリス出資/配給映画を記録していました。
そして最新作の『英国総督 最後の家』は、グリンダ監督にとって、最も個人的な映画であり、特別に大切な運命的な作品になっています。
運命を背負ったグリンダ監督の渾身作
グリンダ監督は、ある日、チャリティパーティを主催する慈善団体の後援者で、マウントバッテン卿の甥の息子にあたるチャールズ皇太子に出会います。
彼女はチャールズ皇太子に大叔父様についての映画を制作中だと話しました。
するとチャールズ皇太子は、このようにグリンダ監督にアドバイスをしてくれました。
「マウントバッテン卿の個人秘書を務めていたナレーンダル・スィンフが書いた『The Shadow of the Great Game』という本を、ぜひ読むべきです。本当は何が起きていたかが分かりますから」
その数日後、運命は動き出します。
チャーダ監督が新作映画の宣伝中に、監督のもとを訪ねた俳優志望の若者が、ナレーンダル・スィンフの息子でした。
ナレーンダルは「あなたが分離独立についての映画を制作中である記事を読みました。父の本をぜひ読んでいただきたいのです」と、チャールズ皇太子から薦められた同じ本の名前を挙げました。
そして数年後、ナレーンダルは『英国総督 最後の家』のなかで、父と同じくマウントバッテン卿の個人秘書役で出演しました。
そして何よりも、グリンダ監督自身の祖父母がインド・パキスタン分離独立の際に大移動して来た家族でした。
グリンダ監督は「私自身の映画を作りたい」という、念願を叶えました。
このことは、映画のエンディング・ロールの後半に、家族や世代の真実と願いを一気に見せる素晴らしい演出として登場。
ここは“大河ドラマという叙事詩”のなかで、人間が大きな歴史の渦に翻弄されながらも、生き残った証人の魂の一端を確実に見せてくれます。要注目です!
グリンダ・チャーダ監督の映画観
グリンダ監督は本作品『英国総督 最後の家』について、このような考え方を持っています。
「著名人の政治論争に焦点を当てるだけの映画にしたくありませんでした。分離独立が市井の人々に与えた影響を、観客にきちんと理解してもらえる映画を作りたかったのです」
観客に届けたいというグリンダ監督の思いは、映画的なラブストーリーのエッセンスや、実在した論争を繰り返す政治家たちや宗教家ガンジーにそっくりな俳優を起用するなど、エンターテインメントと史実の正確さが見られます。
フィクション(映画的嘘)とノンフィクション(実話)の狭間を巧みに描き切りました。
参考作品:『インドへの道』(1984)
また、イギリスとインドと言えば、往年の映画ファンであれば、1984年に巨匠デヴィッド・リーン監督と脚本、編集を行った『インドへの道』を思い出すことでしょう。
グリンダ監督はデヴィッド・リーン監督をお気に入りの映像作家の1人にあげ、壮大なキャンバスに広がるイギリス映画が好きだと述べています。
そしてデヴィッド監督の映画は、「民族として私たちが何者であるかを捉えるための助けになってくれます」とも語っています。
この影響もあって、『英国総督 最後の家』について、グリンダ監督はこのように語っています。
「歴史を振り返り考察することで私たちが何者かを知り、現状を理解することができるのです。それこそがこの作品で成し遂げたいことなのです」
このように監督は語り、可能な限り幅広い層の観客に映画を届けたいという目的を強く持っています。
敷いては、それこそが作品のフィクション(映画的嘘)とノンフィクション(実話)の狭間をエンターテインメントにまで押し上げた理由でもあります。
これはインドの歴史でありますが、日本人の観客にも届くものがあり、戦後という出来事の振り返りになるはずですよ。
2018年に見逃せないオススメの作品です。
まとめ
インドのデリーにある総督官邸に、最後のイギリス統治者としてやって来たルイス・マウントバッテン。
宮殿のように豪華な邸宅では、ヒンズー教、イスラム教、シーク教などの宗派の教徒たち500人が使用人として階下で働いていました。
ルイス・マウントバッテンの家族が暮らす2階では、連日連夜に渡って政治に精通したエリートたちが、独立後に統一インドを望む多数派と、分離してパキスタンを建国したいムスリムたちとに分かれて論議を続けています。
6ヶ月あまりという、インド独立移行に悩むルイスの家族、そしてそこに潜む影とは?
そんな日々の中、使用人のひとりであるインド人青年ジートとアーリアの宗派の違いを愛は超えられるのか?
グリンダ・チャーダ監督渾身の映画『英国総督 最後の家』は、8月11日(土・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
ぜひ、映画館でこそ、楽しめるエンターテインメント史実作品を、ぜひ、お見逃しなく!