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Entry 2018/07/02
Update

映画『女と男の観覧車』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • 西川ちょり

音信不通だった夫の娘が突然帰ってきたその日から、慎ましく暮らしていた女の人生が狂い始める…。

1950年代、NY・コニーアイランドを舞台としたウッディ・アレンの新作『女と男の観覧車』をご紹介します!

映画『女と男の観覧車』の作品情報


Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

【公開】
2018年(アメリカ映画)

【原題】
Wonder Wheel

【監督】
ウッディ・アレン

【キャスト】
ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジェームズ・ベルーシ、ジュノー・テンプル、ジャック・ゴア

【作品概要】
ウッディ・アレン監督がケイト・ウィンスレット、ジャスティン・デインバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプルを迎え、1950年代ニューヨークのコニーアイランドを舞台に描く物語。ひと夏の恋に溺れていくひとりの女性をケイト・ウィンスレットが熱演。物語は想像もできない展開へ進んでいく。

映画『女と男の観覧車』のあらすじとネタバレ


Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

1950年代、NY・コニーアイランド。

ジニーは遊園地のレストランでウエイトレスとして働いています。

かつては女優として舞台に立っていたこともありますが、今は回転木馬の操縦係を務める夫のハンプティと、自分の連れ子のリッチーと一緒に、観覧車の見える部屋で平凡に暮らしていました。

ところが、ある日、夫の娘のキャロライナが突然店にやってきます。

彼女はギャングにのぼせ上がり、父親の反対を押し切って駆け落ちし、それ以後ずっと音信不通になっていたのです。

ギャングたちの生活を警察に尋ねられ、しゃべってしまったために、追われる羽目になり、逃げてきたのでした。

ハンプティは娘の顔を見て激怒しますが、やはりそこはかわいい我が子。子供が困っているのに追い出すわけにはいきません。キャロライナを家におき、ジニーの働くレストランで働かせながら学校にも通わせ始めました。

そんな矢先、ジニーは、海水浴場で監視員のアルバイトをしているミッキーと知り合いました。彼はニューヨーク大学に通う学生で、劇作家になる夢を持っています。

二人はデートの約束をし、その日に結ばれてしまいます。

ジニーの連れ子のリッチーには問題があり、放火ぐせがありました。ミッキーと出逢って、ジニーは今の生活から抜け出したいと思うようになっていきます。劇作家を目指すミッキーとの未来に夢を見始めるのでした。

しかし、ミッキーはある雨の日に、キャロライナと知り合い、彼女に惹かれていきます。

ジニーのミッキーに対する想いは日に日に膨らんでいき、ハンプティがベッドに隠していた金を盗むと、ミッキーの誕生日に彼が欲しがっていた高級時計に名前を入れてプレゼントします。

しかし、ミッキーはこんなに高価なものはもらえないと言って、受け取ろうとしません。「欲しがってたわ!」と叫ぶジニーに「これは贅沢すぎる」と応えるミッキー。

「人生最高の夏っていったじゃない!」と怒り出すジニーにミッキーは言いました。「やり過ぎだ。君の情熱についていけない」。

ジニーは時計を砂浜に投げ捨てました。

家に戻ると金を盗んだのはリッチーだと思ったハンプティが息子を叱っていました。

「盗ったのは私よ。息子のカウンセリングにお金がかかるのよ」とジニーが言うと、彼は「娘の将来のために貯めていた金なのに」と怒鳴りました。

「私が働いたお金は全て家に入れているのに、学校に行くための金を貯めていただなんて!」ジニーは逆ギレして、怒り始めました。

ところが間が悪いことに、そこへキャロライナがミッキーとデートするのと浮かれて帰ってきました。一連の出来事の前にブルックリンのお店で食事をする約束をしていたのです。

うきうきと出ていくキャロライナに「あまり遅くなるなよ」とハンプティは力なく声をかけました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『女と男の観覧車』ネタバレ・結末の記載がございます。『女と男の観覧車』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
海岸の店に二人組の男が現れます。店員に何かを尋ね、二人組は出ていきました。

それに気づいたジニーはもしやと思い、応対した店員に尋ねると、キャロライナはどこだと聞かれたから、今日はブルックリンのカプリに行ったと伝えたよと答えが返ってきました。

キャロライナをギャングが探しにやってきたんだわ! 早く知らせなければ大変なことになる!

