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韓国映画『ただ、やるべきことを』あらすじ感想と評価考察。リストラを労働者と実行組織との立場からリアルに描く社会派ドラマ|映画という星空を知るひとよ280

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第280回

リストラを断行しなければならない人事部社員たちの葛藤と決断をリアルに描いた社会派の韓国映画『ただ、やるべきことを』。映画の背景にあるのは、2010年代の韓国の造船業界が直面した深刻な不況でした。

映画『ただ、やるべきことを』は、2026年1月17日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開

本作の監督は、長編デビュー作となるパク・ホンジュン。造船会社の人事部で働いた自身の経験を基にして、職業上の義務と個人的感情の間で板挟みになる労働者の心理を描き出します。

主演は『君の結婚式」などのチャン・ソンボム。仕事か友情かと厳しい選択を迫られる主人公が、‟いま、自分がやるべきこと”を模索する姿を熱演しています。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ただ、やるべきことを』の作品情報


(C)Nareun Cinema / Myung Films Lab.

【日本公開】
2026年(韓国映画)

【原題】
해야 할 일

【英題】
Work to Do

【監督・脚本】
パク・ホンジュン

【撮影】
チェ・チャンファン

【編集】
チョ・ヒョンジュ

【製作】
映画会社ナルン ミョンフィルムラボ

【日本語字幕】
田中三紗子

【キャスト】
チャン・ソンボム、ソ・ソッキュ、キム・ドヨン、キム・ヨンウン、チャン・リウ、イ・ノア カン・ジュサン、キム・ナムヒ

【作品概要】
『JSA』『建築学概論』などの制作会社ミョンフィルム(イ・ウン代表)が未来の韓国映画をリードする映画人育成を目的として設立した、ミョンフィルムラボ6期のパク・ホンジュン監督長編デビュー作品。

造船会社の人事で働いた経験を基に、職業上の義務と個人的感情の間で板挟みになる労働者の心理を深い視点で描き出しました。

主演は、ドラマ『秘密の森』『新兵』『君の結婚式』など人気作に多数出演したチャン・ソンボムで、第28回釜山国際映画祭「今年の俳優賞」を受賞。

映画『ただ、やるべきことを』のあらすじ


(C)Nareun Cinema / Myung Films Lab.

2016年、韓国の造船業界は深刻な不況に陥っていました。

漢陽重工業入社4年目のカン・ジュニ(チャン・ソンボム)は人事チームへの異動と同時に、150人を解雇するためリストラの名簿を作成するように指示を受けます。

ジュニは気乗りしませんが、上司のチョン・ギュフン部長(キム・ドヨン)からは「会社を救うためのやむを得ない措置だ」と諭されました。

仕方なく、ジュニと人事チームの社員たちは解雇対象者を選定することに……。

選出作業が進むにつれ、リストラ当事者たちからは反発を受けます。

ジュニは自分のしていることに悩みながらも、婚約者に相談することもできずにいました。

さらに、会社都合で解雇対象者が絞り込まれていきます。

ジュニの尊敬する先輩と親しい友人、そのどちらを解雇するかを選ばなければならない状況に追い込まれていきました……。

映画『ただ、やるべきことを』の感想と評価


(C)Nareun Cinema / Myung Films Lab.

映画『ただ、やるべきことを』の舞台は2016年の韓国。そのころ韓国では、造船業が世界的不況に見舞われ多くのリストラと廃業がありました。

主人公であるジュニは、漢陽重工業入社4年目の社員です。リストラ対象者を決めるため、社員名簿を見ながら選出条件を絞りこむ作業をします。

勤続何十年にもなるベテランをはじめ日常の勤務に励む社員たちを、年齢や職歴などの条件だけで選別するのに疑問を感じますが、会社を立て直すためと自身を納得させ、やるべき仕事をこなしていきます。

そして、ついに親しい先輩と友人、そのどちらかを選ばなければならない状況に追い込まれたのです。

組織の一員として「やるべきこと」、ひとりの人間として「やるべきこと」。ふたつの感情が激しくぶつかり合い、ジュニの苦悩は最高潮に達したのでした。

このように本作では、リストラで従業員を解雇しなければならない人事チームの社員たちの決断をリアルに描き出しています

働く者にとって不況とそれに伴うリストラは恐怖です。今度は自分がリストラになるかもしれないという不安は、誰もが抱えているのに違いありません。

ですが、リストラを選出する方も諸事情がありつらいもの。パク・ホンジュン監督は下記のように語っています。

労働問題を扱う物語は、主にリストラの直接的な被害者が会社を相手に戦う形で描かれてきた。では、リストラの実行者として、ただ自分のやるべきことを行うだけの人事チームの労働者は、果たしてどのような姿なのだろうか。
リストラのプロセスを取り巻く様々な層の人物を通じて、私たちの時代の労働環境の本質についての物語を観客と共有したい。

日本でも同じような問題があると言え、リストラに関わる様々な立場の人物からみた労働環境の本質を映像化した本作は、とても意義深いと思えます。

まとめ


(C)Nareun Cinema / Myung Films Lab.

リストラを実施する職務と個人的感情の間で板挟みになる会社員を描く韓国映画『ただ、やるべきことを』をご紹介しました。

本作はリストラを実行する人事部社員の視点から、労働者と会社の対立、その間に幾重にも重なる様々な悲劇と哀しみを映し出しています。

リストラをされる側からすればそれは不運とでも言いようがありませんが、リストラをする側にしても、それなりの苦悩と葛藤があるのです。

それでも人は生活するために働かねばならず、会社の経営維持のためにリストラも選出せねばなりません。

労働者の立場とリストラを選出する側の苦しい立場を鮮明に描き出した本作は、新たな角度から労働者問題を問いかけます

映画『ただ、やるべきことを』は、2026年1月17日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


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