Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アクション映画

【ネタバレ】サンダーボルツ*|あらすじ感想評価とラスト結末。メンバーとしてヴィラン終結し世界と己自身を救うために立ち上がる

  • Writer :
  • 糸魚川悟

負け犬たちの前に立ちはだかるシリーズ最強の敵

怒りや誰かの命令によって「正義」の側にいることを捨て、「正義」に立ち向かうことになってしまった「ヴィラン」たち。

そんな彼等が集結し、共に人々を救うために立ち上がり「ヒーロー」へと変わっていくヴィランムービーが「アベンジャーズ」に初登場。

今回はヴィラン集結として話題となった映画『サンダーボルツ*』(2025)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『サンダーボルツ*』の作品情報

【日本公開】
2025年(アメリカ映画)

【原題】
Thunderbolts*

【監督】
ジェイク・シュライアー

【脚本】
エリック・ピアソン、イ・サンジン、ジョアンナ・カロ

【キャスト】
フローレンス・ピュー、セバスチャン・スタン、ワイアット・ラッセル、オルガ・キュリレンコ、ルイス・プルマン、ジェラルディン・ヴィスワナサン、デヴィッド・ハーバー、ハナ・ジョン=カーメン、ジュリア・ルイス=ドレイファス

【作品概要】
「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」35作目にして、「マルチバース・サーガ」の中間となる「フェーズ5」の最終作。

ミッドサマー』(2020)で主演を務めたフローレンス・ピューが本作の主人公エレーナを再び演じ、今後のMCUで重要な人物となるボブを『トップガン マーヴェリック』(2022)に出演したルイス・プルマンが演じました。

映画『サンダーボルツ*』のあらすじとネタバレ

「レッドルーム」出身の元暗殺者のエレーナは義姉のナターシャ(ブラック・ウィドウ)を失い、日々を深い虚無感の中で過ごしていました。

CIA長官であるヴァレンティーナの下で汚れ仕事を命じられるエレーナは、ヴァレンティーナがかつてCEOを務めていた軍事会社「OXE」が過去に行ってきた非道な人体実験の証拠を隠滅する任務を遂行。

次なる指令を送ろうとするヴァレンティーナの連絡を無視し、1年以上連絡を絶っていた血の繋がらない父親アレクセイ(レッド・ガーディアン)を訪ねたエレーナは、自身の抱える虚無感を吐露し今の仕事を辞める考えを伝えます。

しかし、ヒーローとして活躍した過去を忘れられないまま日々バイトで食い繋いでいるアレクセイには、エレーナの仕事は眩しく映っており、自身をヴァレンティーナに売り込もうと必死になるばかりでした。

その頃、ヴァレンティーナは過去の悪事をゲイリー下院議員に察知され、彼女を罷免するための弾劾裁判が準備され始めており、証拠の隠滅に焦りを募らせていました。

エレーナからの連絡を受けたヴァレンティーナは、「表舞台に立てる仕事をしたい」と言うエレーナに「最後の汚れ仕事」として、「OXE」の機密情報保管庫を襲撃しようとする刺客の殺害を命令。

武器を携え保管庫を訪れたエレーナはウォーカー(U.S.エージェント)に襲われ、その場に現れたアントニア(タスクマスター)やエイヴァ(ゴースト)と乱戦となります。

隙を突きアントニアを射殺したエイヴァは任務が完了したと判断し保管庫を出ようとしますが、物体のすり抜けを可能とする彼女の能力を阻害する音波装置によって阻まれました。

謎の青年ボブも保管庫のカプセルから現れ事態が混沌とする中、エレーナはボブを除く全員がヴァレンティーナの命令で集められたことに気づき、「汚れ役」を担当してきた工作員を集め、同士討ちを画策していたヴァレンティーナの企みに辿り着きます。

策に気づかれたヴァレンティーナは、保管庫の焼却や殺害のための部隊を送り込みますが、4人は協力することで窮地を脱し、保管庫からの脱出があと一歩のところにまで迫ります。

検問を突破できないことを悟ったボブは、ぶっきらぼうながらも自身を救ってくれたエレーナ、ウォーカー、エイヴァを救うため、自らを囮にすることで3人を基地から脱出させました。

ボブはヴァレンティーナが差し向けた部隊によって大量の銃弾を浴びますが、ボブは「OXE」が行った非道な人体実験「セントリー計画」の居ないとされていた生き残りであり、その力を発揮し高く空へと飛びあがると地面に落下。