ジニーは公衆電話に駆け寄り、カプリに電話をしました。従業員が出て「もしもし」と言った時、彼女は突然押し黙り、電話を切ってしまいました。

カプリでは、ミッキーとキャロライナが食事を楽しんでいました。

ミッキーはキャライナに「君に恋している」と告白します。

「でももう一つ、不快にさせる告白がある」と彼はジニーと浮気していることを告げ、「でも別れるつもりだ」と言いました。

「父が絶望するわ。彼女に頼っているの。ジニーにも悪いことをしたわ。あなたとデートだって楽しそうにしてしまった」とキャロライナは悲しそうにつぶやきました。

車で送るというミッキーの誘いを断り、彼女は一人歩いて帰っていきました。

一台の車が彼女のあとを追って、曲がったことにミッキーは気がつきませんでした。

翌日、ミッキーのもとにハンプティがやってきました。娘がいるだろう?早くだせと彼は喧嘩腰でした。

「うちには来ていない」とミッキーが応え、キャロライナが行方不明であることが判明します。

キャロライナを探して手を尽くしたミッキーたちは、ジニーがギャングたちが来たことを知っていたことも、カプリに電話しながら何も告げなかったことも、掌握していました。

キャロライナはギャングたちに殺害されてしまったに違いない。この女は、危険がわかっていたのに何もしなかった。にもかかわらず平然としている・・・。

ジニーには罪の意識が決定的に欠けているようでした。挙げ句に包丁を取り出して、「私を殺して復讐すればどう?」と叫ぶ始末です。二人の関係は完全に終わりました。

疲れ果てたハンプティが戻ってきて、ジニーにすがりました。「ジニー、すまなかった。出ていかないでくれ」。

ジニーは無表情で、ただ立ちすくんでいました。

そのころ、息子のリッキーは、砂浜の監視員用の椅子に火をつけていました。

映画『女と男の観覧車』の感想


Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

ウッディ・アレンの本作は、1950年代のニューヨークのコニーアイランドが舞台です。

まずは、その完璧な再現度に驚かされます

ベルナルド・ベルトルッチの『暗殺の森』(1972)や『暗殺のオペラ』(1979)、『地獄の黙示録』(1979/フランシス・フォード・コッポラ監督)などの撮影監督で知られるビットリオ・ストラーロのキャメラは、賑わう遊園地とビーチを生き生きと活写しています。

冒頭、ジャスティン・ティンバーレイク扮する海水浴場の監視員ミッキーが自己紹介を始め、カメラに向かって話しかけます

彼の紹介のもと、海水浴場への通路を不安げにやってくる女性、キャロライナ(ジュノー・テンプル)の姿が映し出されます。背後には大きな観覧車の姿が見えます。

この、登場人物を手際よく見せていく導入部では、少しばかり苦いロマンチックな恋愛ものなのかなぁ、と思っていたのですが、その後の展開には驚くばかり。

昨今のウッディ・アレン作品は、シニカルに人間を見つめるものが多くなっていますが、この作品も同様です。

ウッディ・アレン作品では、登場人物がウッディ・アレンの分身のように、息継ぐ間もなく、早口で喋りまくります。


Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

本作では、ジャスティン・ティンバーレイクがその役割を担うのかなと見ていたのですが、意外やケイト・ウィンスレットでした。

とりわけ、終盤、ミッキーに責められたときのジニーの言い訳とも居直りともとれるおしゃべりの連続は、ずっとカメラがミッキーの視点となり、長回しで撮られていることもあり、圧巻のシーンとなっています。

髪を振り乱し、メイクも剥がれ、人相まで変わってしまっているジニーを演じるケイト・ウィンスレットの演技は特筆に値するでしょう。

そして、ラストは、いつの間にか美しい容姿を取り戻しているのです。疲れ果てながら、なおも美しい様に、この女性の真の絶望が浮かび上がってくるのです。

まとめ


Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

洒落たタイトルのついた本作ですが(原題は『Wonder Wheel』)、なんと、残酷な映画なのでしょうか。

キャロライナの悲惨な運命はもちろん、良心の呵責もないヒロイン、悪の権化のような子供、と実に救いのない物語になっています。

同じ1950年代を舞台に、善人の顔をした大人たちの欺瞞に満ちた生活を暴いてみせたジョージ・クルーニーの『サバービコン』(2017)は、子供の存在が唯一の救いとなっていました。

無垢な存在をクルーニーは信じようとしていました。

また、『万引き家族』(2018)が大ヒット中の是枝裕和監督の一連の作品も、子供への温かい眼差し、信じる心が印象的です。

しかし、ここではどうでしょう? 

とはいえ、そこはウッディ・アレン。ぎりぎりブラックな笑いへと昇華しています。まさに職人芸。人々が泣き叫ぶ映画にもかかわらず、実にクールな渇いた魅力を見せてくれるのです。


Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

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