連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第6回
難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。
今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。
2025年11月6日(木)〜12月7日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。
今回紹介するのは、ケニアの難民キャンプから世界へ!ラジオを通して難民の声を伝えるドキュメンタリー『ラジオ・ダダーブ』。
生まれも育ちもケニアのダダーブ難民キャンプのファルドウサはジャーナリストとして、声なき人の「声」を世界に届けます。
【連載コラム】『いま届けたい難民映画祭2025』一覧はこちら
映画『ラジオ・ダダーブ』の作品情報

【日本上映】
2025年(ケニア映画)
【原題】
Radio Dadaab
【監督】
Environmental Justice Foundation
【作品概要】
ケニアにあるダダーブ難民キャンプ。ファルドウサの母は1990年代のソマリアの内戦で故郷を逃れてきました。ファルドウサは、難民キャンプで生まれ、難民キャンプの外に出たことはありません。
内戦だけでなく、近年は気候変動による干ばつや飢餓により故郷を追われた人が難民キャンプに多くやってきました。そのような人々の声なき“声”をファルドウサはラジオで世界の人々の届けます。
難民キャンプの現状や世界の気候変動を映し出したドキュメンタリー。
映画『ラジオ・ダダーブ』のあらすじ

ケニアのダダーブ難民キャンプ。
そこで暮らす25歳のファルドウサは、キャンプで生まれ、育ちました。
パスポートもなく、ケニアでの出生証明書もありません。父はキャンプで亡くなり、母と暮らしています。
ファルドウサの両親はソマリアの内戦から逃れ、このダダーブ難民キャンプにやってきました。
しかし、近年は内戦だけでなく、気候変動による干ばつ、そして飢餓の影響によって故郷を離れざるを得ない人々がダダーブ難民キャンプにやってきます。
難民キャンプは、そもそも一時的な住まいとして作られているため、丈夫な作りではなくキャンプ全体の設備も十分とは言えません。
故郷の問題やキャンプの問題など、さまざまな声なき声をファルドウサはラジオのジャーナリストとして世界に届けています。
映画『ラジオ・ダダーブ』の感想と評価

1990年代に本格化した内戦により、多くのソマリアの市民が難民となって故郷を逃れました。
ケニアには3つの難民キャンプがあり、中でも最大規模がダダーブ難民キャンプです。
30年も続く難民キャンプの中で、まさに90年代に故郷を流れダダーブにやってきたのが、ファルドウサの両親でした。
ソマリア人の両親を持つファルドウサはソマリア人という意識はありますが、ソマリアには一度も行ったことがありません。
また、ケニアでの出生証明書もないファルドウサはパスポートもなく、難民キャンプの外に行ったこともないのです。
難民キャンプでの生活が長引いた結果、ファルドウサのような境遇の人は多くいるでしょう。
そんななか、近年難民キャンプにやってくる人々は内戦だけが理由ではなく、気候変動による干ばつや飢餓が原因で故郷を逃れ渡ってきた人が増えていると言います。
どうしても“難民”というと、紛争や戦争により故郷を離れざるを得なかった人をイメージしてしまいますが、それだけではないのです。
先進国のトップは会議でCO2の排出量削減に向け目標を掲げてはいますが、先進国がエネルギーを使いCO2を排出した結果、被害を受けているのはアフリカなどの国々です。
2022年、ソマリアの干ばつで推定4万3000人が死亡し、毎年2100万人が異常気象で避難していると言います。
このまま気温が上昇すれば、2050年までに最大12億人が避難を強いられることになります。
単なる数字だけではない、住む場所を奪われている人々がいることを知ってほしいとファルドウサは難民の声を通して世界に訴えかけているのです。
まとめ

ケニアの難民キャンプから世界へ!ラジオを通して難民の声を伝えるドキュメンタリー『ラジオ・ダダーブ』。
生まれも育ちもケニアのダダーブ難民キャンプのファルドウサは、気候変動による干ばつや飢餓により故郷を追われた難民の声を世界に届けています。
しかし、問題は、気候変動による環境問題だけではありません。
30年と続くダダーブ難民キャンプは、ケニアで最大の難民キャンプですが、難民キャンプにやってくる人は途絶えることなく、これ以上難民を受け入れることは厳しい状態に陥っています。
そもそも難民キャンプは一時的な住居とされていたため、頑丈な作りではなくインフラなどの設備も十分ではありません。
また、水や食料、医薬品なども足りていない状況で人々の生活は深刻な状況です。
そのような状況に置かれた人々がいることを私たちは知るべきなのです。
第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。
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