映画『すべて真夜中の恋人たち』は第39回東京国際映画祭ガラ・セレクションにて上映
2026年10月26日(月)~11月4日(水)まで開催された第39回東京国際映画祭。
ガラ・セレクションにて上映された映画『すべて真夜中の恋人たち』は、2026年11月13日(金)より全国上映されます。
累計発行部数40万を超える川上未映子の恋愛小説を『あのこは貴族』(2021)で国内外で評価された岨手由貴子監督が映画化。
フリーの校閲の仕事をしている冬子は、親しい友人もなく、趣味もなく仕事をしてただ家にいるだけの日常を送っています。
冬子の数少ない友人で、仕事相手でもある聖は、誰にも物怖じしない性格で、冬子とは対照的です。
そんなある日、冬子は三束という高校の物理学教師と出会い、何もない日々は変わり始めるが……。
本作は、第39回東京国際映画祭ガラ・セレクションにて上映されたほか、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選出されました。
【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2026』記事一覧はこちら
映画『すべて真夜中の恋人たち』の作品情報

(C)2026「すべて真夜中の恋人たち」製作委員会
【日本公開】
2026年公開(日本映画)
【原作】
川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)
【監督・脚本】
岨手由貴子
【語り】
松坂桃李
【キャスト】
岸井ゆきの、浅野忠信、森田望智、深川麻衣、塩野瑛久、中村優子、長井短、祷キララ、中井友望、林裕太、花瀬琴音
【作品概要】
累計発行部数40万を超える川上未映子の恋愛小説を『あのこは貴族』(2021)で国内外で評価された岨手由貴子監督が映画化。
主人公・冬子を演じるのは、『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』(2026)の岸井ゆきの、冬子の友人である聖役には、『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』(2026)の森田望智、三束役には『レイブンズ』(2025)の浅野忠信が務めました。
映画『すべて真夜中の恋人たち』のあらすじ

(C)2026「すべて真夜中の恋人たち」製作委員会
フリーの校閲の仕事をしている入江冬子(岸井ゆきの)は、家で仕事をするだけで、友人と出かけたり、趣味に時間を費やしたりすることもなく、ただ何もない日々を送っていました。
数少ない友人であり、仕事相手である聖(森田望智)に誘われて、校閲の同業者が集まる飲み会に誘われます。
しかし、普段から人と関わることを避けている冬子は、周囲の会話のペースについていけません。
聖に誘われて飲み直した冬子は、聖に「冬子って休みの日何をしているの?」と聞かれます。
何もしていないと答える冬子に自分も同じだという聖でしたが、「食事やセックスをともにするだけの相手は複数人いる」とも明かします。
そんなある日、冬子は高校で物理学を教えているという年上の男性・三束に出会います。
ひょんなことから、週に一回喫茶店でコーヒーを飲みながら話をするのが日課になっていき、冬子の日常に変化が訪れていきますが……。
映画『すべて真夜中の恋人たち』の感想と評価

(C)2026「すべて真夜中の恋人たち」製作委員会
累計発行部数40万を超える川上未映子の恋愛小説を『あのこは貴族』(2021)で国内外で評価された岨手由貴子監督が映画化。
フリーの校閲で働く入江冬子は、人との交流を避け、家でただ仕事をするだけの何もない日々を送っていました。
そんな冬子の数少ない友人であり仕事相手の聖は、自分の感情に素直で物怖じせず人に接するタイプです。一方で、そんな聖をよく思わない人も多く、自分の基準を人にあてはめようとすると陰口を言う人もいました。
しかし、冬子は聖に触発されたのか、カルチャーエンターに足を運び、そこで物理学を教えているという高校教師の三束に出会います。
週に一回コーヒーを飲みながら話すのが日課となった三束と冬子ですが、冬子はあることをしないと外に出て、三束と話すことができません。一方で、三束の方も冬子に隠していたことがあったのでした……。
人との交流を避け、うまく自分の気持ちを伝えられない冬子。そこにははっきりとは語られませんが、積み重なったものがあり、傷つきたくない、どうせ自分にはうまくできない、と閉じこもっている冬子の姿に自分を重ねる人もいるでしょう。
一方で、不器用でゆっくりとしか前に進むことができない冬子に、聖は苛立ちすら感じています。冬子も冬子で聖は自分と違ってすごいと思いながらも聖の自分勝手さ、どうせ私の気持ちを理解することはないと思っている部分もあります。
不器用な人々の純愛を描きながらも、そこにぐちゃっとした人間の生々しい感情も描かれているからこそ、応援したい気持ちだけではない、自分の傷を抉られたような苦々しさが感じられるでしょう。
美しいだけでなはい人間の生身の姿に、観客の心はかき乱されます。
『愛がなんだ』(2019)をはじめ、『神は見返りを求める』(2022)など、生々しい感情をリアルに演じてきた岸井ゆきのが、冬子に立体感を与えているといえます。
何かを抱え、不器用だけれどただ話して関係を紡いでいく冬子と三束の関係性は、人によっては歪に感じ、人によっては尊く感じるのではないでしょうか。
かつて愛した人との愛おしくも切ない思いが蘇ってくるような、あの時はそれが全てだった唯一の光のような、静かに心をかき乱す、秋から冬へと移り変わる季節にぴったりな純愛映画です。
まとめ

(C)2026「すべて真夜中の恋人たち」製作委員会
人との交流を避け、何もなかった冬子の不器用で愛おしい純愛映画『すべて真夜中の恋人たち』。
世界的に高く評価される小説家・川上未映子の初長編小説を『あのこは貴族』(2021)の岨手由貴子が監督・脚本を手掛け映画化。
『あの子は貴族』では、女性同士の連帯が描かれ大きな共感を呼びましたが、本作における冬子と聖の関係性も印象的です。
聖は人たらしのような性格で恋愛も自由な関係を望み、物怖じせず人に言う性格です。傷つきたくない、うまく伝えられないと人との交流を避けてしまう冬子とは正反対の性格です。
しかし、聖は「私、友達は冬子しかいないから」と言ったり、何かと冬子を気にかけたりしています。自分とは違う冬子に苛立ちを感じる部分もあったり、誤解を生じさせたりする性格ですが、そこに冬子への思いもきちんとある、複雑な関係をリアルに描き出しています。
映画『すべて真夜中の恋人たち』は、2026年11月13日(金)より全国上映されます。
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