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Entry 2024/10/28
Update

【ネタバレ】ジョーカー フォリ・ア・ドゥ|あらすじ感想とラスト結末の評価。ホアキン・フェニックスとレディ・ガガが狂気のジョーカーを熱演

  • Writer :
  • もりのちこ

悪のカリスマ「ジョーカー」誕生のその後。
世の中は彼を求めすぎた。

人気のアメコミ「バットマン」に登場する悪役ジョーカーの誕生秘話を描き一躍話題作となった、ホアキン・フェニックスが演じる『ジョーカー』(2019)の続編。

コメディアンとして世界中の人を笑顔にしようと奮闘する男が、理不尽な世の中で、次第に狂気のピエロへと変貌していく。社会へ不満を持つ群衆は、彼を「ジョーカー」と崇めたてるのでした。

その後、事件を起こし精神病棟に収容されたアーサーは、ジョーカーのファンだという、リーという女性と出会います。ジョーカーの狂気はやがてリーへと感染。そして、再び群衆の前に姿を現したジョーカーは、いったい何を語るのか。ジョーカーの正体とは。

ひとりの妄想が複数に感染していく感応精神病を意味するフランス語「フォリ・ア・ドゥ」。映画『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』を紹介します。

映画『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』の作品情報

【日本公開】
2024年(アメリカ映画)

【監督】
トッド・フィリップス

【キャスト】
ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ、ブレンダン・グリーソン、キャサリン・キーナー、ザジー・ビーツ、リー・ギル

【作品概要】
前作となる『ジョーカー』(2019)では、第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第92回アカデミー賞で主演のホアキン・フェニックスが主演男優賞を受賞するなど、高い評価を得ただけに続編にも期待が高まりました。

監督は前作同様、トッド・フィリップス監督。また、脚本のスコット・シルバー、撮影のローレンス・シャー、音楽のヒドゥル・グドナドッティルなどメインスタッフも前作同様な顔ぶれとなっています。

ジョーカーの役作りから話題を呼び、今作でもカリスマ性あふれるジョーカーを演じきったホアキン・フェニックス。そして、ジョーカーに多大な影響を与える謎の女・リー役に、世界的トップスター、レディー・ガガが登場。ホアキン・フェニックス演じるジョーカーにも劣らぬ狂演に注目です。

映画『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』のあらすじとネタバレ

ピエロの恰好をしたコメディアン・ジョーカーは、世界中の人々を笑わせるスターです。しかし、彼の影が勝手に飛び出し、ひとりで悪さをするようになります。

ジョーカーは、自分の影を止めようと喧嘩をしますが、負けてロッカーに閉じ込められてしまいましたとさ。

ここは、「ジョーカー」を名乗り、殺人事件を起こしたアーサーが収容されている医療刑務所です。

口笛を吹きながら上機嫌の監修がアーサーをむかえに来ました。「アーサー、今日のジョークは何だい?」。

アーサーはそれには答えず、ヨロヨロと監修の後についていきました。ガリガリにやせ細ったその姿は、ジョーカーとして世間を騒がし、一躍大スターへと駆け上がった男の姿とは程遠いものでした。

施設では治療の一環として、音楽や芸術に触れる時間があります。アーサーは、そこで不思議な魅力をもつ女性に会います。

彼女の名は、リー。リーは、手でピストルをまね、自分の頭を打ち抜く動作をしてみせます。「本当にあなたがジョーカー?」。

リーは、ジョーカーが殺人を犯したテレビショーを見て、「自分はひとりじゃないと感じられた」と、自分の境遇を話します。

情熱的なリーの誘惑に、アーサーの中で何かが目覚めたようでした。アーサーは、ジョークを飛ばし、タバコを美味しそうにふかします。まるでジョーカーが君臨したようです。

「君には言うよ。実際に僕が殺したのは6人だ。母を殺したのも僕だからね」。アーサーの残虐さに嬉しそうに微笑むリー。

事件は映画鑑賞の時間に起きました。リーが火を放ちます。所内はパニックに。火が燃え上がる隙をつき、ふたりは手を取り逃げ出します。結局ふたりはすぐ捕らえられましたが、とても幸せに満ちた時間でした。

懲罰房に入れられたアーサーの元に、リーが現れます。「本当のあなたになって」アーサーの顔にジョーカーメイクを施していくのでした。

その後、リーはこの病棟を出ると言います。「外であなたの帰りを待つわ。ここを出て、ふたりで山を作るのよ」。

アーサーの裁判が始まろうとしていました。裁判所へ向かう車の中で、アーサーは高揚し笑いが止まりません。裁判所の前には大勢の人だかりができていました。ジョーカーの恰好をしたジョーカー信者たちです。