ヴァレンティーナは「セントリー計画」の成功者が居たことに驚愕すると共に、弾劾裁判を逃れるために気を失ったボブを確保するのでした。

逃走しながらボブの一部始終を見届けていたエレーナたちは、ヴァレンティーナの企みに気づきエレーナを助けに来たアレクセイと合流します。

すぐに大量の追っ手に追いつかれ窮地に陥った4人を救ったのは、下院議員となったバッキー(ウィンター・ソルジャー)でしたが、バッキーは救った4人を即座に拘束しました。

バッキーはゲイリー下院議員と共にヴァレンティーナの悪事を暴くための証拠を集めており、彼女の助手であるメルと秘密裏に連絡を取っていました。

ヴァレンティーナが「汚れ仕事」を押し付けていたエレーナたちは絶好の証拠であり、弾劾裁判にて証言させるため4人を確保したのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『サンダーボルツ*』のネタバレ・結末の記載がございます。『サンダーボルツ*』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ヴァレンティーナは「アベンジャーズ」の旧アジトを「ウォッチタワー」として改修し、目を覚ましたボブに「セントリー」というヒーロー名を授け、力の使い方を指導します。

しかし、善性な人間が「キャプテン・アメリカ」となったスティーブ・ロジャースの例とは異なり、虐待被害と少年犯罪の中で育ったボブの精神は非常に不安定であり、メルは危機感を覚えバッキーに助けを求めました。

エレーナたちを拘留する予定でいたバッキーはメルの連絡を受け、ボブを止める必要があると判断し、エレーナたちに協力を求めます。

同じ虚無感に支配されていたボブを救いたいエレーナ、ウォーカー、エイヴァは協力を了承し、ボブと面識のないアレクセイははぐれ者がチームを組むことに感動し進んで参加を決断。

「ウォッチタワー」へと辿り着いた5人は、エレーナの幼少期に所属していたサッカーチームの名前から「サンダーボルツ*」と名乗り、「セントリー」となったボブを止めようとしますが、空を飛び、銃弾を空中静止させ、刃が肌に刺さらない「セントリー」に太刀打ちできず、「ウォッチタワー」から逃げ出しました。

豹変したボブに全く敵わなかった5人は、心が折れそれぞれの気持ちがバラバラになってしまいます。

一方、マスコミを集めるなど下準備を入念に行うヴァレンティーナにエレーナたちの殺害を命じられたボブは、「神」に匹敵する力を持つ自身に命令するヴァレンティーナに憤りを覚え、彼女を殺害しようとします。

ボブには「キルスイッチ」が仕掛けられており、助けに来たメルがスイッチを押すことで、ボブは死亡したかに見えました。

殺害されたボブは「セントリー」から「ヴォイド」に変化を遂げ、自身の能力を使いヴァレンティーナの部隊を「影」としていきます。

「サンダーボルツ*」の面々は崩壊したビルや暴走した車から市民を守るため行動し、日陰者であった彼らは、市民からの支持を集め始めました。

しかし、「ヴォイド」は市民すらも「影」にし始め、ニューヨークは「影」に飲み込まれていくこととなります。

エレーナは「ヴォイド」の「影」に恐怖を感じず飛び込み、自身も「影」に飲み込まれました。

「影」の世界では、自身や他人のトラウマを再現した空間が無限に続く迷路のようになっており、エレーナは「レッドルーム」で友人の少女の殺害を命じられた己のトラウマを見せられることとなります。

トラウマを通過していく先で、エレーナはボブもこの世界に閉じ込められていることを知り、彼が体験することとなった父による苛烈な虐待を目にしました。

ボブに寄り添い共に「影」の世界から脱出することに決めたエレーナの前に、彼女を信じ「影」に飛び込んだ「サンダーボルツ」の面々が現れ、トラウマの世界を6人で踏破していきます。

世界の終端にはボブの中に鎮座する「ヴォイド(虚無)」が待ち構えており、ボブはエレーナたちを守るために「ヴォイド」を殺害しようとしますが、エレーナたちはボブに「ヴォイド」を受け入れさせます。

「ヴォイド」に取り込まれなかったことで自身を取り戻したボブによって「影」は消滅し、「影」となった人間の救出に成功しました。

ボブは「ヴォイド」も「セントリー」の記憶も失っており、エレーナは再び同じようなことが起きないようにボブと共に生きることを決めます。

バッキーはヴァレンティーナを追い詰めますが、窮地に陥ったヴァレンティーナは集めていたマスコミの前に立ち、「サンダーボルツ*」とボブを合わせた6人こそが「ニュー・アベンジャーズ」であると宣言するのでした。

14ヶ月後、政府によって正式に「アベンジャーズ」を名乗ることを認められた6人でしたが、独自に「アベンジャーズ」の結成を考案していた「キャプテン・アメリカ」ことサム・ウィルソンが反対していることを皮切りに、世間からの評価は芳しくありません。

ボブも「セントリー」の能力を引き出すことは出来ず、任務も決まらない6人の前に宇宙からの飛来物体の警報が飛び込みます。

余剰次元から来たとされる宇宙船には「④」の文字が刻まれていました。

映画『サンダーボルツ*』の感想と評価

「ヴィラン」だった彼らの「救いの物語」

物語の主軸となる「サンダーボルツ*」のメンバーは、かつて「アベンジャーズ」のメンバーと敵対した人物ばかりで成り立っています。

下院議員となったバッキーを除いたメンバーは、戦いの代償として汚れ仕事を押し付けられ、深い「虚無感」に襲われる日々を過ごすことに。

しかし、「サンダーボルツ」のメンバーはDCの作品として有名なヴィランを主人公としたシリーズ「スーサイド・スクワッド」とのヴィランたちとは異なり、決して望んでヴィランとなったわけではなく、背景や所属による部分が彼らの「ヴィラン」化の最大の原因でした。

本作はそんな純粋悪ではないヴィランたちの「救い」の物語であり、ヴィランとヒーローとの境目を考えさせられる映画となっていました。

【ネタバレ注意】今後のMCUの方向性を確定させた衝撃の作品

本作にはマーベル・コミックの中でも最強格とも噂されるヒーロー「セントリー」が登場します。

戦闘面において一部の隙もないとされるほどの実力を持つ一方で、「セントリー」は「ヴォイド」という本作のメインヴィランとなる裏の顔を持ってます。

マーベル・コミックの中で「神」の国である「アスガルド」を1人で崩壊に追い込んだ「ヴォイド」を内に秘める「セントリー」がMCUに加わったことで、シリーズ内のパワーバランスは確実に変わることとなります

そして、なんといっても「サンダーボルツ*」が「ニュー・アベンジャーズ」として「アベンジャーズ」の看板を手にしたラストは、シリーズの方向性を決定付けた衝撃のシーンでした。

親友として不遇な時代を共に支え合ったバッキーとサムが、「アベンジャーズ」の名を巡り不仲となる可能性も示唆されており、MCUの新たな時代を切り開く重要な作品となりました。

まとめ

かつて「正義」を捨てた「負け犬」たちが、寄り集まることで「正義」を取り戻していく映画『サンダーボルツ*』。

人生は何度のミスを犯しても、何度道の選択を間違えても、志を共にする仲間が居れば何度でも立ち直るチャンスは得られるという温かさを感じることが出来る本作。

今後のMCUの重要な鍵を握る作品としても見逃せない作品となっていました。

関連記事

アクション映画

映画『マルリナの明日』あらすじと感想。女性監督モーリー・スリヤが西部劇的な作風で描くフェミニズム

映画『マルリナの明日』2019年5月18日(土)ユーロスペースでロードショー! ならず者たちの不条理な行為に抗った一人の未亡人が、自身の思いを貫く旅に出る姿を描いたインドネシア・フランス・マレーシア・ …

アクション映画

映画『バットマン ビギンズ』感想レビューとネタバレ結末も。バットマンの“始まり”に隠された謎とその物語に迫る

『バットマンビギンズ』で新たなバットマン伝説が誕生する。 アメコミ界のレジェンド級ヒーロー「バットマン」の始まりを描いた映画『バットマンビギンズ』。クリストファー・ノーランが監督を手掛けています。 ク …

アクション映画

【ネタバレ】プリズナーズ・オブ・ゴーストランド|あらすじ結末と感想考察。園子温節が炸裂するハリウッドデビュー作はド派手さMAX!!

ニコラス・ケイジ主演で描かれるサムライタウンの大騒乱! 暴力表現へのこだわりや独特なセンスで紡がれる、誰にも真似の出来ない世界観によって熱烈なファン持つ映画監督の園子温。 その人気は日本のみならず世界 …

アクション映画

【ネタバレ】メグMEGザ・モンスターズ2|あらすじ結末感想と評価解説。ジェイソンステイサムとメガロドンの対決が魅せるど迫力の海洋アクション

《ジェイソン・ステイサムVS超弩級巨大サメ》を描く海洋アクション「MEG ザ・モンスター」シリーズ、待望の第2弾! 前作にて、古代から生き長らえていた超巨大サメ「メガロドン(メグ)」との死闘を経たジョ …

アクション映画

『サイレントナイト』あらすじ感想と評価レビュー。ジョン・ウー監督が作る最愛の息子と自身の声を奪われた男の壮絶な復讐劇

映画『サイレントナイト』は2025年4月11日(金)より新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほかにて全国公開 クリスマスイブにギャングの流れ弾に当たって命を奪われた息子のために立ち上がる男を描 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学