アーサーの弁護士は、幼い頃のトラウマから、アーサーの中に別の人格・ジョーカーがいるという精神疾患を主張していました。

アーサー自身、残虐なジョーカーの顔は己の意志によるものなのか計り知れないものでした。裁判中は、おどおどとリーの姿を探してしまいます。

証人たちの証言により、アーサーのこれまでの生い立ちや犯行の事実、ジョーカーの存在について様々な論争が進められていきます。

自分を置いてきぼりにし、進んで行く裁判に苛立つアーサー。「もう、無理だ。ジョーカーはオレだ!」。弁護人のメリーアンにキスを送り退かせます。

リーはそんなアーサーの姿に歓喜していました。アーサーは、ジョーカーメイクで法廷に現れます。法廷内はさながらジョーカーのショータイムと化すのでした。

以下、『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

ジョーカーの君臨に、町中のジョーカー信者たちが熱狂。その頃リーは、アーサーの子を妊娠。自らもピエロのメイクを施し、法廷に赴きます。

「僕は自由だ。もうひとりじゃない。リーと山を作るんだ」。アーサーは、リーの期待に応えるように振る舞います。

しかし、元仲間のゲイリーや、母を知るケーンの証言に向き合うアーサーの心は、次第に削られていきます。

医療刑務所では、受刑者たちのヒーローとなる反面、看守からのひどいイジメに遭っていました。アーサーを慕っていた青年も看守に殺されてしまいます。身も心もボロボロになっていくアーサー。

裁判も終盤に入る頃、アーサーは「皆が求めるジョーカーはいない!」と、自ら発言。それを聞いたリーは、呆れたような顔をし、法廷を出ていきました。そこにはジョーカーのメイクは崩れ、自信をなくした、みすぼらしい男の姿がありました。

判決は有罪。アーサーは殺人犯となりました。アーサー=ジョーカーを望んだリーは、もういません。狂ったように笑い出すアーサー。

その時です。大きな爆発音とともに、裁判所の壁が崩れ落ちます。アーサーは、フラフラと表にでました。

「あんた!本物のジョーカーか!?」。ジョーカーの面を被った男が、興奮したようにアーサーに駆け寄り、彼を車にのせます。狂気を覚えたアーサーはそこから逃げ出し、リーの元へと向かいます。

リーと再会を果たすアーサー。共にステージに立とうと歌いだしたアーサーに、リーは言います。「あなたは諦めたの。ジョーカーはいないと言ったのよ」。

リーの愛は冷めてしまっていました。まるで裏切られたような顔でアーサーを見ています。「さよなら」。

アーサーはその場で警察に捕まり、元の医療刑務所へと入れられます。化粧を落とし、ただの孤独な男に戻ったアーサーは、ジョークを言う気力も残っていませんでした。

後ろから若い男の声が聞こえます。「がっかりだぜ!報いをうけろ!クソヤロウ」。男は手に持ったナイフで、アーサーの腹を刺しました。

ズルズルと倒れるアーサー。ドクドクと血が流れます。最期は、息子への歌を口ずさんでいました。

目を見開いたまま動かなくなったアーサーの側で、高笑いをあげながら自分の口をナイフで切り開いている男の姿があります。その姿は、まるで本物のジョーカーのようでした。

映画『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』の感想と評価

DCコミックス『バットマン』に登場する悪役ジョーカー。これまで名高い俳優たちがジョーカーを演じ、なかでも『ダークナイト』3部作でジョーカーを演じたヒース・レジャーの怪演により、その狂気さに熱狂するファンが増えました。

そして、原作のDCコミックスにはないオリジナルストーリー、初のジョーカー主役作として製作された映画『ジョーカー』(2019)。

コメディアンを目指す心優しい男・アーサーが、世の中の不条理を受け、悪のカリスマへと変貌していく様は、アメコミファンならずとも、多くの観衆の心に残る作品となりました。

あわせて、ホアキン・フェニックス演じるジョーカーが、この悲劇のダークヒーローに見事にハマり、新たなジョーカーを生み出しました。

続編である本作は、一夜にして有名人となった殺人鬼ジョーカーのその後を描いています。アーサーという男の本当の姿とは。なぜ、ジョーカーは群衆に求められるのか。アーサーの悲劇は、その後も続くのでした

本作から観ても楽しめる映画だと思いますが、ぜひ前作『ジョーカー』から観ることをお勧めします

アーサーはどうやってジョーカーになったのか。なぜ、愛に飢え、孤独なのか。ジョーカーが犯した罪を知ってから観るとより理解できる内容だと思います。

今作の特徴のひとつとして、物語の途中にジョーカーのアニメが差し込まれている点があげられます。オープニングも「俺と俺の影」というアニメから始まっています。

「自分の影が暴走し、本物を閉じ込めてしまう」というストーリーは、アーサーの未来を予言しているかのようです。アニメーションが入ることで、現実なのか妄想なのか境目が難しく感じます。

さらに特徴としてあげられるのは、ミュージカル要素が盛り込まれている点です。アーサーとリーは、心情を歌にのせ、時に叙情的に時にコミカルに、ステージで踊ります。

このたびたび差し込まれるアニメとミュージカルシーンによって、どこまでが現実なのか、アーサーの混乱が伝染してくるかのようです

アーサーは、リーの求めるジョーカーになろうと踊り続けますが、本当のアーサーは、誰かに愛されたいだけの心の弱い人間でした

アーサーが自分に戻ろうとすると、リーが現れジョーカーのメイクを施します。ジョーカーを目覚めさせ、肯定させようとするのです。次第に「本当のジョーカーは、リーなのでは」と思えてきます。

また、裁判所が爆破されるシーンでは、アーサーが表に出ると、ジョーカーの恰好をした人々が本人よりも興奮し、熱狂しています。社会の破壊者ジョーカーを崇め、求める群衆の方が、アーサーよりもジョーカーでした

誰にも理解されず、愛する人にも裏切られ、何者にもなれなかったアーサーの物語は、最も悲劇的なラストを迎えます。

強制施設に戻ったアーサーは、受刑者にナイフで刺され倒れます。その姿は、メイクもしていない素の顔で、目を見開いたまま横たわっていました。その表情は安堵の顔にも見えます

アーサーを刺した男が放った言葉は、「報いをうけろ!クソヤロウ!」でした。これは、ジョーカーがTVショーで人気司会者マレー・フランクリンを刺した時と同じ台詞でした

その後、アーサーを刺した男は、笑い声をあげながら口元を切り裂いています。ここにもいました、ジョーカーの妄想が「フォリ・ア・ドゥ」した狂気のジョーカーが。

このラストは、アーサーは死に、ジョーカーの妄想を持った別の人物が新たに君臨するようにも考えられますが、度重なる不条理にとうとうアーサーが素の自分を捨て、本物のジョーカーに生まれ変わったかのようにも捉えられます。

果たして、真の物語はどちらなのでしょうか。

前作に引き続きジョーカーを演じたホアキン・フェニックス。前作でも体重を20キロ以上減らすなど、ストイックな役作りが話題となりましたが、本作のホアキン・フェニックスも凄い。

骨が浮き出るほど、ガリガリにやせ細り、動きも異様でハラハラとさせ、目だけがギラギラと狂気染みています。

リーに出会うまでのアーサーは、みすぼらしく見えますが、恋をしてからのアーサーは、みるみる憂いを帯び、タバコをふかす姿もセクシーに映ります。

メイクを施し自信に満ち溢れたジョーカーと、反対に傷つき疲れ果てたアーサーとのギャップが圧巻です。

リーを演じたレディー・ガガは、改めてカリスマ性のある狂気が似合うアーティストだと感じました。手でピストルを真似、頭を打ち抜く仕草がこんなに似合う人はいるでしょうか

「What the World Needs Now Is Love」「When You’re Smiling」など、名曲の数々が使用され、さすがレディー・ガガという歌声に、ミュージカルシーンだけでも楽しめます。

まとめ

不平不満の世の中に、突如として現れた悪の権現「ジョーカー」。彼のその後を描いた続編『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』を紹介しました。

男は言います。「ジョーカーはいない」と

果たして彼は、容赦なき悪のカリスマか。だたの愛されたがりの弱い人間か。群衆が求めるジョーカーとは

タイトルの「フォリ・ア・ドゥ」は、フランス語で「2人狂い」という意味です。ひとりの妄想がもうひとりに感染し、2人ないし複数人で妄想を共有することがある感応精神病のことを言います。

リーの、ガッカリとした気持ちがよく分かるというあなたは、ジョーカーの妄想に感染しているかもしれません。



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